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- 涙と笑顔のお仕事小説『ほたるいしマジカルランド』
今回ご紹介するのは、今注目の作家 寺地はるなさんの『ほたるいしマジカルランド』。舞台は、大阪の北部に位置する蛍石市の老舗遊園地です。
遊園地で働く人々
「ほたるいしマジカルランドは、テーマパークではなく遊園地です」と、言い切る名物社長が入院し、従業員に動揺が走るところから物語の幕が開きます。
インフォメーション係、アトラクション担当、清掃スタッフ、花や植物の管理をする人などが登場します。
それぞれが前向きで、仕事にまい進、成長していく奮闘記かと思っていたら、どちらかというと、働くことに不安を持ち、立ち止まって考える人々の群像劇でした。
モデルは懐かしいひらかたパーク?!
月曜日から毎日一人ずつピックアップして描いた1週間の物語になっていますが、途中で、モデルはどうやら大阪の「ひらかたパーク(通称ひらパー)」のようだと気がつきました。
家人の転勤で枚方市に30年程前に居住し、ひらパーに行ったことがあります。菊人形展が有名でした。そんな事を、懐かしく思い出しながら読み進みました。
パートから社長になった市子さんは、社員一人一人を気遣い、温かくて、その姿はアパホテルの社長を彷彿とさせるように描かれていました。こんな社長のもとなら、働いてみたいと誰もが思うはずです。私も働いてみたくなりました。
清掃スタッフの篠塚八重子さんの章は、深刻でつらい話でしたが、息子のおにぎりサインに涙でした。そして植物管理者の山田さんの奥さんが、旦那さんの引退を見届けにきたシーンには感動で胸が震えました。
今、私の手元には、未読の本が17冊ほど(←買い過ぎ)積んでありますが、この本はもう一度、じっくり読み返したいと思いました。
心に響いた言葉
他人に認めてもらえるのを待つのではなく、自分で自分を肯定してあげましょう。~中略~今日も仕事の手は抜かなかった。お酒を飲まないという自分との約束を守れた。そういう、ささやかな実績を積み上げていくことしか自分を肯定することはできない。
目の前にある事を、淡々とこなしていく事こそが、自信につながり、自分を肯定できるようになるのだと、しみじみ思いました。つい他人と比べがちですが、それは無意味だと教えられた一冊でした。
作者 寺地はるなさん
2014年『ビオレタ』でポプラ社小説新人賞を受賞し作家デビュー
2020年『夜が暗いとはかぎらない』が、山本周五郎賞候補に
2021年『水を縫う』が吉川栄治文学新人賞候補、同年同作で河合隼雄物語賞を受賞。『ほたるいしマジカルランド』で咲くやこの花賞受賞
おすすめの本
KaBoSコレクション2020金賞・書店員さんに選ばれた感動作『今日のハチミツ、あしたの私』ハルキ文庫
河合隼雄物語賞受賞『水を縫う』集英社
2023年本屋大賞ノミネート『川のほとりに立つ者は』双葉社
『ミナトホテルの裏庭には』ポプラ社
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