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- どうなる、どうする!?「余生」について考える
「漫画・映画・アニメは私にとって酸素のようなもの」と語るK・やすなさんが、仕事や子育てを終えた後の生き方について考えます。漫画の中に生き方のヒントがあることも多いようです。
仕事や子育てを終えた後の人生について
ハルメク本誌に記事や広告が掲載された映画「おらおらでひとりいぐも」はご覧になりましたか?
夫が亡くなり子育ても終えた70代の桃子さん。彼女のこれまでとこれからの人生に向かう心の旅を観て、自身のこれからについて考えてしまいました。
子育てや仕事など多くのことに区切りがついて、心に浮かぶ「これからどうなる、どうしよう」の思い。
隠居 リタイア 余生……。言葉はいろいろですが、それにどのように向き合うのか、ちょっと考えてみました。
人生相談にみる老後 男の場合「地域デビューに不安」
新聞・雑誌などの人生相談欄好きです! 自分の生き方の参考にしたり反省したりします。回答者が各界のユニークな人たちが多い、日経新聞の「なやみのとびら」から引用させていただきます。
60代男性からの質問です。
「人前で話すのが苦手だったが、仕事上では大丈夫。でもプライベートな話題が乏しいので、退職後の地域デビューが不安」。
なるほど。仕事一筋だった方に多い悩みかもしれませんね。
お答え。回答者は、お笑いコンビ「髭男爵」の山田ルイ53世さんです。
「胸を張って老後を“もて余して“いただきたい。それでこそ“余生”。焦りは禁物」。
補足します。要旨です。
地域デビューヘの不安は、友人作りや新しいコミュニティーへの不安かも。老後を「素敵に!キラキラと!」暮らそうと言う押し付けがましい声もある。しかし筆者のように「つまらなく暮らす」のがモットーで、社交も趣味もなくてもそのほうが心穏やかだという人間がいてもいい(2020年9月5日朝刊)。
私も、キラキラシニアを勧める情報に触れると、落ち込んだりすることもあるので、この回答を読んで心が軽くなりました。
なんにもしてなくても幸せ、この生活のどこが悪いのって思うときありませんか?
女の場合 「不良おばあさんになりそう」
60代後半女性からの質問
「この年齢になってお酒のおいしさを覚えた。夫は飲まないので、夜一人で若い人の音楽とともにいろいろ考えるのが至福のとき。このままだと、不良おばあさんになるのが心配」。
まずは私の感想から。というのも一読して「はあ?」と呆れたからです。あなたがこの程度で不良を気取るなら、あんなこともこんなこともしている私は女番長(笑)!
好きにおやりなさいって。
回答は大石静さん。「セカンドバージン」「家売るオンナ」などの脚本家です。
結論!「黙っていれば素敵なのに」。
悩むことなし素敵です、という答えを求めているのが、見え見え。自己分析も自己認識もない、ただの自己主張で、60代後半でこのような自己認識であることこそ問題。自分自慢が周りをしらけさせることくらい認識して、なぜそうしたくなるのか考えるのが自己分析の第一歩。
大石静さん、手厳しいですね! 以下私も心に留めておきたい部分があったのでそのまま書きます。
「年を重ねることは自分を知ることではないかと、私は思っています。自分の心の奥底を認識することによって、人間に対する理解も深くなり、周りの人間の気持ちがわかるようになり、思いやりをもてるようになる。風貌は衰えますし、記憶力も集中力も体力も衰えますが、そこだけは冴えてくる。それが年配の人間のステキなところなのではないでしょうか」
(2019年12月28日朝刊)。
さすが大ヒット脚本家、鋭い人間観察力です。しっかり自分と向き合って、素敵な年配になりたいと思います。でもさりげない素敵って難しいですね。
漫画の中の元気な女性-市野井雪
漫画の中ではどんな人たちがいるか見ていきましょう。
トップバッターは市野井雪。75才で、2年前にご主人を亡くされています。生計は自宅での書道教室とおそらく年金。娘は国際結婚でたまに帰国しています。
偶然立ち寄った書店の漫画コーナーで、表紙にひかれて、ボーイズラブ(男性同士の恋愛がテーマ)の漫画と知らずに購入したことで、アルバイトの高校2年生うららと交流が始まります。愛好家のうららとコミックマーケットに行ったり、うららの背中を押して漫画を描かせたり、2人でマーケットに出店したりするようになりました。
うらら
「変なの。胸がドキドキする 。いろんなこと別にいつでもやっていいのかもって? 今まで考えたことなかったんだけど。何歳かになったら『やってもいいよ』ってなるときが来るのかと思ってたけど 、別に いつでも今やってもいいんだなーと……」
雪の娘婿
「そうだ、 ユキさんはタフだよ。疲れたときに休む力がある」
漫画の中の元気な女性-吉田まり子
おつぎは吉田まり子80才。ご主人が亡くなって15年、長男からひ孫までの4世代同居です。職業はベテラン作家。
こんなまり子が、執筆を打ち切りになり、終の棲家と思っていた家も建て替えられることを知り家を出ていきます。
初体験のネットカフェ暮らし、憧れの人との同棲などを経て、現在は高齢で発表の場が減った作家たちのウェブサイトを運営するまでになっています。
まり子
「人生は最後まで気を抜けないね 年を取り自分の行く道に何もない気がする 体も心も朽ちていくのを待つだけ。そのことに絶望する。でも時間は気まぐれで ボンヤリしていたら 人との出会いを運んで来たり急に何かが動き出したりする」
漫画の中の元気な女性 -エリザベス・早乙女
最後を飾るのは102才のエリザベス・早乙女。イギリス人で王位継承権のある元貴族。ご主人の死後40年経過(推定です)。財産は約3650億円! 犬が唯一の弱点です。
日本人貿易商を追って、関東大震災当日に来日してからエリザベスの激動の人生が始まりました。
現在は、やしゃごまでの5世代同居。婿たちは皆死亡か行方不明。一見古めかしいが仕掛けのある日本家屋に、イケメン執事を従えて君臨しております。
遺産相続の条件として「素敵な恋愛をした人」と宣言したことから巻き起こる家族の騒動を、隠しカメラで観察して楽しんでいます。でも、ただの陰険老婆ではなく、自分なりの筋は通すし、おしゃれをしてどこへでも出掛けます。
エリザベス
「他人の言葉で傷つくか傷つかないなんて、所詮他人にはわかんないのよ。どう受け止めてどう乗り越えるかで、その人の度量が決まるの。傷ついたーって騒ぐ奴は、所詮そこまでの輩」
もう平伏するしかない! エリザベスお姉様、2021年も若輩者をよろしくご指導くださいませ。
同じ作者の作品です。「寿命」つながりでご紹介します。文字がなく日本の昔の農村のような土地で、四方を巨大な神像がにらみをきかしている「この世」が舞台です。
ここでは、50才になると「知命」と呼ばれ、「あの世」に連れていかれる定めなのでした。人の命や国家の行く末について考えさせられる、壮大な世界観の作品です。
終わりにひと言。漫画からではありませんが、だいたひかるさんが乳ガン治療中に発した言葉です。
「地球というテーマパークを寿命が来るまで楽しむ!」
今回の作品
- 「メタモルフォーゼの縁側」鶴谷香央里KADOKAWA 2017年11月~ 4巻~
- 「傘寿まり子」おざわゆき 講談社 2016年6月~14巻~
- 「寿町美女御殿」山下和美 集英社 2004年~2009年全4巻
- 「ランド」山下和美 講談社 2016年~2020年全11巻
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