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落語体験記~柳亭小痴楽真打昇進披露公演~ 

公開日:2020.02.14

落語が大好きなさいとうさんの落語体験記。落語を聞いて笑うことが、さいとうさんにとって元気の源なのだそう。今回は、今注目の柳亭小痴楽の寄席のレポートです。

柳亭小痴楽さんの真打昇進披露公演に行きました

 

国立演芸場

柳亭小痴楽さんの真打昇進披露公演に行って来ました。場所は国立演芸場です。

柳亭小痴楽さんは、ご存じあの「痴楽綴方狂室」などで一世を風靡した、3代目痴楽さんのお弟子さんで、4代目痴楽さんの息子さんです。

「木曾義仲」桂文治

 

「木曾義仲」桂文治

16歳の小痴楽を最初に預かったのは文治師匠ですが、ここでは触れず「木曾義仲」に入ります。恐らく口上で話すのだろうと思いました。自身の師匠(大人気だった桂伸治)の話を挟みながら、巧みに噺を運んでいきます。いつもながら、その上手さに引き込まれました。

「厩火事」三遊亭小遊三

小遊三師匠の「厩火事」は、登場人物のキャラがはっきりしていて、特におさきさんの表情が可愛らしく、何度も聞いているのに笑ってしまいます。サゲまで、流れるように噺を運んで、実に鮮やかでした。


口上(ここからは敬称略とさせていただきます)
舞台に向かって左から、文治・小痴楽・楽輔・小遊三の順に並んでいます。

文治「本日の総合司会 桂文治です。それでは師匠楽輔よりご挨拶です。」

楽輔「ご存じ人気絶頂でした私の師匠・痴楽は、52才で倒れました。その弟子で小痴楽の父でもある痴楽も、同じく52才で倒れました。その時、高校を1年で退学していた小痴楽は、噺家になるかヤクザになるかの2択しかありませんで、悩んだあげく噺家になりました」

ここで小痴楽、師匠に黙っていてくださいと懇願し、会場から笑いを誘います。


「闘病中の親父の元では修行ができないので、厳しいところがいいと文治氏の弟子になります。ところがたびたび遅刻をしてしくじり、ついに親元に返されます。二ツ目になる直前に、親が亡くなりますが、何処も引き取り手がなく、私にお鉢が回ってきました。で、致し方なく預かることにしました。」

文治「では小遊三に音頭を取っていただきます。」

小遊三「えーっ」

大袈裟にのけ反って驚きます。

文治「師匠の楽輔がやるわけにいかないし、私は総合司会だから他にいないの」と、文治に言われ、小遊三気を取り直して

「それでは三本締めです」で場内一体となり、三三七拍子となりました。

「ミーツ―」柳亭楽輔(りゅうていらくすけ)

柳亭小痴楽の現在の師匠、柳亭楽輔師匠の登場です。 

柳亭楽輔師匠は、1972年に柳亭痴楽師に入門、楽輔と名乗ります。翌年痴楽師匠が脳卒中で倒れたため、三笑亭夢楽門下へ移り1976年11月に二ツ目、1987年真打に昇進、現在は小痴楽をはじめ4人の弟子を持つ落語芸術協会理事です。

「私の師匠・痴楽は『柳亭痴楽はいい男 鶴田浩二や錦之介(中村錦之助)あれよりぐ~んといい男』と言うフレーズでお馴染でした。普通に言うとおかしくないですが、身体を揺すりながらあの顔で言うからおかしいんですよね。後は綴方狂室「恋の山手線」「上野を後に池袋 走る電車は内回り~」

今生きていたらどうでしょう?高輪ゲートウェイなんてね。どう考えてもカタカナ駅名は織り込めませんね。

本日の小痴楽はあまり厳しくてもと思い、のびのびと育てましたが、だいぶのびのびさせ過ぎた感はあります」と笑わせてから、古典落語はこの後の小痴楽に譲って、私はこの辺でと高座を降りました。懐かしい痴楽師匠が蘇った瞬間でした。

「粗忽長屋」柳亭小痴楽

 

「粗忽長屋」柳亭小痴楽


さて、本日の主役。柳亭小痴楽が高座に登場しました。 

柳亭小痴楽は、5代目柳亭痴楽の次男で、2005年16才で桂平治(現:11代目桂文治)のもとで前座修行し、桂ち太郎で初高座、2008年たび重なる遅刻(寝坊癖)で、父のもとに帰され、柳亭ち太郎と改めます。2009年父痴楽没直後に、二ツ目に昇進、同時に父の弟弟子柳亭楽輔門下となります。2011年第22回北とぴあ若手落語競演会奨励賞を受賞、2017年7月からEテレの「落語ディーパ―」にレギュラー出演、2019年9月めでたく真打昇進致しました。

「楽輔師匠の弟子は4人で、一番上が私です。上二人は中卒で、下の二人は大学出ですから、均せばみんな高卒ですね」と、いきなり笑わせます。

「さっき出た信楽に聞いたんです。『大学出たんだって?』そうしたら『慶應義塾です』って。『それどこの塾?』って言っちゃった。知らないからね。

もう少しで漢字を習うところで学校をやめたから、前座の頃はネタ帳を書くのに困りました。漢字ドリルをやれって言われて、そういうのやるのが嫌だから噺家になったのに、何だって思いましたよ。

粗忽ってわかりますか? 最近の人は知りませんよね。知ってるよ。ここってさす子供どもがいたんですよ。そこは鎖骨だから、ついでにこっちは右骨って教えちゃいました。またひとり馬鹿を増やしちゃいました」と言いながら「粗忽長屋」に入ります。

江戸っ子口調で快調な滑り出しですが、早口すぎて聞き取りにくい点が難点です。聞き逃すまいと、聞き手に緊張をさせます。それがなくなれば、いい噺家になることでしょう。雰囲気はいいですので。

柳亭小痴楽さんはただ今30歳。真打にしてはお若いですので、これからが楽しみです。そして、痴楽の名を継ぐ日も、この目で見たいものです。偉大なる4代目を偲びつつ、国立演芸場をあとにしました。

さいとうひろこ

趣味は落語鑑賞・読書・刺しゅう・気功・ロングブレス・テレビ体操。健康は食事からがモットーで、AGEフードコーディネーターと薬膳コーディネーターの資格を取得。人生健康サロンとヘルスアカデミーのメンバーとなり現在も学んでいます。人生100年時代を健康に過ごす方法と読書や落語の楽しみ方をご案内します。

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