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50代女性のうっかりミスは更年期のせい?改善方法も
50代で物忘れがひどい原因は?チェックリスト&対策
脳卒中リハビリセンターMOMOKA
藤澤素子
公開日:2023.12.18
50代になり「物忘れがひどい」「うっかりミスが増えた」と感じる女性も。物忘れの原因は認知症だけでなく、脳のゴミ・アミロイドβの影響、脳疲労、更年期の影響などさまざまです。加齢と認知症の物忘れの違い、チェックリスト、対処法を解説します!
50代で物忘れがひどいときに考えられる原因
50代になって以下のような物忘れや、ど忘れが多くなったと感じている人は多いようです。
- 「物忘れが激しい」
- 「記憶力が低下した」
- 「物覚えが悪くなった」
- 「人や物の名前が出てこない」
- 「待ち合わせの日時・場所を間違える」
- 「何度も同じ話をしてしまう」
- 「どこに置いたかわからない」
- 「やろうとしていたことを忘れる」
- 「やったことを忘れる」
物忘れや記憶力低下の原因は一つではなく、さまざまなものが考えられます。ここからは、いくつかの原因について詳しく解説します。
1:加齢・老化の影響
年齢を重ねると若い頃に比べて物覚えが悪くなったと感じることが多くなりますが、これは記憶力が低下しているのではなく、老化によって「集中力や学習意欲が衰える」ことが原因です。
これまでは「記憶力は加齢に伴い低下していく」ということは当たり前のようにいわれてきましたが、近年の脳科学の研究では、記憶力そのものは年をとってもそれほど低下しないと考えられています。
アメリカ・タフツ大学の研究グループが行った実験について見てみましょう。
研究グループは、18~22歳の若者と60~74歳の年配者を対象に、単語リストを覚えて言い当てるという内容の実験を行いました。
「この記憶試験は、年配者の方が成績が悪い」と説明してからテストを行ったところ、正解率は若者が約50点、年配者が約30点という結果に。
しかし「これは単なる心理学実験です」と説明した後でテストをした結果、若者も年配者もほぼ50%と、正解率に違いが見られなかったのです。
一方で、持続的な注意力のピークは43歳前後となることが海外の研究によりわかっており、情報をインプットするための集中力や意欲が低下することで、「覚えられない」「忘れてしまう」といった症状につながります。
2:脳のゴミの蓄積
脳のゴミと呼ばれる「アミロイドβ」が蓄積すると、記憶を取り出しにくくなってしまいます。
アミロイドβは脳内で作られるタンパク質の一種で、健康な人にもあり、通常は脳のゴミとして分解・排出されるものです。しかし、アミロイドβ同士がくっついてかたまりになると、排出されずに蓄積されてしまいます。
アミロイドβは、加齢に伴うアミロイドβ除去機能の低下、脳のオーバーワーク、運動不足、認知的活動(記憶する・考える・判断する)の減少などの原因により、たまりやすくなります。
アミロイドβは増え過ぎると脳神経を破壊してしまい、認知症リスクを高める原因になるため注意が必要です。
3:脳疲労
脳疲労も物忘れの原因の一つです。スマホの使い過ぎなどインプットする情報が多過ぎると、脳の処理が追いつかずに疲れ切ってしまい、脳の情報処理機能が低下します。
受け取った情報は脳の「前頭前野」で処理され、情報処理機能には以下の3つがあります。
- 浅く考える機能
- 深く考える機能
- ぼんやり考える機能
いくつもの情報をインプットするときには「浅く考える機能」ばかりが使われるため脳が疲弊し、機能低下が起こります。すると、物忘れやうっかりミスが増えることにつながるのです。
4:スマホ認知症
ここ10年ほどで、物忘れの症状を訴える30〜50代が急増しているといわれています。これはスマホ依存による脳疲労が引き起こす「スマホ認知症」と呼ばれる症状が原因です。
スマホ認知症ではアルツハイマー型認知症に似た症状が見られるものの、MRI検査では異常がなく、脳の機能低下によって物忘れなどが起こっています。
スマホ認知症は正式な病名ではありませんが、放置すると将来的な認知症リスクを高めると指摘されており、注意が必要です。
5:更年期による女性ホルモンの減少
更年期になるとこれまで分泌されていた女性ホルモンの分泌量が激減することで、女性の体には大きな変化が起こります。この変化によって、更年期症状と呼ばれるさまざまな不調につながります。
記憶力の低下や物忘れも、更年期に見られる不調の一つです。
女性ホルモンの「エストロゲン」は、脳の記憶中枢である「海馬」の機能に関係していることがわかっています。
エストロゲン補充療法は、更年期以降の女性の海馬の記憶能力・認知能力の改善に有効であることが公益社団法人日本生化学会の『脳海馬で合成される男性・女性ホルモンは記憶力を増強する』という発表でも紹介されています。
また、更年期症状の一つである不眠はストレスや疲労につながり、その結果として物忘れに繋がっている可能性もあるでしょう。
6:自律神経失調症
自律神経には、緊張やストレスを受けた時に働く交感神経と、睡眠時やリラックスしている時に働く副交感神経があります。普段はこの2つの神経がバランスよく働きます。しかし、ストレスを多く受けていると、このバランスが崩れてしまい、脳にダメージを与えます。
副交感神経が低下すると、アルツハイマー病の元になるアミロイドを脳の外に吐き出せなくなり、アミロイドは弱った神経細胞を攻撃します。また交感神経が強くなると活性酸素が生まれて、神経細胞がサビていってしまいます。
7:若年性認知症(若年性アルツハイマー)
認知症は40代や50代、さらに若い高校生であっても発症の可能性がある病気です。65歳未満に起こる認知症は「若年性認知症」と呼ばれます。
若年性認知症でも多いのが、アルツハイマー型(若年性アルツハイマー)です。完全にはわかっていないものの、脳に蓄積したアミロイドβによって神経細胞が破壊されることが若年性アルツハイマーの原因の一つとして知られています。
若年性アルツハイマーでは物忘れの他にも、頭痛・めまい・不眠・不安・抑うつ・意欲低下といった症状が見られます。
ストレスや更年期症状とも似ており本人も気づかないことがありますが、アルツハイマー型の認知症は放置すると進行していくため注意が必要です。
「加齢による物忘れ」と「認知症による物忘れ」の違い
「加齢による物忘れ」と「認知症による物忘れ」には違いがあります。厚生労働省が公表する「認知症ケア法-認知症の理解」によれば、以下のように分けられます。
【加齢による物忘れ】
- 「体験の一部」を忘れる
- ヒントがあれば思い出せる
- 日付・時間・場所をうっかり間違える
- 日常生活には支障がない
- 物忘れの自覚がある
【認知症による物忘れ】
- 「体験したこと自体」を忘れる
- ヒントがあっても思い出せない
- 日付・時間・場所などがわからなくなる
- 日常生活に支障がある
- 物忘れの自覚がない
- 新しい出来事を記憶できない
記憶には「記銘(覚える)」「保持(情報を記憶として留める)」「想起(必要に応じて思い出す)」という3段階があります。
「加齢による物忘れ」の場合、加齢によって「想起」の機能低下が起こることで、なかなか思い出せないことがあるでしょう。しかし、自分が忘れていることについては自覚があります。例えば「朝食を食べたことは覚えているが、メニューが思い出せない」などです。
一方「認知症による物忘れ」の場合は、「記銘」ができなくなってしまいます。そのため、自分が体験したこと自体を覚えていません。例えば「朝食を食べたことを忘れてしまう」などです。
物忘れ・認知症は大丈夫?2つのチェックリスト
ここからは、物忘れや認知症にも影響する「脳の元気度」と「スマホ依存」についてのチェックリストをご紹介します。
脳の元気度診断
脳疲労や社会との接触が減ることで脳の元気がなくなると認知機能が低下し、認知症の前段階といわれる「軽度認知障害(MCI)」に進んでしまう可能性があります。
以下の、脳の元気度チェックリストで脳の元気度を調べてみましょう。
- 家にあるのと同じ本を買ってしまった
- 好きだったテレビ番組などを面白いと思わなくなった
- これまで続けていた趣味をやらなくなった
- お風呂・シャワーが億劫になった
- あまりメイクをしなくなった
- 外を歩くことがほとんどない
- 部屋着のまま出掛けることがある
- 1日3食の献立を考えるのが面倒になった
- 掃除の回数が減った
- 周囲の人から「イライラしている」と指摘される
チェックが0個の場合は、脳は元気な状態。1〜4個の場合は、脳に疲れが見られ運動不足気味です。
5個以上は、MCI予備軍に進む可能性があるため、注意しましょう。
MCIは初期であれば生活習慣の改善や脳トレを行うことで改善できるため、脳の元気度が低かった人は脳を元気にするためのさまざまな取り組みにチャレンジしてみましょう。
スマホ依存チェックリスト
スマホ認知症になると、物忘れやうっかりミスなどの症状が見られるようになります。スマホ依存になっていないか、以下のチェックリストを確認してみましょう。
- 「スクリーンタイム(スマホ画面を見ている時間)」が1日平均2時間以上
- 無意識にスマホを触る時間が増えた
- いつでもすぐにスマホを触れる状態にしている
- 少しでも時間ができるとスマホを触る
- 何か疑問が浮かぶとすぐにスマホで検索している
- 目的がないのにスマホでサイトやメールをチェックしてしまう
- 覚えておかないといけないことはスマホで写真を撮る
- 毎晩、寝る直前までスマホを操作している
- 家にスマホを忘れると不安で落ち着かない
- 時間を問わずいつでもスマホでメール・LINEのチェック・返信をしている
- スマホ検索以外の方法で調べ物をしなくなった
- 鳴っていないのにスマホ着信音・バイブレーションの空耳が聞こえることがある
- 飲食店を選ぶとき、自分の直感や知り合いの紹介よりもネットの口コミ・評判を重視する
- 仕事などで文章が思い浮かばないとき、スマホ検索で見つかったサイトの例文を書き写している
4つ以上に当てはまる場合は、スマホ依存の疑いがあります。この機会にスマホとの付き合い方を見直してみるのもいいかもしれません。
50代で物忘れがひどいときの対処法
ここからは、50代で物忘れがひどいときの対処法をご紹介します。
脳トレ
毎日の脳トレは、認知症予防に効果的です。
「1日1回以上、脳トレ問題を解いている人」は、たまに脳トレする人やまったくしない人に比べて、認知機能テストの成績が良いというデータもあります。
コグニサイズ
国立長寿医療研究センターが開発した認知症予防運動「コグニサイズ」も、記憶や認知機能の維持や向上に効果的です。
コグニサイズでは、頭を使う「認知課題」と体を動かす「運動課題」を組み合わせて行うため、体の機能も同時に向上させられます。
脳にいい食材・レシピを取り入れる
脳や体にたまった有害物質の解毒作用がある、脳に良い食材やレシピを取り入れるのもおすすめです。毎日の食事にちょっとした工夫を取り入れて、物忘れ対策してみましょう。
生活習慣・食習慣の改善
生活習慣や食事習慣も、物忘れといった脳の機能に影響しています。
脳の活性化に効果的な11の生活習慣や脳にゴミをため込まない7つの食べ方ルールなど、これまでの生活習慣・食習慣を見直してみましょう。
メモを取る
記憶力は加齢によって衰えることはありませんが、情報を引き出す力は低下します。
そこで有効なのが、メモを取ること。映画や本の感想や忘れたくない場面や名言などは、ノートでもスマホのメモアプリでもOKなので、できるだけすぐ書くようにしましょう。
情報はアウトプットすることで記憶として定着するので、メモは覚えておくために効果的な方法です。人に話すと、さらに記憶が強いものになります。
適度な有酸素運動
自律神経の改善が期待できる対処法の一つとして、適度な有酸素運動が挙げられます。運動を行って体が疲れると副交感神経が優位に働くことができるので自律神経の調整につながります。
例えば、サイクリング、水中ウォーキング、バランスボールに座り弾むなどがあります。
物忘れにつながる脳のゴミや脳疲労に注意しよう
年を重ねると集中力や思い出す力が低下することで、物忘れがひどい・うっかりミスが多いと感じるようになります。
物忘れがひどくなる原因はさまざまですが、認知症の原因となる「脳のゴミ(アミロイドβ)」や、現代で増えているといわれている「脳疲労」には注意が必要です。
日常生活の改善や脳トレなどを取り入れて、脳を元気にさせましょう。
※効果には個人差があります。試してみて異変を感じる場合はおやめください。
監修者プロフィール:藤澤素子さん
理学療法士。東京都小金井市にある自費リハビリ施設『脳卒中リハビリセンターMOMOKA』 副代表。脳卒中リハビリセンターMOMOKAは、脳卒中を中心に後遺症で悩まれている方がもっと自立して人生を楽しめるお手伝いをする、量と質を兼ねそろえたリハビリを提供。
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