ランジとは?効果・トレーニング方法・よくある質問【医師監修】

ランジとは?効果・トレーニング方法・よくある質問【医師監修】

公開日:2025年10月10日

ランジとは?効果・トレーニング方法・よくある質問【医師監修】

ランジのトレーニングに関心のある50代・60代の女性のみなさんへ。この記事では、日本医師会認定健康スポーツ医の菊池大和先生の監修のもと、ランジで効果的に体を鍛える方法について分かりやすくお伝えいたします。

菊池大和
監修者
菊池大和
監修者 菊池大和 きくち総合診療クリニック

この記事3行まとめ

✓ ランジで体を鍛えることで、若々しい姿勢と歩行能力を維持できます
✓ 50代・60代女性が安全にできる、自宅での効果的なトレーニング方法
✓ トレーニング効果を高めるには、タンパク質の摂取と十分な休息が鍵

ランジとは?

kiyo / PIXTA

「ランジ」という言葉を耳にしたことはありますか?これは、足を一歩前に踏み出し、腰を深く下ろす動作を中心とした、下半身を効果的に鍛えるトレーニングのことです。私たちの体を支え、動かす土台となるのが下半身の筋肉。特に50代・60代になると、この下半身の筋力が少しずつ落ちやすくなり、それが日々の生活のしづらさにつながることも少なくありません。

ランジは、主に以下のような、生きていく上で非常に大切な筋肉を鍛えてくれます。

  • 大臀筋(だいでんきん):お尻にある大きな筋肉です。ここを鍛えることで、ヒップアップ効果が期待できるだけでなく、歩く、立つ、階段を上るといった基本的な動作を力強くサポートしてくれます。
  • 大腿四頭筋(だいたいしとうきん):太ももの前側にある、体の中で最も大きな筋肉の一つです。膝を伸ばす働きがあり、歩行や立ち上がり動作に不可欠です。この筋肉がしっかりしていると、膝への負担が減り、膝痛の予防にもつながります。
  • ハムストリングス:太ももの裏側にある筋肉群です。膝を曲げたり、股関節を後ろに動かしたりする役割を担っています。ここがしなやかで強いと、スムーズな足の運びが実現します。
  • 体幹の筋肉:ランジは片足ずつ行うため、バランスを取ろうとすることで、自然とお腹周りや背中の「体幹」も鍛えられます。体幹が安定すると、姿勢が美しくなり、ふらつきや転倒の予防にもなります。

このように、ランジは単に足を鍛えるだけでなく、私たちの「動く力」そのものを総合的に高めてくれる、とても優れたトレーニングなのです。

ランジのメリット

ランジで体を鍛えることは、50代・60代の私たちにとって、見た目の美しさと健康の両面でたくさんの嬉しい変化をもたらしてくれます。

1. 美しい姿勢と若々しい歩き姿に

お尻や太もも、体幹といった、体を支える中心的な筋肉が鍛えられることで、背筋がすっと伸び、美しい立ち姿を保ちやすくなります。また、一歩一歩をしっかりと踏み出せるようになるため、歩く姿も自然と若々しく、颯爽とした印象になります。

2. ヒップアップで後ろ姿に自信

年齢とともにお尻の形が気になってきた、という方も多いのではないでしょうか。ランジは、お尻の筋肉である大臀筋に直接働きかけるため、ヒップアップに非常に効果的です。キュッと引き締まったヒップラインは、パンツスタイルをより素敵に見せてくれるでしょう。

3. 基礎代謝が上がり、太りにくい体に

下半身には、私たちの体の中でも特に大きな筋肉が集まっています。ランジでこれらの筋肉を鍛えると、筋肉量が増え、何もしなくても消費されるエネルギーである「基礎代謝」が向上します。基礎代謝が上がると、若い頃と同じように食べていても太りにくくなるという、嬉しい効果が期待できます。

4. 日常生活の動作が楽になる

「階段の上り下りがつらくなってきた」「床から立ち上がるのが億劫」と感じることはありませんか?ランジは、まさにこれらの動作で使われる筋肉を直接鍛えるトレーニングです。続けることで、日常生活の中の「ちょっとした大変さ」が軽減され、より活動的に毎日を過ごせるようになります。

5. 転倒予防で、未来の安心を手に入れる

片足でバランスを取る動きは、体の安定性を高め、ふらつきを減らすのに役立ちます。これは、将来の転倒リスクを減らす上で非常に重要です。安心して外出を楽しんだり、趣味に打ち込んだりするためにも、ランジでバランス能力を養っておくことは大きな安心につながります。

統計データ(厚生労働省、スポーツ庁などの調査より)

スポーツ庁の「令和4年度 体力・運動能力調査」によると、日本の成人の体力は、この10年ほど横ばいからやや低下傾向にあります。特に、50代後半から60代にかけては、筋力やバランス能力といった、日常生活を支える基礎的な体力が低下しやすい時期であることが指摘されています。

同調査では、週に1回以上運動・スポーツをする人の割合は、50代女性で50.5%、60代女性で56.9%となっています。多くの方が健康のために運動を意識されている一方で、約半数の方は定期的な運動習慣がないのが現状です。

また、転倒は高齢期における大きな問題ですが、そのリスクは中年期から徐々に高まっていきます。下半身の筋力低下は転倒の大きな原因の一つであり、特に女性は男性に比べて筋力が弱い傾向にあるため、早期からの対策が重要です。

ランジのような、下半身の筋力とバランス能力を同時に鍛えられるトレーニングは、こうした加齢に伴う体力の低下を防ぎ、健康で自立した生活を長く続けるために非常に有効であると言えるでしょう。

下半身の筋力低下が招く心身のトラブル

mits / PIXTA

「最近、何だか体のあちこちが……」「以前はもっと軽やかに動けたのに」。そんなふうに感じることはありませんか? もしかしたら、それはランジで鍛えられるような下半身の筋力が、知らず知らずのうちに衰えてきているサインかもしれません。

ここでは、筋力低下が引き起こす可能性のある心身のトラブルについてご説明します。この記事を読み終える頃には、きっと前向きな気持ちで対策を始められるはずです。

筋力低下が招く身体的な問題

下半身の筋力は、私たちの体を支える「土台」です。この土台が弱くなると、様々な身体的な不調が現れやすくなります。

  • 姿勢の悪化とそれに伴う不調:お尻や体幹の筋力が低下すると、骨盤が後ろに傾きやすくなり、背中が丸まった「猫背」のような姿勢になりがちです。この姿勢は、見た目の印象が老けて見えるだけでなく、肩こりや腰痛の直接的な原因にもなります。
  • 膝や股関節の痛み:太ももの筋肉(大腿四頭筋やハムストリングス)は、膝関節を安定させる重要な役割を担っています。この筋力が低下すると、歩いたり階段を上り下りしたりする際の衝撃が直接関節に伝わり、膝の痛みを引き起こしやすくなります。同様に、股関節周りの筋肉が弱ることも、股関節痛の一因となります。
  • つまずき・転倒のリスク増加:歩くとき、私たちは無意識に足を上げていますが、これも筋力のおかげです。下半身の筋力が衰えると、自分では上げているつもりでも足が十分に上がらず、小さな段差でもつまずきやすくなります。これは、骨折などの大きな怪我につながる危険なサインです。
  • 疲れやすさ・持久力の低下:「少し歩いただけですぐに疲れてしまう」「前はもっと長時間動けたのに」と感じるのは、全身の筋肉量が減り、基礎体力が落ちている証拠かもしれません。特に下半身の大きな筋肉が衰えると、体全体の持久力に大きく影響します。

身体の変化が心に与える影響

体の変化は、私たちの心にも静かに影響を及ぼします。「思うように動けない」という事実は、時に自信を失わせ、気持ちを沈ませてしまうことがあります。

  • 外出が億劫になる:膝や腰の痛み、疲れやすさから、だんだんと外に出るのが面倒になってしまうことがあります。友人との約束や趣味の集まりを断ることが増え、社会的な交流が減ってしまうと、孤独感や寂しさを感じやすくなります。
  • 「老い」への不安:体の衰えを実感することは、「自分も年を取ったな」という事実を突きつけられるようで、漠然とした不安や焦りにつながることがあります。特に、以前は当たり前にできていたことができなくなると、その喪失感は大きいものです。
  • 見た目へのコンプレックス:姿勢が悪くなったり、体型が崩れたりすることで、おしゃれを楽しめなくなったり、人前に出るのが恥ずかしく感じられたりすることもあるでしょう。こうした見た目への自信のなさが、内向的な気持ちを強めてしまうこともあります。

関連する他の不調やトラブル

下半身の筋力低下は、その部分だけの問題にとどまりません。体はすべてつながっているため、一つの不調が他のトラブルを引き起こすこともあります。

  • 血行不良による冷えやむくみ:ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれ、下半身の血液を心臓に送り返すポンプの役割をしています。ランジなどで鍛えられる太ももやふくらはぎの筋力が低下すると、このポンプ機能が弱まり、血行が悪くなります。その結果、足先の冷えや、夕方になると足がパンパンになる「むくみ」といった症状が現れやすくなります。
  • 基礎代謝の低下による生活習慣病リスク:筋肉は、体の中で最も多くのエネルギーを消費する場所です。下半身の大きな筋肉が衰えると、基礎代謝が低下し、同じ食事をしていても脂肪がつきやすくなります。これは、肥満や、それに伴う糖尿病、高血圧といった生活習慣病のリスクを高めることにつながります。

しかし、どうかご安心ください。これらのトラブルの多くは、今からでも適切なトレーニングを始めることで、予防・改善が期待できます。ランジは、そのための非常に有効な第一歩なのです。

トレーニングを始める前の注意点と専門家への相談

sky&sun / PIXTA

安全にトレーニングを始めるために

新しいことを始める時は、いつでも少しの不安と期待が入り混じるものです。特に、自分の体と向き合うトレーニングは、安全第一で進めることが何よりも大切です。

もし、あなたが以下のような状態にある場合は、自己判断でトレーニングを始める前に、必ずかかりつけの医師や整形外科の専門医にご相談ください。

  • 現在、膝や腰、股関節などに痛みがある方
  • 高血圧、心臓病などの持病がある方
  • 骨粗しょう症と診断されている、またはその心配がある方
  • 過去に大きな怪我や手術の経験がある方
  • 体力に全く自信がなく、少し動いただけでも息切れやめまいがする方

医師に相談する際は、「ランジという下半身のトレーニングを始めたいのですが、注意点はありますか?」と具体的に伝えるのがよいでしょう。あなたの体の状態を一番よく知る専門家からのアドバイスは、何よりの安心材料になります。

専門家(パーソナルトレーナーなど)に相談するメリット

「トレーニングジムは若い人が行くところでしょう?」なんて思っていませんか?実は、50代・60代の方にこそ、専門家のサポートは大きな力になります。

  • 正しいフォームが身につき、効果倍増&怪我予防:ランジは簡単な動きに見えますが、膝の向きや背中の角度など、効果を最大限に引き出し、安全に行うためのポイントがいくつかあります。自己流で間違ったフォームを続けてしまうと、効果が出ないばかりか、膝や腰を痛める原因にもなりかねません。専門家は、あなたの体の癖を見抜き、正しいフォームを丁寧に指導してくれます。
  • あなただけの最適なプランを作ってくれる:体力や目標は、一人一人違います。「健康維持が目的なのか」「ヒップアップしたいのか」「ゴルフの飛距離を伸ばしたいのか」など、あなたの希望に合わせて、ランジの種類や回数、他のトレーニングとの組み合わせなど、最適なプランを提案してくれます。
  • 心強い伴走者になってくれる:一人でトレーニングを続けていると、「今日は疲れているから」などと、つい自分に甘くなってしまうこともありますよね。専門家は、あなたの小さな変化や成長を一緒に喜んでくれる、心強いパートナーです。予約をすることで、運動を習慣化しやすくなるというメリットもあります。

良い専門家の見つけ方

では、どうすれば信頼できる専門家に出会えるのでしょうか。いくつかのポイントをご紹介します。

  • 資格情報を確認する:理学療法士や、NSCA-CPT、NESTA-PFTといった、信頼性の高いパーソナルトレーナーの資格を持っているかを確認しましょう。体の構造や機能に関する専門知識を持っている証です。
  • 中高年層への指導経験が豊富か:50代・60代の体の特性を理解し、指導経験が豊富なトレーナーであれば、より安心して任せることができます。ジムのウェブサイトや、体験トレーニングの際に直接質問してみましょう。
  • コミュニケーションの取りやすさ:何でも気軽に質問でき、あなたの話に親身に耳を傾けてくれるかどうかも大切なポイントです。高圧的な態度だったり、専門用語ばかりで説明が分かりにくかったりするようなら、少し考えた方がよいかもしれません。
  • 体験トレーニングを受けてみる:多くのジムでは、比較的安価な料金で体験トレーニングを提供しています。実際に指導を受けてみて、ジムの雰囲気やトレーナーとの相性を確かめてから決めるのがおすすめです。

ランジの具体的なトレーニング方法

トワトワ / PIXTA

トレーニング方針の決定

さあ、いよいよ実践です。でも、やみくもに始めるのは禁物。まずは、あなたが「どうなりたいか」という目的をはっきりさせることが、効果的なトレーニングへの近道です。

例えば、

  • 「まずは健康維持。つまずかない足腰を作りたい」 という方は、器具を使わない自重トレーニングから。週に2回程度、正しいフォームを意識してゆっくり行いましょう。
  • 「パンツスタイルを格好良く着こなしたい。ヒップアップを目指す」 という方は、自重トレーニングに慣れてきたら、回数を少し増やしたり、軽い重りを使ったりしてみましょう。
  • 「もっとアクティブに!趣味の旅行やスポーツを楽しみたい」 という方は、様々な種類のランジに挑戦したり、パーソナルトレーナーの指導のもとで少しずつ負荷を上げていったりするのも良いでしょう。

どんな目的であれ、最初のうちは専門家に見てもらうことを強くお勧めします。一度正しいフォームを身につけてしまえば、それは一生の財産になります。

1. 自重トレーニング

まずは、ご自身の体重を負荷として行う、最も基本的なランジです。自宅で、畳一枚分のスペースがあれば始められます。

【基本のフォワードランジ】

  1. 足を肩幅程度に開いて、背筋を伸ばしてまっすぐ立ちます。手は腰に当てるか、体の横で自然に下ろしておきましょう。視線はまっすぐ前を見ます。
  2. 片足を大きく一歩前に踏み出します。歩幅は、広すぎず狭すぎず、自分が安定して立てる範囲で大丈夫です。
  3. 上体はまっすぐ保ったまま、息を吸いながら、ゆっくりと腰を真下に下ろしていきます。前の足の太ももが床と平行になるくらいが目安です。この時、後ろの足の膝も自然に曲がり、床に近づきますが、床にはつけないようにしましょう。
  4. 前の足のかかとで地面をぐっと押すようなイメージで、息を吐きながら、ゆっくりと元の姿勢に戻ります。
  5. 今度は反対の足を前に出して、同じように繰り返します。

まずは左右それぞれ10回ずつを1セットとして、1日に2〜3セットを目標に始めてみましょう。

よくある間違いと正しいフォーム

×間違い:前の膝がつま先より前に出てしまう。これは最も多い間違いで、膝関節に大きな負担をかけてしまいます。
〇正しいフォーム:腰を「前」に移動させるのではなく、「真下」に下ろす意識を持つことが大切です。踏み出す歩幅が狭すぎても膝が出やすくなるので、調整してみましょう。

×間違い:背中が丸まってしまう。疲れてくると、つい背中が丸まり、前かがみになりがちです。これではお尻や太ももの裏側に効きにくくなります。
〇正しいフォーム:常にお腹に軽く力を入れ、頭のてっぺんから糸で吊られているようなイメージで、背筋を伸ばしたまま行いましょう。

×間違い:体が左右にぐらついてしまう。バランスが取れないと、体が左右に揺れてしまいます。
〇正しいフォーム:足の裏全体でしっかりと床を踏みしめること、そしておへその下に意識を集中させると、体が安定しやすくなります。慣れないうちは、壁や椅子の背もたれに軽く手を添えて行っても構いません。

2. 器具を使ったトレーニング

自重トレーニングに慣れてきて、「もう少し負荷をかけたいな」と感じたら、身近なものを利用してステップアップしてみましょう。

【ペットボトルやダンベルを使ったランジ】

やり方は基本のランジと同じです。500mlの水を入れたペットボトルや、1〜2kg程度の軽いダンベルを両手に持ち、体の横に下げた状態で行います。

  • ポイント:重りを持つと、その重さに振られてフォームが崩れやすくなります。特に、肩に力が入りすぎたり、背中が丸まったりしないように注意しましょう。あくまでも主役は下半身。重りは「少しだけ負荷を足すスパイス」くらいに考え、常に正しいフォームを優先してください。最初から高重量は絶対に禁物です。

よくある間違いと正しいフォーム

×間違い:重さに頼って、勢いで動いてしまう。重りを持つと、その反動を使ってしまいがちです。これでは筋肉に正しく刺激が伝わりません。
〇正しいフォーム:「ゆっくり下ろして、ゆっくり上がる」という、筋肉の動きを意識しながら行うことが、効果を高める秘訣です。

×間違い:自分に合わない重すぎる重りを使う。早く効果を出したいからと焦って重いものを持つと、フォームが崩れるだけでなく、関節を痛める原因になります。
〇正しいフォーム:まずは軽いものから始め、「10回目が少しきついな」と感じるくらいの重さが適切です。

トレーニングの頻度と期間の目安

筋肉は、トレーニングで傷つき、休息する間に修復されて、以前よりも少しだけ強くなる、というサイクル(超回復)を繰り返して成長します。そのため、毎日やるよりも、適度に休息日を設ける方が効果的です。

  • 頻度:週に2〜3回がおすすめです。例えば、「月曜日と木曜日」「火曜日と金曜日」のように、トレーニング日の間に1〜2日、休息日を挟むと良いでしょう。
  • 期間:「効果はいつから現れますか?」というのは、誰もが気になるところですよね。個人差はありますが、一般的には、週2〜3回のトレーニングを続けて2〜3か月ほど経つと、「階段の上り下りが楽になった」「姿勢が良くなったと褒められた」といった、何らかの変化を感じ始める方が多いようです。焦らず、気長に続けることが何よりも大切です。

トレーニング効果を高める生活習慣

kai / PIXTA

1. 食事のポイント(タンパク質など)

トレーニングをがんばっても、体を作る材料が足りなければ、筋肉は育ちません。特に50代・60代は、意識しないとタンパク質の摂取量が不足しがちです。

  • タンパク質を毎食摂りましょう:タンパク質は筋肉の主成分です。肉、魚、卵、大豆製品(豆腐、納豆など)、乳製品(牛乳、ヨーグルトなど)に多く含まれています。一度にたくさん摂るのではなく、朝・昼・晩の3食に分けて、こまめに補給するのが効率的です。例えば、朝食に卵やヨーグルトをプラスする、昼食にサラダチキンを加える、夕食は魚料理を選ぶ、といった工夫をしてみましょう。
  • ビタミン・ミネラルも忘れずに:タンパク質が体内で効率よく使われるためには、ビタミンB群や亜鉛などのミネラルも必要です。これらは、野菜や果物、海藻類に豊富に含まれています。バランスの良い食事を心がけることが、結局はトレーニング効果への一番の近道です。
  • トレーニング後の栄養補給:もし可能であれば、トレーニング後30分〜1時間以内に、タンパク質と少しの糖質(おにぎりやバナナなど)を摂ると、筋肉の回復がスムーズに進むと言われています。牛乳や豆乳を一杯飲むだけでも違いますよ。

2. 休息と回復の重要性

「休むのもトレーニングのうち」という言葉があるように、休息は非常に重要です。

  • 超回復の仕組みを理解する:トレーニングによって筋繊維はわずかに傷つきます。その後、適切な栄養と休息を取ることで、体はその傷を修復し、以前よりも少しだけ太く、強い筋繊維に作り替えます。この仕組みを「超回復」と呼びます。超回復には、一般的に48〜72時間かかると言われています。だからこそ、トレーニングをしない休息日が必要なのです。
  • 質の良い睡眠を心がける:筋肉の修復や成長を促す「成長ホルモン」は、主に睡眠中に分泌されます。特に、眠り始めの深いノンレム睡眠の時に多く分泌されるため、寝る前のスマートフォン操作を控えたり、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かったりして、リラックスした状態で眠りにつく工夫をしましょう。

3. 日常生活で意識するべきこと

週に数回のトレーニング時間だけでなく、日常生活の中での体の使い方も、美しい体づくりには欠かせません。

  • 正しい姿勢を意識する:座っている時、つい背中が丸まっていませんか?立っている時、片足に重心をかけていませんか?気づいた時に、お腹に軽く力を入れて、頭のてっぺんを少し上に引き上げるように意識するだけで、体幹の筋肉が使われ、姿勢が整います。
  • 「ながら」でできることを探す:歯磨きをしながら、かかとの上げ下ろしをしてみる。テレビを見ながら、座ったままで膝を伸ばしてみる。こうした小さな意識の積み重ねが、下半身の筋力維持につながります。
  • 歩き方を見直す:歩くことは、毎日行うトレーニングです。少し大股で、かかとから着地し、親指の付け根で地面を蹴り出すように意識すると、お尻や太ももの裏側の筋肉が効果的に使われます。ショーウィンドウに映る自分の歩く姿を、時々チェックしてみるのも良いかもしれません。

 

よくある質問(FAQ)

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Q1: ランジをすると、どんな効果が一番先に現れますか?

A: 個人差はありますが、多くの方が最初に実感するのは「体の安定感」です。例えば、駅のホームで電車を待っている時にふらつきにくくなったり、階段の上り下りがスムーズになったり、といった変化です。これは、ランジによってバランス能力と体幹が鍛えられるためです。

見た目の変化(ヒップアップなど)には少し時間がかかりますが、こうした日々の動作が楽になることで、トレーニングを続けるモチベーションにもつながりますよ。

Q2: 効果はどれくらいの期間で実感できますか?

A: 一般的には、週に2〜3回の適切なトレーニングを続けて、2〜3か月ほどで何らかの体の変化を感じ始める方が多いです。しかし、これはあくまで目安です。年齢や元々の体力、トレーニングの強度、食事の内容によっても変わってきます。

大切なのは、他人と比較せず、ご自身のペースで焦らずに続けることです。昨日の自分より今日の自分、というように、小さな進歩を楽しんでいきましょう。

Q3: どのくらいの頻度や時間、やればいいですか?

A: 筋肉が成長するためには休息が必要です。そのため、毎日行うよりも、週に2〜3回の頻度がおすすめです。例えば、「月曜と木曜」「火曜と金曜」のように、トレーニングの間に1〜2日間の休息日を設けましょう。

1回のトレーニング時間は、各種目を10回×3セット行うとして、15分〜20分程度で十分です。長時間行うことよりも、正しいフォームで集中して行うことの方がずっと大切です。

Q4: 年齢や体力に自信がなくても安全にできますか?

A: はい、もちろんです。ランジは自分の体重を負荷にするため、体力に合わせて調整しやすい安全なトレーニングです。最初は回数を5回に減らしたり、壁や椅子に手をついてバランスを補助したりしながら行いましょう。

腰を落とす深さも、無理のない範囲で構いません。「少しきついけど、気持ちいい」と感じる程度から始めて、徐々に慣らしていくのが安全に続けるコツです。

Q5: 腰痛や膝痛があるのですが、行っても大丈夫ですか?

A: 腰や膝に痛みがある場合は、自己判断でトレーニングを始めるのは避けるべきです。まずは、かかりつけの医師や整形外科医に「ランジという運動をしたい」と相談し、許可を得てください。専門家の指導のもと、痛みの出ない範囲の動きや、あなたに合った代替トレーニングを教えてもらえる場合もあります。痛みを悪化させては元も子もありませんので、慎重に進めましょう。

Q6: トレーニング中に膝が痛くなるのですが、なぜでしょうか?

A: トレーニング中に膝が痛む場合、最も多い原因はフォームの間違いです。特に、前に踏み出した足の膝が、つま先よりも前に出過ぎている可能性があります。これにより、膝関節に過度な負担がかかってしまいます。腰を「前」ではなく「真下」に下ろす意識を持つこと、そして踏み出す歩幅を少し広めに取ると改善されることが多いです。痛みが続く場合は、無理せず中止し、専門家にフォームを見てもらうことをお勧めします。

Q7: 自重トレーニングと器具を使ったトレーニング、どちらがいいですか?

A: まずは自重トレーニングから始めるのが断然おすすめです。自重で正しいフォームを完璧にマスターすることが、効果を出し、怪我を防ぐための基本だからです。自重でのランジが楽にこなせるようになり、さらなる効果(例えば、より高いヒップアップ効果など)を求めるようになったら、軽いペットボトルやダンベルを使ったトレーニングに移行すると良いでしょう。焦る必要は全くありません。

Q8: ランジでお腹はへこみますか?

A: ランジは主にお尻や足の筋肉を鍛えるトレーニングですが、バランスを取るためにお腹周りの体幹の筋肉も使われるため、ぽっこりお腹の解消にも間接的に効果が期待できます。ただし、お腹の脂肪を直接的に減らす効果は限定的です。お腹周りをすっきりさせたい場合は、ランジに加えて、バランスの取れた食事や、ウォーキングなどの有酸素運動を組み合わせるのが最も効果的です。

Q9: トレーニング効果を高める食事のタイミングはありますか?

A: もし可能であれば、トレーニング後30分〜1時間以内にタンパク質を補給するのが理想的です。この時間は「ゴールデンタイム」とも呼ばれ、トレーニングで刺激された筋肉が栄養を最も吸収しやすい状態にあります。ゆで卵1個や、牛乳・豆乳をコップ1杯飲むだけでも効果的です。ただ、あまり厳密に考えすぎず、まずは毎回の食事でタンパク質をしっかり摂ることを意識するのが良いでしょう。

Q10: 仕事や家事で疲れていると、やる気が起きません…

A: そんな日は無理しなくても大丈夫です。トレーニングは「義務」ではなく、未来の自分のための「投資」です。完璧を目指さず、「今日は左右5回ずつだけやってみよう」「ストレッチだけでもしよう」と、ハードルを下げてみてください。

少しでも体を動かせた自分を褒めてあげましょう。そうして運動する習慣が途切れなければ、またやる気のある日にがんばれますよ。

Q11: 他の人と比べてしまい、自分の成長が遅いように感じます。

A: 体力や骨格、生活習慣は一人一人違いますから、効果の現れ方に差があるのは当然のことです。他人と比べることに意味はありません。比べるべきは、過去の自分です。「1か月前より、ふらつかなくなった」「前より深く腰を落とせるようになった」など、ご自身の小さな成長を見つけて、それを喜ぶことが、楽しく続ける一番の秘訣です。

Q12: プロテインなどのサプリメントは飲んだ方がいいですか?

A: 基本的には、毎日の食事から必要なタンパク質を摂ることが最も大切です。しかし、「食が細くて、どうしても十分な量を食べられない」「手軽に栄養補給したい」という場合には、サプリメントを利用するのも一つの方法です。もし利用するなら、女性向けやシニア向けに作られた、シンプルな成分のプロテインを選ぶと良いでしょう。ただし、あくまで食事の補助として考え、頼りすぎないようにしましょう。

Q13: 毎日やった方が効果がありますか?

A: いいえ、むしろ逆効果になる可能性があります。筋肉は、トレーニングと休息を繰り返すことで成長します(これを超回復と呼びます)。毎日同じ部位を鍛えてしまうと、筋肉が回復する時間がなく、かえって成長を妨げてしまうことがあります。週に2〜3回、トレーニング日と休息日を交互に設けるのが、最も効率的で安全なペースです。

Q14: ウォーキングなどの有酸素運動と、どちらを先にやればいいですか?

A: 目的によって順番は変わりますが、筋力アップや体の引き締めが主な目的であれば、筋トレ(ランジ)を先に行い、その後に有酸素運動(ウォーキングなど)を行うのがおすすめです。先に筋トレを行うことで、成長ホルモンの分泌が促され、その後の有酸素運動での脂肪燃焼効果が高まると言われています。

Q15: 家事をしながら、ついでにできる工夫はありますか?

A: 素晴らしい心がけですね。例えば、掃除機をかける際に、一歩一歩をランジのように大股で踏み込んでみましょう。また、キッチンの高い棚のものを取る時に、つま先立ちになるのではなく、片足を後ろに引いて軽くランジの姿勢になると、お尻に効かせることができます。ただし、無理な体勢は怪我のもとですので、安全な範囲で行ってくださいね。

Q16: トレーニングを続けると、どんな良い未来が待っていますか?

A: トレーニングを続けることで、まず、ご自身の体に自信が持てるようになります。そして、行きたい場所に自分の足で出かけ、やりたいことを存分に楽しめる、活動的で自立した毎日が待っています。数年後の同窓会で、「全然変わらないね!」と驚かれるかもしれません。何より、健康というかけがえのない財産を、ご自身の手で育んでいくことができるのです。

まとめ

リチャード / PIXTA

大切なポイント

  • ランジは、お尻や太ももなど下半身全体を鍛え、若々しい体と動きを保つために非常に重要です。
  • 安全で効果的なトレーニングの鍵は、正しいフォームです。決して無理をせず、自分のペースで始めましょう。
  • トレーニング効果を高めるには、筋肉の材料となるタンパク質をしっかり摂り、十分な休息を取ることが不可欠です。
  • 痛みや不安がある時は、一人で悩まず、医師やトレーナーといった専門家に相談する勇気を持ちましょう。

私たちの体は、手をかければ必ず応えてくれます。今日始める一歩が、10年後、20年後の元気で輝くあなたを作る、何よりの投資です。仲間と一緒に、希望に満ちた未来へ向かって歩き出しましょう。


健康に関するご相談は最寄りのかかりつけ医へ

この記事の健康情報は一般的な内容です。効果には個人差があります。体調の変化に注意しながら取り組んでください。また、運動中に痛みや違和感を感じた場合は、すぐに中止し、必要に応じて医師にご相談ください。

身体活動・運動について詳しく知る(厚生労働省)

 

監修者プロフィール:菊池大和 先生


きくち総合診療クリニック(神奈川県綾瀬市)院長。医療法人ONE理事長。日本慢性期医療協会総合診療認定医。日本医師会認定健康スポーツ医。認知症サポート医。身体障害者福祉法指定医(呼吸器)。「病気を診て、人を診て、一人でも多くの命をやさしく包み込む医療を提供する」を理念に診療にあたる。著書に『「総合診療かかりつけ医」が患者を救う』(2021年)、『「総合診療かかりつけ医」がこれからの日本の医療に必要だと私は考えます。』(2024年)

HALMEK up編集部
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