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家族小説『同潤会代官山アパートメント』

公開日:2024.11.20

三上延(みかみえん)さんの『同潤会代官山アパートメント』は、1927年から1997年までの70年間にわたる家族の歴史を描いています。舞台は、昭和と共に誕生し、昭和の終わりに解体された同潤会代官山アパートです。

家族小説『同潤会代官山アパートメント』
『同潤会代官山アパートメント』三上延 新潮社 自作のレースドール

日本最初の近代集合住宅

この建物は、関東大震災の後、防災を意識して作られた最先端の集合住宅だったそうですが、今はおしゃれな表参道ヒルズになっています。

8編の短編連作形式で、震災、戦争、バブル崩壊など、激動の時代を同潤会代官山アパートで暮らした一家に、時折涙しながら読み終えました。

各章で語り手が替わり、その人の視線で物語は進んでいきますが、いつも中心にいるのは1927年から登場している八重で、八重の娘・恵子の夫となる俊平が私の父の世代です。

大学を卒業する直前、招集されてフィリピンの戦地に送られたというくだりで、亡き父と全く同じだと思い、胸が熱くなりました。そして、その息子たちの世代は、私とほぼ同じです。そのまた娘たちは、八重のひ孫にあたります。

三上さんの作品は、とても読みやすく、静かに淡々と語られていて、読了後心が温かくなりました。

作者の三上延さん

神奈川県横浜市生まれ、大学時代は文芸部に所属、中古レコード店や古書店勤務を経て『ダーク・バイオレッツ』で、第8回電撃小説大賞3次選考を通過し、2002年に同作で作家デビューしました。

2004年『シャドウテイカー』(全5巻)
2005年『山姫アンチモ二クス』(全2巻)
2006年『天空のアルカミレス』(全5巻)
2008年『モーフィアスの教室』(全4巻)
2009年『偽りのドラグーン』(全5巻)

2011年『ビブリア古書堂の事件手帖』

この1冊が人気となり、2012年に本屋大賞にノミネートされます。

「ビブリア古書堂の事件手帖」メディアワークス文庫
『ビブリア古書堂の事件手帖』メディアワークス文庫
「ビブリア古書堂の事件手帖」メディアワークス文庫
『ビブリア古書堂の事件手帖』メディアワークス文庫

この古書ミステリーは三上さんの代表作。黒木華主演で映画化され、私も観ましたので、こちらをご紹介したかったのですが、全7巻に加え、栞子さんの娘扉子さんが主人公となったシリーズが、すでに4巻刊行されていて、私が追い付いていないので断念しました。

古書に興味のある人にとっては、魅力的な作品です。私もがんばって、これから全巻読もうと思っています。

2015年『江ノ島西浦写真館』

江ノ島の路地裏に、ひっそりたたずむ100年営業した写真館が舞台です。この作品も読みましたが、本が見つからなくて写真が撮れませんでた。

2019年『同潤会代官山アパートメント』

『ビブリア古書堂の事件手帖』は三上さんの代表作ですが、長いため途中で挫折の恐れがある方は(それでも良いですが)『同潤会代官山アパートメント』から読まれるのをおすすめします。

■もっと知りたい■

さいとうひろこ

趣味は落語鑑賞・読書・刺しゅう・気功・ロングブレス・テレビ体操。健康は食事からがモットーで、AGEフードコーディネーターと薬膳コーディネーターの資格を取得。人生健康サロンとヘルスアカデミーのメンバーとなり現在も学んでいます。人生100年時代を健康に過ごす方法と読書や落語の楽しみ方をご案内します。

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