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更新日:2025年07月10日 公開日:2025年06月12日
「セルフ・コンパッション」のすすめ
更年期の症状がつらく、苦しい日々を過ごしていた臨床心理士の伊藤さん。それがガラっと変わって乗り切れたのは「あるルール」を実践したからだそう。つらい、苦しい、悲しいときにこそ試して欲しい「自分にやさしくする」3つのルールを解説します。
いとう・えみ 東京都生まれ。公認心理師、臨床心理士、精神保健福祉士。洗足ストレスコーピング・サポートオフィス所長。慶應義塾大学文学部人間関係学科心理学専攻卒業。同大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。専門は臨床心理学、ストレス心理学、認知行動療法、スキーマ療法。著者に『自分にやさしくする生き方』(筑摩書房 刊)など多数。
前回は、自分にやさしくなるための簡単5ステップや、欲求を叶える自己対話術をご紹介しました。最後のテーマは「セルフ・コンパッション」です。
日本語にすれば「自分への思いやり」。「自分にやさしくすること」と言い換えることもできます。
心理学的な理論や概念としての「セルフ・コンパッション」は、米国のクリスティン・ネフとクリストファー・ガーマーが開発、提唱してきたものです。
セルフ・コンパッションは、以下の3つの構成要素から成っています。
1 マインドフルネス
2自分へのやさしさ
3共通の人間性
私自身、セルフ・コンパッションを意識した「自分にやさしくする」実践を続けていますし、カウンセリングにも積極的に取り入れています。
「自分にやさしくする」ためのルールを3つご紹介します。
マインドフルネスとは、「「今、ここ」の自らの体験に対して、オープンな気付きを向け、どんな体験であれ、それをジャッジせず、そのまま受け止め、感じること」を言います。
「自分にやさしくなるための「簡単5ステップ」」で触れた、ストレッサーとストレス反応に気付いて外在化するというセルフモニタリングは、マインドフルネスの第一歩として不可欠です。
また、マインドフルネスにおいて決定的に重要なのは、「内なるチャイルドモード」が感じるストレス反応を「ヘルシーな大人モード」が受容することです。
その際、「ヘルシーさん」は「チャイルド」がどんなストレス反応を訴えても、それを「そっか」「そうだよね」とそのまま受け止めます。
「チャイルド」が訴えるストレス反応について、「でも、これはこうなんじゃない?」と切り返したり、「わがまま言わないの!」と否定したりすることなく、つまりジャッジ(判定)することなく、「チャイルド」が何を言ってきても、それをそのまま「そっか」と受け止めるのです。
これがさきほどのマインドフルネスの定義の後半(「ジャッジせず、そのまま受け止め、感じること」)に該当します。
セルフ・コンパッションにおける「自分へのやさしさ」とは、「他人にやさしくするのと同じように、自分にやさしくする」という意味です。
特に、何かに失敗してしまったとき、心身の調子が悪いとき、思うように物事に取り組めないとき、つまりネガティブな状況や状態にあるときに、私たちは自分のことを責めがちです。
「何で失敗なんかするの?」「自己管理がなっていないからだ」などとつい思ってしまうのです。
これが他人、特に自分にとって大切な人だったらどうでしょう。
「今回は運が悪かったんだよ」「調子が悪いとつらいよね」などと、思いやりに満ちたやさしい言葉をかけるのではないでしょうか。
セルフ・コンパッションでは、特につらかったり苦しかったりするとき、他人に声をかけるように自分自身にやさしくしましょう、ということを「自分へのやさしさ」として提唱しています。
私がセルフ・コンパッションを学び始めて、一番響いたのが、この「共通の人間性」でした。
人は生きていく上でさまざまな苦しみや痛みがあり、苦しいときには「こんなにつらいのは自分だけだ」と思いがちですが、「この苦しみは人類共通のものなんだ」と思ってみた方が、その苦しみをマインドフルに抱えていられることに、セルフ・コンパッションを実践するなかで気付くことができました。
例えば身近の人の死。
数年前に母を亡くす直前に「自分は母を亡くした経験がない。母が亡くなったら、私はどうなってしまうんだろう?」と一瞬恐ろしくなり混乱しかかったのですが、「親を亡くす、という体験は、多くの人が人生のなかで必ず体験することだ。だったら私も私らしく母とお別れができるだろう」と思い直すことができました。
これが「共通の人間性」です。
また、50代に入って更年期を迎えて心身ともにさまざまな不調が出て苦しんでいたとき。
「女性であれば、そして早死にせずに50歳ぐらいまで生き延びれば、更年期は誰もが体験することだ。なかなかやっかいな体験だけれども、医療の助けを借りながらなんとか乗り切ろう」と思うことによって、それこそなんとか乗り切りつつあります。
更年期に入ってから、婦人科の受付で待っている他の同年代の患者さんたちを「仲間、同士」、街で見かける高齢の女性たちも「先ゆく仲間、先輩」と思うようになり、「みんな、苦労してこの時期を通り過ぎていくんだよね」と思えると、とても心強いのでした。これも「共通の人間性」です。
もっと言えば、例えば働くこともそうでしょう。
働くことにはさまざまな喜びや充実感を伴いますし、働くことによって生きるための収入を得ることができるので、それは私にとっては生きていく上で不可欠なことですが、やっぱり働くことに伴うさまざまな苦労やつらさがあります。
正直言って、「働きたくないな。宝くじを当てて働かずに生活できればなあ」などと思うこともあります。でもおそらく多くの人がそんなふうに思いながらも働きながら生活していると思うので、そうするとすべての働く人と私も同じなんだ、と思えます。それも「共通の人間性」です。
さらに言ってしまえば、生きて、老いて、病んで、死ぬこと。この世に人間として生まれてしまったこと。すべてが「共通の人間性」なのです。
生きることはなかなか、いや、かなり困難なことだと今の私は実感しています。みんな、自ら望むことなくこの世に生を受け、死ぬまでは生きていくしかない。生きる中ではさまざまな困難に遭遇する。老いて病んで死んでいく。
となれば、私もすでに亡くなった数多の人たちと同じように、そして今地球上で生きているすべての人と同じように、死ぬまでは生きていきましょう、と受け入れることができます。
あるいは自分より先に、共に生きるパートナーや、自分より若い家族やきょうだい、友人が死んでしまうこと。大切な存在を失ってしまうこと。想像すると、自分が死ぬより、こっちの方がさらに苦しくつらい気がします。
でもそういう体験だって、ほとんどの人が生きている限り、必ずするものです。想像するだけで、悲しみに引き裂かれるような思いがしますが、でもそうやって大切な人を亡くして、それでもみんな、なお自分自身の命を生きるしかありません。これもやはり私にとっては究極の「共通の人間性」というように感じられます。
このように、悲しいこと、つらいこと、困難なことに遭遇したとき、働くことや生きることがしんどいとき、そのつらさやしんどさに対して「マインドフルネス」と「自分へのやさしさ」を実践すると同時に、その体験に「共通の人間性」を見出すこと、それによってセルフ・コンパッションは完成します。
※本記事は、書籍『自分にやさしくする生き方』より一部抜粋して構成しています。
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