デッドバグとは?効果・トレーニング方法・よくある質問【医師監修】

デッドバグとは?効果・トレーニング方法・よくある質問【医師監修】

公開日:2025年10月10日

デッドバグとは?効果・トレーニング方法・よくある質問【医師監修】

デッドバグのトレーニングに関心のある50代・60代の女性のみなさんへ。この記事では、日本医師会認定健康スポーツ医の菊池大和先生の監修のもと、デッドバグで効果的に体を鍛える方法について分かりやすくお伝えいたします。

菊池大和
監修者
菊池大和
監修者 菊池大和 きくち総合診療クリニック

この記事3行まとめ

✓ デッドバグは体幹を鍛え、腰痛予防や姿勢改善に繋がります
✓ 50代・60代女性も仰向けで安全にできるトレーニングです
✓ 正しいフォームと呼吸法で効果を高めるのがポイントです

デッドバグとは?

K+K / PIXTA

「デッドバグ」と聞くと、少し面白い名前ですが、実は50代・60代の女性にとって、とても嬉しい効果が期待できる優れたトレーニングなのです。「デッドバグ」は英語で「死んだ虫」という意味で、仰向けになって手足を動かす様子が、ひっくり返った虫のように見えることから名付けられました。

このトレーニングの主役は、お腹周りの深層部にある「インナーマッスル」です。私たちの体を木の幹だとすると、インナーマッスルはその中心を支える、しなやかで力強い芯のような存在。特に、お腹を天然のコルセットのように包み込んでいる「腹横筋」や、背骨の一本一本に寄り添うように支える「多裂筋」といった体幹の筋肉を効果的に鍛えることができます。これらの筋肉は、美しい姿勢を保ったり、腰への負担を減らしたりと、私たちの体を内側から健やかに支える大切な役割を担っています。

デッドバグのメリット

デッドバグで体幹のインナーマッスルを鍛えることには、多くのメリットがあります。それはまるで、体の内側に一本、しっかりとした軸を通すようなものです。

  • ぽっこりお腹の解消:内臓を正しい位置に保つ腹横筋が引き締まり、洋服のシルエットを邪魔していた気になる下腹部がすっきりします。
  • 美しい姿勢づくり:体幹が安定することで、自分では気づきにくい猫背や反り腰が改善され、凛とした若々しい立ち姿に繋がります。
  • 腰痛の予防・改善:天然のコルセットである体幹が強化され、立ち仕事や家事など、日常生活での腰への負担が驚くほど軽くなります。
  • 尿漏れの予防・改善:骨盤の底で内臓を支える「骨盤底筋群」にもアプローチできるため、咳やくしゃみをした時の「ヒヤリ」といった、加齢とともに気になる悩みにも効果が期待できます。
  • つまずき・転倒予防:体の軸が安定し、バランス能力が向上することで、何もないところでつまずいたり、ふらついたりすることが減っていきます。

統計データ(スポーツ庁「令和3年度体力・運動能力調査」より)

スポーツ庁の調査によると、日本の成人女性は、残念ながら20歳頃をピークに体力、特に筋力が低下していく傾向にあります。特に、50代以降はその下降カーブが顕著になります。しかし、これは決して抗えないことではありません。同調査では、定期的な運動習慣のある人は、ない人に比べて明らかに体力の低下が緩やかであることが分かっています。

デッドバグのような自重トレーニングは、特別な準備もいらず、ご自宅で横になるスペースさえあれば手軽に始められます。運動から遠ざかっていた方にとって、再び健やかな体を取り戻すための、理想的な第一歩となるでしょう。

体幹の筋力低下が招く心身のトラブル

KY / PIXTA

「最近、何もないところでつまずきやすくなった」「長時間立っていると腰がつらくて、外出が億劫になる」そんなふうに感じていませんか?それはもしかしたら、体を支える土台である、体幹の筋力が衰えてきているサインかもしれません。デッドバグは、そんな加齢による心身のトラブルを未然に防ぎ、自信に満ちた健やかな毎日をサポートしてくれる、心強い味方です。

筋力低下が招く身体的な問題

体幹の筋力が低下すると、体を支える力が弱まり、まるで芯を失ったコマのように、様々な身体的な不調が現れやすくなります。

  • 姿勢の悪化:背骨を支える力が弱まり、猫背や反り腰が定着しやすくなります。これは見た目の印象を老けさせてしまうだけでなく、慢性的な肩こりや首の痛み、頭痛の原因にもなります。
  • 腰痛:体を支える役割を腰の骨だけに頼ってしまい、腰椎への負担が増え、慢性的な腰痛に悩まされることがあります。「ぎっくり腰」のリスクも高まります。
  • 膝の痛み:体幹が不安定だと、歩行時の地面からの衝撃を膝で直接受け止めてしまい、膝の軟骨がすり減りやすくなるなど、膝痛のリスクが高まります。
  • 疲れやすさ:体を効率的に使えなくなるため、以前は平気だったはずの買い物や階段の上り下りですぐに息が切れたり、疲れを感じたりするようになります。

身体の変化が心に与える影響

思うように体が動かなかったり、体型の変化を感じたりすることは、私たちの気持ちの面にも静かに影を落とします。「好きだった旅行やおしゃれを心から楽しめなくなった」「友人との集まりで、一人だけ疲れているように見られるのが嫌で、だんだん人に会うのが億劫になった」など、活動範囲が狭まったり、気分が落ち込んだりすることもあります。

しかし、ご自身の体と向き合い、トレーニングで自信を取り戻すことで、心も驚くほど前向きに変わっていくことができるのです。

関連する他の不調やトラブル

体幹の衰えは、呼吸の浅さにも繋がることがあります。インナーマッスルは呼吸を助ける役割も担っており、ここが硬くなると、深くゆったりとした呼吸がしにくくなるのです。

呼吸が浅いと、自律神経が乱れやすくなり、何となくやる気が出ない、夜中に何度も目が覚める、いつも不安感があるといった、原因のわからない心身の不調に繋がることもあります。

トレーニングを始める前の注意点と専門家への相談

enra / PIXTA

安全にトレーニングを始めるために

デッドバグは比較的安全なトレーニングですが、腰や股関節に強い痛みがある方、あるいは高血圧や心臓に持病がある方は、始める前に必ずかかりつけの医師に相談しましょう。「これくらいなら大丈夫」と自己判断せず、専門家のアドバイスを受けることが、安全に、そして効果的に運動を続けるための何より大切な第一歩です。

専門家(パーソナルトレーナーなど)に相談するメリット

自己流のトレーニングは、知らず知らずのうちに間違ったフォームで行ってしまい、効果が出ないばかりか、かえって体を痛めてしまうリスクも潜んでいます。特に初めのうちは、パーソナルトレーナーなど専門家の指導を受けるのがおすすめです。

正しいフォームを丁寧に教えてもらえるだけでなく、ご自身の体力やその日の体調、そして「こうなりたい」という目標に合わせたプログラムを組んでもらえます。何より、時に励まし、時に的確なアドバイスをくれる専門家の存在は、トレーニングを継続する上で大きな支えとなるでしょう。

良い専門家の見つけ方

信頼できる専門家を見つけるには、資格の有無(理学療法士、健康運動指導士、NSCA-CPTなど)を確認したり、体験セッションを受けてみたりするのが良いでしょう。その際、ご自身の悩みや目標を親身に聞いてくれるか、専門用語ばかりでなく分かりやすい言葉で説明してくれるか、といった相性も大切です。

また、50代以上の女性への指導経験が豊富なトレーナーを選ぶと、より安心して相談できます。地域のフィットネスクラブや、自治体が開催する介護予防教室などで探してみるのも一つの方法です。

デッドバグの具体的なトレーニング方法

mw / PIXTA

トレーニング方針の決定

まずは、ご自身の目的をはっきりさせましょう。「腰痛を予防したい」「お腹周りを引き締めたい」「もっと元気に歩きたい」など、目的によって意識するポイントも変わってきます。初めは無理せず、「1日5分から」など、ご自身が「これならできそう」と思える、続けやすい目標を立てることが大切です。慣れてきたら、少しずつ回数やセット数を増やしていきましょう。

1. 初心者向け(まずはここから)

いきなり手足を同時に動かすのが難しいと感じる方は、まずはこちらから試してみましょう。焦る必要はありません。ご自身の体と対話しながら、丁寧に行うことが上達への一番の近道です。

レベル1:脚だけを動かす

  1. 基本姿勢(仰向けで膝を90度に曲げ、腕は天井へ)をとります。
  2. 息を吐きながら、片方の足のかかとを、ゆっくりと床にタッチさせます。
  3. 息を吸いながら、ゆっくりと元の位置に戻します。
  4. 反対の脚も同様に行います。腰が反らないように、常にお腹に力を入れておくのがポイントです。

レベル2:手だけを動かす

  1. 基本姿勢をとります。
  2. 息を吐きながら、片方の腕を、ゆっくりと頭の先に下ろしていきます。
  3. 息を吸いながら、ゆっくりと元の位置に戻します。
  4. 反対の腕も同様に行います。腕の重みで肋骨が開いたり、腰が反ったりしないように注意しましょう。

2. 基本のデッドバグ

初心者向けの動きに慣れてきたら、いよいよ基本のデッドバグに挑戦です。

  1. 準備:仰向けに寝て、膝を90度に曲げて脚を持ち上げます。すねが床と平行になるように意識しましょう。両腕は天井に向かってまっすぐ伸ばします。
  2. 腰の位置を確認:この時、腰と床の間に隙間ができないように、おへそを背骨に近づけるように意識して、お腹に軽く力を入れます。これが基本姿勢です。
  3. 動作:息をゆっくり吐きながら、対角線になるように「右腕」と「左脚」を、床につかないギリギリの位置までゆっくりと下ろしていきます。
  4. 戻す:息を吸いながら、下ろした手足をゆっくりと基本姿勢に戻します。
  5. 繰り返す:今度は反対側に、「左腕」と「右脚」を同様に動かします。これを1回として、繰り返します。

よくある間違いと正しいフォーム

×間違い:腰が反ってしまう。
〇正しいフォーム:常にお腹に力を入れ、腰と床の隙間を埋める意識を持ちましょう。動作中に腰が浮く場合は、手足を下ろす範囲を狭くして調整します。

×間違い:呼吸を止めてしまう。
〇正しいフォーム:呼吸と動きを連動させましょう。「吐きながら下ろし、吸いながら戻す」のが基本です。

×間違い:動きが速すぎる。
〇正しいフォーム:インナーマッスルを意識するためには、ゆっくりとしたコントロールされた動きが重要です。一つ一つの動作を丁寧に行いましょう。

3. 上級者向け(慣れてきたら挑戦)

基本の動きでは物足りなくなってきたら、少し工夫して負荷を高めてみましょう。体に新しい刺激を与えることで、トレーニング効果がさらに高まります。

バリエーション1:器具を使ったトレーニング

  • ペットボトルや軽いダンベルを持つ:両手に500mlのペットボトルや1kg程度の軽いダンベルを持って行うと、肩周りの安定性も同時に鍛えられます。
  • 足首にアンクルウェイトをつける:足首に軽いウェイトをつけて行うと、下腹部への刺激が強まります。
  • レジスタンスバンドを使う:両足にトレーニング用のゴムバンドを引っ掛けて行うと、脚を元の位置に戻す時にも負荷がかかり、効果が高まります。

バリエーション2:バランスボールを使う

  • 手と膝でボールを挟む:基本姿勢で、両手と両膝の間にバランスボールを挟んでみましょう。ボールを落とさないように内ももとお腹に力を入れ続ける必要があり、体幹への刺激が格段にアップします。その状態で、基本のデッドバグを行います。

よくある間違いと正しいフォーム

×間違い:重すぎる器具を使う。
〇正しいフォーム:初めはごく軽いものから試しましょう。重すぎるとフォームが崩れ、腰を痛める原因になります。あくまでも正しいフォームを維持できる範囲の重さを選びましょう。

トレーニングの頻度と期間の目安

まずは週に3回、左右10回ずつを1セットとして、2〜3セット行うことを目標にしてみましょう。筋肉痛がなければ毎日行っても構いませんが、無理は禁物です。

効果を実感できるまでの期間には個人差がありますが、一般的には1〜2か月続けると、「姿勢が良くなった」「体が動かしやすくなった」といった変化を感じ始める方が多いようです。大切なのは、焦らずに自分のペースで継続することです。

トレーニング効果を高める生活習慣

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1. 食事のポイント(タンパク質など)

筋肉はタンパク質から作られています。せっかくトレーニングをしても、材料が不足していては効果も半減してしまいます。毎日の食事に、鶏むね肉や魚、卵、豆腐などの大豆製品、ヨーグルトといったタンパク質を意識して取り入れましょう。

特に、運動後は傷ついた筋肉が回復しようとするゴールデンタイム。30分以内にタンパク質を補給すると効果的だと言われています。また、骨の健康を支えるカルシウムやその吸収を助けるビタミンDも、50代以降の女性には欠かせない栄養素です。

2. 休息と回復の重要性

筋肉は、トレーニングで傷つき、休息中に回復する過程で強くなります。これを「超回復」と呼びます。トレーニングと同じくらい、体をしっかり休ませることが大切です。痛みや強い疲労を感じる日は無理せず休み、質の良い睡眠を十分にとることを心がけましょう。寝る前にスマートフォンを見るのをやめ、部屋を暗くしてリラックスできる環境を整えるだけでも、睡眠の質は大きく変わります。

3. 日常生活で意識するべきこと

日常生活の中でも、デッドバグで鍛えている体幹を意識することで、効果を高めることができます。

  • 座っている時:椅子の背もたれに寄りかからず、骨盤を立てて、お腹を薄く保つように座る。
  • 歩いている時:頭のてっぺんから一本の糸で真上に吊られているようなイメージで、すっと背筋を伸ばして歩く。
  • 物を持つ時:つい腕の力だけで持ち上げがちですが、膝を曲げて腰を落とし、お腹に「キュッ」と力を入れてから持ち上げる癖をつけましょう。

これらの小さな意識が、24時間体制のトレーニングに繋がります。

よくある質問(FAQ)

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Q1: デッドバグは毎日やってもいいですか?

A: はい、デッドバグは比較的負荷の低いトレーニングなので、筋肉痛がひどくなければ毎日行っても問題ありません。ただし、一番大切なのは継続することです。無理に毎日行うよりも、「1日おき」など、ご自身が続けやすいペースを見つけるのがおすすめです。

Q2: 効果はどれくらいで実感できますか?

A: 個人差はありますが、週に2〜3回のペースで1か月ほど続けると、姿勢が良くなったり、体の軸が安定してきたりといった感覚的な変化を感じ始める方が多いです。見た目の変化や腰痛の改善などをはっきりと実感するには、3か月以上継続することを目安にすると良いでしょう。焦らず、気長に取り組むことが大切です。

Q3: トレーニング中に腰が痛くなってしまいます。

A: 腰が痛くなる主な原因は、動作中に腰が反ってしまっていることです。仰向けになったとき、腰と床の間に手のひら一枚分以上の隙間が空いている場合は、お腹の力が抜けて腰が反っているサインです。おへそを床に近づけるように意識し、腹筋に力を入れて腰の隙間を埋めるようにしましょう。それでも痛む場合は、手足を下ろす範囲を狭くするか、一旦中止して専門家にフォームを確認してもらうことをお勧めします。

Q4: 呼吸のタイミングがよく分かりません。

A: 呼吸は「手足を下ろす時に吐き、元の位置に戻す時に吸う」のが基本です。鼻からゆっくり息を吸い、口から細く長く息を吐き切るように意識すると、腹筋に力が入りやすくなります。初めは難しく感じるかもしれませんが、繰り返すうちに自然とできるようになります。まずは呼吸を止めないことだけを意識してみましょう。

Q5: ぽっこりお腹に本当に効きますか?

A: はい、効果が期待できます。ぽっこりお腹の原因の一つは、お腹のインナーマッスルである「腹横筋」が衰えて、内臓を支えきれなくなることです。デッドバグは、この腹横筋を直接鍛えることができるため、内臓を正しい位置に戻し、お腹周りを引き締めるのに非常に効果的です。

Q6: 他の腹筋運動(上体起こしなど)と何が違いますか?

A: 上体起こし(クランチ)などが主に表面の「腹直筋」を鍛えるのに対し、デッドバグはより深層にある「腹横筋」や「腹斜筋」といったインナーマッスルを重点的に鍛えます。また、デッドバグは首や腰への負担が少ないため、体力に自信がない方や腰痛が心配な方でも安全に取り組みやすいという大きなメリットがあります。

Q7: もっと負荷を上げたい場合はどうすればいいですか?

A: まずは、手足をよりゆっくり動かし、筋肉を意識することから始めてみましょう。それに慣れたら、両手両脚を同時に動かしてみたり、手首や足首に軽いウェイトをつけたり、手にペットボトルやダンベルを持ったりすると、負荷を高めることができます。ただし、フォームが崩れないことが大前提です。

Q8: 膝や股関節が痛いのですが、行っても大丈夫ですか?

A: 痛みが強い場合や、変形性関節症などの診断を受けている場合は、自己判断で行わず、必ずかかりつけの医師や理学療法士に相談してください。痛みのない範囲で手だけを動かす、脚の曲げ伸ばしの角度を浅くするなど、動きを調整することで可能な場合もありますが、専門家の指導のもとで安全に行うことが重要です。

Q9: トレーニングの後にストレッチは必要ですか?

A: はい、ぜひ行いましょう。トレーニング後は、使った筋肉が緊張しています。お腹周りや股関節、太ももの前側などを中心に、気持ちよく感じる範囲でゆっくりとストレッチをすることで、筋肉の回復を助け、柔軟性を高める効果があります。

Q10: モチベーションが続きません。どうすればいいですか?

A: 「完璧にやろう」と思いつめないことが大切です。「今日は5回だけ」「テレビを見ながらやってみよう」など、ハードルを下げてみましょう。また、カレンダーにシールを貼る、ご自身の体の変化をメモに記録するなど、がんばりを可視化するのもおすすめです。小さな成功体験を積み重ねることが、継続の力になります。

Q11: プロテインは飲んだ方がいいですか?

A: 必ずしも飲む必要はありません。まずは、毎日の食事からタンパク質をしっかり摂ることを基本に考えましょう。もし、食事だけでは不足しがちな場合や、より手軽に栄養補給をしたい場合には、補助的にプロテインを活用するのも一つの方法です。その際は、女性向けのものや、添加物の少ないシンプルな製品を選ぶと良いでしょう。

Q12: 他におすすめの体幹トレーニングはありますか?

A: デッドバグと合わせて行うと効果的なトレーニングとして、「プランク」や「バードドッグ」があります。プランクはうつ伏せで体を一直線に保つトレーニング、バードドッグは四つん這いで対角の手足を伸ばすトレーニングです。どちらも体幹を鍛えるのに効果的ですが、まずはデッドバグでインナーマッスルを意識できるようになってから挑戦するのがおすすめです。

Q13: 尿漏れにも効果がありますか?

A: はい、効果が期待できます。デッドバグでお腹に力を入れる際、骨盤の底にある「骨盤底筋群」も連動して使われます。この筋肉を鍛えることは、尿漏れの予防・改善に直接繋がります。動作中に、尿道をきゅっと締めるような意識を加えてみると、より効果的です。

Q14: 肩こりにも効きますか?

A: 間接的に効果が期待できます。デッドバグで体幹が安定し、姿勢が改善されると、頭の重さを正しく支えられるようになり、首や肩にかかる負担が軽減されます。また、腕を動かす動作は、肩甲骨周りの筋肉を動かすことにも繋がり、肩周りの血行促進にも役立ちます。

Q15: どの時間帯に行うのが最も効果的ですか?

A: 基本的に、どの時間帯に行っても効果に大きな差はありません。大切なのは、ご自身の生活リズムの中で習慣化しやすい時間を見つけることです。例えば、「朝起きてすぐ」「夜寝る前に布団の上で」など、決まった時間に行うと忘れにくくなります。ただし、食後すぐは消化のために胃腸に血液が集まっているので、1時間ほど時間を空けてから行うようにしましょう。

Q16: 将来、自分の足で歩き続けるために役立ちますか?

A: はい、非常に役立ちます。歩行は、片足で体を支える瞬間の連続です。デッドバグで体幹を鍛えて体の軸を安定させることは、歩行時のふらつきを防ぎ、転倒リスクを減らすことに直結します。生涯にわたって自分の足で好きな場所へ出かけるための、大切な「貯筋」だと考えて、ぜひ続けてみてください。

Q17: トレーニング用のマットは必要ですか?

A: 必ずしも必要ではありませんが、あるとより快適にトレーニングができます。特にフローリングなど硬い床の上で行うと、背中や尾てい骨が痛くなることがあります。ヨガマットや厚手のバスタオルなどを敷くことで、体の負担を和らげ、トレーニングに集中しやすくなります。

Q18: どんな服装で行うのが良いですか?

A: 動きを妨げない、伸縮性のある服装がおすすめです。体を締め付けすぎないTシャツやスウェット、ジャージなどが良いでしょう。手足の動きを確認しやすいように、体にフィットする服装を選ぶのも一つの方法です。

Q19: ウエストは何センチくらい細くなりますか?

A: 残念ながら、「何センチ細くなる」と断言することはできません。効果には、元の体型や筋肉量、トレーニングの頻度、食生活など多くの要因が関わるため、個人差が非常に大きいのです。しかし、継続することでインナーマッスルが引き締まり、多くの方がウエスト周りのすっきり感を実感されています。数字の変化よりも、まずは見た目や着心地の変化を楽しみに続けてみてください。

Q20: 高血圧や糖尿病でもできますか?

A: デッドバグは比較的穏やかな運動ですが、高血圧や糖尿病などの持病をお持ちの方は、必ず事前にかかりつけの医師に相談し、運動の許可を得てから行ってください。運動の強度や頻度について、医師から具体的なアドバイスをもらうことが安全に続けるための鍵となります。

Q21: 更年期症状の緩和にも繋がりますか?

A: 直接的な治療にはなりませんが、良い影響が期待できます。デッドバグのような穏やかな運動は、自律神経のバランスを整えるのに役立ちます。自律神経の乱れは、ほてりやイライラといった更年期症状の一因とも言われています。深い呼吸を意識しながら行うことで、心身のリフレッシュに繋がり、症状の緩和が期待できるでしょう。

Q22: 家族や友人と一緒にできますか?

A: はい、ぜひご一緒にどうぞ。デッドバグは特別な器具も広いスペースも必要としないので、ご家族やご友人と一緒に楽しむのにぴったりです。お互いにフォームをチェックし合ったり、励まし合ったりすることで、一人で行うよりも楽しく続けられるかもしれません。

Q23: ジムのマシンで体幹を鍛えるのとどう違いますか?

A: ジムのマシンは特定の筋肉に高い負荷をかけて鍛えるのには非常に効果的です。一方、デッドバグのような自重トレーニングは、複数の筋肉の連動性や、動きをコントロールする神経系の働きを高めるのに優れています。どちらが良いというわけではなく、それぞれに良さがあります。日常生活の動きをスムーズにしたい、体の内側から整えたいという目的であれば、デッドバグは非常に適したトレーニングと言えます。

Q24: 朝と夜、どちらに行うのがおすすめですか?

A: 朝に行うと、体幹のスイッチが入り、その日一日を良い姿勢で過ごしやすくなるというメリットがあります。一方、夜に行うと、深い呼吸によって副交感神経が優位になり、リラックスして質の良い睡眠に繋がりやすくなるというメリットがあります。ご自身の目的やライフスタイルに合わせて、心地よいと感じる時間帯を選んでみてください。

Q25: うまくできているか不安です。

A: 初めは誰でも不安に感じるものです。一番大切なのは「腰を反らさない」ことです。もし不安であれば、スマートフォンのカメラでご自身の動きを撮影してみるのがおすすめです。客観的にフォームを見ることで、改善点が見つかりやすくなります。また、最初は手足を下ろす範囲を狭くして、「これなら余裕」と感じる範囲から始めてみましょう。完璧を目指さず、続けることを第一に考えてくださいね。

まとめ

Ushico / PIXTA

大切なポイント

  • デッドバグは、腰痛予防や姿勢改善に繋がる体幹のインナーマッスルを安全に鍛えられます。
  • 「腰を反らさない」「呼吸を止めない」「ゆっくり動かす」という正しいフォームが何より重要です。
  • トレーニング効果を高めるには、タンパク質を意識した食事と、十分な休息が欠かせません。
  • 痛みがある場合は無理せず、かかりつけ医や専門家に相談しましょう。

年齢を重ねても、私たちの体には、まだまだ変われる力が眠っています。デッドバグは、そんな眠っている体の中心を目覚めさせるスイッチのようなものです。仰向けになって、ゆっくりと手足を動かすだけの、誰にでもできる小さな一歩。その一歩が、明日のあなたを少しだけ軽やかに、そして健やかにしてくれるはずです。自分のペースで、未来の自分のために、今日の5分を始めてみませんか。


健康に関するご相談は最寄りのかかりつけ医へ

この記事の健康情報は一般的な内容です。効果には個人差があります。体調の変化に注意しながら取り組んでください。また、運動中に痛みや違和感を感じた場合は、すぐに中止し、必要に応じて医師にご相談ください。

身体活動・運動について詳しく知る(厚生労働省)


 

監修者プロフィール:菊池大和 先生


きくち総合診療クリニック(神奈川県綾瀬市)院長。医療法人ONE理事長。日本慢性期医療協会総合診療認定医。日本医師会認定健康スポーツ医。認知症サポート医。身体障害者福祉法指定医(呼吸器)。「病気を診て、人を診て、一人でも多くの命をやさしく包み込む医療を提供する」を理念に診療にあたる。著書に『「総合診療かかりつけ医」が患者を救う』(2021年)、『「総合診療かかりつけ医」がこれからの日本の医療に必要だと私は考えます。』(2024年)

HALMEK up編集部
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