精神科医Tomyの「自己嫌悪の抜け出し方」#1
自分を嫌いになる人・ならない人の違いは?「自己嫌悪に陥る6つのきっかけ」
自分を嫌いになる人・ならない人の違いは?「自己嫌悪に陥る6つのきっかけ」
公開日:2025年12月12日
教えてくれたのは:精神科医Tomy(トミー)さん
名古屋大学医学部卒業。医師免許取得後、名古屋大学精神科医局入局。精神保健指定医、日本精神神経学会専門医。Xのフォロワーは39万人(2025年11月現在)で、テレビ・ラジオなど各メディアへの出演も多数。ベストセラー『精神科医Tomyが教える1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(1秒シリーズ)をはじめ著書多数。ハルメクTV「モヤモヤのち晴れ」 にもゲスト出演中!
自分が嫌になるのはなぜ?「自己嫌悪してしまう人の問題点」
自己嫌悪に陥りやすい人は、「自分の決断や行動によって失敗したらどうしよう」「誰かに迷惑をかけたらどうしよう」と「不安」になりやすい傾向があります。
この「不安」は「失敗したくない」という気持ちから生まれます。そしてその「失敗」は、自分の「理想」とのギャップによって生じます。
ここで理想通りにいかないと、自分のことが好きになれなくなります。なぜなら、「自分を嫌いになること」で、この不安に対する逃げ道を作ろうとするからです。
もし、うまくいかなかったら、それは「嫌いな自分」のせい。「やっぱり自分が悪かったんだ」「そんな自分が私は嫌いなんだ」と思うことで、不安を軽くしようとする。
つまり「自己嫌悪」の正体は、「不安」なのです。
この、“自己嫌悪してしまう人”の問題点は、「理想」の扱い方にあります。理想は本来、自分の方向性を示すポジティブなものです。できるかできないかは別として、「こういう形に持っていきたい」と示す夢や目標のようなものなので、成功も失敗もありません。
しかし、自己嫌悪してしまう人にとって、理想は「自分の至らなさを示す指標」にしかなっていません。
重要なのは、理想の扱い方です。すなわち、それは考え方次第で、自己嫌悪が消えるということでもあるのです。
【きっかけ1】周囲に劣等感を抱いたとき
ここからは、自己嫌悪に悩む人が陥りやすい“6つのきっかけ”を見ていきましょう。
まず、自己嫌悪に陥りやすい人は、他人と自分を比較しがちです。そしてこの「比較」は、たいてい自分を嫌悪するための材料として使われます。
自分がどんな状態にあっても、自分より優れた特性を持つ人は必ずいます。それゆえ、自分より優れた人を見つけては、ちょっとモヤッとしてしまうのです。
例えば、同僚が仕事でよい結果を出したとき。直接、自分が比較されていなくても、その同僚が褒められている様子を見聞きして、「ああ、私にはとてもそこまでできないな」と「劣等感」を抱いてしまう。
家にいても同じです。兄弟の昇進や結婚の報告といった朗報を聞いては、「それに引き換え私は……」とモヤッとしてしまう。「祝わなきゃいけない」「おめでとう」という気持ちはあるのに、「自分は他人よりできない」とばかり考えてしまう。
そして、さらに自分を嫌いになってしまうのです。
【きっかけ2】失敗したとき
人は誰でも失敗をします。その失敗から学び、次に生かすわけです。
しかし、自己嫌悪に陥りやすい人は失敗に気付いた瞬間に、「なぜ、自分はこんなこともできないのだろう」と考え、どんどん自分のことが嫌いになってしまいます。
「失敗」は「自分の思った通りにならないこと」でもあります。自己嫌悪に陥りやすい人は完璧主義であることが多く、「自分の思った通り」のレベルが高いことも珍しくありません。
端から見て、仕事ができる人であったとしても、本人の心の中では、「私は失敗ばかりの人間」と認識していることすらあるのです。
【きっかけ3】解決が難しい悩み事に直面したとき
人生、時には「何をどうしたらいいのか」わからない悩みに遭遇することがあります。そんなときにも、人はふと自己嫌悪に陥り、自分のことが嫌いになってしまいます。
その理由は、「自己効力感」が得られないからです。自己効力感とは、スタンフォード大学教授で心理学者のアルバート・バンデューラ博士によって提唱された概念で、何か問題に向かうときに、「自分ならできる、なんとかなる」と思う感覚のことです。
人は問題に直面したときに、道筋を立ててトライアンドエラーで進めていきます。しかし、全く何をどうしていいのかわからない問題に遭遇すると、ただ大きな問題の前に立ちすくむしかなくなってしまいます。
すると「きっとなんとかなる」という自信が失われ、自分をみじめに思ってしまう。だからまた、自分のことが嫌いになるのです。
【きっかけ4】理想と現実にギャップがあるとき
人は「期待」を持った瞬間から、ストレスを抱きます。
まず「期待通りにいくのだろうか」という不安を感じます。そして、期待通りにならなかった場合、怒りや悲しみなどのネガティブな感情が湧き上がってきます。
一番ストレスが少ないのは「期待通りだった場合」のみです。しかし、あまりポジティブな感情にはなりません。よくて「期待通りでよかった」という束の間の安心程度です。
「期待」がやっかいなのは、たいてい無自覚であることです。そのため、一つのことが「期待通り」にいったとしても、また次のことに「期待」してしまいます。
そして、この「期待」が自分に向けられると、「自分は本来こうあるべきだ」という理想と現実のギャップに苦しむことになり、自己嫌悪につながるのです。
【きっかけ5】意図せず人に嫌な思いをさせてしまったとき
罪悪感とは、自分を悪い、罪な存在であると認識すること。まさに、自己嫌悪そのものです。
罪悪感は、「相手に悪いことをしてしまった」と認識した瞬間に起きます。悪気はなかったのに、自分の起こした言動で相手に嫌な思いをさせる。こんなことは日常的にいくらでも発生します。
しかし、たいていの人は、軽く謝って流すか、あるいは自覚すらしないことがほとん
ど。本当の「罪」は、本人が自覚もせず、悪いとも思わず、周囲を傷つけるようなことです。だから罪悪感を抱きやすい人は、本来は何も悪いことはないのです。
しかし、自己嫌悪に陥りやすい人は「相手に悪いことをした」という思いだけが積み重なり、心の中の「自分」をかなり罪深い存在にしてしまっています。
結果として、そんな自分が好きになれず、自己嫌悪に悩まされてしまうのです。
自己嫌悪する人・しない人、何が違う?
では、自己嫌悪する人としない人の違いは、どこにあるのでしょうか?
それは、「現在」「過去」「未来」のどの時期を中心に考えているかの違いだと思います。どの時期を中心に考えるかは人によって異なります。考え方のクセがあるのです。
例えば「過去」を考えるクセのある人は、「あんなことをしなければよかった」という「後悔」について考えています。この「後悔」は、現在の自分への批判です。
「未来」について考えるクセのある人は、まだ起きてもいない悪いことを想像して「不安」になりやすい。だから自分が嫌になってしまうのです。
一方、「現在」のことを考える人は、「現在」を生きています。自分で今やれることを考え、今の瞬間に起きていることを楽しもうとします。
過去の失敗から何かを学ぼうとしますし、「未来」のことも、キリがないのであまり考えません。起きる可能性のあることなら、「現在何を対策すればいいか」ということに落と
し込みます。
自分の人生を生きている感覚があるからこそ、自己嫌悪になる暇がないのです。
次回は、私に寄せられたお悩み相談の中から、50代女性にも多い「2つの自己嫌悪パターン」をピックアップして、心を軽くするための対策を解説していきます。
もっと詳しく知りたい人はTomyさんの著書をチェック!
「7つの自己嫌悪タイプ」への対処法の提案とともに、「自己嫌悪からの抜け出し方」をわかりやすく解説。「どんなにポジティブシンキングが大切だと言われても、自己嫌悪の沼から抜け出せない」「ネガティブなことをぐるぐると考えてしまう……」という人は、ぜひ手に取ってみてください。
※本記事は『精神科医Tomyの自己嫌悪の抜け出し方』(日本能率協会マネジメントセンター刊)より一部抜粋して構成しています。
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