ようこそ読書の森へ(13)

元気がもらえる大河小説『らんたん』

公開日:2024.12.15

今回ご紹介するのは『らんたん』です。作者 柚木麻子さんの母校、恵泉女学園の創立者 河井道が主人公。明治・大正・昭和を生き抜いた女性から、元気をもらえる大河小説です。

元気がもらえる大河小説『らんたん』
『らんたん』柚木麻子 小学館

著名人が続々登場

道は少女時代、札幌のサラ・クララ・スミス女学校で学び、新渡戸稲造と出会います。その後、新渡戸の紹介で、お札になった津田梅(後に梅子に改名、作品の中では津田梅)を訪ねます。その出会いこそが、留学の決心につながるのです。

その他、有島武郎・大山捨松・広岡浅子・野口英世・徳富蘇峰・平塚雷鳥・山川菊栄・神近市子・村岡花子・吉屋信子・柳原白蓮・石井桃子・犬養道子・太宰治・市川房枝・加藤シズエ・白洲次郎など著名人が続々と登場します。

ボリュームのある本なので、手に取った瞬間ためらいますが、朝ドラの主人公が登場したりするので、楽しく読むことができます。

ランターンの伝統

明治33年に、道はアメリカのプリンマー女子大に入学、そこにはランターンの伝統があり、上級生が下級生に、一つずつランターンという灯篭を継承するのです。

その火が最初に消えた子は、すぐお嫁さんになり、最後まで消えなかった子は、ドクターになれるという言い伝えがあります。絶対、火を消してはならないと、皆思ったそうです。結婚したら、自由がなくなるからでした。

昔も今も、女性にとっての結婚は、自由を失うことだったのですね。

女子英塾(後の津田塾大学)から恵泉

帰国後、津田梅の手助けをしますが、女子教育の場を自身でも作りたいという思いが強くなり、やがて恵泉を創立します。多くの行事を行い、いろいろな知恵を身につける恵泉学園の風景が楽しく、こういう学校に行きたかったと思ってしまいました。

引っ込み思案で、勉強嫌いだった道が、こんな素晴らしい学校を作ったその変貌ぶりにも驚きました。

名門 恵泉女学園大学の学生募集停止が、2024年教育機関に大きな波紋を投げかけました。道がもし健在なら、どんな思いでこの状況を見ているでしょうか。

作者の柚木麻子さん

恵泉女学園中学・高校を卒業、立教大学時代、脚本家を目指しシナリオセンターに通う。
ドラマのプロットライターを務める。
製菓メーカーに就職。
塾講師や契約社員のかたわら小説の賞に応募。

主な作品リスト

2008年 第88回オール讀物新人賞受賞『フォーゲットミー、ノットブルー』
2010年 初の単行本『終点のあの子』刊行
2011年 『あまからカルテット』

作者の柚木麻子さん
『あまからカルテット』文藝春秋

2012年 『けむたい後輩』『私にふさわしいホテル』
2013年 『王妃の帰還』『ランチのアッコちゃん』『伊藤くんA to E』第150回直木賞候補

作者の柚木麻子さん
『ランチのアッコちゃん』双葉社

2014年 『本屋さんのダイアナ』第151回直木賞候補
2015年 『ナイルパーチの女子会』第28回山本周五郎賞受賞
2017年 『BUTTER』第157回直木賞候補
2019年 『マジカルグランマ』第161回直木賞候補

作者の柚木麻子さん
『マジカルグランマ』 朝日新聞出版

2021年 『らんたん』
2024年 『あいにくあんたのためじゃない』第171回直木賞候補

■もっと知りたい■

さいとうひろこ

趣味は落語鑑賞・読書・刺しゅう・気功・ロングブレス・テレビ体操。健康は食事からがモットーで、AGEフードコーディネーターと薬膳コーディネーターの資格を取得。人生健康サロンとヘルスアカデミーのメンバーとなり現在も学んでいます。人生100年時代を健康に過ごす方法と読書や落語の楽しみ方をご案内します。

マイページに保存

\ この記事をみんなに伝えよう /

注目企画