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BTS、嵐、シンガーソングライターが推し!

「推し活」は元気の源!脳内科医が語る脳にもいい理由

公開日:2021.02.12

更新日:2024.04.25

監修者プロフィール:加藤俊徳さん(脳内科医・医学博士)

かとう・としのり 加藤プラチナクリニック院長。昭和大学客員教授。脳番地トレーニングの提唱者。2006年、株式会社「脳の学校」を創業。加藤式MRI脳画像診断(脳相診断)を用いて著名人、芸人、スポーツ選手だけでなく、発達障害などの脳の特徴を診断。加藤プラチナクリニックでは脳の健康状態、個性や適職などを診断し、薬だけに頼らない脳の治療を行う。著書は『脳を鍛えれば、人生が変わる』(海竜社)、『片づけ脳─部屋も頭もスッキリする!』(自由国民社)、『脳が若返る最高の睡眠:寝不足は認知症の最大リスク』(小学館新書)ほか多数。

 

「推し」がいるって毎日楽しい!

育児がひと段落してアイドルのツアーに足を運んだり、介護中に羽生結弦くんの演技に元気をもらったり、海外ドラマの影響で語学を勉強したり………。こんなふうに、日常生活に癒やしや刺激を与えてくれる「推し」の存在は尊いものです。

脳内科医で「脳の学校」代表の加藤俊徳さんは、「『応援の対象』が、脳に新鮮な体験をもたらし、脳の活性化につながる」と語ります。そこで今回は、「推し」がいて新鮮な毎日を送っている3名の例をご紹介します。さらに「推し」という存在が脳にどんな影響を与えるのかを加藤さんに伺いました。

 

BTS(防弾少年団)が好きになって、4kg痩せた!

BTS
©BigHitEntertainement

韓国の7人組男性グループで、世界中で何百万人ものファンの心を掴んでいるBTS(防弾少年団)にハマっているというM.Mさん(53歳)。

「2020年の11月に、BTSのDynamiteをテレビ番組で見たことがきっかけでした。きれいに揃ったキレッキレのダンス、それでいて余裕の笑顔で楽しそうにパフォーマンスをするところが衝撃的でした」

新型コロナウイルスの影響で、テレワークで働いているというMさん。黙々と仕事をして、日々淡々と過ぎる生活に、高揚感を与えてくれたのがBTSだったと話します。

「きっかけは歌と踊りでしたが、YouTubeで調べると、彼らのバラエティー番組やプロモーションビデオや舞台裏映像がいくつも出てきました。ものすごく陰で努力している姿に励まされ、かっこいいいところやおちゃめなところにほっこり。いろんな彼らを見ていると、つい笑みがこぼれてしまうんですよ。ふとスマートフォンの画面に映り込んだ自分の顔が、とてもニヤついていて自分にビックリしたほどです(笑)。久しぶりに笑った感覚をくれました」

またMさんには、推し活仲間がいるそう。「妹にもおすすめしたら、彼女もBTSに大ハマりしました! お互いの推しメンバーが違うので、推しのいいところを見つけてよくしゃべっています。というか、みんな個性が違うから、毎週のように推しメンバーが変わる(笑)。 共感できる人がいるっていうのは、とてもいいことですね」

Mさんは毎朝Dynamiteを3回踊っているそう。そのおかげか、コロナで6kg太ったところ4kgの減量に成功。驚くべきBTS効果です。

「お腹が空いていないのに無駄に食べてしまう生活でしたが、心が満たされているからか、余計な間食をしなくなりました。それにDynamiteを3回踊ると約10分、体が温まる上に、五十肩の肩も上がるようになりました。眠りのぐっすり感も深まって、不眠症も改善しちゃって(笑)。毎日がポジティブになって、壁にぶち当たったときは<RM(リーダーの名前)だったらどう考えるかな>と指標にすることも。いいことだらけですね♪」

 

世代を越えて魅力を語り合える!「国民的アイドルグループ」推しのC.Tさんの例

国民的アイドルグループ

まず、言わずと知れた5人組の国民的アイドルグループファンのC.Tさん(60歳)。

「2008年に、メンバーの1人が主演したドラマを見たことがきっかけで、注目するようになりました。演技も歌も踊りも上手で、さらに芸術家肌。でも本人はいたって控えめで、飾らないところが好きになりました。

ライブに行くために、2012年くらいにファンクラブにも加入しました。でも、人気がすごくてチケットが全然取れなくて、昨年は2回しか行けませんでした。大阪、北海道と”遠征”にも行ったことがありますが、観光も兼ねて行けるから楽しいです!

彼らのライブに行くと、温かい気持ちになれます。それは、彼らがとてもファンを大事にしてくれているのが伝わってくるから。心が折れていても、元気になれるんです。彼らの仲の良い姿も好きです。

それに、世代を超えて初対面のファン同士で気軽におしゃべりできて、つながりが生まれるようになりました。ライブにはチケットを一緒に取り合っている友人と行きますが、彼女はもともと仕事で出会い、この趣味をきっかけに仲良くなりました。知らない人でもグッズを持っていたら、私から話し掛けられます。ちなみに孫とも一緒に応援しています(笑)」

 

コンサートは心の洗濯!「馬場俊英」推しのR.Oさんの例

コンサートは心の洗濯!「馬場俊英」推しのR.Oさんの例
写真提供=馬場俊英オフィシャルファンクラブ

続いて、シンガーソングライター「馬場俊英」さんの歌に魅せられているというR.Oさん(65歳)。

「レコード会社から契約を打ち切られた“リストラ歌手”としてメディアで取り上げられて、その存在は知っていましたが、2007年のNHKの紅白歌合戦で『スタートライン』を歌うのを聴いて、その世界観にひきこまれました。

ちょうどその頃、実の兄の死をきっかけに親族の問題が噴出し、私が老父母のケアを担うことになっていました。めげそうになったとき、馬場さんの歌は、夢や絵空事ではなく、世の中を憂いたりするわけでもなく、地に足をつけて一生懸命生きている人たちに向けた応援歌のように聞こえたんです。

馬場俊英さん
写真提供=馬場俊英オフィシャルファンクラブ

2008年に初めてコンサートに行って、馬場さんだけでなく、ファンのみなさんの温かな雰囲気に触れてますます魅了され、年に4~5回コンサートやファンイベントに参加するようになりました。

仙台や新潟など、遠方で開催されるツアーに参加したこともありますし、イベントでは、馬場さんと一緒にそば打ちやカレー作りなんかも楽しみました。

馬場さん、いつもコンサートで『いろんなことをやりくりして来てくださってありがとう』って言うんですよ。自分もそうだし、他のみなさんもきっとそうなんだろうなって思います。

いまや、馬場さんは遠い親戚のような、不思議な存在です。いろんなことがあったけど、コンサートで“心の洗濯”をしていたから、日常生活のバランスがとれたのだと思っています」

 

「推し」の存在で心身ともに若々しくいられる理由とは?

「推し」の存在で心身ともに若々しくいられる理由とは?

3人の女性にそれぞれの「推し」のエピソードを語ってもらいましたが、共通していたのが、行動範囲が広がり、人間関係が豊かになり、日常に張り合いがもたらされているという点です。「脳の学校」代表の加藤俊徳さんに、応援の対象である「推し」の存在が脳に与える影響について聞いてみました。

生活に「新しい体験」をもたらす

加藤さんによれば、生活パターンがマンネリ化した日常生活に「新鮮な体験」をもたらすのが、「推し」の存在だといいます。

「平穏な日常生活は、脳も体もエネルギーをあまり使わずに過ごせている状態。でも、脳は新しいことを取り入れないと活性化しにくい器官です。 “好き!”という気持ちは、コンサートに足を運ぶ、情報収集する、グッズや雑誌を買いに行くといった新しい行動にチャレンジさせ、脳を活性化させます」と加藤さん。

脳の「感情」エリアを刺激

さらに加藤さんは、脳の中の感情を司る部分の動きに着目します。「推し」の存在を通じて感動したり、もらい泣きをしたり、胸がキュンとしたり……と、多様な感情を味わうことができるからです。

「脳の中で感情を司るエリアを大きく分けると『人の気持ちがわかる脳』と『自分の気持ちがわかる脳』に分けることができます。マンネリ化した生活の中では、この2つのバランスが崩れやすくなります。自分の気持ちばかり考えていると、相手の気持ちが見えなくなっていきますし、もちろんその逆もあるでしょう。

でも、“応援の対象”がいることで、相手を自分に重ね合わせて理解しようとすると同時に、“ときめいた”“感動した”という自分の感情と向き合う機会も生まれます」と加藤さん。

加藤さんによれば、「AではなくBの方がいい」「Bのこんなところも好き」といった新しい気付きを得る情報処理の過程でも、脳は活発に動いているそうです。

 

「推し友達」との体験共有で絆が生まれ、認知症予防にも

●「推し友達」との体験共有で絆が生まれ、認知症予防にも

先にご紹介した3人の女性も語っていましたが、「推し」を応援する活動を通じて、ファン同士の交流が生まれる機会は少なくありません。これにも、思わぬメリットがあるようです。

「人間は、共通の時間や記憶を通じて、理解し合ったり共感しやすくなります。同じドラマを見たり、一緒にコンサートに行くなど、共通の体験を持つ相手とは、会話も弾みやすくなるでしょう」と加藤さんは言及します。

加藤さんによれば、自分の脳を自分だけの力で動かすのはとても難しく、人との交わりがない孤独な状況は、認知症などを招く原因にもなり得るとのこと。わかり合える友達と出会う機会が多い「推し活動」を通じて、「孤独・孤立を防ぐ」ことができるかもしれません。

取材・文=北川和子

※この記事は2021年2月の記事を再編集をして掲載しています。


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