質の良い睡眠で気持ちよく目覚めるために#1
眠れてる?脳と体の不具合を修復・回復させる睡眠とは|セルフチェック付き
眠れてる?脳と体の不具合を修復・回復させる睡眠とは|セルフチェック付き
公開日:2026年03月19日
教えてくれた人:柳沢正史(やなぎさわ・まさし)さん

筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(WPI・IIIS)機構長・教授。株式会社S’UIMIN取締役CSO会長。医学博士。主な研究テーマは、睡眠・覚醒機構の解明と医薬への応用。紫綬褒章、朝日賞、慶應医学賞、文化功労者、ブレークスルー賞など受賞多数。
なぜ、睡眠は大切なの?5つの理由

1.脳にたまったごみを洗い流し、認知症のリスクを下げる
体の中には、栄養を運んだり老廃物を出すリンパ管という仕組みがありますが、脳内にも似た仕組みがあり、眠っている間によく働きます。アルツハイマー型認知症の原因物質の一つとされる「アミロイドβ」は、よく眠っている人の脳にはたまりにくく、この仕組みによるものと考えられています。
2.筋肉の疲労を回復し、骨密度の低下を防ぐ
入眠後から数時間出る「成長ホルモン」が、傷んだ筋肉を回復させ、骨を丈夫に保つ働きをしてくれます。成長ホルモンをしっかり分泌させるには、脳と体を適度に疲れさせて眠るのがコツ。日中、誰かと話したり、適度な運動をするよう心掛けて。
3.免疫力を高め、さまざまな病気のリスクを回避する
人間の体には一日に約5000個のがん細胞が発生していますが、発症しないのは免疫細胞が排除しているから。特に体内に侵入した病原体を記憶して排除する「T細胞」や、ウイルスなどを撃退する「NK細胞」などの免疫細胞は、十分な睡眠によってその機能がアップします。
4.自律神経を整えて、メンタルを安定させる
睡眠中は自律神経の副交感神経が優位になります。しっかり眠ることで自律神経のバランスが整い、ストレスへの耐性も向上。イライラや不安を感じてもうまく対処することができるようになり、穏やかな気持ちで毎日を過ごせます。
5.食べ過ぎを防ぎ、肥満や生活習慣病を遠ざける
満腹中枢を刺激し、必要以上の食欲を抑える働きをするホルモン「レプチン」は、睡眠中に分泌されます。一方、睡眠不足が続くと食欲が増す「グレリン」やストレスホルモン「コルチゾール」の分泌が増加。高血圧などの生活習慣病を招きます。
「睡眠」が十分でないと…
- 認知症のリスクが4倍に!
- 免疫力が低下し、がんにかかるリスクが約2倍に!
- 食欲を高めるホルモンが分泌され、食べ過ぎ、肥満に!
年とともに早寝早起きになり、睡眠の量と中身は変わります

年を重ねると睡眠時間が短くなり、夜中に目が覚める「中途覚醒」が増えたりします。
「これらは異常ではなく、体力の変化と同じ、自然な加齢現象です。
若い頃のように8時間ぐっすり眠れなくても心配いりません。60代以降は6時間程度の睡眠でも十分な人もいます。『もっと眠らなきゃ』と考えると眠れないまま寝床で過ごす時間が増え、睡眠の質の低下や不眠につながります」と柳沢さん。
変化1:体内時計が朝型になり早寝の習慣がつく
体内時計が朝型に変わり、早寝早起きに。寝床にいる時間は若年者とほぼ同じでも、中途覚醒などにより睡眠時間は短くなります。
変化2:最も深い睡眠は減少する
ノンレム睡眠には3段階あり、成長ホルモンが分泌される最も深い睡眠の量は年とともに減少。レム睡眠の総量も減ります。
変化3:睡眠サイクルが不安定になる
中途覚醒が増えることで睡眠状態の切り替わりが多くなり、睡眠サイクルが不安定に。「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」が両方あれば問題ありません。
変化4:中途覚醒が増える
目が覚めた記憶がない中途覚醒も含め、一晩に複数回起こるのが一般的。2〜3回の目覚めは、すぐに再び眠れるなら問題ではありません。
睡眠サイクルが整う生活リズムで、睡眠の質を上げよう

眠っている間は「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」を交互に繰り返す睡眠サイクルがあり、このサイクルが自然に保てていると、脳と体の回復がスムーズに行われ、朝すっきりと目覚めることができます。
「そのためにも日中はなるべく活動的に過ごし、昼寝は控えましょう。夜は眠くなるまで寝床に行かないよう心掛けるなどをして、生活のリズムを整えることが大切です」(柳沢さん)
後述のセルフチェックで自分の眠りを把握し、より効果的に対策しましょう。
ノンレム睡眠とは
ノンレム睡眠の中にも実は、浅い・中程度・深い睡眠の3段階あります。深い睡眠は入眠後3時間以内に現れることが多く、成長ホルモンが分泌。脳は覚醒とは異なるかたちで活動しています。
レム睡眠とは
レム睡眠は単に浅い眠りではありません。目覚めているときより脳の血流が増加し、脳の機能回復に重要な役割を果たしています。不足すると認知症のリスクを高めるという研究結果もあり、寿命に影響を与える可能性もあります。
私はちゃんと眠れている?睡眠セルフチェック

自分の睡眠を知るために、次の項目から当てはまるものをすべてチェックしてみましょう。
<1>日中のことについて
□日中によく眠気を感じたり、うたた寝をする
□カフェインや栄養ドリングなどをよく飲む
□些細なことでイライラする
→当てはまるものがある方は、睡眠に問題がある可能性があります。この続きのチェックリストで、より詳しく見ていきましょう。
<2>眠ろうとしても眠れない(不眠)
□なかなか寝付けないことに悩んでいる
□夜中に目が覚めた後、長く眠れなくなることがある
□予定よりだいぶ早く目覚めて、それ以降眠れないことがある
□布団の中に8時間以上入っている
→当てはまるものがあれば、「睡眠の悩み 傾向と対策」も参考にしてください
<3>睡眠への不安について
□何度も目が覚める
□夢を見ることが気になる
□睡眠が浅いように感じる
□眠れないことへの不安がある
<4>睡眠時無呼吸症候群について
□いびきを自覚したり、家族に指摘されたりする
□夜中にトイレが近くなる
□目覚めたときに喉が渇いている
□BMIが高めである
※BMIとは体重と身長から算出する体格指数のこと。標準値は18.5~25未満です。
求め方:BMI=体重[kg]÷(身長[m]×身長[m])
<5>睡眠不足について
□睡眠時間が6時間未満だ
□本当はもっと眠りたいが、思うように時間が取れない
□毎日忙しい
「適正睡眠時間」の確かめ方

あなたにとって最適な睡眠時間は、下記のような方法で確かめることができます。
1.仮の睡眠時間を「〇時間」と設定
睡眠不足を感じているようなら、普段の睡眠時間より長めに、逆に夜間に眠れない時間があれば少し短めに設定するとよいです。
2.1の睡眠時間を守りながら1週間過ごします
3.1週間後に夜間の睡眠状態や日中の眠気や調子がどのように変わったか確かめます
もっと眠れそうであれば15~30分ほど睡眠時間を延ばしてさらに1週間過ごします。逆に起きている時間が増えるようであれば睡眠時間を短くして2に戻ります。

睡眠中は意識を失ってしまうため、自分の睡眠は意外と、感覚では正確にわからないものです。
目覚めてから5分くらいで再び眠れているのに「2時間も眠れなかった」と感じている方や、中等症以上の睡眠時無呼吸があるのに「自分はよく眠れている」と思っている方が少なくありません。
セルフチェックの結果にとらわれ過ぎず、自分の睡眠についてのいろいろな可能性を考えながら、次の記事「睡眠の悩み 傾向と対策」をご覧ください。
取材・文=大門恵子(ハルメク編集部)、撮影=中西裕人、イラストレーション=あなんよーこ
※この記事は、雑誌「ハルメク」2025年8月号を再編集しています。




