50代・60代女性に!おすすめ本90冊を一気に紹介
2023.04.292024年11月20日
ようこそ読書の森へ(11)
家族小説『同潤会代官山アパートメント』
三上延(みかみえん)さんの『同潤会代官山アパートメント』は、1927年から1997年までの70年間にわたる家族の歴史を描いています。舞台は、昭和と共に誕生し、昭和の終わりに解体された同潤会代官山アパートです。
日本最初の近代集合住宅
この建物は、関東大震災の後、防災を意識して作られた最先端の集合住宅だったそうですが、今はおしゃれな表参道ヒルズになっています。
8編の短編連作形式で、震災、戦争、バブル崩壊など、激動の時代を同潤会代官山アパートで暮らした一家に、時折涙しながら読み終えました。
各章で語り手が替わり、その人の視線で物語は進んでいきますが、いつも中心にいるのは1927年から登場している八重で、八重の娘・恵子の夫となる俊平が私の父の世代です。
大学を卒業する直前、招集されてフィリピンの戦地に送られたというくだりで、亡き父と全く同じだと思い、胸が熱くなりました。そして、その息子たちの世代は、私とほぼ同じです。そのまた娘たちは、八重のひ孫にあたります。
三上さんの作品は、とても読みやすく、静かに淡々と語られていて、読了後心が温かくなりました。
作者の三上延さん
神奈川県横浜市生まれ、大学時代は文芸部に所属、中古レコード店や古書店勤務を経て『ダーク・バイオレッツ』で、第8回電撃小説大賞3次選考を通過し、2002年に同作で作家デビューしました。
2004年『シャドウテイカー』(全5巻)
2005年『山姫アンチモ二クス』(全2巻)
2006年『天空のアルカミレス』(全5巻)
2008年『モーフィアスの教室』(全4巻)
2009年『偽りのドラグーン』(全5巻)
2011年『ビブリア古書堂の事件手帖』
この1冊が人気となり、2012年に本屋大賞にノミネートされます。
この古書ミステリーは三上さんの代表作。黒木華主演で映画化され、私も観ましたので、こちらをご紹介したかったのですが、全7巻に加え、栞子さんの娘扉子さんが主人公となったシリーズが、すでに4巻刊行されていて、私が追い付いていないので断念しました。
古書に興味のある人にとっては、魅力的な作品です。私もがんばって、これから全巻読もうと思っています。
2015年『江ノ島西浦写真館』
江ノ島の路地裏に、ひっそりたたずむ100年営業した写真館が舞台です。この作品も読みましたが、本が見つからなくて写真が撮れませんでた。
2019年『同潤会代官山アパートメント』
『ビブリア古書堂の事件手帖』は三上さんの代表作ですが、長いため途中で挫折の恐れがある方は(それでも良いですが)『同潤会代官山アパートメント』から読まれるのをおすすめします。
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