ヒップスラストで体を鍛えるには?効果・トレーニング方法・よくある質問【医師監修】
ヒップスラストで体を鍛えるには?効果・トレーニング方法・よくある質問【医師監修】
公開日:2025年09月30日
この記事3行まとめ
✓ ヒップスラストはお尻の筋肉を集中的に鍛え、美しいヒップラインと安定した歩行を支えます。
✓ 50代・60代の女性でも、正しいフォームを意識すれば自宅で安全にトレーニングを始められます。
✓ 効果を高めるには、トレーニング後のたんぱく質摂取と十分な休息がとても大切です。
ヒップスラストとは?
「ヒップスラスト」と聞くと、若い人やアスリートが行う本格的な筋トレというイメージをお持ちかもしれませんね。でも実は、50代60代の女性にこそ、ぜひ知っていただきたいトレーニングなのです。
ヒップスラストは、主にお尻にある「大臀筋(だいでんきん)」というとても大きな筋肉を鍛える運動です。大臀筋は、私たちが立ったり、歩いたり、階段を上ったりする時に体を支え、前に進むための重要な役割を担っています。
また、太ももの裏側にある「ハムストリングス」や、正しい姿勢を保つために欠かせない「体幹」の筋肉も同時に使われます。
年齢とともに、お尻の形が気になったり、歩くときに少し不安定さを感じたりすることはありませんか?それは、この大臀筋が少しずつ衰えているサインかもしれません。ヒップスラストは、そんな大臀筋を集中的に、そして安全に鍛えることができる、とても優れたトレーニングなのです。
ヒップスラストのメリット
ヒップスラストで大臀筋を鍛えることには、私たちの暮らしをより豊かにしてくれる、たくさんのうれしいメリットがあります。
- 美しいヒップラインを保つ キュッと上がった若々しいヒップラインは、いくつになっても憧れですよね。大臀筋を鍛えることで、重力に負けないハリのあるお尻を保ち、後ろ姿に自信が持てるようになります。
- 姿勢が良くなり、立ち姿が美しくなる 大臀筋は骨盤を支える重要な筋肉です。ここが衰えると骨盤が傾き、猫背やぽっこりお腹の原因に。ヒップスラストで鍛えることで、骨盤が正しい位置に安定し、背筋がすっと伸びた美しい立ち姿をサポートします。
- 腰への負担を減らし、腰痛予防に 意外に思われるかもしれませんが、お尻の筋力低下は腰痛の大きな原因の一つです。股関節の動きをサポートする大臀筋がしっかり働くことで、日常の動作で腰にかかる負担が軽減され、つらい腰痛の予防・改善につながります。
- 歩行が安定し、つまずきにくくなる 歩く、走る、階段を上る。これらの基本的な動作はすべて大臀筋の力を使っています。この筋肉を鍛えることで、一歩一歩が力強くなり、歩行が安定します。つまずきや転倒のリスクを減らし、いつまでも自分の足で元気に歩き続けるための「貯筋」にもなるのです。
- 基礎代謝が上がり、太りにくい体に 大臀筋は体の中でも特に大きな筋肉です。大きな筋肉を鍛えると、何もしなくても消費されるエネルギー(基礎代謝)が効率よくアップします。つまり、ヒップスラストを続けることで、自然と太りにくく、すっきりとした体を維持しやすくなるのです。
厚生労働省の「国民健康・栄養調査(令和元年)」によると、60代女性の約34%、70歳以上の女性の約40%が運動習慣(1回30分以上の運動を週2回以上、1年以上継続)があると回答しています。これは他の年代と比較しても高い水準であり、健康への意識の高さがうかがえます。
しかし、同調査では、年齢とともに筋力が低下する「サルコペニア」のリスクも指摘されています。特に下半身の筋力は、私たちの活動的な生活を支える土台です。
ヒップスラストのような筋力トレーニングを習慣に加えることは、すでにお持ちの運動習慣をさらに効果的なものにし、加齢による筋力低下を防ぎ、健康寿命を延ばすための賢い選択と言えるでしょう。
筋力低下が招く心身のトラブル
「最近、お尻の形が崩れてきた気がする」「何だか歩き方が頼りなくなったかも」。そんなふうに感じたことはありませんか? それは、単なる年齢のせいと片付けてしまうには、少しもったいないサインかもしれません。
ヒップスラストで鍛えられるお尻の筋肉の衰えは、私たちが思っている以上に、心と体にさまざまな影響を及ぼすことがあるのです。この記事を読んで、原因を知り、正しく対処すれば、きっと今の不安は解消できますよ。
筋力低下が招く身体的な問題
お尻の筋肉、特に大臀筋は、体を支える「土台」のような存在です。この土台が弱くなると、さまざまな身体的な不調が現れやすくなります。
- 姿勢の悪化とぽっこりお腹:大臀筋が衰えると骨盤を正しく支えられなくなり、後ろに傾きがちになります(骨盤後傾)。すると、バランスを取ろうとして背中が丸まり、猫背になったり、下腹がぽっこりと出て見えたりします。
- 腰痛や膝痛:お尻の筋肉がうまく使えないと、歩いたり立ち上がったりする動作の負担が、代わりに腰や膝に集中してしまいます。これが、慢性的な腰痛や膝の痛みを引き起こす原因になるのです。
- 歩行の不安定さと転倒リスク:地面を蹴り出して体を前に進める力が弱くなるため、歩幅が狭くなったり、すり足気味になったりします。ちょっとした段差でつまずきやすくなり、転倒して大きな怪我につながる危険性も高まります。
- 尿漏れ:大臀筋は、骨盤の底で内臓を支える「骨盤底筋群」とも連動しています。お尻の筋力低下は、骨盤底筋群のゆるみにもつながり、咳やくしゃみをした時の尿漏れの一因となることがあります。
体の変化が心に与える影響
体の変化は、私たちの心にも静かに影を落とすことがあります。以前は軽やかに履きこなしていたパンツのラインがしっくりこない。鏡に映る自分の後ろ姿に、がっかりしてしまう。そんな些細なことが、知らず知らずのうちに自信を失わせ、おしゃれをしたり、人と会ったりすることへの積極的な気持ちを削いでしまうかもしれません。
また、「前のように動けない」という身体的な衰えは、「もう若くないんだ」というネガティブな感情につながりやすく、気分が落ち込んだり、新しいことに挑戦する意欲が湧きにくくなったりすることもあります。
関連する他の不調やトラブル
お尻の筋力低下は、全身のバランスの崩れにつながります。例えば、股関節の動きが悪くなることで、膝や足首に余計な負担がかかり、痛みの原因になることがあります。また、血流のポンプ役でもある下半身の筋肉が衰えることで、全身の血行が悪化し、足の冷えやむくみ、肩こりなどを招きやすくなることも考えられます。
トレーニングを始める前の注意点と専門家への相談
安全にトレーニングを始めるために
ヒップスラストは非常に効果的なトレーニングですが、安全に行うことが何よりも大切です。特に、以下に当てはまる方は、自己判断でトレーニングを始める前に、かかりつけの医師や理学療法士に相談しましょう。
- 現在、腰痛や股関節、膝に痛みがある方
- 過去にヘルニアやぎっくり腰を経験したことがある方
- 骨粗鬆症と診断されている方
- 高血圧や心臓に持病がある方
専門家は、あなたの体の状態を正しく評価し、トレーニングを行っても問題ないか、もし行う場合はどのような点に注意すべきかを的確にアドバイスしてくれます。
専門家(パーソナルトレーナーなど)に相談するメリット
「筋トレなんて自己流で十分」と思われるかもしれませんが、特に初めのうちは専門家の指導を受けることを強くお勧めします。
- 正しいフォームが身につく:間違ったフォームは、効果が出ないばかりか、腰などを痛める原因になります。専門家は、あなたの骨格や体力に合わせて、最も安全で効果的なフォームを丁寧に教えてくれます。
- 自分に合った負荷がわかる:どのくらいの重さで、何回くらい行えば良いのか、自分一人ではなかなかわかりにくいものです。専門家がいれば、無理なく、かつ効果的なトレーニング計画を立ててもらえます。
- モチベーションが続く:一人ではくじけてしまいそうな時も、励ましてくれるパートナーがいると頑張れるものです。定期的に成果をチェックしてもらうことで、成長を実感でき、楽しくトレーニングを続けられます。
良い専門家の見つけ方
信頼できる専門家を見つけることは、効果的なトレーニングへの第一歩です。
- 資格を確認する:理学療法士、健康運動指導士、NSCA-CPTなどの公的な資格を持っているかを確認しましょう。
- 経験や専門分野を聞く:特に、中高年層の指導経験が豊富なトレーナーは、私たちの体の特性をよく理解しており、安心して任せることができます。
- 体験セッションを利用する:多くのジムやパーソナルトレーナーが、体験セッションを提供しています。実際に指導を受けてみて、人柄や相性、説明の分かりやすさなどを確認するのがおすすめです。
- 地域のフィットネスクラブや公共施設:お住まいの地域のフィットネスクラブや、自治体が運営するスポーツセンターなどでも、資格を持ったトレーナーによる指導を受けられる場合があります。
ヒップスラストの具体的なトレーニング方法
トレーニング方針の決定
まずは、あなたが「どうなりたいか」を考えてみましょう。「キュッと上がったお尻を目指したい」「腰痛を予防して、元気に旅行を楽しみたい」「とにかく健康維持が目的」など、目的によって最適なトレーニングの進め方は少しずつ異なります。
とはいえ、初めから難しく考える必要はありません。まずは基本となる「自重トレーニング」で正しいフォームを完璧にマスターすることから始めましょう。慣れてきたら、少しずつ負荷を加えていくのが、安全で確実な道です。特に最初のうちは、専門家に見てもらうと安心ですね。
1. 自重トレーニング
器具を使わず、ご自身の体重を負荷にして行うトレーニングです。自宅のリビングなど、少しのスペースがあればすぐに始められます。
【基本のヒップスラスト】
- 準備:床に仰向けになります。膝を90度くらいに曲げ、足の裏はべったりと床につけましょう。足の幅は、肩幅か、それより少し広いくらいが目安です。腕は体の横に置き、手のひらを床につけて体を安定させます。
- お尻を上げる:息をゆっくり吐きながら、かかとで床を押すようなイメージで、お尻をぐっと持ち上げます。この時、膝・腰・肩が一直線になるまで上げるのがポイントです。上がりきったところで、お尻の筋肉がキュッと硬くなっているのを感じましょう。
- キープ:体が一直線になった状態で、2〜3秒静止します。お尻の穴を締めるような意識を持つと、より効果的です。
- お尻を下ろす:息を吸いながら、ゆっくりと元の姿勢に戻ります。お尻が床に完全につく直前で止め、繰り返すとさらに効果が高まります。
【回数の目安】
まずは10回を1セットとして、1日に2〜3セット行うことから始めてみましょう。楽にできるようになったら、回数を15回、20回と増やしていきます。
よくある間違いと正しいフォーム
- 間違い1:腰を反らしすぎる お尻を高く上げようとしすぎて、腰をぐっと反らせてしまう方がいます。これは腰を痛める最大の原因です。お尻ではなく腰に力が入っている感覚があったら、上げすぎのサイン。必ず「膝・腰・肩が一直線」を意識してください。
- 間違い2:かかとが浮いてしまう つま先に力が入ってかかとが浮くと、お尻ではなく太ももの前に効いてしまいます。動作中は常にかかとで床を力強く押すことを意識しましょう。
- 間違い3:動作が速すぎる 反動を使って速い動作で行うと、筋肉にしっかり負荷がかかりません。「ゆっくり上げて、ゆっくり下ろす」を徹底することが、効果への一番の近道です。
2. 器具を使ったトレーニング
自重トレーニングに慣れて、物足りなさを感じてきたら、少しだけ負荷を足してみましょう。ご自宅にあるものや、簡単な器具で十分効果を高めることができます。
【ダンベルやペットボトルを使ったヒップスラスト】
やり方は自重トレーニングと同じです。お尻を上げる際に、股関節の上(骨盤の少し下あたり)に、水を入れたペットボトルや、軽いダンベル(1〜2kgから)を乗せてみましょう。これだけで、お尻への刺激がぐっと増します。
【トレーニングチューブを使ったヒップスラスト】
両方の太ももに、輪っか状のトレーニングチューブを通します(膝の少し上あたり)。チューブの張力に負けないように、膝が内側に入らないように意識しながら、自重トレーニングと同じ動作を行います。膝を常に外側に開く意識を持つことで、お尻の横側にある「中臀筋」も同時に鍛えられ、より丸みのある美しいヒップラインにつながります。
よくある間違いと正しいフォーム
- 間違い1:いきなり重すぎる負荷をかける 早く効果を出したいからと、焦って重いものを使うのは禁物です。まずは軽い負荷から始め、正しいフォームを維持できる範囲で、少しずつ重さを増やしていきましょう。
- 間違い2:膝が内側に入ってしまう(チューブ使用時) チューブの張力に負けて膝が内側に入ると、膝を痛める原因になります。常につま先と膝が同じ方向を向くように意識し、膝を外に開く力を保ちながら行いましょう。
トレーニングの頻度と期間の目安
筋肉は、トレーニングで傷つき、休息する間に修復されて、以前より少しだけ強くなります。これを「超回復」と呼びます。このサイクルを考えると、ヒップスラストのような筋力トレーニングは、毎日行うよりも、2〜3日に1回程度のペースで行うのが最も効果的です。
効果を実感できるまでの期間には個人差がありますが、一般的には、週に2〜3回のトレーニングを2〜3か月続けると、「お尻に力が入る感覚がわかってきた」「姿勢が良くなった気がする」といった変化を感じ始める方が多いようです。焦らず、ご自身のペースで続けることが何よりも大切です。
トレーニング効果を高める生活習慣
1. 食事のポイント(タンパク質など)
トレーニングで傷ついた筋肉が修復され、強く生まれ変わるためには、その材料となる栄養素が不可欠です。特に重要なのが「タンパク質」です。
- タンパク質を意識して摂る:お肉、お魚、卵、大豆製品(豆腐、納豆など)、乳製品(牛乳、ヨーグルトなど)に多く含まれています。毎回の食事で、手のひら1枚分くらいの量のタンパク質を摂ることを目標にしましょう。
- トレーニング後のゴールデンタイム:トレーニング後30分〜1時間以内は、体が最も栄養を吸収しやすい「ゴールデンタイム」と言われています。この時間に、牛乳やヨーグルト、豆乳などを一杯飲むだけでも、筋肉の回復を助け、効果を高めてくれます。
- バランスの良い食事を心がける:タンパク質だけでなく、ビタミンやミネラルも筋肉の働きを助ける大切な栄養素です。特定のものばかり食べるのではなく、お野菜や果物、海藻なども含めて、彩り豊かな食事を心がけましょう。
2. 休息と回復の重要性
「休むこともトレーニングのうち」という言葉があるように、休息はトレーニングと同じくらい重要です。
- トレーニングの間隔を空ける:前述の通り、筋肉が回復・成長するためには時間が必要です。ヒップスラストを行ったら、次のトレーニングまで最低でも1日はお休みの日(休息日)を設けましょう。
- 質の良い睡眠をとる:筋肉の修復や成長を促す「成長ホルモン」は、私たちが眠っている間に最も多く分泌されます。特に、夜10時から深夜2時の間がピークと言われています。なるべく日付が変わる前にはお布団に入れると理想的ですね。寝る前にスマートフォンを見るのを控えたり、温かいお風呂にゆっくり浸かったりして、リラックスした状態で眠りにつく工夫も大切です。
3. 日常生活で意識するべきこと
トレーニングの時間だけでなく、普段の生活の中で少し意識を変えるだけでも、お尻の筋肉を「目覚めさせる」ことができます。
- 「かかと重心」で立つ:立っている時、つま先側に体重が乗っていませんか?少しだけかかと側に体重を乗せるように意識すると、自然とお尻に力が入り、正しい姿勢を保ちやすくなります。
- 階段を一段飛ばしで上る(無理のない範囲で):駅やデパートの階段を使う際、もし余裕があれば、一段飛ばしで上ってみましょう。股関節が大きく動き、お尻の筋肉を効果的に使うことができます。もちろん、手すりを持って安全第一で行ってくださいね。
- 椅子から立つ時にお尻を意識:椅子から立ち上がる時、太ももの力だけで「よっこいしょ」と立っていませんか?お尻をキュッと締めながら、かかとで床を押して立ち上がるように意識するだけで、立派なトレーニングになります。
よくある質問(FAQ)
Q1: ヒップスラストは、具体的にどんな効果があるのですか?
A: ヒップスラストは、主にお尻の筋肉(大臀筋)を集中的に鍛えるトレーニングです。
主な効果として、(1)ヒップアップによる美しい後ろ姿、(2)骨盤が安定することによる姿勢の改善、(3)腰への負担軽減、(4)歩行の安定化による転倒予防、(5)大きな筋肉を鍛えることによる基礎代謝の向上が期待できます。
50代・60代の私たちが、これからも若々しく、元気に活動していくための土台作りになる、とても優れたトレーニングですよ。
Q2: どれくらいの期間続ければ、効果を実感できますか?
A: 効果を実感できるまでの期間には、もともとの筋力やトレーニングの頻度、食事内容などによって個人差があります。ですが、一般的には、週に2〜3回のペースで2〜3か月ほど続けると、「お尻に力が入りやすくなった」「歩くのが楽になった」「姿勢が良くなったと言われた」など、何らかの良い変化を感じ始める方が多いようです。
焦らず、ご自身の体の声を聞きながら、気長に続けていくことが大切です。
Q3: どのくらいの頻度や時間で行うのが良いですか?
A: 筋肉の回復と成長のため、毎日は行わず、「2〜3日に1回」のペースが最も効果的です。トレーニング時間は、初めのうちは1セット10回を2〜3セットから始め、合計で10分〜15分もあれば十分です。
大切なのは時間の長さよりも、一回一回の動作を、正しいフォームで丁寧に行うことです。
Q4: 体力に自信がないのですが、安全にできますか?
A: もちろんです。ヒップスラストは、仰向けで行うため、立ったまま行うスクワットなどに比べて足腰への負担が少なく、体力に自信がない方でも安全に始めやすいトレーニングです。
まずは器具を使わない「自重トレーニング」から、少ない回数で試してみてください。少しでも痛みや違和感があれば無理せず休み、正しいフォームを動画などで確認することから始めましょう。
Q5: 腰痛持ちなのですが、やっても大丈夫でしょうか?
A: お尻の筋肉を鍛えることは、長期的には腰痛の改善につながる可能性が高いです。しかし、現在痛みがある場合や、ヘルニアなどの診断を受けている場合は、自己判断で行うのは危険です。
必ず事前にかかりつけの医師や理学療法士に相談し、許可を得てから、専門家の指導のもとで始めるようにしてください。間違ったフォームは、かえって腰痛を悪化させる原因になります。
Q6: トレーニング中に腰や膝が痛くなります。
A: トレーニング中に痛みを感じる場合は、フォームが間違っている可能性が高いです。腰が痛むのは、お尻を高く上げようとして腰を反らしすぎていることが主な原因です。
膝が痛む場合は、つま先と膝の向きがずれていたり、膝が内側に入ってしまったりしていることが考えられます。すぐにトレーニングを中止し、まずは「よくある間違いと正しいフォーム」の項目をもう一度読み返し、鏡の前で動きを確認してみてください。
Q7: 自重トレーニングと、器具を使ったトレーニングはどちらが良いですか?
A: まずは「自重トレーニング」で、正しいフォームを完璧に身につけることを最優先してください。自重でも、回数や動作の速度を調整すれば十分に効果はあります。
15回〜20回が楽にこなせるようになり、物足りなさを感じてきたら、軽いペットボトルやトレーニングチューブなどを使って、少しずつ負荷を足していくのが良いでしょう。焦りは禁物です。
Q8: ぽっこりお腹にも効きますか?
A: はい、効果が期待できます。ヒップスラストでお尻の筋肉を鍛えると、衰えていた骨盤を正しい位置で支えることができるようになります。骨盤の傾きが改善されると、前に突き出ていた下腹がすっきりと引っ込みやすくなります。
また、体幹も同時に鍛えられるため、お腹周りの引き締めにもつながります。
Q9: トレーニング効果を高める食事のコツはありますか?
A: 筋肉の材料となる「タンパク質」をしっかり摂ることが重要です。お肉、お魚、卵、大豆製品などを毎食取り入れることを意識しましょう。
特に、トレーニング後30分〜1時間以内は、体が栄養を吸収しやすい「ゴールデンタイム」です。この時間に牛乳や豆乳、ヨーグルトなどを摂ると、筋肉の回復が促され、より効果的です。
Q10: なかなかモチベーションが続きません。
A: そんな時は、目標を小さく設定し直してみましょう。「週に2回必ずやる」ではなく、「まずは今日、5回だけやってみる」というように、ハードルをぐっと下げてみてください。
また、好きな音楽を聴きながら行ったり、カレンダーにシールを貼ったりするのも良い方法です。小さな「できた!」を積み重ねることが、長く続ける一番の秘訣ですよ。
Q11: 他の人と比べてしまい、落ち込んでしまいます。
A: 私たちの体は、長年連れ添ってきた大切なパートナーです。若い頃とは違って、変化には少し時間がかかります。他人と比べるのではなく、「昨日の自分より1回多くできた」「先週よりフォームがきれいになった」という、ご自身の小さな成長に目を向けて、褒めてあげてくださいね。
Q12: プロテインなどのサプリメントは飲んだ方が良いですか?
A: 必ずしも飲む必要はありません。まずは、毎日の食事からバランス良くタンパク質を摂ることを基本に考えましょう。もし、食事だけではタンパク質が不足しがちな場合や、トレーニング後すぐに食事が摂れない場合などに、補助として利用するのは良い方法です。利用する際は、女性向けやシニア向けのものを選ぶと良いでしょう。
Q13: 毎日やらないと、効果はなくなってしまいますか?
A: いいえ、そんなことはありません。筋肉は、休んでいる間に成長します。そのため、毎日やるよりも、2〜3日に1回のペースの方が効果的です。
もし旅行などで数日間トレーニングができなかったとしても、それまで積み重ねたものがゼロになるわけではありません。また再開すれば、体はきちんと応えてくれます。焦らず、ご自身のライフスタイルに合わせて続けていきましょう。
Q14: ウォーキングなどの有酸素運動と、どちらを先にやれば良いですか?
A: もし同日に行うのであれば、ヒップスラストのような「筋トレ」を先に行い、その後にウォーキングなどの「有酸素運動」を行うのがおすすめです。
先に筋トレを行うことで、成長ホルモンの分泌が促され、その後の有酸素運動での脂肪燃焼効果が高まると言われています。
Q15: 家事をしながら、ついでにできるトレーニングはありますか?
A: 例えば、シンクの前に立つ時に、少しかかとを浮かせてお尻にキュッと力を入れるのを繰り返すだけでも効果があります。また、床のものを拾う時に、膝を曲げて腰を落とす「スクワット」の動作を意識すると、お尻と太ももを鍛えられます。
日常生活の「ついで」をトレーニングに変える意識が、体を変える大きな一歩になります。
Q16: このトレーニングを続けると、将来どんな良いことがありますか?
A: ヒップスラストを続けることは、未来の自分への最高の贈り物になります。筋力が維持されることで、何歳になっても自分の足で好きな場所へ出かけ、旅行や趣味を存分に楽しむことができます。
転倒による寝たきりのリスクを減らし、健康寿命を延ばすことにも直結します。そして何より、自信を持って生き生きと毎日を過ごす、心と体の健康につながるのです。
まとめ
大切なポイント
- ヒップスラストは、見た目の美しさだけでなく、立つ・歩くといった基本的な動作を支える重要なトレーニングです。
- 安全に行うことが第一。痛みを感じたら無理せず休み、正しいフォームを身につけることを最優先しましょう。
- トレーニングと同じくらい、タンパク質を意識した食事と、質の良い休息が効果を高める鍵となります。
- 困ったとき、不安なときは、一人で悩まずに医師やトレーナーなどの専門家に相談する勇気を持ちましょう。
一日たったの10分。鏡の前で、自分のためだけに時間を使う。それは、誰のためでもない、あなた自身への愛情表現です。焦らなくていい。完璧じゃなくていい。「昨日の私より、ちょっといい感じ」。その小さな喜びを、一緒に積み重ねていきませんか。
健康に関するご相談は最寄りのかかりつけ医へ
この記事の健康情報は一般的な内容です。効果には個人差があります。体調の変化に注意しながら取り組んでください。また、運動中に痛みや違和感を感じた場合は、すぐに中止し、必要に応じて医師にご相談ください。
監修者プロフィール:樋口 直彦 先生

医療法人藍整会 なか整形外科 理事長。なか整形外科 京都西院リハビリテーションクリニック 院長。
帝京大学医学部卒業後、大学病院や複数の医療機関で整形外科医として研鑽を積み、院長を歴任。2020年10月より、医療法人藍整会なか整形外科の理事長を務める。骨折治療・関節外科・スポーツ整形外科を専門とし、アスリートから地域住民まで幅広い世代の診療にあたっている。バレーボールSVリーグ「サントリーサンバーズ大阪」のチームドクターとしても活動し、トップアスリートの治療経験を日常診療にも活かしている。また、ICTを積極的に導入し、「お待たせしない診療」を実現。安心して通える医療環境づくりと、地域に根ざした質の高い医療提供を信条としている。




