更年期?脂肪肝?胆石症の4Fリスクにも注意!

γ-GTPだけ高い原因は?考えられる病気&対策

石橋彩里
監修者
医療法人社団光陽会 みずほ台サンクリニック
石橋彩里

公開日:2023.07.28

更新日:2023.08.02

「健康診断でγ-GTP(γ-GT)だけ高い……」理由はなぜ?γ-GTPはアルコールの過剰摂取だけでなく、脂肪肝、更年期の影響、肝臓や胆道に異常がある場合などさまざまなケースで上昇します。病気の可能性もあるため放置せず、早めの検査を!

γ-GTP(γ-GT)とは?

γ-GTP(γ-GT)とは?

γ-GTP(ガンマGTP、γ-GT)とは、「γ-Glutamyl TransPeptidase(ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ)」の略称で、タンパク質を分解する酵素のことです。胆道から分泌され、肝臓の解毒作用、アミノ酸の生成に関わっているため、肝臓や胆のう、胆道の異常を調べるのに使われます。

γ-GTPの他、ASTやALTも肝臓の機能を調べるために測定される数値です。

γ-GTPの数値は肝臓や胆道の異常によって上昇する

γ-GTPは血液中に含まれ、飲酒量が多い場合や、肝臓や胆道に異常があると数値が上昇します。このことから、人間ドックの際の肝機能の指標とされています。

γ-GTPやAST、ALTといった酵素は肝細胞に傷がつき、壊れたときに血液中に放出されるため、肝機能検査に利用されています。

また、通常であれば肝臓で処理された老廃物は胆管を通って十二指腸へと排泄されますが、胆管に石が詰まると通り道が塞がれ、血液に肝臓や胆管の酵素が漏れてしまい、γ-GTPなどの数値の上昇につながることがあります。

その他、栄養過剰や肥満の影響によって上昇することもあります。

γ-GTPの基準値

γ-GTPの基準値(正常値)は、お酒を飲む人を入れるかどうかで変わってきます。お酒を飲む人は多少なりγ-GTPの数値が高くなるため、70~80 IU/L以下を正常とする考え方もあります。

お酒を飲まない人は多くの場合、30~40 IU/L以下が正常値の範囲の目安です。

また、γ-GTPの基準値は検査を受ける機関によっても異なることがあります。厚生労働省による生活習慣病予防のための健康情報サイト「e-ヘルスネット」では、以下をγ-GTPの一般的な基準値として記載しています。

【γ-GTPの基準値】

  • 女性……30IU/l以下
  • 男性……50IU/l以下

なぜ?γ-GTPだけ高くなる原因や理由

なぜ?γ-GTPだけ高くなる原因や理由

ここでは、「γ-GTPの数値だけが高い」というときに考えられる主な原因をご紹介します。

過度の飲酒(アルコール性肝障害)

他の肝機能検査では問題がないのに、γ-GTPの数値のみが高いという場合にまず疑われるのが「過度の飲酒」が原因によるものです。

アルコールの飲み過ぎによって肝臓に負担がかかると、肝細胞に中性脂肪が蓄積して肥大化し、肝機能に障害が起こり「アルコール性肝障害」になります。

栄養過剰・肥満・薬剤の影響(非アルコール性脂肪肝)

γ-GTPはアルコールの摂取量が多いときに上昇することが知られていますが、「お酒を一切飲まないのに、肝機能検査でγ-GTPだけ基準値よりも高い」という人もいます。

近年、アルコールとは関係なく、栄養過剰や肥満が原因となってγ-GTPが上昇する以下のような病気が増加しており、注目されています。

  • 非アルコール性脂肪肝(NAFLD: Non-Alcoholic Fatty Liver Disease)
  • 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH: Non-alcoholic steatohepatitis)

この場合、同じく肝機能の指標となるALT(GPT)の数値が上昇することがありますが、正常上限値のこともあります。

また、この他に薬剤性肝障害もあります。

γ-GTPが高いときにチェックしたいポイント

γ-GTPが高いときにチェックしたいポイント

ここからは、γ-GTPが高いときにチェックしたいポイントをご紹介します。

アルコールの摂取量

アルコールを過剰摂取すると、肝臓がアルコールに反応して、γ-GTPが多く作られるようになります。この状態が続くと肝細胞が破壊されて血液中に多くのγ-GTPが放出され、これにより数値が上昇します。

また、アルコールが肝臓で分解されたときには「アセトアルデヒド」と呼ばれる有毒物質が発生しますが、このアセトアルデヒドは肝臓の細胞にダメージを与えます。

アルコールの摂取量や頻度が増えると、肝臓にかかる負担が増えるため注意が必要です。

体重増加や肥満(脂肪肝)

運動不足や暴飲暴食などが原因で、体重が増加したり、肥満となったりしている場合もγ-GTPの数値が上昇します。過剰にエネルギーを摂取すると肝臓への脂肪沈着の原因になり、これを放置すると肝臓に中性脂肪がたまった状態である「脂肪肝」につながることも。

脂肪肝の主な原因は、お酒の飲み過ぎと糖質の取り過ぎです。脂肪肝を放置すると肝硬変や肝がんに進行するリスクもあるため、注意が必要です。

運動不足になると消費カロリーが少なくなり、肥満につながるため、普段デスクワークが多い人や運動の機会がない人は意識的に運動を取り入れるといいでしょう。

更年期の影響

更年期に入ると女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が低下します。

エストロゲンには脂質の代謝や内臓の脂肪燃焼をサポートする働きがありますが、更年期に伴うエストロゲンの減少で脂質代謝機能が衰え、肝臓に負担がかかるとγ-GTPが上昇することがあります。

薬やサプリメントの影響

肝臓は、薬の代謝も行っています。複数の内服薬を長期的に服用していると薬剤性肝障害が起こることがあり、これによりγ-GTPが上昇している可能性が考えられます。

病院で処方される薬の他、サプリメントや市販の解熱剤や風邪薬、漢方薬でも肝障害を起こすことがあります。薬剤性肝障害は放置すると重症化するリスクがあるため、早めに病院を受診しましょう。

胆管の胆石や腫瘍

胆管に胆石や腫瘍がある場合など、胆汁の流れに異常が起こると、γ-GTPの数値が高くなることがあります。

ウイルス性肝炎

B型肝炎やC型肝炎などの肝炎ウイルスが原因で起こるウイルス性肝炎でも、γ-GTPの数値が高くなることがあります。

肝臓が長期的に炎症を起こし肝細胞が傷つけられると、血液中にγ-GTPが放出され、数値が上昇します。また、まれではあるものの中年以降の女性に好発する自己免疫性肝疾患でもγ-GTPの数値が高くなることがあります。

遺伝(家族にγ-GTPが高い人がいるか)

遺伝的にγ-GTPが高いというケースもあり、家族にγ-GTPが高い人がいる場合、自分もγ-GTPの数値が高くなることがあります。ただし、遺伝的なケースはまれなため、「遺伝だから」と自己判断せずまずはしっかりと検査を受けて調べることが大切です。

50代女性は「胆石症の4F」に注意!

50代女性は「胆石症の4F」に注意!

50代女性は、胆石症に注意が必要です。胆石症とは胆のう(肝臓と十二指腸をつなぐ胆管の途中にある臓器)や胆管に石ができる病気の総称のことをいいます。

胆石が小さいうちは無症状のことも多く、2~3割の人はほぼ症状が見られないため気づかないことも少なくありません。しかし、消化器の病気の中では比較的よく見られ、10人に1人が胆石症を持っているともいわれています。

胆のうは右上腹部にあるため、「右側の肋骨の下」「みぞおちの辺り」「右肩」「背中」などが痛む、吐き気や嘔吐、黄疸症状(皮膚が黄色くなる)が見られるなどの症状が起こることがあります。また、突然激痛が起こることも。

胆石は、胆汁に含まれる成分が凝縮されることで塊になってできます。胆石には大きく分けて「コレステロール石」と「色素石」の2種類があり、日本人の場合は約80%がコレステロール石です。

高コレステロールな食事などが原因で胆汁に含まれるコレステロール量が飽和状態となり、余分なコレステロールが結晶化して胆石となります。

【胆石症のリスク4F(5F)】

  • 肥満(Fatty)
  • 40代~50代以降の中高年(Forty~Fifty)
  • 女性(Female)
  • 妊娠出産を多く経験した人(Fertile)

上記は、胆石症にかかりやすい傾向にある人の特徴です。これに白色人種(Fair)も加えて、5Fと呼ばれることもあります。

女性は、加齢などによるホルモンバランス変化の影響で胆のうの機能が低下し、コレステロール代謝が悪くなることで、胆石ができやすくなるため注意が必要です。

γ-GTPの数値が高い場合に考えられる病気や症状

γ-GTPの数値が高い場合に考えられる病気には、以下のようなものがあります。

  • 軽度上昇(50~100U/L)……急性肝炎、慢性肝炎、脂肪肝、肝硬変、肝内胆汁うっ滞、胆道疾患 など
  • 中度上昇(100~200U/L)…慢性肝炎、肝硬変、アルコール性肝障害、肝外閉塞性黄疸、肝内胆汁うっ滞、肝細胞癌、転移性肝癌、腎梗塞 など
  • 高度上昇(200U/L以上)……アルコール性肝障害、肝外閉塞性黄疸、肝内胆汁うっ滞、肝細胞癌、転移性肝癌 など

肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、病気が少し進行したくらいでは症状が出ません。症状が現れたときには取り返しがつかない状態になっていることが多いため、放置せず早めに病院に行くことが大切です。

比較的早く現れる症状としては、疲れやすさやだるさ、食欲低下、急にお酒が飲めなくなる、脂っこいものを食べられなくなるなどがあります。症状がかなり進行すると、むくみ(浮腫)や黄疸、腹水、尿の色が濃くなるなどの症状が現れます。

γ-GTPの数値が高かった場合の精密検査方法

γ-GTPの数値が高かった場合の精密検査方法

肝機能検査でγ-GTPの数値が高かった場合、早期発見のためにも医療機関を受診して詳しい検査を受けましょう。特に、γ-GTPが100を超えた場合は必ず病院に行き、詳しい検査をして治療を行う必要があります。

病院では、以下のような精密検査を行って詳しい原因を調べます。

  • 肝機能を評価するほかの血液検査項目の検査
  • 肝炎ウィルスの検査
  • 超音波検査(エコー検査)・CT検査(造影CT)などの画像検査

γ-GTPの数値を改善する方法

γ-GTPの数値は、禁酒や減量など生活習慣や食習慣の見直しで改善する可能性があります。医師の指導のもと、以下のような対策を行うといいでしょう。

  • アルコールの摂取量を減らす・禁酒する
  • 適正な体重を維持する・肥満の場合は減量する
  • 食生活を見直す
  • 糖分や脂肪分の多い食べ物に注意する
  • 適度な運動を習慣にする
  • 不要なサプリメント・薬剤を摂取しない

ビタミン、ミネラル、タンパク質など、肝臓のダメージを修復する効果が期待できる栄養素を含む食べ物を取り入れるのもおすすめです。

禁酒は、最低2週間しないとγの値は下がってきません。また禁酒後も週に2回以上休刊日を設けましょう。

γ-GTPが高い場合は早めに病院へ!

γ-GTPの数値は、アルコールの飲み過ぎの他にも、肝臓や胆道の異常によって上昇することがあります。

肝臓は神経がないことから自覚症状を感じにくく、気付いたときには取り返しがつかない状態になっていることも少なくありません。健康診断でγ-GTPが高いとわかった場合は、放置せずにさらに詳しい検査を受け、原因に応じた対処法を取ることが大切です。

監修者プロフィール:石橋彩里さん

石橋彩里さん

2018年、医療法人社団光陽会 みずほ台サンクリニック理事長に就任。当院では“必要な医療をもっと身近に”をモットーにし保険診療から自費診療まで幅広く医療を提供しております。

昔から続く内科や透析だけでなくコロナ対応や美容医療、障がい者歯科など時代の流れやニーズに合わせた医療体制でより一層患者様に寄り添うクリニックとして成長してまいります。

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