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お金の知識と節約法がわかる『財布は踊る』

公開日:2024.05.13

原田ひ香さんの著書を、最初に読んだのは『三千円の使い方』でした。ドラマ化され大人気でしたので、ご存知の方も多いと思いますが、今回ご紹介するのは『財布は踊る』です。

お金の知識と節約法がわかる『財布は踊る』
『財布は踊る』原田ひ香 新潮社 と自作のレースドール

もう少しお金が欲しい人たち登場

短編連作で、それぞれの章で語り手が変わりますが、やがてすべてがつながります。共通するのは、みんなが「もう少しお金が欲しい」と思っていることです。

第1話に登場するのは、夢を叶えるために、節約を重ねる専業主婦。ここでは節約料理なども学べます。

もう少しお金が欲しい人達登場
『財布は踊る』原田ひ香 新潮社

ルイ・ヴィトンの財布が軸

主婦 葉月みずほは、欲しかったヴィトンの財布を、節約の甲斐あってようやく手に入れますが、途端に物語が動き始めます。

せっかく手に入れたのに、どうなってしまうのと、ハラハラしますが、この財布がバトンとなって、次々に困った人が現れ、思わぬ方向に向かっていき、財布は疑う・騙る・盗む・悩む・学ぶ・踊ると展開していきます。

心に響いた言葉

「一説には、年収は財布の二百倍って言いますよね」

持っている財布の値段の、二百倍の年収になれるという意味だそうで、自分の財布の値段×200って、なんだか言い当てられたようで、ドキッとしました。そんなに値の張る財布は、正直買ったことがないので、都市伝説でしょうが、刺さりました。

もう少し高い財布にしなければと、一瞬思ったりもしましたが、どっちみち年金生活なので、変わらないと気付くのに、時間はかかりませんでした。

お金にまつわる6人の話

お金があれば、幸せになれるとは限らないですが、情報社会ですので、つい他人と比べて、自分が不幸だと思いがちです。

そうなると、みずほの夫のように、リボ払いでクレジット・カードを乱用したりしてしまいます。リボ払いはよく耳にしますが、この本で初めてその仕組みを知りました。

第3話は株の取引きをする男の話です。私自身、株を始めるに当たって、学〇院大学で「頭と尻尾は、くれてやれ」と教わりました。欲張り過ぎると、地獄を見るのだそうです。

第5話の奨学金返済に苦しむ二人の女性の話は、特に胸に迫るものがありました。

お金のために人生を狂わす人、がんばって乗り超えた人、それぞれの結末に納得でした。

作者の原田ひ香さん

お金にまつわる6人の話

2005年『リトルプリンセス2号』で、第34回創作ラジオドラマ脚本最優秀作受賞、プロットライターとして活躍後、2007年『はじまらないティータイム』で、第31回すばる文学賞受賞。

『三千円の使い方』『一橋桐子(76)の犯罪日誌』『古本食堂』『老人ホテル』『図書館のお夜食』『ギリギリ』『東京ロンダリング』『ミチルさん、今日も上機嫌』『口福レシピ』等著書多数。

お金とおいしい食物がテーマの作品が多く、どれもおすすめです。

お金にまつわる6人の話

■もっと知りたい■

 

さいとうひろこ

趣味は落語鑑賞・読書・刺しゅう・気功・ロングブレス・テレビ体操。健康は食事からがモットーで、AGEフードコーディネーターと薬膳コーディネーターの資格を取得。人生健康サロンとヘルスアカデミーのメンバーとなり現在も学んでいます。人生100年時代を健康に過ごす方法と読書や落語の楽しみ方をご案内します。

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