木原敏江、傑作を送り続けて50年

ドジさま、連載漫画やめるってよ

公開日:2021.07.19

更新日:2021.07.15

萩尾望都と同世代で、少女漫画で活躍し続けている木原敏江(愛称 ドジさま)ですが、もう連載漫画は描かないと言っています。残念ですが、感謝をこめて、最後の作品を含めて華麗な木原作品を振り返ります。

漫画愛読人生は木原敏江とともに

物心つく頃から漫画を読んでいた私です。小学生の時は『週刊マーガレット』派でした。毎月別冊マーガレットも出ていて、漫画スクール欄がお気に入りでした。美内すずえなど、たくさんの作家の入選作を見ています。

木原敏江もその一人で、個性的な目の描き方が心に残り、デビュー作から読み続けてきました。華麗で繊細な絵柄、男女ともに美しい登場人物、古今東西の文学や伝説からの絶妙な引用などで半世紀以上も楽しませていただきました。ロックバンド・クイーンの魅力を、少女たちに広めた功労者の一人だとも思っています。

彼女が活躍していた当時は、漫画家が作品の中で個人の趣味を、直接的あるいは間接的に表していて、それがまた漫画少女たちを刺激したものです。

漫画愛読人生は木原敏江とともに
『総特集 木原敏江 エレガンスの女王』木原敏江

木原敏江について知るならこの本がいいでしょう。生まれたときからの年譜と全作品リストが載っています。表紙や扉絵のカラーイラストも美しいです。

最後の連載 白妖(びゃくよう)の娘

最後の連載 白妖(びゃくよう)の娘
『白妖の娘』木原敏江 白妖と十鴇

前出の本で「やり残したことはない、やりたいことは全部やった」と言う木原敏江の最後の長編です。朝廷を騒がせた妖怪・九尾の狐の話がもとになっています。

平安時代、貴族の横暴で姉と父を亡くした少女・十鴇(ととき)は、封印を解かれた狐の妖怪白妖と契約し、器となります。そして復讐のために、白妖の力を借りて宮廷へあがるまでになります。封印を解いてしまった青年・直(あたえ)は、白妖を退治し十鴇を救うために京の都へ追いかけていきます。

美人ではないけれど健気な少女、その少女が可愛く思えるまっすぐな気性の青年。2人を支える洗練されたイケメン、そして異形の者たち……。最後まで慣れ親しんだ木原ワールド全開でした。

ラブコメから悲恋まで傑作ぞろい

1969年のデビュー以来、読み続けてきましたが、ジャンルが多岐にわたって、ベスト1が選べません。新選組・フランス革命・旧制高校・海賊など、さまざまな世界で感動させてもらいました。

終活の一環として、漫画の蔵書を寄贈しています。好きだからこそ多くの人に読んでほしくて、木原作品のほとんどを手放しました。ハルトモ俱楽部で取り上げてから寄贈するつもりで、とっておいたのが次の二作品です。

ラブコメから悲恋まで傑作ぞろい
『銀河荘なの!』木原敏江

『銀河荘なの!』は、初期のラブコメで、吸血鬼ものでもあります。

銀河荘に下宿している女学生ビクトリアですが、彼女は家主の美しい兄弟たちが不老不死のトランシルバニア星人とは知りませんでした。彼らは仲間を作り、故郷に帰る日を待っていたのです。うれしくも、切なく余韻の残るラストは、木原作品に共通する持ち味です。

ラブコメから悲恋まで傑作ぞろい
夢の碑

『夢の碑(いしぶみ)』は第30回小学館漫画賞受賞の代表作で、長編短編取り交ぜて20巻+番外編2巻の大作。昔話や伝説をモチーフに、異形の者や滅びゆく者を、華麗に幻想的に描く歴史ロマンです。

ご本人は、やり残したことはないと言っても、いつかまた創作意欲が湧き上がってくるかもしれません。お体に差しさわりのない程度に、漫画が無理なら文章だけでもいいので、漫画界に発信し続けてほしいです。
 

今回の作品

  • 『総特集 木原敏江 エレガンスの女王』 木原敏江 2017年 河出書房新社 
  • 『白妖の娘』 木原敏江 2015~2019年 全4巻 秋田書店
  • 『銀河荘なの!』 木原敏江 1974年 全2巻 集英社
  • 『夢の碑』 木原敏江 1984~1998年 全20巻 小学館
  • 『大江山花伝 夢の碑番外編』 木原敏江 1986年 小学館
  • 『夢幻花伝 夢の碑番外編』 木原敏江 1988年 小学館
     

 

■もっと知りたい■

 

K・やすな

漫画、アニメ、映画鑑賞、読書が趣味の自称「オタクな主婦」。子どものころは考古学者か漫画家志望。美術館めぐりや街歩きも好きだが、基本的に単独行動。なぜか、どこへ行っても道を尋ねられる。好きな花はカワラナデシコ。

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