今日から実践!専門医が教える栄養学テクニック#1

甘いものでストレス解消は逆効果?もやもやが晴れない食生活「3つの間違い」

甘いものでストレス解消は逆効果?もやもやが晴れない食生活「3つの間違い」

更新日:2025年11月07日

公開日:2025年09月08日

甘いものでストレス解消は逆効果?もやもやが晴れない食生活「3つの間違い」

仕事や人間関係のイライラ、もやもや……甘いもので解消していませんか? 実は逆効果かも。栄養学の専門家が教える、ストレスを和らげる食生活の3つの間違いと改善法をわかりやすく解説します。

教えてくれるのは、牧田 善二(まきた・ぜんじ)さん

教えてくれるのは、牧田 善二(まきた・ぜんじ)さん

AGE牧田クリニック院長。糖尿病専門医。医学博士。AGEの研究を約5年間行い、血中AGEの測定法を世界で初めて開発。2003年より、生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座で開業。雑誌、テレビにも出演多数。最新著に『すぐに実践したくなる すごく使える栄養学テクニック』(日本実業出版社刊)

※本記事は、書籍『すぐに実践したくなる すごく使える栄養学テクニック』より一部抜粋して構成しています。

間違い1:イライラしたら甘いものでストレス解消

間違い1:イライラしたら甘いものでストレス解消
Ushico / PIXTA

糖質過多の食生活をしていると、糖質が切れるとイライラしてきます。「ストレス解消」のために、お腹が空いていなくてもお菓子に手を伸ばしてしまうことがあるかもしれません。

ただし、ここで糖質を摂取し、一瞬だけイライラが落ち着いて気分が良くなることを「ストレス解消」だと思っていると、そのループから抜け出せなくなってしまいます。

やけ食い、ドカ食いなど、短絡的な食べる行為でストレス解消を図るのはNGです。食べてストレス解消するのではなく、ストレスに対抗できる物質を食事で補いましょう。

ストレスの感受性には、神経伝達物質であるセロトニンが大きく関わっています。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、それが少なくなると、不安感や焦燥感から、ストレスを感じやすくなります。

また、セロトニンは、快眠ホルモンであるメラトニンを作り出して、睡眠の質を上げてくれます。セロトニンが不足すれば、ぐっすり眠ることができず、ストレスが解消できません。睡眠もストレス軽減に重要だというわけです。

日本人が不足しやすい「幸せホルモン」はどう増やす?

日本人が不足しやすい「幸せホルモン」はどう増やす?
ymart / PIXTA

このように、重要な物質でありながら、日本人の多くは体質的にセロトニンを保ちにくい傾向があることがわかっています。

そこで、セロトニンの材料となる「トリプトファン」を多く含む食材を積極的に摂って、セロトニンを増やしましょう。牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品や、豆腐、納豆などの大豆製品、卵、バナナにトリプトファンが多いことがわかっています。

また、GABAという物質には、ストレス軽減、睡眠の質向上、血圧低下などの効果があります。GABAは米ぬかなどに多く、食材からはなかなか摂りにくいのですが、この成分を含んだチョコレートや粉末サプリメントで補うと良いでしょう。

その他、ポリフェノール、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE、カルシウム、マグネシウムもストレス軽減に役立ちます。ストレスに対抗するためにも野菜をたっぷり摂ることで、そうした栄養素を切らさないようにしましょう。 

間違い2:仕事に集中したい!糖分摂取で脳にエネルギーチャージ!

間違い2:仕事に集中したい!糖分摂取で脳にエネルギーチャージ!
UYORI / PIXTA

仕事や勉強のおともとして、キャンディやチョコレートなどの甘いもので糖質を補充することで「頭の疲れ」をやわらげて、リフレッシュしようとする人も多いでしょう。

ただ、医学的な観点からすると、それは誤りです。

脳はエネルギー源としてブドウ糖を使います。だから、「(文字通り)エネルギーをつけるために糖質を摂取して、脳を動かす」という理屈自体は成り立ちます。

多くの人が「甘いものを摂れば脳はよく動くようになるし、疲れもやわらぐ」と思い込んでいるのかもしれません。 

でも、実際にはブドウ糖がなくなっても、脂肪が分解して作られる「ケトン体」という物質をエネルギー源として使うことができます。要するに、「ブドウ糖が足りなくなっても、頭が働かない」ということは起きないのです。

もし、「甘いものを摂らないと頭が働かない」という人がいるなら、その人は普段から甘いものを摂りすぎて糖質中毒に陥っているだけです。中毒だから、甘いものがないとイライラして、頭が働かなくなっているのです。

頭を働かせるために用意した甘いものが中毒を作り、さらに甘いものを欲しがってしまう負のスパイラルに陥らないためにも、「仕事や勉強のおともには、甘いお菓子が必要不可欠」という思い込みをなくしましょう。

間違い3:チョコレートも含め、甘いものは全部避ける! 

間違い3:チョコレートも含め、甘いものは全部避ける! 
プラナ / PIXTA

「糖分=避けるべきもの」と伝えたため、「糖分を含んでいるチョコレートは避けるべき」と思わせてしまったかもしれません。

でも実は、選び方さえ間違えなければ、チョコレートは健康に貢献してくれる食べ物なのです。

チョコレートの原料であるカカオ豆には、優れた抗酸化物質であるカカオポリフェノールがふんだんに含まれています。

私たちが呼吸で取り込む酸素が必要以上に反応しやすくなった「活性酸素」は、体を酸化させる悪い作用を持ちます。体が酸化すると、病気や老化の原因になります。

カカオポリフェノールは活性酸素を抑え、疲労回復、精神の安定、脳機能の活性化、動脈硬化の予防、高血圧リスクの低減、善玉コレステロールの増加などをもたらすのです。また、カカオには、マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛など、健康維持に必須のミネラルも豊富です。

ただし、こうした健康効果を期待するには、カカオ成分が高く、砂糖が少ないチョコレートを摂取することが大事です。つまり、ビターなタイプに限るということです。

甘みたっぷりのものを食べていたら、カカオポリフェノールの効果を手にする以前に太ってしまいますから。私が推奨するのは、砂糖が少なくてカカオ成分が80%以上のチョコレートを1日25gくらい、数回に分けて食べることです。

ちなみに、ホワイトチョコレートはチョコレートとは別物だと考えましょう。ホワイトチョコレートにはカカオバターが含まれますが、ポリフェノールやミネラルの含有量は格段に少なくなります。つまり、体にとってホワイトチョコレートは、「あまり食べる意味がないもの」です。

次回の記事では、「健康リスクを減らす食生活のヒント」を紹介していきます。

※本記事は、書籍『すぐに実践したくなる すごく使える栄養学テクニック』より一部抜粋して構成しています。
※HALMEK upの人気記事を再編集したものです。


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#1:甘いものでストレス解消は逆効果?「3つの間違い」
#2:「健康リスク」を減らす食生活のヒント
#3:本当に「健康にいい食品」「効果のない食品」

もっと詳しく知りたい人は、牧田さんの書籍をチェック!

「健康に良い」と信じて実践していることが、実は健康に良くなかったり、なんとなく習慣化していることが健康を損なう結果につながっていたりします。健康の悩みを解決するには「栄養学の正しい知識」が必要。「最新の医療データ」を統合した栄養学をもとに健康になるための食事の習慣を77のテクニックで紹介します。

HALMEK up編集部
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