ようこそ読書の森へ(14)

江戸人情小説日本橋牡丹堂菓子ばなし『いつかの花』

江戸人情小説日本橋牡丹堂菓子ばなし『いつかの花』

公開日:2025年01月08日

江戸人情小説日本橋牡丹堂菓子ばなし『いつかの花』
『いつかの花』中島久枝 光文社 自作のレースドール

中島久枝さんの、切なくて、心温まる江戸人情小説。日本橋牡丹堂菓子ばなし『いつかの花』をご紹介致します。

小萩16歳

江戸のお菓子の美しさや、おいしさに魅せられた小萩は、嘉永2年(1849)江戸日本橋、二十一屋(にじゅういちや)で働き始めます。

くゎしや(かしや)だから九、四、八、足して二十一という洒落です。のれんには、牡丹の花が描かれていて、牡丹堂と呼ぶ人も多いそうです。

小萩16歳、ひたむきに生きる少女の1年が描かれています。

遠戚牡丹堂

牡丹堂は母の遠い親戚で、小さな見世ですが、菓子の味は折り紙付きで、日本橋界隈でもちょっとは知られた見世です。そこに1年の約束で、不器用な小萩が、一生懸命菓子づくりに励み、仕事にそして恋に生きる姿が描かれています。

『いつかの花』はシリーズ第1弾ですが、この記事を書いている現在で、第12弾まで出ています。

菓子職人をめざす物語ですので、当然おいしそうなお菓子がこれでもかと登場します。

桜餅・水羊羹・月見菓子・白吹雪饅頭・豆大福・揚げ饅頭・卵菓子・鹿の子等、思い描いただけでも食べたくなります。

日本人の健康を害するといわれている4毒(小麦・植物性の油・乳製品・甘いもの)の中に、甘いものも入っていますが、こんな昔から日本人が食べていた和菓子は、闘病中でなければ少しは食べても良いと言う事ですので、安心して読みました。

日本橋菓子ばなし牡丹堂を読む順番

『いつかの花』

『なごりの月』

『ふたたびの虹』

遠戚牡丹堂
『なごりの月』『ふたたびの虹』光文社

『ひかる風』

『それぞれの陽だまり』

遠戚牡丹堂
『ひかる風』『それぞれの陽だまり』光文社

『はじまりの空』

『かなたの星』

遠戚牡丹堂
『はじまりの空』『かなたの雲』光文社

『あしたの星』

『あたらしい朝』

遠戚牡丹堂
『あしたの星』『あたらしい朝』光文社

『菊花ひらく』

『ふるさとの海』

『ひとひらの夢』

遠戚牡丹堂
『菊花ひらく』『ふるさとの海』『ひとひらの夢』光文社

シリーズはまだまだ続くそうですが、テンポが良くとても読みやすいので、楽しく読了できました。疲れたら、和菓子と煎茶で一休み(笑)。

この後、シリーズの(13)『にぎやかな星空』が、2024年11月12日に出たそうです。早速、本屋さんに走ります。

作者の中島久枝さん

大学卒業後、絵本の出版社、編集プロダクション等を経て、1995年に独立。食と料理をテーマに、雑誌や単行本の企画、構成、編集などを行っています。

2013年 時代小説『日乃出が走る浜風屋菓子話』第3回ポプラ社小説新人賞特別賞受賞
2014年 同作がポプラ文庫より刊行され、小説家デビュー
2019年『日本橋牡丹堂菓子ばなし』シリーズと、『一膳めし屋丸九』で、日本歴史時代作家協会賞文庫書下ろしシリーズ賞を受賞

■もっと知りたい■

さいとうひろこ
さいとうひろこ

趣味は落語鑑賞・読書・刺しゅう・気功・ロングブレス・テレビ体操。健康は食事からがモットーで、AGEフードコーディネーターと薬膳コーディネーターの資格を取得。人生健康サロンとヘルスアカデミーのメンバーとなり現在も学んでいます。人生100年時代を健康に過ごす方法と読書や落語の楽しみ方をご案内します。