時代を超えて人々を魅了する古代史上の謎

邪馬台国はどこにある?―漫画家はこう考える(前編)

公開日:2022.04.18

近年、考古学上の新発見が相次いでいますが、それでもなお未解決なのが邪馬台国の所在地です。この問題について、漫画家はどのように考えているのでしょうか。

邪馬台国を求めて

邪馬台国を求めて
邪馬台国に関するさまざまな著作

日本の成り立ちにかかわる邪馬台国の場所は、特定されていません。九州なのか大和(奈良)なのか、あるいは別の場所なのか……。

研究書から小説、漫画にいたるまで、多くの分野で取り上げられてきました。

解決は今後の研究の進展を待つとして、漫画家が邪馬台国を題材にどのような物語を生み出したか見ていきます。

漫画では九州説が多い

私の読んだ作品の中では、九州説が多いです。

中国などの外国とも近く海も火山もある九州は、物語の舞台としては効果的だと思います。しかし、私が知らないだけで、大和を舞台にした作品もあるかもしれません。

卑弥呼は成り上がり

卑弥呼は成り上がり
『卑弥呼 ヒミコ 真説・邪馬台国伝』原作:リチャード・ウー 画:中村真理子

2022年現在連載中の『卑弥呼 ヒミコ 真説・邪馬台国伝』は九州説です。

原作者のリチャード・ウーは多くのペンネームを持つ日本人で、『20世紀少年』などの作品がある浦沢直樹をはじめ多くの漫画家と組んで、ユニークな設定のヒット作を生み出しています。

物語の初めはまだ邪馬台国は存在しません。九州はいくつかのクニが争っている状態です。

戦で滅ぼされたムラの生き残りの少女ヤノハが主人公です。クマ国に保護された彼女は、野心と復讐心に燃え、巫女の最高位、日の見子(=ヒミコ)の地位を得ること、そして統一ヤマト王国を作ることを目指していきます。

本作品中では、九州説の弱点「『魏志倭人伝』の記載の通りに道順をたどると九州の外に出てしまう」という問題を、ヒミコ(ヤノハ)が、計略をめぐらし、正確な位置を隠すために魏の使者を欺いたということでクリアしています。

最終的には、どこに邪馬台国をすえるのか、原作者の答えが待ち遠しいです。
もう少しご紹介したい作品があるので、後編に続きます。

 

今回の作品
『卑弥呼 ヒミコ 真説・邪馬台国伝』原作:リチャード・ウー 画:中村真理子  2018年~ 既刊9巻 小学館
『邪馬台国の滅亡 大和王権の征服戦争』若井敏明 2010年 吉川弘文館
『清張 古代史記』松本清張 1982年 日本放送出版協会 
『全集 日本の歴史 第1巻 列島創世記』松木武彦 2007年 小学館 
 

■もっと知りたい■

K・やすな

漫画、アニメ、映画鑑賞、読書が趣味の自称「オタクな主婦」。子どものころは考古学者か漫画家志望。美術館めぐりや街歩きも好きだが、基本的に単独行動。なぜか、どこへ行っても道を尋ねられる。好きな花はカワラナデシコ。

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