人生後半「新しいステージ」を輝かせるために#2
坂東眞理子|60代からを充実させる「老活」のコツ5
坂東眞理子|60代からを充実させる「老活」のコツ5
更新日:2025年06月01日
公開日:2023年11月03日
坂東眞理子さん(昭和女子大学総長)

ばんどう・まりこ
1946(昭和21)年、富山県生まれ。東京大学卒業。69年、総理府入省。内閣広報室参事官、男女共同参画室長、埼玉県副知事などを経て、98年、女性初の総領事(オーストラリア・ブリスベン)。2001年、内閣府初代男女共同参画局長を務め退官。04年、昭和女子大学教授となり、07年、同大学学長。16年から理事長・総長、23年から現職。06年刊行の『女性の品格』(PHP新書)は330万部を超えるベストセラーに。『70歳のたしなみ』(小学館刊)など著書多数。
コツ1:「いいこと」を思い出し、不機嫌の種を手放す

(記事は2020年9月に取材したものです)
鏡に映った自分の顔を見て「あーあ」とがっかりしたり、自分にできないことをしている人を見て妬ましく思ったり、若い頃には難なくやれたことができなくなって落ち込んだり……。年を重ねると、不機嫌の種が山ほどあって、“ありのままの自分”の気持ちを素直に出していると、どんどん機嫌が悪くなっていきます。
ありのままの自分で機嫌よくいられるのは、よっぽどの聖人君子だけ。とりわけコロナ禍では気分が沈みがちですから、“ありのままでいい”という思い込みを捨てて、意識して機嫌よく一日一日を過ごすことをおすすめします。
自分を機嫌よくさせるために心掛けたいのが 「受けた恩は忘れるな。施した恩は忘れろ」です。自分が他人からしてもらったありがたいことって、だいたい忘れてしまうんです。反対に、人から批判されたことやいじわるをされたことはしっかり覚えていて、“自分はなんて運が悪いんだ”“私の人生は苦労ばかり”と嘆いたりする。
それが人間というものですが、嫌なことをいくら思い出したって、しょうがないじゃないですか。過ぎればみんな過去の思い出。だから発想を変えて、自分がしてもらったことや楽しかったことなど「いいことだけ」を思い出す練習をする。どんな人でも10の思い出のうち、一つ二つはいい思い出があるはずです。そうして自分を励まして、機嫌よく過ごすことが、年を重ねた大人の周囲への礼儀です。そして周囲が幸せになれば、それがまた自分に跳ね返ってきます。
コツ2:何をしてもらうかより「何ができるか」考える

新型コロナの感染拡大で、いろいろな場に出掛けて、人と交流することができなくなっているのは、本当に困ったことだなと思っています。でも、たとえ直接会って交流できなくても、いろいろな形で人と交流し、同時に貢献することもできると思うんです。
2020年8月、74歳の誕生日に、私は久しぶりの舞台「カルメン」を見に行きました。観客の数を減らし、飛沫対策など万全な態勢を整えての舞台は、さすがの迫力でした。今、舞台関係の人たちは思うように公演できず、本当に困っています。ですから、観劇後はささやかながら募金をしてきました。
東日本大震災の後は、風評被害に遭っていた福島の農産物を「絶対おいしいから」と友人にもプレゼントして農家を応援していました。同じお金を使うのでも、誰かのためになる使い方をすると、自分もちょっとだけいいことをしたなと気分がよくなります。
私の大好きな言葉に、「国から何をしてもらうのかを問うのではなく、君が国のために何ができるかを考えたまえ」があります。
ジョン・F・ケネディ大統領が就任演説で若者たちに言った言葉ですが、私たち高齢者も、社会や若い人たちに何ができるかを考えなくちゃいけないという自戒の言葉になると思います。この言葉を胸にとどめておけば、“自分が期待するほど周りがしてくれない”という不機嫌な気持ちも、少しは治まるはずです。
コツ3:健康づくりはコツコツと「他人と比べない」

充実した生活を送るには、もちろん健康も大切です。私はこれまで大学に30~40分かけて歩いて通勤し、週1回ほどジムに通っていました。それがコロナ禍で家にいる時間が増えると、何となくゴロンとして、つまみ食いばかりしてしまうので(笑)、週に3~4回、夕食後に1時間ほどジムに通うようになり、6~7月で3キロ痩せました!会食がなくなったことも大きいですね。
私は心臓が強くないため、無理な運動はしませんが、他人と比べることなく、とにかく自分のペースでコツコツと、スクワットをしたり、ダンベルを上げたりして筋肉を育てる“貯筋”に励んでいます。
60歳の記念に初めて富士登山をしたとき、普通は5合目から日帰りでしょうが、私は一泊して8合目からゆっくりと自分のペースで登頂しました。70歳のときには、富山の高校の同級生たちと地元の立山に登り、80歳になったら高尾山に登ろうと言っています。そのくらいの気負わない目標でいいんです。
コツ4:恥を捨て「新しい場」に飛び込んでみる

私は昨年、歌人の馬場あき子さん主宰の結社「かりん」に加わりました。若い頃から短歌が好きで、気が向いたときにだけ一人で詠んでいたのですが、今は毎月、締め切りまでに必ず10首、作らなければなりません。
70歳を過ぎて、新入生としてピラミッドの底辺から始めるのは正直、躊躇もありました。今さら入るのは恥ずかしいとか、才能がないと言われて傷つくんじゃないかとか、いろいろ考えてなかなか踏み出せずにいた自分は弱かったなと思います。
それを思い切ってエイヤッと飛び込んでみたら、出来のいいときは褒めてもらえますが、ダメなときも多々あって、落ち込んだり、喜んだり。でも、この年になってたしなめられ、教えられる場があることは、とてもありがたいと思っています。
新しい場に行くと、新しい出会いもあります。昔からの親友がぽつりぽつりと逝くと、だんだん寂しくなりますが、“新友”ができると寂しさが紛れて、違う世界が広がります。
コツ5:「今さら・どうせ」は禁句。誰より自分を大切に

年を重ねて、“今さら新しいことなんて身につかない”“どうせ年なんだから”というふうに自分を貶めていると、世界がどんどん小さくなっていきます。私は、いつも学生たちに「自分を大切にしましょう」と言っているんです。
自分を大切にするとは、無理せずありのままの自分でいることでも、わがままを通すことでもありません。自分を見捨てず、自分のいいところを見つけ、自分の可能性を引き出す――それが自分を大切にすることです。どうか自分を粗末にすることなく、上機嫌で次の一歩を踏み出してみましょう。
取材・文=五十嵐香奈(編集部) 撮影=中西裕人
※この記事は「ハルメク」2020年11月号を再編集して掲載しています。




