60代、70代、80代はゆるやかに生きていく#3

坂東眞理子|後半生を生きる覚悟と4つの心の準備体操

坂東眞理子|後半生を生きる覚悟と4つの心の準備体操

更新日:2024年02月02日

公開日:2023年11月03日

坂東眞理子|後半生を生きる覚悟と4つの心の準備体操

「女性の品格」の著者であり、現在は昭和女子大学総長を務める坂東眞理子さん。50代、60代と女性が新しいステージを見つけ、人生後半を充実して過ごすためには「親友にしがみつかない「「お人好しで十分」――ゆるやかに生きていく覚悟が必要と話します。

坂東眞理子さん(昭和女子大学総長)

坂東眞理子さん(昭和女子大学総長)

ばんどう・まりこ
1946(昭和21)年、富山県生まれ。東京大学卒業。69年、総理府入省。内閣広報室参事官、男女共同参画室長、埼玉県副知事などを経て、98年、女性初の総領事(オーストラリア・ブリスベン)。2001年、内閣府初代男女共同参画局長を務め退官。04年、昭和女子大学教授となり、07年、同大学学長。16年から理事長・総長、23年から現職。06年刊行の『女性の品格』(PHP新書)は330万部を超えるベストセラーに。『70歳のたしなみ』(小学館刊)など著書多数。

心の持ちようを変えるのは行動です

心の持ちようを変えるのは行動です

坂東さんが初めての著書『女性は挑戦する―キャリア・ガールの生き方』を書いたのは、公務員として総理府婦人問題担当室で働いていた31歳のときでした。それから40年以上たった今、家庭、結婚、子どもの数などさまざまなことが変わりましたが「女性の一生で一番大きな変化は長寿化です」と話します。

「例えば今50歳の女性の平均余命は約39年。40年前には予想もできなかったくらい人生が長くなったわけですね。ゆっくりのんびりしているだけでは長過ぎる後半生を幸せに充実して過ごすには、あらためて50代、60代、70代、80代を、ちゃんと自分の足で生きていく覚悟が必要だと思うんです」と坂東さん。

人生の後半期は決して下り坂ではなく「新しい生き方が始まる別のステージ」という覚悟を持った方がいいと話します。

とはいえ、「エイヤッと清水の舞台から飛び降りるように、いきなり覚悟を持てといっても無理なので、まずは『心の準備体操』が必要です」と坂東さんは言います。 

準備1:具体的で小さなことから始めてみる

準備1:具体的で小さなことから始めてみる

「どうせ今からでは遅い」「自分にはたいした力はない」「私には無理」といった思い込みで固くなった心をもみほぐし、これからの人生を自分で楽しく生きていこうと心をしなやかにするのが心の準備体操。そのために「具体的で小さなことから始めてみましょう」と提案します。

「心の持ちようを変えるには、あれこれ思い悩むよりも、具体的に行動してみることです。例えば1週間は夜9時以降に甘い物を食べないとか、英単語を1日10個覚えるとか、なるべく具体的でちょっとがんばらないとできない目標を立ててみる。そうして小さな達成感を二つ、三つと重ねていくうちに、私もやればできるんだ、まだまだ捨てたものじゃないと自信が持てるようになります」

同様に、「あの頃はよかった」という過去への感傷や「もっとこうするべきだった」という後悔から脱して、「これから何をしよう」と未来志向にスイッチを切り替えるためにも、行動することが大事だといいます。

「子ども部屋を片付けて自分の書斎にしよう、この棚にある物を処分して好きなしつらいにしよう、服を整理して難民に寄付するものを10着選ぼうというように、目標を持って過去の物を片付けることは気持ちを切り替える効果があります。

私の経験上、目標を持たずに本や服を片付け始めても、思い出に引っ張られて全然進まず、ダメだ!となってしまいます。やはり目標設定が大事なんです」

準備2:自分の得意、不得意を棚卸しする

準備2:自分の得意、不得意を棚卸しする

さらに後半生という新たなステージで本当にしたいことをするために「自分は何が得意で好きか、何が不得意で嫌いかを棚卸ししてみましょう」とアドバイスします。

「50年、60年と生きていれば、ここがダメ、あそこがダメと自分の弱みはよくわかっているはずです。そこで“だから私はダメなんだ”と後ろ向きにくよくよ考えていると、マインドワンダリング(心の迷走)といって一番、脳を疲れさせるんですね。

私自身、昔から掃除が好きでも得意でもなく、30分もすると疲れ果ててしまって、その割に部屋がきれいにならず自己嫌悪に陥っていました。それで70歳を過ぎた頃に“もういいか”と、1週間に1回お掃除をしてくださる方に頼むことにしたところ、とても気がラクになって元気になりました。

若い頃は自分ですべきことを人に頼むのは罪悪感がありましたが、もういいと思うんです。私たちは時間もエネルギーも限られていますから、好きで得意なことに打ち込むためにも、思い切って不得意なことは手放していいのではないでしょうか」

準備3:たくさんの人のファンになる

準備3:たくさんの人のファンになる

坂東さんは後半生の人間関係について「基本は一人」という覚悟が必要と語ります。

「『友達がいない私はかわいそうで寂しい。私のどこが悪いのかしら?』と悩んでいる方が意外とたくさんいますが、人間って基本は一人です。友達がいるのは当たり前ではなく、“有り難い”ことなんですね。親友と呼べる人に出会うのは本当にまれなことだと思います。

私も大学時代、家族よりも私のことを理解してくれているのはこの人、と思うくらい親しい友達がいましたが、今は1~2年に1回会う程度。寂しいけれど、年齢とともに住む場所や世界は変わっていき、付き合い方が変わるのは仕方のないことだと思います」

そこで坂東さんが同世代の女性にすすめるのが、親友よりも、ゆるやかに好感を持つ相手をたくさん持つことです。

「親友になれるかどうかは自分では決められません。こちらが素敵だな、仲良くなりたいなと思っても、向こうがそう思ってくれるとは限らないわけですから。だから、ここが好きだなと思える長所を持つ人に出会ったら、友達にまでなれなくても、ファンになるのがいいと思います。

ファンであれば、相手からのお返しを期待することなく、自分にとって心地よく、素敵だなと思えるところを一方的に好きになればよいのです。一人の親友にしがみつくよりも、たくさんの人のいいところを見つけて応援しようとする方が人生は充実して楽しくなります。好意を向けているうちに新しい友達もできるかもしれません」

準備4:お人よしでよしとする

準備4:お人よしでよしとする

坂東さんは人生の後半期には「ケチケチせず、お人好しでいい」といいます。

「自分が何者であるかは、時間やお金をどう使うか、人とどう付き合うかで決まります。私は昔から時間にケチで、赤信号にイライラし、電車が来たら飛び乗っていましたが、70代になった今、時間もお金も少しムダにしてもいいと思っています。

たとえムダになっても自分にとって大切だと思えることに気持ちよく時間もお金も使おうと決めました。人付き合いも損得は考えず、お人好しでいい。人生後半はそれくらいゆるやかに構えている方が心も人間関係も豊かに暮らせるはずです」

『女性の覚悟』

『女性の覚悟』

後半生を強く生きぬくために必要なのは、自分の人生に「覚悟」を持つことと説く坂東さんの最新刊。1350円/主婦の友社刊

取材・文=五十嵐香奈(編集部) 撮影=島崎信一

※この記事は「ハルメク」2023年9月号を再編集して掲載しています。

HALMEK up編集部
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