認知症になりやすい人の特徴は?12の発症リスク

2024年08月08日

少しでも早く気付くことが大切

認知症になりやすい人の特徴は?12の発症リスク

認知症になりやすい人に特徴はあるのでしょうか。英国の医学雑誌『Lancet(ランセット)』の2020年発表の研究によると、ある12の生活習慣を改善すると認知症の発症を遅らせたり、発症を約40%予防したりする効果が期待できるそうです。

認知症になりやすい人の特徴はなに?

2020年に英国の医学雑誌『Lancet(ランセット)』において、認知症リスクに関する研究が発表されました。それによると、認知症の発症リスクがあるとされる生活習慣は、12項目あるそうです。その項目には喫煙やお酒の飲み過ぎ、さらに高血圧や糖尿病といった生活習慣病や、耳が聞こえにくくなる難聴まで含まれています。つまり認知症になりやすい人の特徴とは、この12項目に当てはまる人とも言えます。

皆さんの中には、健康診断で医師や看護師からこうした習慣や症状を指摘されたことのある人もいるのではないでしょうか。心当たりのある人は早めに生活習慣や症状の改善に取り組みましょう。そうすれば将来、認知症の発症を遅らせたり、発症を約40%ほど予防したりすることができる可能性があります。中には、若いうちから気をつけた方が良い生活習慣もあります。

早速、脳の認知機能を衰えさせ、認知症を発症しやすくすると考えられる12の生活習慣について詳しく見てみましょう。

認知機能の衰えを加速させると考えられる12のリスク

以下の図にあるのが、認知症の発症リスクを高める12の要因です。研究では人を若年期(45歳未満)、中年期(45~65歳)、高齢期(66歳以上)と3つのカテゴリーに分け、どの時期に、どの項目に気をつけたら良いかを示しています。

「Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission」『Lancet』(2020年)より引用し、日本語を加筆

以下「生活習慣」、「環境面の要因」、「特定の疾病や症状」、「生活習慣病」の4つのカテゴリーに分けて、詳しく見てみましょう。

●生活習慣 
1.運動不足(高齢期)(2%)
2.過剰飲酒(中年)(1%)
3.喫煙(高齢期)(5%)

高齢期に運動不足になると、認知症の発症リスクが高まります。手足の筋力の低下が行動範囲を狭め、脳への刺激をも低下させてしまうからです。過剰飲酒や喫煙の場合は、認知症リスクがある以外にも体に負担をかけるので、早めに対処したいものです。飲み過ぎる人やアルコール依存症の人には高い割合で脳萎縮が見られますし、喫煙は血管を傷つけ、動脈硬化や脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高める原因にもなります。

●環境面の要因
4.教育歴(若年期)(7%)
5.社会的孤立(高齢期)(4%)
6.大気汚染(高齢期)(2%)

唯一、若年期のリスクに挙げられるのが「教育歴」ですが、新しい物事を学ぶのに遅すぎるということはありません。大人になっても新しいことに興味を持って取り組む姿勢が脳の血流を良くし、認知機能の回復が期待できます。

また、高齢になるに従い社会との関わりが薄れ、家族や友人とのコミュニケーションが減ってしまうケースがあります。会話が減って脳への刺激が減ると、認知症のリスクが高まる可能性があります。また認知症の傾向が出ても、周囲から気づかれにくいというリスクもあります。周囲の人とのお付き合いやコミュニケーションを心がけましょう。

●特定の疾病や症状
7.難聴(中年期)(8%)
8.肥満(中年期)(1%)
9.抑うつ(高齢期)(4%)
10.頭部の外傷(中年期)(3%)

難聴は、中年期の認知症発症リスクを大きく高める要因とされています。周囲の音を聞き取りにくくなると人とのコミュニケーションが取りづらくなり、結果として社会的孤立を招いたりうつ病のきっかけになったりする可能性があるからです。聴覚の衰えを感じたら適切に補聴器を使用するなどの対策を行いましょう。同じく中年期のうちに気をつけたいのが肥満です。認知症に限らず、他の疾患の原因にも挙げられる肥満はできるだけ改善しておきたいものです。

●生活習慣病
11.糖尿病(高齢期)(1%)
12.高血圧(中年期)(2%)

糖尿病と認知症には密接な関連があります。また中年期の高血圧は、脳の血流障害による認知症の原因になりやすく、いずれも医師の指導に従って早めに対処しましょう。

「軽度認知障害(MCI)」への対策が重要です

認知症は突然発症するわけではなく、そこへ至るまでに段階があります。認知機能が正常な状態と認知症との間にある段階のことを、「軽度認知障害(MCI)」(MCI:Mild Cognitive Impairmentの略)と言います。

軽度認知障害(MCI)では記憶力や判断力といった、認知機能の低下がいくらか認められるものの、食事やお風呂、着替えといった日常生活には支障ありません。ただし、同じ話を繰り返すようになる、忘れ物や探し物が増えるなど、自分も家族も「何かおかしい」「ちょっと以前と違うな」と軽い違和感を覚えることがあるでしょう。

このような認知機能の低下がさらに進み、日常生活や仕事に支障をきたすようになると、認知症と診断されます。認知症の多くは、残念ながら現代の医療では完治が難しいとされています。だからこそ、軽度認知障害(MCI)の段階での進行予防対策が重要なのです。

適切なリスクの把握が、自分らしく長生きする第一歩です

早い段階で認知機能の低下に気づくために、少しでも違和感を覚えたら早めに病院を受診しましょう。もし軽度認知障害(MCI)が認められたら、日頃の生活習慣を見直すことから始めてみましょう。

主な対策は3つ。適度な運動とバランスの取れた食事を心がけること、そして認知トレーニングの取り組みです。

運動では、持続的に体内へ酸素を取り込める有酸素運動が効果的です。ウォーキングやジョギングを習慣にして、体や脳への血流を良くしましょう。食事はバランスよく、いろいろな食品を摂ることが大切です。特に野菜や果物、そして魚を積極的に取り入れましょう。

認知トレーニングの場合、何か特別なことをする必要はありません。ゲームや楽器演奏など、普段の趣味や遊びの中から長続きできそうなものにトライしてみましょう。数独やパズル、日記、友人とのおしゃべりも良いですね。記憶力や計算力、集中力を鍛えるために、楽しく継続できるものがお勧めです。これらを意識的に行うことが、健康に、自分らしく長生きする鍵になります。

最近は、認知機能をチェックするツールも開発されていて、将来のリスクを把握することがより簡単になってきています。まずはご自身の状態を知ることから始めてみませんか?

(参考文献)
「Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission」 『Lancet』(2020年)

記事協力:Theoria technologies株式会社


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