漫画のなかの言葉をかみしめる

絵だけじゃない「ことば」も心にしみる漫画(後編)

公開日:2021/04/18

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「ことば」も心にしみる漫画シリーズ、今回は後編です。考えさせられる言葉が多いと評判の最近の作品と、漫画ではありませんが、萩尾望都の著書をご紹介いたします。

絵だけじゃない「ことば」も心にしみる漫画(後編)

「真実は人の数だけあるんですよ」という主人公

「真実は人の数だけあるんですよ」という主人公
『ミステリと言う勿れ』第8巻 田村由美

あれれー? 眼鏡の子が「真実はいつも一つ!」って言ってませんでした?

第1巻を手にして、他のミステリー作品とは一味違うと感じ、早くご紹介したかったのですが、グズグズしているうちに、いろいろなランキングに入る人気作となりました。実写化もあるかもしれません。

各話の後に、カルタの形でこれぞという言葉がピックアップされていることからも、「ことば」に対する担当編集者の気合の入れ方が伺われます。

主人公の久能 整(くのう ととのう)は、カレー作りが好きなモジャモジャ頭の大学生。一人暮らしで教師志望です。本人曰く「友だちも彼女もいません」。

殺人事件の犯人の疑いがかかったことから、所轄の警察署と関わりを持つようになります。そして彼の身の回りに起きるさまざまな事件の謎を解いていくのです。ただしあくまで冷静に、淡々と。決め台詞も派手な立ち回りもありません。

謎解きだけでなく、いろいろなことについて整くんはよくしゃべります。男だから、女だから、父親だから……などといった既成概念に囚われている人々の発言を「ほんとうにそうでしょうか」と問い直すのです。普段使う自分の言葉はどんな考えが根本にあって出てくるのか、と考えさせられます。

事件の証言者の子どもに対して「子どもはバカだから」と信用しない大人に、「あなたは子どものときバカでしたか」とサラリと突っ込む整くん。降参です。

友達がいないといいながら、事件の度に知り合いが増えていく彼ですが、最新刊となる8巻では彼の生い立ちが少し明かされています。何巻か読んで、なぜこんな性格の青年になったか興味をお持ちになった方はぜひお読みください。

萩尾望都を「読む」

萩尾望都を「読む」
左:『私の少女マンガ講義』   右:『音楽の在りて』 萩尾望都

『ポーの一族』や『トーマの心臓』などの傑作の作者、萩尾望都の漫画ではない著書です。

繊細な絵と流れるようなコマ割りに乗せて語られていく言葉。「萩尾作品は文学である」とテレビ番組で出演者が言っていましたが同感です。そんな作家の創造性の源の一端に触れることができるでしょう。

『音楽の在(あ)りて』は、著者が20代の頃に書いた短編中編12本と漫画1本をまとめたものです。ジャンルとしてはSF小説に入ると思いますが、絵がなくても萩尾望都の世界に引き込まれてしまいます。表題作は、異星の遺跡を巡り失われた古代の音楽を追い求めている研究家に、時空を超えて訪れた驚きと至福の瞬間を描いています。

『私の少女マンガ講義』は著者のイタリアでの講義録をまとめたもので、少女マンガの歴史、魅力、自作の創作方法や解説を語っています。評論家などが書いた類書はたくさんありますが、実作者ならではの貴重な言葉が詰まっています。萩尾作品を読み返したくなりました。

 

今回の作品

  • 『ミステリという勿れ』田村由美 小学館 2016年~既刊8巻 
  • 『音楽の在りて』萩尾望都 イーストプレス 2012年  
  • 『私の少女マンガ講義』萩尾望都 新潮社 2018 年 

 

■もっと知りたい■

K・やすな

漫画、アニメ、映画鑑賞、読書が趣味の自称「オタクな主婦」。子どものころは考古学者か漫画家志望。美術館めぐりや街歩きも好きだが、基本的に単独行動。なぜか、どこへ行っても道を尋ねられる。好きな花はカワラナデシコ。

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