体が硬いと血管も硬い?ストレッチで血管が若返る理由

動脈硬化をストレッチで改善・予防!やり方とポイント

加藤大也
監修者
たいや内科クリニック
加藤大也

公開日:2024.03.13

動脈硬化の改善・予防にストレッチが効果的であることが近年わかってきています。ストレッチが血管を強くする理由や、体の柔軟性と血管の硬さの関連について詳しく解説。高血圧や冷え性予防にも効く手軽なストレッチを取り入れて、強くしなやかな血管に!

動脈硬化とは

動脈硬化とは

動脈硬化とは、血管の内壁に脂肪やコレステロールなどが蓄積し、血管が硬くなり狭窄する状態を示します。老化だけでなく、様々な生活習慣が影響します。

血管が硬くなり、内側に悪玉コレステロールなどがたまるとコブ(プラーク)や血栓ができ、血液の流れが悪くなって詰まりやすい状態になります。

若く健康的な血管は弾力や柔軟性があり、しなやかです。しかし年齢を重ねていくと動脈硬化が進行して、健康な人でも血管は硬くなります。しかしこれらは老化だけでなく、不健康な食事や運動不足、遺伝的要因などによっても影響を受けます。

生活習慣の影響による動脈硬化は、不適切な食生活、運動不足、喫煙、高血圧、高血糖、高脂血症などが原因で進行することが知られています。

動脈硬化は心臓や脳など、体中のどの部分にも起こる可能性がありますが、初期には自覚症状が少ないことが多いので注意が必要です。大切なことは生活習慣を改善することで、動脈硬化のリスクを減らすことが重要です。

厚生労働省が公表した『令和4年(2022) 人口動態統計月報年計(概数)の概況』によれば、令和4年の日本人の死因は1位が「悪性新生物(腫瘍)」、2位が「心疾患(高血圧性を除く)」となっており、心疾患はがんに続く死因となっています。

動脈硬化は、心疾患や脳血管疾患など命にかかわる重大な病気の原因となることがあるため、注意が必要です。

体が硬いと、血管も硬い!

体が硬いと、血管も硬い!

動脈硬化には初期症状がほぼないため、自覚症状が見られるようになったときには、すでに動脈硬化がかなり進んでしまっているということも少なくありません。

しかし近年、さまざまな研究結果から「体の硬さ」と「血管の硬さ」には深い関連があることがわかってきました。

立命館大学スポーツ健康科学部の家光素行教授らが行った研究では、体が硬い人と柔らかい人に分けて、動脈硬化度を測定。すると、中年者や高齢者では、体が柔らかい人に比べて、硬い人の方が「baPWV(脈波伝播速度)」が高いという結果が出ました。

baPWV(脈波伝播速度)とは、心臓から押し出された血液によって生じた拍動(脈)が伝わる速度を図る方法です。動脈硬化の検査でも使われ、これにより「血管の硬さ」がわかります。硬いほど脈が速く伝わり、数値が高くなります。

また、体の柔軟性が低いと加齢に伴う動脈硬化が進みやすいこと、柔軟性が10cm増えると血管年齢が約9歳若返る可能性も示唆されています。

簡単!体の柔軟性をセルフチェック

体の柔軟性をチェックする方法はいくつかありますが、ここでは簡単にできる「前屈テスト」を紹介します。

  1. 真っすぐ立つ
  2. 膝を伸ばしたまま前屈し、地面に手を伸ばす
  3. このとき、無理なく指先が地面につけばOK

指が地面まで届かない場合は、体が硬くなっている証拠です。足の甲にも触れられない場合、かなり体が硬くなってしまっているでしょう。

運動不足や、デスクワークなどで長時間同じ姿勢を取ることが多いと、筋肉を動かすことが少なくなり体が硬くなりやすいです。

子どもの頃は柔らかかったが、大人になって体が硬くなってしまったという人も多くみられます。

動脈硬化の改善・予防にストレッチが効果的な理由

動脈硬化の改善・予防にストレッチが効果的な理由

なぜ、ストレッチに動脈硬化の改善効果があるのでしょうか?

ストレッチをすると、筋肉と一緒に血管が伸ばされ、やや「うっ血」したような状態になって、血流量が少し減ります。ストレッチをやめるとそれが開放されて、血流が急激に増加します。

血管の一番内側には「内皮細胞」と呼ばれる細胞があり、血液が流れる物理的な刺激を受けると、血管を拡張し、しなやかにする「血管拡張物質(一酸化窒素:NO)」を産生します。

ストレッチによる刺激が繰り返されることで血管拡張物質が分泌され、動脈硬化度の低下につながっているのではないかと考えられています。

また、じっくりと筋肉や関節を伸ばす「静的ストレッチ」に副交感神経を活発にする働きがあることも、理由の一つとして考えられるでしょう。副交感神経が優位になると血管が柔らかくなり、拡張します。

動脈硬化の改善・予防のためのストレッチ・マッサージ

動脈硬化の改善・予防のためのストレッチ・マッサージ

ここからは、動脈硬化の改善・予防におすすめのストレッチやマッサージを紹介します。

どれも時間がかからず、手軽にできるものばかりなので、ぜひ日々の生活に取り入れてみましょう。

血管のばしストレッチ

血管のばしストレッチは、血管を柔らかくするための5種類のストレッチです。1つにつき30秒を左右2回ずつ行い、ストレッチの間には30秒ほどインターバルを挟みましょう。

1セット10分ほどで終わるので、毎日続けやすいストレッチです。朝と夜の2回を毎日、少なくとも4週間続けましょう。

【1:膝の裏のストレッチ】

  1. 立って、片足を前に伸ばして出す
  2. 前に出した方の膝に両手を添えて、しっかり体重をかけ前膝の裏を伸ばす

【2:足の付け根のストレッチ】

  1. 正座をして、両手を前につく
  2. 片足を後ろに伸ばし、目線を前に向け、背筋を真っすぐ伸ばしたまま足の付け根を伸ばす

【3:太ももの前側のストレッチ】

  1. 両足を伸ばして座り、両手を後ろにつく
  2. 片足を後ろに曲げ、目線を前に向けて太ももの前側を伸ばす

【4:ふくらはぎのストレッチ】

  1. 正座の状態から片膝を立てる
  2. 立てた方の膝に両手を添え、前の方にしっかり体重をかけてふくらはぎを伸ばす

【5:お尻のストレッチ】

  1. 仰向けに横になる
  2. 片足を抱えて、お尻を伸ばす。このとき、頭は上げないようにする

かかとの上げ下げストレッチ

運動不足は高血圧につながります。血圧が高い状態が続くと、動脈の壁に負担がかかり、動脈硬化が進行してしまうことに。

かかとの上げ下げストレッチは、血行改善に効果的なストレッチです。下半身の血液を心臓まで送り出すポンプの役割を担っている、ふくらはぎの筋肉を刺激できます。

  1. 楽な姿勢で立ち、軽く足を開く
  2. 両足でつま先立ちになり、下ろす
  3. これを10回1セットにして、朝晩2回を目安に行う

寝たまま足首曲げ伸ばしストレッチ

つま先立ちが難しい人は、寝たままできるストレッチがおすすめです。寝る前や朝起きたときに行うと手軽に習慣化できます。

  1. 仰向けになった状態で、両足のつま先を伸ばす
  2. つま先をゆっくりと上に引き上げる
  3. これを10回1セットにして、朝晩2回を目安に行う

ふくらはぎのマッサージ

ストレッチと合わせて、ふくらはぎのマッサージを行うのもおすすめです。筋肉がリラックスして柔軟性が高まり、血行が良くなる効果もあります。

  1. いすに座ったまま片足を反対の足に乗せて足を組む
  2. アキレス腱から膝裏に向かって、両手で軽く揉みほぐしていく
  3. 片足を30秒マッサージし、反対も同じように行う。1日1〜2回ほど行う

動脈硬化改善・予防のストレッチのポイントと注意点

動脈硬化改善・予防のストレッチのポイントと注意点

動脈硬化の改善・予防のためのストレッチには、いくつかのポイントがあります。ポイントを押さえて、効果的なストレッチを行いましょう。

呼吸を止めずに行う

ストレッチの効果を発揮するためには、いつも通り呼吸しながら行うことが大切です。

ストレッチ中に無意識に呼吸を止めてしまう人もいるため、慣れないうちはしっかり呼吸することを意識して、ゆっくりストレッチしましょう。

また、ストレッチのときは伸ばす血管の部分を意識しながら、20〜30秒ほどその姿勢を維持することもポイントです。

ストレッチの間のインターバルを取る

動脈硬化度を下げるためには、ストレッチの間のインターバル(休息)が大切であることが研究でわかっています。

5秒ほどの短いインターバルでは効果が少なくなってしまうため、ストレッチとストレッチの間は10〜20秒ほどの休息を入れ、間隔をあけながらストレッチすることが大切です。

毎日継続する

10種類のストレッチを合計40分行った研究では、60分後には数値が戻るものの、15分後と30分後にはbaPWVの数値が改善していました。

1回のストレッチだけでは効果は長続きしなかったものの、1回30分・週5日の全身ストレッチ運動や、1回15分・週7日の全身ストレッチ運動でもbaPWVが低下したという結果が報告されています。

ストレッチをすると血行も改善でき、冷え性にも効果的です。また、ケガや転倒防止などストレッチのメリットは多くあります。

体に大きな負担もかからないため、有酸素運動が苦手な人でも取り入れやすいでしょう。

無理をしない

痛みがある場合は、無理にストレッチを行わないことも大切です。柔軟性を高めるためにはある程度筋肉を伸ばす必要がありますが、無理に伸ばすと筋肉に負担に大きな負担をかけてしまいます。

ストレッチのときは強い痛みを感じるほど無理に伸ばさず、「いた気持ちいい」くらいを目安にするといいでしょう。

また、関節痛がある人や整形外科的な疾患がある人は自己判断で行わず、かかりつけ医に相談してから行うことが大切です。

動脈硬化対策に!ストレッチと合わせて食事も改善しよう

動脈硬化の改善や予防には、ストレッチなどの運動だけでなく、食事も非常に大切です。

以下の「血管年齢を若返らせる食事の5つのポイント」を意識して、体の内側からも動脈硬化対策を行いましょう。

  1. 調理油はリノール酸の多い植物油を避ける
  2. パンや菓子類に含まれる植物油脂、マーガリン、ショートニングを避ける
  3. 魚料理を週2回、もしくは刺身を毎日食べる
  4. 肉類は脂身を避け、赤身を選ぶ
  5. 卵はゆで卵や生卵で食べる

ストレッチを続けて動脈硬化を改善・予防!

近年、体の柔軟性と動脈硬化度には関連があることがわかってきました。体の柔軟性が低いと加齢に伴う動脈硬化が促進するという示唆もあり、しなやかで強い血管のためにも、ストレッチを取り入れるのがおすすめです。

動脈硬化の改善効果が高いといわれる運動はジョギングやサイクリングといった有酸素運動ですが、忙しくて続けられない人や、体の負担から有酸素運動が難しい人もいます。

ストレッチはそんな人も体に負担をかけず、手軽に行えることが特徴です。柔軟性も向上し、ケガや転倒防止にもなるというメリットもあります。

ぜひこの機会に、ストレッチを始めてみてはいかがでしょうか。

※効果には個人差があります。試してみて異変を感じる場合はおやめください。

監修者プロフィール:加藤大也さん

加藤大也さん

たいや内科クリニック院長。1997年、藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)卒業後、同大学院医学研究科内分泌・代謝内科学修了。2003年4月から同大学医学部内分泌・代謝内科助手を務める。2010年5月、JA愛知厚生連豊田厚生病院内分泌代謝科病棟部長などを経て2022年5月、たいや内科クリニックを開院。藤田医科大学医学部客員講師・医学博士・糖尿病専門医・総合内科専門医・甲状腺専門医。糖尿病、生活習慣病を中心に、日々診療に取り組む。患者さん目線で分かり易い説明がモットー。

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