3人の子育てと仕事で、
ずっと綱渡りのような状態
――原田美枝子さんは28歳で結婚。仕事をしながら一男二女の子育てに奮闘しました。現在、長男の石橋大河さんはVFXアーティスト、長女の優河さんはシンガーソングライター、次女の石橋静河さんは俳優として活躍中です。
私が最初の子ども(長男)を出産したのは29歳のときでした。実はそのとき舞台のお話があったのですが、妊娠がわかった時点で役を降りました。15歳でデビューしてからずっと働き続けてきて、初めての降板でした。
仕事に復帰したのは長男が1歳になる前。黒澤明監督の映画「夢」(1990年公開)でした。そのときは現場へ長男を連れて行き、ベビーシッターさんに見てもらって仕事をしました。
その後も子育てをしながらやれることはちょっとずつだったので、試行錯誤の連続。母の助けやシッターさんを頼りながら、できる範囲の仕事を手探りでやっていました。週に2~3日家を空けるのがせいぜいという時期もあり、現場に立てるのは貴重な時間でしたから、どんなに小さな仕事でもできる仕事は大事にしたいと思いました。
子育て中心の生活を続けていた私の転機となったのは、映画「愛を乞うひと」(1998年公開)への出演でした。娘を虐待する母と、虐待されて育った娘の二役を演じるという、やりがいのある面白い仕事で、無理をしてでもやってみたい、と思ったんです。
でも、それには家族の協力が不可欠です。私は子どもたちに、こうお願いしました。「お母さんはこの3か月、どうしてもやりたい仕事があります。迷惑をかけますが、やらせてください。お願いします」。私も必死でしたが、子どもたちも今まで見たことのない母親の気迫に圧倒されたのか、がんばってくれたと思います。