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総ビリルビンが上がる病気・原因って?検査は必要?
総ビリルビンを下げるには?肝機能を改善する方法
医療法人社団光陽会 みずほ台サンクリニック
石橋彩里
公開日:2023.09.11
更新日:2024.09.18
総ビリルビンなど肝機能の低下によって上昇する数値を下げるには、アルコールの飲み過ぎ、食べ過ぎを控えるなど食生活や生活習慣の改善が大切です。医師監修のもと肝臓の働きや総ビリルビンが高くなる病気や原因、肝臓にいい食べ物を紹介します。
肝臓の3つの働き
総ビリルビンは、肝機能に関わる数値です。
総ビリルビンについてしっかり理解するために、まずは肝臓の主な3つの働きについて見ていきましょう。
栄養を蓄える・タンパク質の合成
食べ物を食べると、栄養素はさまざまな消化酵素の働きによって分解され、その多くが肝臓に運ばれます。肝臓には、この栄養素を必要な形に作り変えて全身に送ったり、栄養素を貯蔵したりする役割があります。
肝機能が低下すると摂取した栄養素やエネルギーをしっかり活用できなくなり、慢性的な栄養不足に陥ってしまうことも。
また、人間の体をつくる材料となるタンパク質の合成も、肝臓で行われています。タンパク質が正常に行われなくなると、むくみや出血などさまざまな症状が起こります。
解毒・排泄
肝臓は、アルコールや薬などに含まれる有毒物質や体内で生じた老廃物などの解毒作用も持っています。肝臓によって分解された物質は、尿などとして体外に排出されます。
肝臓が健康であれば、有害物質は解毒作用によって無毒化されますが、肝機能が低下すると十分な解毒が行われず、体内に有害物質が蓄積されてしまうことに。
症状が進行すると、脳に大きなダメージを与えてしまうこともあります。
胆汁の生成・分泌
胆汁とは、脂肪やタンパク質の消化吸収に必要な物質です。
肝臓は胆汁の生成と分泌も行っており、肝臓の働きが低下することで胆汁が十分に分泌されなくなると、タンパク質や脂肪の消化や吸収が低下してしまいます。
胆汁にはビリルビン(胆汁色素)が含まれており、胆汁の流れが悪くなると、健康診断で総ビリルビンの数値が上昇します。
総ビリルビンとは?
総ビリルビンとは、赤血球中に含まれるヘモグロビンの代謝産物で、胆汁に排出される色素のことです。「間接ビリルビン」と「直接ビリルビン」を合わせたものを「総ビリルビン」といいます。
- 間接ビリルビン……肝臓に運ばれる前のもの
- 直接ビリルビン……肝臓で処理され胆汁中に排出されたもの
- 総ビリルビン……間接ビリルビンと直接ビリルビンを合わせたもの
肝臓・胆のう・胆道に異常があると、総ビリルビンの数値が上昇します。健康診断の肝機能検査で総ビリルビンの上昇が見られた人は、注意が必要です。
総ビリルビンの基準値
総ビリルビンの基準値は、検査を受ける医療機関によっても異なります。「0.2~1.2mg/dL」もしくは「0.4〜1.5mg/dL」としているところが多いようです。
総ビリルビンが3mg/dLを超えると、皮膚や粘膜が黄色くなる「黄疸」の症状が現れます。10mg/dLを超えると尿の色が濃くなり、「ビリルビン尿」と呼ばれる焦げ茶色の尿が出ます。
総ビリルビン以外の肝機能の数値
健康診断で肝機能を評価する指標には、ビリルビンの他にも以下があります。
- γ-GTP……胆道から分泌される酵素
- AST(GOT)・ALT(GPT)……肝臓の細胞で作られアミノ酸をつくる酵素
- ALP……リン化合物を分解する酵素
- LDH……肝臓や腎臓、骨格筋や心筋、赤血球などに含まれる酵素
- 総蛋白……血清中の総蛋白量
- アルブミン……主に肝臓で作られ血液中に存在するタンパク質
総ビリルビンが高くなる原因
総ビリルビンが高くなる原因は、いくつか考えられます。ここからは、総ビリルビンが高くなる代表的な病気についてご紹介します。
肝臓の病気
肝炎、ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎、薬剤性肝障害、アルコール性肝障害、肝硬変、など肝臓の病気があると、ビリルビンの数値が上昇します。
肝臓に障害が起こると、肝臓で処理された直接ビリルビンを胆管に運ぶ働きが弱くなり、うまく排出できなくなります。すると、血液中に漏れ出して、ビリルビン濃度が高くなります。
胆管の閉塞
肝機能は正常な場合でも、胆管(胆汁の通り道)に炎症や結石、腫瘍があり、詰まってしまうと胆汁の流れが悪くなり、血液中に直接ビリルビンが漏れ出して、数値の上昇が起こることがあります。
胆管の閉塞によって起こる黄疸は「閉塞性黄疸」と呼ばれます。
体質性黄疸
体質性黄疸とは、遺伝的な要因によりビリルビンの分解・排泄がうまくできず、血液中のビリルビン濃度が上昇する病気です。総ビリルビンの数値だけが基準値を超えている場合は、体質性黄疸の可能性が考えられるでしょう。
体質性黄疸にはジルベール症候群(Gilbert症候群)、デュビン・ジョンソン症候群(Dubin-Johnson症候群)などの種類があります。
中でも多く見られるのが、間接ビリルビンが上昇する「ジルベール症候群」です。
ジルベール症候群では、絶食・運動・ストレスなどによってビリルビンが上昇するといわれています。健康診断のときは絶食するため、ジルベール症候群の場合、ビリルビンが上昇することがあるでしょう。
溶血性貧血
溶血性貧血とは、赤血球が異常に早く破壊されることで起こる貧血のことです。溶血性貧血ではビリルビンが大量に産生されるため、ビリルビン値が上昇します。溶血性貧血の場合、間接ビリルビンの上昇が見られます。
息切れ、ふらつき、動悸など貧血に見られる症状のほか、ビリルビン値上昇による黄疸や褐色尿などの症状が起こります。
総ビリルビンが高いのは放置しても大丈夫?
「総ビリルビンの数値が高かっただけで、自分は健康だから大丈夫」と、放置してしまうのはNGです。健康診断で肝機能が引っ掛かった場合、必ず病院で精密検査を受ける必要があります。
肝臓は沈黙の臓器といわれており、病気が発症していたとしても初期段階では自覚症状がないことがほとんどです。症状が現れる頃にはかなり悪化してしまっていたということも考えられるため、早めに医療機関で詳しい検査を受けることが大切です。
病院での肝臓の精密検査
健康診断で肝機能に問題が見られた場合、病院では以下のような精密検査を行い、原因を詳しく調べます。
- 肝炎ウイルス検査
- 腫瘍マーカー検査
- 腹部エコー検査
- 腹部CT・MRI検査 など
肝機能を高める・改善のための注意点やポイント
総ビリルビンは、肝臓や胆道に異常があると上昇します。肝臓をいたわって、肝機能改善につなげましょう。ここからは、肝機能を高める・改善する上での注意点やポイントについて解説します。
お酒の飲み過ぎに注意し休肝日を設ける
アルコールの飲み過ぎは、肝臓に大きな負担をかけてしまいます。
健康を守るためのアルコールの摂取量の目安は、お酒の種類によっても変わります。以下を目安に、飲酒は適量にしましょう。
- ビール……中瓶1本(500mL)
- 日本酒……1合(180mL)
- ワイン……2杯(200mL)
- ウイスキーダブル……1杯(60mL)
また、最低でも週に2回は休肝日を設けることが大切です。お酒を飲みながらタバコを吸うと、肝臓に負担がかかるため注意しましょう。
なお、健康診断の結果ですでに数値異常がみられる場合は週2日程度の休肝日では正常になりません。最低2週間の連続した禁酒が必要です。
脂肪の多い食事を避け栄養バランスのいい食事を心掛ける
肝臓には脂肪を蓄える働きがあり、脂肪の多い食事ばかり食べていると、脂肪肝につながります。脂肪肝は肝炎を引き起こす原因になるため注意しましょう。
栄養バランスの整った食事にし、適正カロリーを守ることが大切です。
十分な睡眠と休息を取る
肝臓をいたわるためには、十分な睡眠と休息を取ることも大切です。
横になると、立っているときに比べて肝臓への血液供給量が多くなります。肝臓に多くの血液を送ることで、肝臓に栄養を届けられます。
可能であれば、食後30分〜1時間ほどは横になってゆっくり休むといいでしょう。
適度な運動を習慣化する
運動不足になると、摂取したカロリーが消費されず肥満につながります。週に2〜3日ほどの適度な運動を習慣にして、脂肪を燃焼させましょう。
運動はハードなものではなく、ウォーキングや散歩など続けやすいものでOKです。継続することを目標に、無理のないペースで取り入れましょう。
ストレス・疲れをため込まない
ストレスや疲れなどによって体に負担がかかると、肝臓の機能低下につながります。ストレスはさまざまな不調の原因になるため、適度なストレス発散や休息を取ることが大切です。
余分な薬の服用や加工食品を避ける
肝臓は、服用した薬の分解も行っており、余分な薬の服用は肝臓に負担をかけてしまいます。
独立行政法人国民生活センターが公表する「健康食品の摂取により薬物性肝障害を発症することがあります」では、サプリメント・健康食品などの摂取によって薬物性肝障害を発症したケースが紹介されています。
合成食品添加物も肝臓の負担になることがあるため、これらを多く含んだ加工食品は、なるべく避けるようにしましょう。
肝臓にいい食べ物
食べ物の中には、肝臓の機能を高める効果が期待できるものもあります。
ただし、特定の食品ばかりを食べるのはNG。良質なタンパク質やビタミン・ミネラルなどの栄養をしっかり取れるように栄養バランスのいい食事を取り、それにプラスして適量を摂取しましょう。
キャベツ
キャベツには、ビタミンUが含まれています。ビタミンUは別名キャベジンと呼ばれ、肝臓内の余分な脂肪を代謝して肝臓の機能を高める効果が期待できます。ビタミンUは熱に弱いため、調理方法を工夫するといいでしょう。
もやし
もやしにはビタミンB1、ビタミンB2などのビタミンB群が含まれています。ビタミンB群は肝機能の正常化に役立つ栄養素です。
また、もやしは良質の植物性タンパク質が豊富。弱った肝臓を回復させ、肝臓の予防に有効です。
しそ
しそに含まれるフラボノイドの一種「ルテオリン」には、体内酸化ストレスを減少させることで、肝障害の進行を抑制する効果や、予防する効果があるといわれています。
薬味として取り入れれば、おいしく肝機能アップにつなげられるでしょう。
ごま
ごまに含まれるセサミンは、アルコール分解能力を高め、血中のアルコール濃度を低減する作用があります。また、セサミンは肝臓まで届いて高い抗酸化作用を発揮することもわかっています。
胡麻和えにしたり、おひたしやご飯にふりかけたり、毎日の食事に取り入れやすい食品です。
海藻、キノコ類、魚介類
海藻やキノコ類、業界類も肝臓に良いとされている食材です。また、鯖缶は脂肪肝や内臓脂肪を減らすと注目されています。DHAやEPAが豊富に含まれ、これが脂肪を減らすといわれています。
肝機能改善のためには生活の改善が大切
総ビリルビンは、肝臓や胆のう、胆道に異常があると数値が上昇します。沈黙の臓器といわれる肝臓は、病気の発症初期ではほぼ自覚症状がなく、症状が現れる頃にはかなり進行してしまっているというケースも少なくありません。
健康診断で総ビリルビンの数値が高かった場合は、必ず病院で詳しい検査を受けることが大切です。その上で、生活習慣・食生活の改善などで肝臓をいたわってあげるといいでしょう。
監修者プロフィール:石橋彩里さん
2018年、医療法人社団光陽会 みずほ台サンクリニック理事長に就任。当院では“必要な医療をもっと身近に”をモットーにし保険診療から自費診療まで幅広く医療を提供しております。
昔から続く内科や透析だけでなくコロナ対応や美容医療、障がい者歯科など時代の流れやニーズに合わせた医療体制でより一層患者様に寄り添うクリニックとして成長してまいります。
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