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晴れたらいいね

公開日:2024.02.15

本が大好なので、私は月に5~6冊は読みます。読書で、さまざまな世界や時代に旅をするのが、至福のひと時なのです。

藤岡陽子さんの『晴れたらいいね』をご紹介します

今回は藤岡陽子さんの「晴れたらいいね」をご紹介させていただきます。

あらすじ

総合病院の看護師高橋紗穂は、3年以上も意識のない患者雪野サエの病室をのぞきました。その時突然、激しい地震が起こり、紗穂は気絶をしてしまいます。

気が付くと、そこは戦時下のマニラで、1944年にタイムスリップしていました。しかも「雪野サエ」と呼ばれ、日赤救護班の従軍看護婦になっていたのです。

やがて、赤十字の病院船までもが、爆撃されるようになり、たくさんの負傷兵が運ばれてきます。その看護をする看護婦たちも、兵士同様赤紙1枚で招集されてきたのです。

悲惨な日々ですが、従軍看護婦たちの逞しさ、優しさ、そして強さが救いです。果たしてみんな日本に帰れるのかが気になり、一気読みしてしまいました。

亡き父のこと

フィリピンは、私の父が戦争で行った場所です。100名程の部隊で、無事帰還できたのはわずか2名、1人は脚を失い、無傷だったのは父だけでした。もちろん、私が生まれる前のことです。

ジャングルの中を仲間と逃げまどい、泥水を飲んで生き延びたそうで、8月15日の終戦は知らなかったと言っていました。その後、捕虜となった父は、通訳になり破格の待遇を受け、たくさんの食料を班に持ち帰り分けあったそうです。

それでも激しい労働に耐えきれず、病死した兵士が続出しました。父は英語が話せたため、労働をせずにすみましたが、亡くなっていく仲間を見るにつけ、心に深い傷を負います。今の人なら自分だけラッキーと思うかもしれませんが、父は戦争が終わったのだから、みんなで一緒に日本に帰りたいと思っていたのです。

心に響いた言葉

私は、自決なんて絶対にしません。命が尽きる最期まで、自分の命を守りますよ。敵が目前に迫っているなら降伏します。捕虜になってでも生き延びて、日本に帰るんです。

~中略~

誰が始めたかわからない、誰のためなのかもわからない、こんな戦争なんかで死にたくないのです。

これは、平成に生きる紗穂だけが言えることで、大正生まれの看護婦たちには、理解できなかったのですが、次第にみんな紗穂に付いて行こうと思うようになります。

親世代の体験

ラストは涙しますので、ハンカチをご用意ください。悲惨な戦争を描いているのに、不思議と爽やかな感動に包れます。

これは私たちの親世代が体験した、決して忘れてはならない出来事です。親たちの苦しみ悲しみがあっての、今なのです。

親世代の体験
『いつまでも白い羽根』 藤岡陽子 光文社

作者の藤岡陽子さんは、大学卒業後、報知新聞の記者になり、その後留学、結婚を機に看護学校に通い、子育てと看護師をしながら、小説を書きました。

人を見る目が優しくて、他の作品も読みたいと思い、デビュー作『いつまでも白い羽根』を購入しました。

親世代の体験

■もっと知りたい■

さいとうひろこ

趣味は落語鑑賞・読書・刺しゅう・気功・ロングブレス・テレビ体操。健康は食事からがモットーで、AGEフードコーディネーターと薬膳コーディネーターの資格を取得。人生健康サロンとヘルスアカデミーのメンバーとなり現在も学んでいます。人生100年時代を健康に過ごす方法と読書や落語の楽しみ方をご案内します。

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