綾野剛&星野源W主演ドラマ待望の放送

ドラマ「MIU404」女性の描き方に大ヒットの予感

公開日:2020/07/17

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50代コラムニストの矢部万紀子さんによる、月2回のカルチャー連載。ドラマウォッチャーとして、新型コロナウイルスの感染拡大によって放送が延期されていた春ドラマ「MIU404」(TBS系、金曜夜10時放送)を熱く語ります。

綾野剛&星野源W主演ドラマ
(C)TBS

ようやく始まった野木亜紀子さんのオリジナル脚本ドラマ

「MIU404」(TBS系)
(C)TBS

ずっと楽しみにしていたドラマ「MIU404」(TBS系)が6月26日から始まりました。で、いきなり結論です。面白い! 深い!

警視庁機動捜査隊(英語にして頭文字をとると、MIU)を舞台に、星野源さんと綾野剛さんがコンビを組みます。星野さんが冷静、綾野さんがチャラい、そんなキャラ同士の会話がしゃれています。ドラマ「逃げ恥」「アンナチュラル」などで大好きになった脚本家・野木亜紀子さんの本領発揮だとニコニコしながら見ています。そしてもう一つ、ニコニコする材料があります。

 

「MIU404」に登場する女性刑事に注目!

二人は第4機動捜査隊に所属するのですが、隊長・桔梗ゆづるを演じるのは麻生久美子さんです。刑事ものでえらい女性が出てくることは、時々あります。「東大卒」「現場を知らない」「冷酷」などと描かれることが多いです。その点、桔梗は違います。3話で保育園に通う男の子がいることがわかりましたが、あとは組織の一員として普通に働いています。上司と話し、決断し、命じ、報告し……案外これは珍しく、それだけでニコニコするのです。

3話ではっきりしたのですが、彼女は意見を言う人です。声高ではなく、普通に言うべきは言う。普通が素敵です。3話で起こった犯罪は、事件が起きたかのように110番する「いたずら通報」です。桔梗は役所内の食堂で昼食を食べ、刑事部長もいます。彼が「いたずら通報」と口にすると、桔梗はこう言います。

「その『いたずら』って表現やめませんか。いじめは暴行、傷害、強要、侮辱罪、幼児への『いたずら』と呼ばれる行為は性的加害、性暴力」

部長がこう返します。「さすが女性、細かいところに気付く」。すかさず桔梗は返します。「今、女性、関係ありません」。

そうだ、そうだ、と拍手したくなりました。オブラートにくるむと犯罪の本質が見えなくなっている。そのことを一人の警察官として言っただけです。ここまでは私でも思いますが、上司を前にすると「ま、いいか」としがちです。長い会社員生活を振り返っての反省です。でも彼女は、そこをうやむやにしない。うやむやにさせないドラマなのです。

ウソの通報するのは、高校生です。好き放題する奴らでも少年法で守るべきなのかと問う若手隊員に、桔梗はこう言います。「私はそれは、彼らが教育を受ける機会損失だと思ってる。社会全体でどれだけすくい上げられるか。5年後、10年後の治安はそこにかかっている」。

未成年者の犯罪が起こり、それが苛酷なものであればあるほど、少年法でどこまで守るべきかという議論が起きます。桔梗は警察官ですから、そのことについてよく考えて当然でしょう。ただ、それを短く端的に表現する。しかも、「御説ごもっとも」という感じにしないのが、このドラマのよくできたところです。綾野さんが、こう言います。「隊長、俺、隊長のこと好きだわ。めっちゃ好き。俺の中の少年がビビビビビって」。

後に星野さんが「隊長に好きとかセクハラじみたこと言うな」とたしなめるシーンも描かれます。そこから綾野さんは「ラブ」でなく「ライク」なんだと反論、どうやら星野さんは隊長が「ラブ」方向で好きらしいことが示唆されて、それは次回以降のお楽しみなのでしょう。

 

脚本・プロデューサー・演出は全員女性

全体に、女性を見る視線がフラットであたたかいと感じます。だから見ていて、心地いいです。そして、そういうドラマ、案外少ないのです。よいなー、と思いながらエンディングに流れるスタッフ名を眺めていました。「脚本 野木亜紀子」の後に「プロデュース 新井順子」と来て、「演出 塚原あゆ子」とありました。ドラマを作る要の3人が、全員女性だったのです。

見た瞬間、うれしくなりました。女子3人だから桔梗はカッコよく、でも普通に存在しているんだな、と思いました。それから調べて、この3人は「アンナチュラル」というヒットドラマを作った3人だとわかりました。

「女性活躍社会」などという掛け声は、しばしば聞くようになりました。ですが、現実が追いついていないことは、新型コロナウイルスのニュースを見ていてもすごく感じました。政治家も専門家会議のメンバーも、小池百合子東京都知事を除くと全員男性。やっぱり、これっておかしいです。

女性をフラットに描く。それはやはり、男性より女性が得意でしょう。そういうドラマを貴重と感じるのでなく、当たり前に感じる日が一刻も早く来てほしい。そう思うので私はせっせと「MIU404」を見て、ことあるごとに「面白い! 深い!」と言おうと思います。視聴率という結果を出して、テレビ業界のおじさんたちに「女性の描き方、大切だよね」と思ってもらいたい。そのための、ささやかな作戦です。

 

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矢部 万紀子

1961年生まれ。83年朝日新聞社に入社。「アエラ」、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、書籍編集部長、11年から「いきいき(現ハルメク)」編集長をつとめ、17年からフリーランスに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)、『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』(幻冬舎新書)

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