50代から始める「冴える脳」の作り方#1
「脳老化」にどうして“骨盤”が大事なの? 正しい姿勢と簡単エクササイズ
「脳老化」にどうして“骨盤”が大事なの? 正しい姿勢と簡単エクササイズ
更新日:2025年11月18日
公開日:2025年11月17日
教えてくれるのは、石川 久(いしかわ・ひさし)さん
脳神経外科医。特に脳腫瘍に関し、検査・診断から、手術、治療法まで、患者の日常生活・社会活動像の構築に最善を尽くす。救急医として、救急医療及び全身管理を専門とし、院内教育や市民講習などでも貢献。著書に『100歳まで冴える脳習慣10:1万人を診た脳の名医が実践』(主婦と生活社刊)など多数。
「最近、物忘れが増えた…」それ、本当に加齢の影響ですか?
「最近、もの忘れがめっきり増えたのですが、私は認知症ではないでしょうか」
このようにおっしゃって来院される患者さんに、私は数多くお会いしてきました。そのような場合、まずは認知機能や画像検査など所定の検査をするのですが、認知症には該当しないこともよくあります。
では、それで安心かというと、そうとはいえません。この状態が進むと、さらに記憶力や判断力など脳の働きが落ちてしまう心配があるからです。私がそんな患者さんに申し上げるのは、「まだまだ間に合いますから、これを機会に脳に良い生活に変えていきましょう」ということです。
脳に異常がないのに「もの忘れ」、特に少し前のことを思い出す「短期記憶力」が衰えるのは、「集中力の低下」が大きく影響していると考えられます。記憶は、目で見たり、耳で聞いたり、さまざまな形で脳にインプットされた情報で作られます。
その印象が強いほど記憶に残りやすいのですが、集中力が低下していると、インプットされる情報量が減ってしまいます。それを私はよく「記憶の網」と例えるのですが、集中力が高まれば、情報を捉える網の目が細かくなり、記憶に残りやすいというわけです。
例えば、「初対面の人の名前を覚えられなくなった」という人も多いですが、集中力が高ければ、その人の服装や会った場所、話した話題などにも注意力が働き、脳に多くの情報がインプットされます。
集中力が続かないのは“脳のせい”じゃない! カギは「骨盤」
では、肝心の集中力を高めるには、どうしたらよいのでしょうか。それはズバリ「脳の血流を良くすること」です。
まず、知っておいていただきたいのは、脳が機能するには、非常に多くの糖と酸素が必要だということです。例えば、空腹になっただけでも頭がぼーっとしてきますよね。そんな脳の命綱である糖と酸素を、脳にせっせと運んでいるのが血液です。
脳には微細な血管網が張りめぐらされていますが、脳を活性化するためには、この血管網全体を使って、脳の隅々まで血液を行き渡らせることが、とても大切なのです。
脳の血流を良くするために、ぜひ意識していただきたいのが「骨盤」です。
骨盤を活性化させることにより、骨盤を支える筋肉の代謝や血流が向上し、その結果、全身の代謝や血流を向上させることは、「もの忘れ」だけでなく、脳のメンテナンス法全般についても、非常に大切な要素になっています。
“脳の老化スイッチ”押してない?血流が悪くなるNG習慣
全身の血流を良くするためには、もちろん、ウォーキングやジョギングなどのいわゆる有酸素運動も良いのですが、なかなか時間がとれない、続かないという人も多いのが現実でしょう。
そこで、私がおすすめしているのは、立ち方、座り方、歩き方など「日常の立ち居ふるまい」を見直して、骨盤を安定させる習慣を付けていただきたいということです。
特に気を付けたいのは、「姿勢が悪い人」。そして、「座りっぱなし」の時間が長い人です。このような人は、日常生活のほとんどの時間を、「脳によくない」状態で過ごすことになってしまうからです。
自分の姿勢が悪いのかどうか、なかなか自覚できないかと思いますが、患者さんや街中で見かける人の中でも多いのは、重心が後ろ気味になり、骨盤が前に出て、背中が丸く、前かがみ気味になっている人。ちょうど、体の前で赤ちゃんを抱っこしたり、重い荷物を持ったりするときのような姿勢です。
このような姿勢が長期に及ぶと、骨盤を支える筋肉が衰えて骨盤が不安定になります。不調を招く悪い姿勢を改善するためには、立つときは骨盤を立てて背筋を伸ばすようにし、座るときは、お尻を後ろに突き出すようにして、下腹部と骨盤を引き締めるように心がけるとよいでしょう。
今日からできる脳活! 歩幅を広げて股関節&血流を整えよう
股関節を大きく動かすことも、血流アップに効果があります。そのためにぜひ実践していただきたいのは、歩くときに、意識して歩幅を広げること。
このときに前かがみの姿勢だと歩幅が伸びないうえ、鼠径部が圧迫されて血流悪化の原因にもなるので、背筋を伸ばして、あごを引き、姿勢よく歩きましょう。
また、肘を後ろにしっかり引くようにふるのもコツ。自然に胸を張るようになるので、心臓や肺が広がり、血液や酸素を十分に供給できるようにもなります。
「座りっぱなし」が脳にNG!? 1時間に1回「骨盤リセット」!
現代日本人が血流を悪化させる、最も気を付けたい悪習慣が「座りっぱなし」です。パソコンに向かうような事務仕事が多いと、免れられない事態ではありますが、このときも骨盤を意識して動かしてください。
できれば、30分、少なくとも1時間ごとに立ち上がって、腰をまわして鼠径部を伸ばすだけでも良いでしょう。仕事中に首や肩をまわす人は多いかと思いますし、もちろんそれも良いのですが、骨盤を動かせば、下半身から脳まで全身の血流を良くすることができます。
1分でできる! 家事や仕事の合間に「骨盤エクササイズ」
■こわばった体を腰からほぐす骨盤まわし

<やり方>
足を肩幅に開き、手を腰にあてて、腰を大きくまわす。後ろだけでなく、前にも腰を大きく突き出して、鼠径部を伸ばすように意識する。
<こんなときに>
デスクワークや家事の合間に、1時間に1回行う。
■かたくなりがちな鼠径部をゆるめる鼠径部伸ばし

<やり方>
正座の姿勢から、手を後ろにつき、手を後ろにずらしながら、上体を少しずつ後ろに倒して、鼠径部を伸ばす。その体勢で5~10秒キープする。※ 無理なく倒せる範囲で。
<こんなときに>
起床時や就寝前に。
イラスト/斉藤ヨーコ
次回の記事では、脳の老化や認知症リスクと深く関係する“血管” に注目。血圧やコレステロール値を整えて、脳を守る食べ方と暮らし方を紹介します。
※本記事は、書籍『100歳まで冴える脳習慣10:1万人を診た脳の名医が実践』より一部抜粋して構成しています。
※効果には個人差があります。試してみて合わない場合はおやめください。
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#1:脳老化には“骨盤”! 正しい姿勢と簡単エクササイズ
#2: “血管”を整えて、脳を守る食べ方と暮らし方
#3: 危険な“頭痛”の見極め方と首・肩ストレッチ
もっと詳しく知りたい人は、石川さんの書籍をチェック!

『100歳まで冴える脳習慣10: 1万人を診た脳の名医が実践』(主婦と生活社刊)
記憶力・集中力の低下、もの忘れ、脳卒中リスクに直結する血流・姿勢・食事・眠りなど、生活習慣に紐づく「10の脳習慣」にフォーカス。体験ベースかつ実践可能な内容で、100歳まで冴えた脳と心を育むヒントが満載です。




