コロナ禍こそ注意!フレイルの要因になるロコモって?

2024年01月10日

ロコモティブシンドロームとは?

運動不足に注意!フレイルの要因になるロコモって?

川上洋平(かわかみ・ようへい)
監修者
川上洋平
監修者 川上洋平 かわかみ整形外科クリニック 院長・医学博士

50代からは、加齢による身体機能の衰えが顕著になります。運動不足でもまだ大丈夫! は危ないかも……。「運動器症候群」と言われるロコモティブシンドローム(ロコモ)とは? フレイルやサルコペニアなども一緒に、用語の解説と予防法を解説します。

監修者プロフィール

かわかみ整形外科クリニック 院長・医学博士 川上 洋平さん

神戸大学医学部卒業。米国ピッツバーグ大学に留学し、膝スポーツ疾患や再生医療を学び、神戸大学病院、新須磨病院勤務を経て、患者さんにやさしく分かりやすい医療を提供することを目的に、かわかみ整形外科クリニックを開業。日本整形外科学会専門医。ロコモアドバイスドクター。

よく聞くロコモ(ロコモティブシンドローム)とは?

「フレイル」と「ロコモ」の関係とは?

「フレイル」と「ロコモ」は、高齢者の健康に関する話題で近年、良く出てくるようになった用語です。さらにフレイル・ロコモと同じような用語に「サルコペニア」もあります。

どれもあまり聞き馴染みがない用語ですよね。これらはそれぞれどういう意味で、どう違うのでしょうか。まずはその意味から見ていきましょう。

「フレイル」とは加齢による衰えのこと

フレイルとは「加齢により心身が老い衰えた状態」を指し、英語で「虚弱」を意味する「フレイルティ(Frailty)」に由来しています。ひと言で言えば、要介護状態の前段階と位置付けられています。

フレイルの特徴は身体機能の低下だけでなく、精神的、心理的な衰えも含むこと。気分が落ち込みやすくなったり、やる気が出ないこともフレイルの症状の一つです。

心身ともに機能が低下することで疲れやすくなったり認知機能が低下したりと、さまざまな社会生活上の不具合や健康障害を招き、要介護への危険度が高くなると言われているのです。 

「ロコモ」とは運動機能低下の状態のこと

ロコモとは「ロコモティブシンドローム(locomotive syndrome)」の略で、「運動器症候群」とも言われます。ロコモは、「運動器の障害により移動機能が低下した状態」と定義されています。

運動器とは骨や筋肉、関節や神経などが連携して体を支え動かす部位のこと。移動機能とは立つ、歩くといった動作のことです。つまり筋肉の衰えや関節の病気などにより、立ったり歩いたりしづらくなった状態のことを指します。

高齢者に多い変形性関節症や骨折・骨粗鬆症など、運動器の疾患がある場合は特に注意が必要です。また、バランス能力の低下によって転倒しやすくなり、骨折して介護が必要となる危険性が高い状態もロコモです。 

「サルコペニア」は筋力低下を指す

サルコペニアとは「筋肉量が減少し、筋力や身体機能の低下をきたした状態」を指す用語です。ギリシャ語で筋肉を意味する「サルコ(sarco)」と、喪失を意味する「ペニア(penia)」が由来です。

サルコペニアは、筋力が落ちて日常生活に影響が出ている状態のこと。例えば「握力が落ち、ペットボトルのフタが開けられなくなった」「手すりがないと階段を上れない」などが症状として挙げられます。

フレイルの要因の一つがロコモ!

3つの言葉の意味は似ているようで少しずつ違います。フレイルの範囲は広く、心身とも衰えた状態全般を表します。ロコモはフレイルの中でも特に運動器の機能低下を表し、精神状態は含みません。そして、ロコモの中でも特に筋肉量が衰退した状態が、サルコペニアです。

つまり要介護状態になる要因がフレイル、フレイルの要因の一つがロコモ、ロコモの要因の一つがサルコペニア、というように関連しています。フレイルの大きな輪の中にロコモがあり、ロコモの輪の中にサルコペニアがある、と理解しましょう。 

運動不足の人はすぐ確認!セルフチェック方法を紹介

運動不足の人はすぐ確認!セルフチェック方法を紹介

「最近、なんだか疲れやすい……」そんな自覚がある人は多いのではないでしょうか。自分がフレイルやロコモになっていないか、簡単にチェックする方法を試してみましょう。

フレイル・ロコモ・サルコペニアの診断基準は?

まずは、それぞれの診断基準を紹介します。

フレイル
フレイルは、以下の5つのうち3つ以上該当する場合に診断されます。2つ該当する場合は予備軍の「プレフレイル」であるとされます。

ダイエットしていないのに、体重が6か月で2~4kg以上減少する
ここ2週間、理由もなく疲れたような感じがする
歩くスピードが落ちた(1m/秒未満)
握力が落ちた(利き手で男性26kg未満、女性18kg未満)
定期的な運動や体操をしなくなった

【ロコモ】
ロコモは、3つの「ロコモ度テスト」によって判定されます。それぞれ難易度や数値によりレベルがあり、ロコモ度を判定します。(参照:ロコモ度テスト | e-ヘルスネット(厚生労働省):澤田 亨

立ち上がりテスト
異なる高さの台に座り、片足または両足で立ち上がれるかを測る。
2ステップテスト
大股で2歩、歩いたときの距離を身長で割ったときの数値で測る。
ロコモ25
日常生活や身体機能に関する25個の質問に答える。

サルコペニア
サルコペニアは以下の3つを測定し、総合的に判断されます。主に筋肉量の減少とともに、筋力や身体機能の低下が見られた場合がサルコペニアとされます。

筋肉量
筋力(握力)
身体機能(歩行速度など)

女性は特に「ロコモ」に注意!

こういった診断は主に65歳以上の高齢者が対象となりますが、油断は禁物。加齢による筋肉量の減少や身体機能の衰えは、なんと30代から始まっています。特に50代からは衰えが顕著になるため、「まだ大丈夫!と思っていたら、いつの間にか……」ということも。

特にデスクワークなど日頃座っていることが多く、体を動かさない人は要注意。身体機能を落とさないことが大切です。

また、要介護状態となった女性の3割近くの要因が、運動器疾患によるものです。女性は50代を過ぎた頃から骨密度が急激に減少することが多く、転倒により骨折し要介護状態になってしまうケースが多くあります。そのため、ここからは主にロコモにならないためにどうすれば良いかをご紹介します。 

まずはセルフチェック

日常生活の動きの中でロコモかどうかセルフチェックする方法もあるようです。例えば「片足立ちで靴下がはけない」などといったもの。こうした症状がある方は、運動器が衰えているサインですので、改善に努めましょう。

特に膝や腰などの関節に痛みがあったり、立ち上がったときにふらつくなどの症状がある場合は、整形外科を受診してください。 

家の中でもできる!フレイルとロコモの予防法は?

家の中でもできる!フレイルとロコモの予防法は?

それでは、ロコモにならないためにはどんなことに気を付ければ良いのでしょうか。家の中で行える予防法をご紹介します。

運動機能をアップしよう

スクワットなどの運動を行うとロコモを防ぐトレーニングになります。スクワットは体の中で一番大きい筋肉である太ももを動かします。下半身の筋肉量は全身の70%を占めており、スクワットをすることで、効率よく全身の筋肉量を上げることに繋がるのです。

また、スクワットは腹筋や背筋の力も必要な運動です。腹筋・背筋は体を支える筋肉。スクワットをすることで姿勢よくバランスの取れた体になります。慣れていない人は、椅子や壁などを支えにしながら無理をせず行いましょう。

食事でしっかり栄養を取ろう

体は毎日の食事をもとに作られています。主食・主菜・副菜のバランスの良い食事を、毎日3食きちんと取るよう心掛けましょう。特に取るべき栄養素は、たんぱく質。筋肉のもとになるので、肉・魚・卵・大豆製品などを積極的に食べましょう。

たんぱく質とあわせて、エネルギー源となる炭水化物や脂質も一緒に取ることが大切です。エネルギー不足になると、体は筋肉の中のたんぱく質を使ってエネルギーを生み出そうとするので、結果的に筋肉が減ってしまいます。ごはんやパンといった主食も抜かずに食べましょう。

また、骨を強くするカルシウムも忘れずに。牛乳や小魚を意識して取りましょう。カルシウムを効率良く吸収するためには、ビタミンDやビタミンKも同時に取ることが大事です。ビタミンDはキノコ類、ビタミンKは青菜などに多く含まれています。 

孤立しないことも大事な予防法

ロコモになると動くのが億劫になり、活動量が減ってしまいます。活動量が減ると食欲も出なくなり、十分な栄養を摂取できません。すると、さらに体重や筋肉量が減り(サルコペニア)、ロコモが進行しフレイルの状態になってしまいます。

こういった悪循環を「フレイルサイクル」と呼びます。フレイルサイクルの中で転倒したり慢性疾患の悪化が起こると、要介護状態になる可能性が一気に高くなってしまいます。

フレイルサイクルに陥らないためには、運動や食事の他に、動こうとする積極性も重要です。孤立すると人は精神的に落ち込み、気力を失ってしまいます。家族とおしゃべりしたり、リモートでも友人と連絡を取るようにしましょう。

フレイルにならないためにはロコモ予防が重要です。運動器は自分の意思で動かせ、鍛えられる器官です。ロコモに陥るかどうかは自分の意識次第なのです。コロナ禍でも積極的に動いてロコモ、そしてフレイルを予防しましょう。 

※この記事は2021年7月の記事を再編集して掲載しています。

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HALMEK up編集部
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