「シガ」こと「シークレット・ガーデン」と比べてみた

ヒョンビン沼視点からも面白い!ドラマ「天国と地獄」

公開日:2021.02.02

コラムニストの矢部万紀子さんによる、カルチャー連載です。「愛の不時着」をきっかけに、ヒョンビン沼にハマった矢部さん。ヒョンビンファンの視点から見ても、綾瀬はるかさんと高橋一生さんが主演する日曜ドラマ「天国と地獄」が面白いと語る理由とは?

2021年冬ドラマ本命は「天国と地獄」

2021年冬ドラマ本命は「天国と地獄」

2021年1月期のドラマが出そろいました。初回視聴率が16.8%と最も高かったのが、「天国と地獄~サイコな2人~」(日曜21時、TBS系)です。綾瀬はるかさん演じる刑事と、高橋一生さん演じる殺人鬼。その二人の魂が入れ替わる、というドラマですから見ないわけにはいきません。私も16.8%に貢献した一人です。

なぜ見ないわけにはいかなかったかというと、韓流ドラマ「シークレット・ガーデン」(10~11年)です。「愛の不時着」(Netflix)で主人公を演じたヒョンビンが主演したラブコメディーで、最高視聴率37.9%と大ヒットしました。ヒョンビン演じる財閥の御曹司と、スタントウーマンの身分違いの恋が描かれます。そして、この二人、魂が入れ替わるのです。
 

ヒョンビンの代表作「シークレット・ガーデン」視点から見てみた

 

シークレットガーデン(C)SBS
(C)SBS

「愛の不時着」でヒョンビンにはまり、主演ドラマ9本プラス主演映画7本をコンプリートしました。切なかったり楽しかったり、どれも名作です。中でも「シークレット・ガーデン」はかわいさ(=楽しさ)と胸キュンさ(=切なさ)にあふれ、大好きになりました。だから日本で「入れ替わりもの」が始まる、しかも綾瀬さんと高橋さんという演技派2人が主演と知ったときから、「見るぞ、おー」と張り切っていたわけです。男女の入れ替わりものは演技力が必須ですから。

というわけで、「シークレット・ガーデン」ファンから見た「天国と地獄」の楽しみ方、2話まで見たところですが、書いていきます。

「シークレット・ガーデン」をヒョンビンファンは「シガ」と縮めるので、ここからはそれに習います。「シガ」全20話を4周した実績(!)から申し上げるなら、入れ替わりものの肝は「なぜ入れ替わったのか」にあります。「シガ」ではヒロインの亡くなった父が大きな意味を持っていました。

花酒を飲んで入れ替わるのですが、それを入手した場面から父が登場します。ここからいくつか伏線が貼られ、徐々に「何のための入れ替わりか」が明かされます。重大な波乱も起きますが、すべてが最終回で回収されます。その過程で「入れ替わり」というファンタジーに切実さが加わり、説得性が増していきました。高視聴率も納得です。

 

「なぜ入れ替わったのか」続きが気になる謎解きが始まった!

さて「天国と地獄」です。綾瀬さん演じる警視庁捜査一課の刑事・望月彩子は、正義感と上昇志向の強い努力家です。失敗続きで一課では厄介者扱い、何とか手柄をあげようとしています。そこに猟奇的な殺人事件が起こり、容疑者として浮かび上がるのがベンチャー企業のやり手経営者・日高陽斗。高橋さんが演じています。

入れ替わる経緯は割愛しますが、直後に彩子(魂は日高)は彩子の相棒である刑事・八巻(溝端淳平)にこんなことを言います。「知っていますか? 本当は月は太陽に、太陽は月になるはずだったんですよ。でも、シヤカナローの花を盗んだから、月は太陽に、太陽は月になった。運命が入れ替わってしまったんですよ」。

意味深です。月と太陽になぞらえて、二人が入れ替わった意味をほのめかしているようです。つまり、「シガ」の花酒の場面で父が出てきたような、入れ替わりの意味を暗示する最初の伏線です。「これは伏線です」とわかりやす過ぎる気がしないでもないですが、でも何を意味するかはわかりません。

2話の最後、この言葉から日高(魂は彩子)は入れ替わりのヒントらしきものをつかみます。主導権は日高の魂(見た目は彩子)が握っていることは、直後からずっと描かれています。彩子の魂(見た目は日高)はそれを打破しようと必死です。打破とはつまり「何のため」を解き明かすことであり、それが元に戻るための道。彩子の魂はそう理解し、動いていくのです。こういう構図を2話までにはっきり示したのですから、「入れ替わりもの」としては成功したも同然。早く続きが知りたくてたまりません。

注目すべきは、2話で八巻が入れ替わりを見破ったことです。ラブコメ「シガ」は見破る人がなかなか現れず、不可解な二人に振り回される周囲の人々が笑いを誘いました。その点、「天国と地獄」はサスペンスです。主導権を握る日高(の魂)に対抗するためにも、彩子(の魂)はこれから八巻と共に闘うのだと思います。

もう一人、注目したいのが、彩子(の魂)と暮らすフリーター・渡辺(柄本佑)です。2話の最後、隣の部屋からじっと彩子(魂は日高)を見つめる渡辺の目が、ゾッとするほど怖いものでした。それまでずっとお気楽な渡辺だったのが、全く別な雰囲気を漂わせます。これは何を意味するのか。主役二人に負けない演技派の柄本さんですから、期待大です。

というわけで「天国と地獄」、「シガ」ファン的にも大納得です。ヒョンビンファンはもちろん、そうでない方も、ぜひ見てみてください。

矢部万紀子(やべ・まきこ)
1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。「アエラ」、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、書籍編集部長。2011年から「いきいき(現ハルメク)」編集長をつとめ、17年からフリーランスに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)、『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔 生きづらさを超えて』(ともに幻冬舎新書)

イラストレーション=吉田美潮
 

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GYAO!で見逃しが見られます
TBS『天国と地獄 ~サイコな2人~』
配信URL: https://gyao.onelink.me/AeWv/27981df3
配信スケジュール:毎週月曜12時00分

矢部 万紀子

1961年生まれ。83年朝日新聞社に入社。「アエラ」、経済部、「週刊朝日」などで記者をし書籍編集部長。2011年から「いきいき(現ハルメク)」編集長をつとめ、17年からフリーランスに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』(幻冬舎新書)

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