落語体験記

落語自由自在13~四代目三遊亭圓歌襲名披露興行後編

公開日:2019.09.07

更新日:2019.08.30

前回に続き、6月に開催された四代目三遊亭圓歌襲名披露興行の様子をお届けします。いよいよ圓歌師匠の登場で、会場は一気に盛り上がっていきます。

脱線続きの口上に爆笑

下手から歌武蔵・白酒・圓歌・たい平・小遊三(敬称を略させていただきます)全員黒紋付袴姿で並んでおります。司会進行は歌武蔵です。
                  
歌武蔵「それでは高速道路ソフトクリーム研究会会長桃月庵白酒からご挨拶です」

白酒 「確かに私ソフトクリームのために生きているようなところがございますが、圓歌師匠は先代から名前を継ぐようにと言われたそうで、誰も反対する者はいなかったらしいです。羨ましい。出来たら私が継ぎたかった」

横から歌武蔵が突っ込みます。

「ダメですよ」「失礼しました。言い過ぎました」

白酒深々と頭を下げます。

歌武蔵「続いて、たい平師匠から、お祝いの花火が打ち上げられます」

「ヒューヒュー」っと言ってから、床を叩き、ドンドン、目をつぶると本当に打ち上げ花火の様に聞こえるからすごいです。
歌武蔵「落語芸術協会副会長及び会長代行(6月22日現在です。27日に春風亭昇太会長就任の発表がありました)三遊亭小遊三よりご挨拶申しあげます」

小遊三「私は、本当は通りすがりの者です」

たい平「紋付袴で、通りすがる人はいません」

小遊三「いや、だって協会が違うし、何で呼ばれたのかわからない」とぼやきます。

因みに圓歌師匠は落語協会所属です。

小遊三「襲名に誰も反対する人はいなかったそうですが、絶対いますよ。そういうもんです、襲名と言うものは……。もし、揉めたら、我が芸術協会に来て下さい。大歓迎です」

大きな拍手が起きます。近頃は「何だ芸協か」とがっかりされる程ですので、早速会長代行として人気者の圓歌師匠をスカウトします。

歌武蔵「では、三遊亭小遊三の音頭で三本締めです」

小遊三「えー?」

歌武蔵の声に思い切りのけ反って見せる小遊三。場内大笑いの後、めでたく三本締め、木が入りました。笑いの多い、かなり脱線した口上でした。

「支度部屋外伝」三遊亭歌武蔵

「支度部屋外伝」三遊亭歌武蔵

大きな人が高座に上がります。ビッグな噺家の登場です。

「只今の競技についてご説明申し上げます」とお馴染のフレーズから始まります。

「元武蔵川部屋の森武蔵。同期は貴闘力で、彼とは1勝1敗です」と軽く自慢をした後「ですから芸名は歌武蔵となった訳ですが、本名は松井秀樹と申します」。プロ野球で活躍した松井選手と面差しがそっくりで、何回聞いても笑ってしまいます。

「支度部屋外伝」は師匠にしかできない爆笑のテッパンネタです。数々の賞を受賞しているだけに、話の運びも上手で、相撲にそれ程詳しくない方でも、大笑い間違いなしです。ぜひ、生で聞いてみて下さい。

「母のアンカ」三遊亭圓歌

「母のアンカ」三遊亭圓歌

「先代が亡くなって、3回忌が過ぎました。新元号の発表の時は驚きました。師匠の最初の奥さんが令子、今のおかみさんが和子なんです。改めて師匠の凄さを感じました」。場内をワッと沸かせます。

「私の長男は27才、ゴルフの石川遼君と同い年で、身長も175㎝で同じです。只、収入が違います。長女は学習院」。ここで何故か息継ぎをします。

場内から「あぁ~」と言う声が漏れると「落ちまして」で爆笑!「ジャパン大学を卒業しました」。小ネタの連続、全編まくらのような感じです。脈絡なく縦横無尽にギャグを連発、ハチャメチャのまま走り抜けるのかと思いきや、不意に高野山に招かれた時の話が始まります。

寒い高野山の宿坊で、布団に湯たんぽが入っていたことから、子ども時代を思い出し、家庭の事情で母と一緒に暮らせなかった悲しみが胸を打ちます……。

サゲは「母は88才、来月鹿児島での襲名披露興行を楽しみに待っています。元気なうちに親孝行しなければと思います」

ここで目頭が熱くなりました。

大笑いの後 涙ぐむ、これぞ新時代の爆笑王だと思いました。

さいとうひろこ

趣味は落語鑑賞・読書・刺しゅう・気功・ロングブレス・テレビ体操。健康は食事からがモットーで、AGEフードコーディネーターと薬膳コーディネーターの資格を取得。人生健康サロンとヘルスアカデミーのメンバーとなり現在も学んでいます。人生100年時代を健康に過ごす方法と読書や落語の楽しみ方をご案内します。

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