漫画の現場を漫画で知る

漫画はこうしてあなたの手元に届く

公開日:2022.06.19

私たちを楽しませてくれる漫画ですが、作り手のことは案外知らないものです。今回は、フィクションですが、漫画のことがよくわかる作品を取り上げます。

青年たちは漫画家をめざす

小学生の頃、クラスに漫画の上手な子っていましたよね。自由帳や教科書などに落書きして、みんなで楽しんでいたものです。

紙とペンがあればどんな世界も自由に生み出せる漫画家は、子どもの憧れの職業のひとつでした。

青年たちは漫画家をめざす
『アオイホノオ』島本和彦 カバー(左)と本体

『アオイホノオ』は、作者 島本和彦の自伝的作品。

漫画家をめざす大阪の芸大生、焔燃(ホノオモユル)がデビューするまでの悪戦苦闘する姿をコメディー調で描いています。背景となる1980年代の雰囲気も懐かしいです。

フィクションであると強調していますが、現在の漫画やアニメーションの世界で活躍する人たちが実名で登場します。かれらのオタクっぷりには、私ごときは足元にも及びません。

青年たちは漫画家をめざす
『ルックバック』藤本タツキ

『ルックバック』は、宝島社『このマンガがすごい!2022』でオトコ編1位の作品で、漫画が得意な二人の少女の人生が描かれています。

小学4年生の藤野は、学年新聞に4コマ漫画を連載してみんなに人気でした。ある日教師から頼まれて、不登校児の京本の作品も一緒にのせるようになります。

これがきっかけで漫画を共作しプロデビューも果たすのですが、高校卒業後二人は別々の道を歩むことになります。そして、ある出来事が起きて……

「漫画」がモチーフではありますが、人との関わり方や運命についても考えさせられました。

漫画読む人、作る人、そして届けてくれる人

現在は、漫画家志望の人間にとって、直接発信できる時代になりました。

出版社に持ち込みをしなくても、ウェブサイトなどで人気が出れば出版社のほうから書籍化のオファーがきます。

漫画読む人、作る人、そして届けてくれる人
『重版出来』松田奈緒子

それでもまだまだ出版社の漫画編集部はがんばっています。

デビューして連載し単行本になって書店に並ぶまでの過程がまるごとわかるのが、『重版出来!(じゅうはんしゅったい)』です。

黒沢心(くろさわこころ)は、青年コミック誌の新人編集者。けがで柔道をやめましたが、きっかけは子どもの頃に読んだ柔道漫画だったために、読者の心に残る熱い漫画を作ろうと奮闘の毎日です。
    
個性的な編集部員や漫画家たちを相手に、仕事スキルだけでなく人間的にも成長していく、まっすぐで努力家の彼女を応援せずにはいられません。

「こんなことまでするんだ……」と驚くほど、編集者の仕事って大変です(ハルメク編集部も同様かと思いますが)。

作品だけでなく漫画家の私生活のサポートもし、書店や印刷所、デザイン事務所まで駆け回る心です。おかげで漫画を裏で支える人たちのことがよくわかります。みなさんに感謝です!

もちろん、漫画家のこともわかって、いかにもいそうな作家が出てくるのも面白い。デジタル化に対応する様子や、作画方法も興味深く読めます。

『バクマン。』原作 大場つぐみ 作画 小畑健

この題材を「友情・努力・勝利」がモットーの「少年ジャンプ」がやるとこうなります。

『バクマン。』は、ふたりの少年が「少年ジャンプ」一番の作家になるまでの熱い戦いを描いたもの。

その過程で、ジャンプの連載作品が実名で登場したり、アンケート下位→打ち切りの厳しいシステムなどが、詳しく説明されていて、かなりリアルだなと感じました。

これらの作品の読後に漫画本を手に取る時、あなたの感じ方が変わっているかもしれませんね。


今回の作品
『アオイホノオ』島本和彦 2007年~ 既刊26巻 小学館
『ルックバック』藤本タツキ 2021年7月 全1巻 集英社
『重版出来』松田奈緒子 2012年~ 既刊18巻 小学館
『バクマン。』原作 大場つぐみ 作画 小畑健 2008年~2012年 全20巻 集英社
 

■もっと知りたい■

K・やすな

漫画、アニメ、映画鑑賞、読書が趣味の自称「オタクな主婦」。子どものころは考古学者か漫画家志望。美術館めぐりや街歩きも好きだが、基本的に単独行動。なぜか、どこへ行っても道を尋ねられる。好きな花はカワラナデシコ。

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