認知症になる前に!リスクに備える3つの終活ポイント

2023年12月11日

80代後半では女性の44%が認知症を発症している!

認知症になる前に!リスクに備える3つの終活ポイント

人生100年時代、「認知症」は避けては通れない問題です。2025年には5人に1人が発症すると推察される今、事前にできることとは? 認知症リスクに備え、生活や財産の管理など、終活でやるべき3つのポイントを解説します。

65歳以上の約5人に1人!? 加速する認知症の実態

目を背けないで知っておきたい!認知症の実態

誰しも認知症になった自分の姿など、けっして想像したくないでしょう。しかし、人生100年時代といわれるほど長寿化が進んだ今の世の中では、もはや認知症は、多くの人たちが患う可能性の高い、一般的な病気だと言わざるをえません。

内閣府の「高齢社会白書(2017年版)」を見ると、2012年の時点では65歳以上の約7人に1人が認知症を発症していました(有病率15%)。高齢者の数がさらに増えるであろう2025年には、65歳以上の約5人に1人が認知症になると推察されています。

認知症の有病率

しかも、長生きすればするほど、認知症を患うリスクは高くなります。「厚生労働省科学研究費補助金認知症対策総合研究事業報告書(研究代表者:朝田隆、2013年)」によれば、2013年の時点で65歳以上の約16%が認知症患者であるのに対し、80歳代後半では男性の35%、女性の約44%、95歳を過ぎると男性の約51%、女性の約84%が認知症になっているのです。

認知症と言えば、妄想や徘徊などを連想しがちでしょう。しかし、いきなりそのような状態になるのではなく、症状の進行は個人差があります。本人は自分自身の変化に戸惑いながらも、認知症を患っていること自体は、なかなか自覚しづらいのが現実です。

例えば、認知症の中で特に患者数の多いアルツハイマー病では、その初期症状として物忘れ(記憶障害)が目立つようになります。しかし、認知症を発症していなくても、誰もがシニアになれば大なり小なりの物忘れは生じます。自分自身で認知症の可能性を疑うのはなかなか難しいことです。

認知症は螺旋階段を降りていくようなペースで進行します。比較的調子のいい時期と不調な時期が交互に訪れながら、次第に症状が重くなっていくのです。周囲が明らかにおかしいと感じた時点では、もはや本人の判断能力がかなり低下していることが考えられます。

その後のライフプランや死後手続の希望などを、本人が決めたり家族と話し合うことは既に難しくなっているというわけです。

認知症リスクに備えて、明確にしておきたい3つのこと

認知症リスクに備えて、明確にしておきたい3つのこと

何の準備もしないまま認知症になってしまったら、病状の進行次第では、自分が本当に望んでいることを伝えるのが難しくなります。

それだけでなく、認知症により判断能力が低下しているとみなされると、法的に売買契約が無効とみなされたり、預金の引き出し・振込・振替手続きができなくなったり、遺言作成など相続対策も自分で行うことが難しくなってしまいます。

例えば、介護施設への入居をしたいときや家を売りたいときに、契約ができない可能性があるのです。

前述の通り、認知症は誰もが患う可能性のある病気ですから、元気なうちに備えを始める必要があります。その際、特に明確にしておきたいのが以下の3つです。

(1)所有財産をどうするのか明確にする

所有財産をどうするのか明確にする

認知症でお金の管理ができなくなったことを想定して、事前に備えておくことはとても大切です。まず、生活費や入院費、施設入居のための費用をしっかり準備し、それを家族が使えるようにしておきます。

また、自分の所有財産を洗い出しつつ、相続に関しても希望を明らかにしておきましょう。そのためには、法的に有効な遺言書の作成手続きを元気なうちに済ませること。認知症の症状が進んでしまうと、遺言能力がないと判定されて作成できないというケースも出てきます。

また認知症リスクに備える信託商品を活用する方法もあります。例えば、三井住友信託銀行の「人生100年応援信託〈100年パスポート〉」。生活費や医療費、介護費などの支払いを家族に任せることができる機能や、認知症発症後も契約者の年金資金を有効に使える機能などが含まれています。元気なうちに、こういった商品を検討するのもいいでしょう。

(2)生活・医療・介護に対する希望を明確にする

生活・医療・介護に対する希望を明確にする

認知症の症状が進むと、有料老人ホームやグループホーム(認知症対応型共同生活介護)といった施設への入居が必要になります。自分はどこで暮らし、どのような医療・介護を受けたいのかについて、あらかじめ自分の希望をきちんと書き残しておきましょう。

あなたの希望が事前に分かっていれば、介護をする家族の負担も軽減されるでしょう。

(3)自分はどのような人間なのかを明確にする

自分はどのような人間なのかを明確にする

自分の人生を振り返り、その記録を残しておくことには大きな意味があります。もしも認知症を患い、自身の記憶が曖昧になってきても、「私はあの頃、こんなことを考え、こういうことをしていたのか」と確認することもできるでしょう。

また、症状が悪化して判断能力が著しく低下した場合も、家族をはじめ、介護や看護を担う人たちなどに自分の人となりを知ってもらう手段にもなります。

自分のこれまでの歩み(経歴や折々で思ったこと)に加えて、自分がどういった人間なのか(性格や嗜好、趣味、大切にしてきたことなど)についても、元気なうちに記しておきましょう。自分のアイデンティティーに関する記録も、認知症リスクに備える重要な終活です。

代理で手続きをしてもらう「成年後見制度」を知っておこう

代理で手続きをしてもらう「成年後見制度」を知っておこう

認知症になっても自分の希望通りの生き方を実現させるには、「成年後見制度」を利用するのも選択肢の一つです。

「成年後見制度」とは、認知症などで判断能力が衰えた人を法的に保護・支援するものです。本人に代わって「成年後見人」が財産管理や身上保護(介護・福祉サービスや施設入所・入院の契約など)の手続きを行います。

「成年後見制度」には「任意後見制度」と「法定後見制度」の2つがあります。

「任意後見制度」は、本人が元気なうちに、あらかじめ「任意後見人」を選び、自分に代わってやってもらいたいことに関して契約を結んでおきます。任意後見人の契約は、本人と任意後見人がそろって公証役場に行き、公正証書を作ってもらう必要があります。

また「法定後見制度」は、既に判断能力が不十分になった際に、申し立てにより家庭裁判所によって後見人等が選任されます。

もしもの時の備えとして、元気なうちに「任意後見制度」を利用し、あらかじめ契約を結んでおくことも考えましょう。その際、報酬も発生しますから、その費用についてもしっかり準備することが大切です。

※この記事は2021年10月の記事を再編集して掲載しています。

■もっと知りたい■

■認知症に関する監修■

朝田隆さん(認知症専門医)

監修者プロフィール:朝田隆さん(認知症専門医)

あさだ・たかし メモリークリニックお茶ノ水 院長・理事長。東京医科歯科大学特任教授。筑波大学名誉教授。専門はアルツハイマー病の臨床、認知症の早期診断法・予防。著書に『認知症のグレーゾーン』(青春出版社・刊)など多数。
 

すこやかブレイン
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認知症に早期の段階で気付くヒント、予防のポイント、さまざまな不安解消をサポートする情報を発信します。

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