通信制 青木奈緖さんのエッセー講座第3期第4回

エッセー作品「姉の事は私の事」長谷島友子さん

公開日:2022.03.04

「家族」をテーマにしたエッセーの書き方を、エッセイストの青木奈緖さんに教わるハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から青木さんが選んだエッセーをご紹介します。長谷島友子さんの作品「姉の事は私の事」と青木さんの講評です。

「姉の事は私の事」
エッセー作品「姉の事は私の事」長谷島友子さん

姉の事は私の事

3人姉妹。私はそのまん中として育った。
姉と私は二卵性の双子、同い年で、5つ下に妹がいる。
姉との日々で覚えているのは、2年保育の幼稚園へ通い、妹が産まれた頃からだ。
幼い時の写真を見ると、祖父の両ひざに抱えられていたり、七五三のおすまし顔だったり、いつもおそろいを着、並んで写っている。

姉はおとなしい性格で、大人達から何か話しかけられると、いつだって私が受け答えをし、何かを決めたり、選んだり、計画したり、旅や買物の時は、私が率先して行動していた。
それでもけんかはよくした。とっくみあいもした。
私はとことん自己主張をし、我儘とか、利己主義とか、嫌われる、とか、そんな事には頓着しなかった。
ほしいおもちゃのため、先にピアノを弾くため、私は全身全霊で戦った。

そう、私は負けず嫌いで口達者、がんばり屋でもあった。
それなのに、運動会での町内対抗リレーの代表選手は常に姉だったし、校庭にあった竹上りをスルスルとてっぺんまで上れたり、半日練習しただけで自転車に乗れるようになったのも姉のほうだった。
虫を捕まえるのも得意。手のひらに殿様蛙を載せてなでていた。
こうして私は人との関わりの押したり引いたりや、人はそれぞれに持ち味というものがある、という事を姉から無意識に学んでいたらしい。

私達は高校卒業までずっと一緒だったし、大学卒業後も実家で共に過ごし、なぜか結婚まで2週間違い。
私達の長男も同い年で、姉は4ヵ月先に母親になったばかりだったから、私にとって育児について一番の相談相手になった。
姉は幸せそうに、ゆったりと子育てをしているように見えた。
それまで自分では姉を引っ張ってきたつもりが、その頃からか、私は姉に一目おくようになっていた。

そんな姉が去年の夏に軽い脳梗塞で入院した。
私は若い頃は自分の時間を生きることに夢中だったし、最近でもほんのたまに会ったり電話で話す位、いつもそこにいる姉にとりたてて注意を向ける事もなかったから、本当にぎょっとした。
思い返せば、次男のお産の直後も、引越しの時も、要領の悪い私を助けてくれた。
いざという時に頼れる、いることが当然の絶対的な存在だから、私の足元がゆらぎ、体中を恐怖が走った。

秋になり、リハビリ後に無事退院した姉の家を数年ぶりに家族で訪ねた。
その時の写真をしみじみ眺める。
成長し頼もしくなった息子達。老いと向き合う姉夫婦と私達夫婦。
姉の事は私の事。
つかず離れずの姉と私のレールのような人生。私はこうして産まれた時からずっと姉と共に生きている。

 

青木奈緖さんからひとこと

このお二人はどちらが姉でどちらが妹になっても不思議ではない関係にありながら、よく言われる一卵性双生児の一体感とは違う感覚とお見受けします。

そこから「つかず離れずのレール」、つまり人生を並走するイメージが生まれたのでしょうか。

終盤にかけて、兄弟姉妹の感覚は生まれながらに備わっているのではなく、ある程度大人になってからは互いに思いやって、育てるものなのだと気付かされます。

 

ハルメクの通信制エッセー講座とは?

全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回家族の思い出をエッセーに書き、講師で随筆家の青木奈緖さんから添削やアドバイスを受けます。書いていて疑問に思ったことやお便りを作品と一緒に送り、選ばれると、青木さんが動画で回答してくれるという仕掛け。講座の受講期間は半年間。

次回の参加者の募集は、2022年7月に雑誌「ハルメク」の誌上とハルメク旅と講座サイトで開始します。

募集開始のご案内は、ハルメクWEBメールマガジンでもお送りします。ご登録は、こちらから。

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ハルメク旅と講座

ハルメクならではのオリジナルイベントを企画・運営している部署、文化事業課。スタッフが日々面白いイベント作りのために奔走しています。人気イベント「あなたと歌うコンサート」や「たてもの散歩」など、年に約200本のイベントを開催。皆さんと会ってお話できるのを楽しみにしています♪

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