50代から始める「冴える脳」の作り方#2
認知症を防ぐカギは“血管”! 50代から始める脳を守る食べ方・暮らし方
認知症を防ぐカギは“血管”! 50代から始める脳を守る食べ方・暮らし方
更新日:2025年11月25日
公開日:2025年11月17日
教えてくれるのは、石川 久(いしかわ・ひさし)さん
脳神経外科医。特に脳腫瘍に関し、検査・診断から、手術、治療法まで、患者の日常生活・社会活動像の構築に最善を尽くす。救急医として、救急医療及び全身管理を専門とし、院内教育や市民講習などでも貢献。著書に『100歳まで冴える脳習慣10:1万人を診た脳の名医が実践』(主婦と生活社刊)など多数。
同じ“認知症”でも原因は違う? 知っておきたい2つのタイプ
前回は、「骨盤」が脳の血流と集中力に関係 していることを紹介しました。今回は、脳の若さを左右する“血管”がテーマです。
「認知症予防のために脳トレをしている」という方も多いかと思います。もちろん、それも大切なのですが、それだけでは認知症になるリスクを下げることはできません。
脳の神経細胞は、一度傷ついたり、失われたりすると、皮膚や内臓の細胞のように再生することはありません。近年の研究では、一部の神経細胞は再生するという報告もありますが、人は生まれたときから、脳の神経細胞の数はほぼ決まっており、加齢によってその数は徐々に失われていきます。
そのため高齢になると、「年相応のもの忘れ」が起こるわけです。ところが、認知症の場合は、 神経細胞そのものが病的に傷つき、失われることによって認知機能が低下してしまいます。
認知症には、「アルツハイマー型認知症」と「脳血管型認知症」のほか、「レビー小体型認知症」や「前頭側頭型認知症」があります。
「レビー小体型」と「前頭側頭型」は、原因が明らかになっておらず、予防が難しいタイプの認知症です。ここでは、患者数が多く、発症や予防の仕組みもわかってきている「アルツハイマー型」と「脳血管型」の予防法について紹介します。
50代でも“見えない脳梗塞”が進行中!? 生活習慣の何が原因?
認知症を予防することは、今や人類共通の課題であり、世界中の研究者が認知症予防の研究に取り組んでいます。さまざまな知見が蓄積されてきていますが、おおまかにいって「食習慣」「運動習慣」「社会的活動」の善し悪しが発症に関係するといわれています。
確かにその通りなのですが、多くの方の脳を診てきて強く思うのは、「認知症のカギは血管ケアにある」ということです。
「脳血管型」の場合、因果関係がはっきりしているのが「動脈硬化」が大きなリスク因子であることです。動脈硬化は、よく知られているように、高血糖、高コレステロール、高血圧など、いわゆる「生活習慣病」によって進行します。
動脈硬化が進むと、血管壁にコレステロールなどのかたまりがたまって、血管が硬く、狭くなり、血流も悪くなります。そのかたまりが血栓となって血管を塞ぐと脳梗塞が起こります。
このような血管の異変は、短期間で進むものではなく、動脈硬化を招くような状態が長期にわたって日常的に続いた結果、引き起こされます。脳ドックなどで画像検査をすると、50代くらいから、症状がなくても脳にポツポツと小さな脳梗塞が見られる人が増えてきます。
ですから、脳の血管をケアするには、やはり40代くらいから、動脈硬化予防を心がけることが何より重要なのです。
血糖・血圧の乱れに要注意!“脳老化”を進ませる食べ方
「アルツハイマー型」にしても「脳血管型」にしても、共通しているのは、予防のためには血糖やコレステロール、血圧のコントロールが重要だということです。
そのためには、「食生活と運動習慣を改善しましょう」という話になるわけですが、特に、「アルツハイマー型」の大きなリスク要因の一つである糖尿病を防ぐためにも、まず食事の摂り方からスタートすることをおすすめします。
いくつか例を挙げると、
- ゆっくりと時間をかけて、よく噛んで食べる
- 昼食だけダイエット食にする
- もう一口食べようかどうかと迷ったら食べない
- ご飯の量を、一口分減らす
などポイントを絞って実践すると無理なく続けやすいと思います。ご飯を一口分といっても、エネルギー量にすれば、30kcalほど。1日3食、ひと口ずつ減らせば、それだけで1日に100kcalを減らすことができます。
食事を減らすと、食間にお腹が空きますが、そのときは少しだけ間食を食べると良いいと思います。極端な飢餓状態になってから次の食事を食べると、そこで血糖値が急上昇してしまうからです。
一般にはダイエットのためには、「間食を控えて」といわれますし、もちろん、食べ過ぎるとてきめんに肥満のもとになります。でも、血糖値の上昇と下降をおだやかにするために、食間に少量をタイミングよく食べるのは、一つの血糖コントロールの知恵です。
「治せる認知症」もある? 早期診断が脳メンテの第一歩
認知機能の低下は、認知症以外にもさまざまな原因によって起こります。きちんと治療を受ければ、改善するケースもあるので、病院でしっかり検査をして診断を受けることが大前提です。
代表的な「治る認知症」として知られているのが、「水頭症(特発性正常圧水頭症)」です。
これは、脳や脊髄のまわりを満たしている脳脊髄液が、なんらかの原因で排出されなくなり、脳内に過剰に蓄積する病気です。症状としては、すり足や小股、足を開き気味に歩くなどの歩行障害や尿失禁、注意力・記憶力などの認知機能の低下が起こります。
ですから、認知症疑いで来院される患者さんについては、診察室に入室される際の歩き方に注目するようにしています。いずれにしても、CTを撮ればすぐに水頭症であるかどうかはわかります。
水頭症の治療としては、脳脊髄液がたまっているところから腹部にカテーテルを通して留置する手術を行います。それで脳脊髄液が脳を圧迫しないようになれば、症状は劇的に改善します。ただし「治る認知症」といわれてはいても、脳への圧迫が長く続くと諸症状が残ることもあるので、早めに治療を受けることが大切です。
記憶力を守るカギは“認知予備能”! 五感で鍛える脳の新習慣

「アルツハイマー型」の原因とされるアミロイドβの蓄積については、アミロイドPET検査で画像として捉えることができます。
ところが、画像検査の所見では、認知症と思われるほどにアミロイドβが蓄積しているにもかかわらず、記憶力や判断力を調べる認知機能検査では正常だという人もいます。
この理由については諸説ありますが、それまでの知的活動や教育などによって神経のネットワークが発達していれば、病変のある部分を補って、認知機能の低下を防いでいるとする説があります。
このように、脳のダメージを補う働きは「認知予備能」などと呼ばれています。ですからふだんから記憶力や思考力を維持したり、五感を生かしたりするような生活を送ることは、「アルツハイマー型」や「脳血管型」による病変が起こっても、それを補う「認知予備能」を鍛えておくことになるでしょう。
次回は、「たかが頭痛」と放っておくと危険な理由とは? 首や肩をほぐすだけで変わるケア法 を紹介します。
※本記事は、書籍『100歳まで冴える脳習慣10:1万人を診た脳の名医が実践』より一部抜粋して構成しています。
※効果には個人差があります。試してみて合わない場合はおやめください。
■「50代から始める“冴える脳”の作り方」をもっと読む■
#1:脳老化には“骨盤”! 正しい姿勢と簡単エクササイズ
#2: “血管”を整えて、脳を守る食べ方と暮らし方
#3: 危険な“頭痛”の見極め方と首・肩ストレッチ
もっと詳しく知りたい人は、石川さんの書籍をチェック!

『100歳まで冴える脳習慣10: 1万人を診た脳の名医が実践』(主婦と生活社刊)
記憶力・集中力の低下、もの忘れ、脳卒中リスクに直結する血流・姿勢・食事・眠りなど、生活習慣に紐づく「10の脳習慣」にフォーカス。体験ベースかつ実践可能な内容で、100歳まで冴えた脳と心を育むヒントが満載です。




