さすが大スターと感じさせる存在感

映画「白頭山大噴火」はビョン様に詫びたいほど面白い

公開日:2021.09.18

同世代コラムニスト矢部万紀子さんがおすすめの作品を紹介する連載。今回は、矢部さんが「絶対に見てほしい」とすすめるほど面白い!イ・ビョンホンが出演するディザスターパニックアクション映画「白頭山(ペクトゥサン)大噴火」のレビューをお届けします。

ⓒ 2019 CJ ENM CORPORATION, DEXTER STUDIOS & DEXTER PICTURES ALL RIGHTS RESERVED
ⓒ 2019 CJ ENM CORPORATION, DEXTER STUDIOS & DEXTER PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

14年前、済州島旅行で知った「ビョン様」人気

済州島のイベント会場で、チャングムと記念撮影

韓国の済州島に行ったのは、2007年1月のことでした。きっかけは韓流ドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」です。「冬のソナタ」ブームにはまるで興味を感じませんでしたが、2004年からNHK-BS2で放送された「チャングム」を何気なく見たところ、夢中になりました。

54話にも及ぶ超大作ですが、最終盤の舞台になったのが済州島でした。チャングムは謀略に巻き込まれ、済州島に流刑されます。一緒に流されるのが、小さい頃からチャングムが師事し、とうとう「最高尚宮(チェゴサングン)」という地位にまで上り詰めた女性です。

彼女は拷問された時の傷から弱っていき、チャングムの背中で死んでしまいます。「チェゴサングン様、チェゴサングン様、死んではいけません」と言いながら、師を背負ったチャングムが細い山道を進んでいく。その光景は今でも目に焼き付いています。

「チャングム」仲間の女性と2人で行きましたが、空港から乗ったタクシーの運転手さんに「オールインですか?」と聞かれました。「いいえ、チャングムです」と答えると「日本から来る女性は、みんなオールインなのに」と驚かれました。

「オールイン 運命の愛」は、「チャングム」が始まる前にNHK-BS2で放送されていたドラマです。タクシーに乗るたびに「オールインですか?」と聞かれ、日本での人気を知りました。

あるホテルを訪ねたら、主演のイ・ビョンホンの等身大の写真が出迎えてくれました。「ロケしたのはこちらです」的な案内もばっちり出ていて、彼のファンが押し寄せていることを知りました。帰国後、彼が「ビョン様」と呼ばれていることも知り、「そんなことも知らず、済州島に行くなんて失礼しました」と思ったものです。
 

絶対見てほしい!映画「白頭山大噴火」

絶対見てほしい!映画「白頭山大噴火」


前置きが長くなりました。今回ご紹介するのが、公開中のビョン様主演映画「白頭山大噴火」です。いやー、面白いです。すごいです。絶対、見に行くことおすすめします。実は初ビョン様でしたが、すごかったです。貫禄でした。「今まで拝見もせず、失礼しました」と2度目のお詫びをした次第です。

北朝鮮と中国の国境にそびえる白頭山で観測史上最大の噴火が起き、それによってマグニチュード7.8の大地震が引き起こされます。ソウルにも巨大な噴石が降りまくり、ビルも道路も橋も次々と破壊されます。CGを使っての映像が大迫力で、もうハリウッド映画なんて必要ないと思うほどです。

これまでの研究から、あと3回の噴火が予測され最後の爆発が最大の地震を招くことがわかっています。それを食い止めるために(割愛しますが、その方法がすごい!)韓国から派遣されるのが、その日が除隊日だったという爆発物処理班の大尉、チョ・インチャン(ハ・ジョンウ)。

作戦敢行のために韓国側が引き入れるのが、ビョン様演じる北朝鮮の武力省少佐、リ・ジュンピョン。彼は北京で情報活動をしていましたが、中国側と通じていたことが発覚、収容所に入れられていました。

チョ大尉の部隊が彼を確保すると、皮肉な表情を浮かべながらも韓国の作戦に協力するように振る舞います。が、何かを隠しています。次第に思惑が見えてきますが、全貌は見えません。チョ大尉も、見ている側も、彼に翻弄されます。

で、リ少佐、強いです。いろいろな敵を次々とやっつけます。敵は韓国をめぐるパワーバランスを反映していて、あれこれ考えさせられます。が、そんな思考を追いやるしかないくらい激しい戦いが、猛スピードで展開していきます。リ少佐と共に戦ううちにチョ大尉が変わっていき、次第に映画は「バディもの」の様相を強めます。

チョ大尉は、少し間が抜けて笑えるキャラクターとして描かれます。一方のリ少佐は権謀術数の達人ですから、一貫して複雑さと暗さをまとっています。対照的な二人ですが、最後は一つの方向に進むことで一致します。で、どうなるか。
 

ビョン様の奥行きある深い演技に涙がポロリ

『白頭山大噴火』イビョンホン
ⓒ 2019 CJ ENM CORPORATION, DEXTER STUDIOS & DEXTER PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

私の感想だけを書きます。リ少佐の行動に、涙がポロリとこぼれました。ダーっと流れる涙でなく、ポロリでした。ビョン様の演技の奥行きの深さがそうさせたのです。さすがハリウッドでも活躍する大スターだと思いました。

ビョン様ファンの方々に、おすすめしたいことがあります。映画を見たら、パンフレットを買ってください。ビョン様のインタビューが2ページにわたり載っています。長いインタビューはビョン様だけです。その内容がすごくカッコよく、まさにスターのそれなのです。済州島をかつて訪ねた方はもちろんですが、そうでない方もぜひ!

『白頭山大噴火』

2021年8月27日より公開中!
監督:イ・ヘジュン『彼とわたしの漂流日記』 キム・ビョンソ『神と共に』シリーズ(撮影監督)
出演:イ・ビョンホン『MASTER/マスター』ハ・ジョンウ『神と共に』シリーズ マ・ドンソク『新感染 ファイナル・エクスプレス』 チョン・ヘジン『名もなき野良犬の輪舞』 ペ・スジ『建築学概論』
提供:ツイン・Hulu/配給:ツイン
公式サイト: paektusan-movie.com

矢部万紀子(やべ・まきこ)
1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。「アエラ」、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、書籍編集部長。2011年から「いきいき(現ハルメク)」編集長をつとめ、17年からフリーランスに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)、『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔 生きづらさを超えて』(ともに幻冬舎新書)

■もっと知りたい■

矢部 万紀子

1961年生まれ。83年朝日新聞社に入社。「アエラ」、経済部、「週刊朝日」などで記者をし書籍編集部長。2011年から「いきいき(現ハルメク)」編集長をつとめ、17年からフリーランスに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』(幻冬舎新書)

マイページに保存

\ この記事をみんなに伝えよう /

注目企画