大正時代が舞台の漫画

『鬼滅の刃』で注目 大正時代がおもしろい(後編)

公開日:2021.12.19

更新日:2021.12.17

明治と昭和にはさまれ、短かったけれど独特の雰囲気のある大正時代。大正12年の関東大震災が、物語の展開の上で重要な役割を果たしています。今回は後編です。

『鬼滅の刃』で注目 大正時代がおもしろい(後編)
『大正処女(おとめ)御伽話』

暗い心を吹き飛ばす、明るい春の嵐

暗い心を吹き飛ばす、明るい春の嵐
『大正処女御伽話』夕月と珠彦 桐丘さな作

タイトルにしっかり「大正」と入っている『大正処女(おとめ)御伽話』は、少年誌に連載されていたのがもったいないような心温まる愛の物語。

志磨珠彦(しま・たまひこ)17歳は、大正10年に交通事故で母と右手の自由を失います。冷酷な実業家である父の信頼も失い、千葉の田舎の別荘へ追いやられてしまいます。生きる希望を失った彼のもとに、春の嵐のように明るい少女がやってきたことから、彼の生活は大きく変わっていくのでした。

少女の名は夕月(ゆづき)。まだ14歳でしたが、珠彦の身の回りの世話係、ゆくゆくは嫁としてお金で買われてきたのでした。

優しくて天真爛漫、家事全般が得意で、毎日楽しげに自分の世話をしてくれる夕月と暮らすうちに、珠彦は生きる意欲を取り戻していきます。

この作品は、アニメ化されて2021年10月よりBS放送で放送中です。ただしタイトルが『大正オトメ御伽話』になっています。大人の事情からと推測しますが、少し雰囲気が違ってきますね。

原作では、セリフの文字の使い方が、旧仮名遣いの昔の文学作品を思わせるようで、レトロな感じを盛り上げています。

関東大震災が人々の運命を変える

関東大震災が人々の運命を変える
『風立ちぬ』主人公 堀越二郎  監督 宮崎駿

大正時代の物語を読む上で忘れてはならないのは、「関東大震災」です。多くの物語にとって、大震災は大きなターニングポイントです。

宮崎駿のアニメ『風立ちぬ』の大震災の描写は、大地が津波のようにうねるアニメならではの表現でした。

前編でご紹介した『はいからさんが通る』や、先ほどの『大正処女御伽話』では、震災がきっかけで登場人物の運命が良い方にも悪い方にも変わっていきます。

『煙と蜜』は、震災時には12歳の姫子も大人になります。作者がそこまで物語を考えているかどうかわかりませんが……。

『MAO(マオ)』は、ヒロイン菜花(なのか)のタイムスリップ能力が、大震災と関係がありそうです。

この二作も震災後に物語が大きく動いていくと思いますが、どうせなら私の想像力(妄想力?)の上をいく展開を見せてほしいです。


今回の作品

『大正処女御伽話』桐丘さな 2015年~2017年 全5巻 集英社
※ (たいしょうおとめおとぎばなし)※書籍でのふりがなは『タイシャウヲトメ』
関連作品あり
続編『昭和オトメ御伽話』2018年~2019年 全5巻 集英社
スピンオフ『大正処女御伽話-厭世家(えんせいか)の食卓-』2021年7月~ 既刊1巻 集英社
『風立ちぬ』 監督 宮崎駿 スタジオジブリ 2013年公開
『煙と蜜』 長蔵ヒロコ 2018年~ 既刊3巻 KADOKAWA
『MAO(マオ)』  高橋留美子 2019年~ 既刊10巻 小学館

 

■もっと知りたい■

K・やすな

漫画、アニメ、映画鑑賞、読書が趣味の自称「オタクな主婦」。子どものころは考古学者か漫画家志望。美術館めぐりや街歩きも好きだが、基本的に単独行動。なぜか、どこへ行っても道を尋ねられる。好きな花はカワラナデシコ。

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