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閉経後の女性は要注意!骨を鍛えるトレーニングも紹介
骨密度を上げる食べ物&運動で骨粗鬆症・骨折予防!
京都下鴨病院
森大祐
公開日:2023.08.15
更新日:2024.03.23
65歳以上で介護が必要となる原因、女性の場合第2位は骨折・転倒 (16.5%)。閉経後にリスクが高まる骨粗鬆症を予防し、骨折防止のためにも骨を強くしましょう! 骨密度を上げる食べ物や、自宅で簡単にできる「骨たたき」などの運動を解説します。
監修者プロフィール:森大祐さん
日本整形外科学会認定整形外科専門医。関西医科大学卒業後、京都大学整形外科に入局。脊椎、上肢疾患の臨床研究をおこない、脊椎、手関節、肘、肩関節に精通する。その後米国トーマスジェファーソン大学で人工肩関節の臨床研究を主な目的に留学。京都下鴨病院で肩関節外来を担当し、脊椎機能の重要性を唱えている。
骨密度が低いと…骨粗鬆症の原因に!
骨密度とは、骨を構成する主成分であるカルシウムなどのミネラル成分の詰まり具合や、骨の強さを表す指標のことです。
健康な骨は骨密度が高い状態です。骨密度が低下すると骨がスカスカになって脆くなり、骨折しやすくなる骨粗鬆症(こつそしょうしょう)のリスクが高まります。
自分の骨の健康状態が気になる人は、セルフチェックをしてみましょう。
骨折は寝たきりにつながる
厚生労働省が公表する「 2022年令和4年版高齢社会白書(全体版)」の「65歳以上の要介護者等の性別に見た介護が必要となった主な原因」によれば、女性の場合の介護が必要となった主な原因は「第1位:認知症(19.9%)」「第2位:骨折・転倒 (16.5%)」となっています。
転倒による骨折は寝たきりにつながるリスクもあるため、早いうちから骨を鍛え、骨密度を上げる取り組みをする必要があるでしょう。
骨密度が下がる原因
ここからは、骨密度が下がる原因をご紹介します。
加齢
骨密度が低下する主な原因が、加齢です。
男女ともに、骨密度は20歳ごろがピークです。40代くらいまでは大きな変化はないものの、その後は徐々に骨密度が徐々に減少し、50歳頃になると骨密度はどんどん低下していきます。
女性特有の理由(出産・閉経)
骨密度の減少率は、男性よりも女性の方が大きいといわれています。骨には多くのカルシウムがふくまれ、カルシウム量は骨密度と関連します。女性は出産・授乳を経験しますが、この時期は赤ちゃんの骨形成や母乳のほうにお母さんのカルシウムが移動するからです。
また、骨密度の維持にかかわっている女性ホルモンの「エストロゲン」の分泌量は、閉経を迎えると激減します。これによって骨密度を維持する働きが弱くなり、骨粗鬆症になりやすくなります。
更年期以降の女性は、特に骨粗鬆症に注意する必要があるでしょう。
その他
その他、喫煙や過度な飲酒、極端なダイエットや運動不足も骨密度が低下する原因の一つです。
食べ物から摂取するカルシウム(経口カルシウム)が足りないと、体に蓄えられている(経骨カルシウム)で補おうとするため、骨がもろくなってしまいます。
低下した骨密度を大幅に回復させることは難しいため、「骨貯金」を使わないように必要な栄養を摂取したり、生活習慣を改善することが大切です。
骨密度を上げる食べ物・食生活
ここからは、骨密度を上げる食べ物や食生活について解説します。
骨にいい栄養素はさまざまな食べ物に含まれているため、いろいろな食材をバランス良く1日の食事で摂取しましょう。骨にいい栄養素がたくさん取れるレシピなどを取り入れるのもおすすめです。
骨の材料になる栄養素を摂取する
骨の材料になるのが「カルシウム」と「タンパク質」です。
カルシウム
カルシウムは骨の主成分で、ビタミンDと一緒に摂取すると吸収率が高まり骨量を増やすことにつながります。骨粗鬆症・骨折予防のためのカルシウムの摂取推奨量は1日700~800mgなので、これを目指すといいでしょう。
【カルシウムが豊富な食べ物】
- 牛乳・乳製品
- 干しエビ
- 小魚
- 小松菜
- チンゲン菜
- 菜の花
- モロヘイヤ
- 大豆製品 など
含有量の目安としては、カルシウムは普通牛乳1杯(200mL)に220mg、無脂肪無糖ヨーグルトは1パック(100g)あたり140mgが含まれています。
タンパク質
骨密度と同じく、健康な骨に欠かせないのが「骨質」です。骨質はコラーゲンによって強化されますが、コラーゲン原料となるのがタンパク質。
推奨摂取量は年齢や性別、身体活動レベルによって変わり、目安は50~64歳は68~98g、65~74歳は69~93g、75歳以上は62~83gです。
タンパク質と合わせて、骨のコラーゲンの劣化を防ぐビタミンB6やビタミンB12、葉酸を摂取するのもおすすめです。
- 肉類
- 魚介類
- 卵
- 豆類
- 乳製品 など
タンパク質は鶏ささみに23.9g、さくらえび(素干し)に64.9g、くろまぐろ(赤身)に26.4g、油揚げ(生)に23.4g、卵黄(生)に16.5g含まれています。(食品100gあたり)
骨の生成を助ける栄養素を摂取する
骨密度を上げるためには、カルシウムなど骨のもととなる栄養素だけでなく、カルシウムの吸収をサポートする栄養素を摂取することも大切です。
ビタミンD
ビタミンDはカルシウムの吸収を助けてくれる栄養素です。効率的なカルシウム摂取のためにも合わせて取るようにするといいでしょう。1日の摂取基準量は18歳以上の男女ともに8.5μg(マイクログラム)です。
【ビタミンDが豊富な食べ物】
- うなぎ
- 鮭
- サンマ
- メカジキ
- カレイ
- きくらげ
- 卵
- しいたけ など
ビタミンDはしろさけ(焼き)に39.0μg、うなぎ(かば焼)に19.0μg、卵黄(生)に12.0μg含まれています。(食品100gあたり)
ビタミンK
ビタミンKはカルシウムが骨に取り込まれるのを促す栄養素。骨の破壊を防ぎ、カルシウムの排泄を抑える作用もあり、骨密度を低下させないためにも大切です。1日の摂取基準量は18歳以上の男女ともに150μgに設定されています。
【ビタミンKが豊富な食べ物】
- 納豆
- 小松菜
- ブロッコリー
- ほうれん草
- ニラ
- キャベツ
- サニーレタス など
ビタミンKは挽きわり納豆に930μg、ブロッコリーに380μg、小松菜(ゆで)に320μg含まれています。(食品100gあたり)
マグネシウム
マグネシウムは、カルシウムと結びつくことで骨が作られるのをサポートします。「マグネシウム2:カルシウム1」の割合でバランスよく摂取することが大切です。
マグネシウムの推奨摂取量は女性の場合、65~74歳女性で280mg、75歳以上の女性では260mgに設定されています。
【マグネシウムが豊富な食べ物】
- 豆類
- ナッツ類
- 海藻類
- ごま など
マグネシウムはあおさに3200mg、きなこに260mg、ごま(乾)に370mg、アーモンドに310mg含まれています。(食品100gあたり)
食塩の過剰摂取・過度な飲酒に注意する
食塩を過剰摂取すると、カルシウムの吸収が阻害されてしまいます。インスタント食品やスナック、ジャンクフードなどは食塩が多く含まれているため、食べ過ぎないように注意が必要です。
また、アルコールにはカルシウムの吸収やビタミンDの働き阻害する作用があるため飲み過ぎは控えましょう。
骨密度を上げる運動・トレーニング
健康な骨を作るためには、運動による適度な「衝撃」を与えることが大切です。ここからは骨密度を上げる運動・トレーニングをご紹介します。
かかと落とし
骨粗鬆症予防に有効なのが「かかと落とし」運動です。
かかと落としとはいっても、格闘技の足を大きく振り上げて落とす蹴り技ではなく、背伸びをしてかかとを上げた状態からかかとを落とすだけでできる簡単な運動です。
- 足を肩幅に開いて立ち、肩の力を抜いて、背筋を伸ばす
- 真っ直ぐ前を見ながら、両足のかかとを上げる
- つま先立ちの状態から、両足のかかとを床にストンと下ろす
- ここまでを1日50回を目安に行う
片脚立ち(ダイナミック・フラミンゴ体操)
片脚立ち(ダイナミック・フラミンゴ体操)は、バランスを取りながらフラミンゴのように片脚で立つ運動です。
体重を片脚に乗せるため、両脚で立つときの倍の負荷を与え、効果的に骨を強くできます。バランス感覚も鍛えられるため、転倒予防効果も期待できるでしょう。バランスを取るのが難しい場合は、いすや机などに掴まりながら行ってもOKです。
ウォーキング
ウォーキングも、骨密度を高めるためにおすすめの運動です。1日8000歩以上のウォーキングを週3回以上継続すると、骨密度が上がる効果が期待できます。
骨たたき
雨の日や忙しくて外に出て運動をする時間がないときは、自宅でいつでも簡単にできる「骨たたき」がおすすめ。体の中でも比較的大きい「大腿骨」を叩くと、効率よく全身への作用が期待できます。
- いすに座り、背筋を自然に伸ばす
- 右のこぶしで右膝、左のこぶしで左ひざの上を交互に軽く叩く。これを1日100回の目安で行う
叩くときは、胸の高さからひざの皿の少し上に向かって、垂直に落とすのがポイントです。背筋が丸まっていると効果が半減してしまうため、背筋を自然に伸ばすようにしましょう。
ゆるジャンプダイエット
ダイエット中の人は、ゆるジャンプダイエットを取り入れるのもおすすめ。ゆるジャンプダイエットとは、1日3回、1分間その場でジャンプするだけのダイエット方法のことです。
脂肪燃焼効果やお腹や脚の引き締め効果、むくみ解消効果の他にも、骨を強くする効果が期待できます。
閉経前の女性60人が対象の研究によれば、毎日のジャンプを16週間続けた結果、股関節の骨密度が改善が見られたことがわかっています。
骨密度を上げる・骨粗鬆症を防ぐポイント
ここからは、骨密度を上げる・骨粗鬆症を防ぐポイントをご紹介します。
日光浴をする(過度な紫外線対策は避ける)
カルシウムの吸収を助けるビタミンDは、紫外線を浴びることで体内で生成されます。
食事で摂取するビタミンDよりも紫外線の影響で生成されるビタミンDの方が4倍も多く、骨粗鬆症を予防するためには、適度に太陽の光を浴びることも大切です。ビタミンDを産生する紫外線はB波(UV-B)で、服やガラスを通過できないので屋外での日光浴をしましょう。
大阪樟蔭女子大などの研究チームが行った調査では、20代女性が週3回以上日焼け止めを使った場合、血中のビタミンD濃度が常に欠乏状態になっていたという結果が出ています。
過度な紫外線対策は避け、暑さや寒さ対策をした上で無理のない範囲で外出や運動をして太陽の光を浴びるといいでしょう。
具体的には、顏と首と手の甲だけは日焼け止めクリームを塗り、腕やひざ下は塗らずに露出して歩くなど、老化させたくない場所と露出していい場所を決めるといいでしょう。また、紫外線B波だけを通過させるビタミンDの産生を妨げない日焼け止めもあります。
ビタミンD生成と日光浴時間の関係について
日に当たる時間については、露出箇所面積、場所、時間、季節によっても大きく違いがあります。国立研究開発法人 国立環境研究所が行った調査では、以下のような結果が出ています。
大人の両手の甲と顔を合わせた面積に相当する600 cm2を用い、以上の前提の上に、札幌・つくば・那覇の3地点について、午前9時・正午・午後3時の各時刻において、ビタミンD 5.5 μgを生成するのに必要となるビタミンD生成紫外線照射時間を求めました。
(中略)
7月の晴天日の12時には、札幌・つくば・那覇ではそれぞれ、4.6分・3.5分・2.9分で必要量のビタミンD生成を行うことが出来ることが判ります。一方、12月の晴天日の12時では、那覇では7.5分、つくばでは22.4分で生成するのに対し、太陽高度の低い札幌では、必要量のビタミンD生成に76.4分という長い時間が必要となることが判明しました。実際には、曇りや雨等晴れ以外の日もあることから、必要なビタミンD生成のためには、さらに長時間の日光浴が必要となります。
出典:「体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定-札幌の冬季にはつくばの3倍以上の日光浴が必要-」(国立研究開発法人 国立環境研究所)
季節の他、場所によっても必要量のビタミンD生成のための時間が異なるため、「日光に当たる時間を増やす」「足や腕など太陽光に当たる部位を増やす」「ビタミンDが含まれる食品を摂取する」など対策しましょう。
正しい姿勢で立つ・座る
骨密度は、重力に逆らう縦方向の負荷を掛けることで上昇します。正しい姿勢で立ったり、座ったりするだけでも骨を鍛えることにつながるでしょう。
運動不足の人は、エスカレーターやエレベーターを使わず、階段を使うと効率的に運動量を増やせるのでおすすめです。
調理法を工夫する
調理法を工夫するだけでも、骨密度を増やすことにつながります。
魚を調理するときは、酢を使うとカルシウム吸収率を高められます。酢を使うと骨まで柔らかくなるのでおすすめです。
また、きのこ類に含まれる「エルゴステリン」という物質は、日光に当たることでビタミンDに変化します。調理前に2~3時間日光に当てるといいでしょう。乾燥させると、きのこのうまみ成分もアップします。
毎日鏡で全身を見る
骨の健康度(骨力)の低下は、見た目にも影響します。
顔面骨が縮むと、顔のたるみやシワの原因に。中でも、下あごの骨は最も縮小率が高いといわれており、縮むと口元のシワや口のすぼまりとして現れることも。
その他、老け見えの原因となるほうれい線やマリオネットラインにも影響します。毎日、全身をしっかり見て変化をチェックしましょう。
定期的な骨密度検査を受ける
骨密度の低下を予防するためには、症状がないうちから定期的な骨密度検査を受けることが大切です。女性ホルモンが低下し始める40歳を過ぎたら、定期的な検診を受けましょう。
多くの自治体が40歳以降の女性を対象とした5年刻みの骨密度の節目検診を行っているため、住んでいる地域のホームページなどをチェックしてみましょう。
検査で骨密度の低下が見られた人は、適切な治療を受けることが大切です。
骨密度を上げる食事&運動で骨から健康に!
骨密度は、加齢に伴って低下していきます。男性よりも女性の方が骨密度の減少率が大きいといわれているため、骨を健康に保つためにも、骨密度を上げる食事&運動を取り入れましょう。
※効果には個人差があります。試してみて異変を感じる場合はおやめください。
※この記事は2023年8月の記事を再編集して掲載しています。
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