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医師監修│放置NG!早めに対処したい、膝の裏の痛み
膝の裏が痛む原因・病気、対処法とストレッチを紹介!
京都下鴨病院
森大祐
公開日:2022.08.29
更新日:2023.04.18
膝の裏が痛いのはなぜ?膝に起こる症状(痛み方)は原因や病気によっても異なります。放置すれば悪化し痛みが強くなることもあり、歩行や階段の昇降など日常生活に支障が出るケースも。医師監修のもと原因や対処法、ストレッチ、受診の目安をご紹介します。
膝の裏が痛いのはなぜ?
「膝の裏が痛む」「膝周辺に腫れなどがある」「膝が痛み、安定せずぐらぐらする」「膝が動かしにくい」など、膝の裏の痛みの症状はさまざまです。
膝の裏が痛む原因には、大きく分けて2通りの可能性が考えられます。
- 日常生活での原因
- 病気によるもの
原因はなんにせよ、膝の裏に痛みが起こると歩行が難しくなり、外出が億劫になってしまいがちに。膝の裏の痛みを我慢したり、放置していると運動不足や筋力の衰え、体力低下につながってしまうため、原因を突き止め、適切な治療を行うことが大切です。
膝の裏の痛みを引き起こす日常生活での原因と対処法
日常生活の過ごし方が、膝の裏の痛みの原因になっている可能性があります。
近年は、コロナ禍の運動不足によって膝のトラブルに悩む人が増加しています。痛みがない場合も、膝がポキポキ鳴る「ひざ音」がトラブルのサインの可能性も。ここから詳しく見ていきましょう。
立ち仕事やスポーツなどによる疲労や炎症
長時間立ちっぱなしだったり、膝の曲げ伸ばし(屈伸)回数の多い仕事や家事、スポーツでの膝の酷使は、膝に負担をかけることになります。
膝の裏の痛みの原因の一つとされるのが、腓腹筋(ひふくきん)と呼ばれるふくらはぎにつながっている筋肉です。腓腹筋は立っているだけで使われるためダメージを受けやすく、疲労が蓄積しやすい部分。正座や屈伸、歩行や階段の上り下りのときには特に痛みが出やすいでしょう。
また、膝の裏にあるハムストリングや膝窩筋などの筋肉に炎症が起こると、膝の裏が痛むことがあります。膝裏の筋肉の柔軟性が低下し、硬くなっている場合も、痛みにつながります。
膝の裏の痛みの対処法として、日常生活でも膝に負担をかけないように心掛けることが大切です。
スポーツの前にはしっかり準備運動をし、立ち仕事の場合も、適度に休憩しましょう。また、膝の裏に痛みがあるときなど膝の調子が悪いときは、正座やしゃがむなどの動作は極力避けましょう。
どうしても仕事や家事の負担を減らすことや休むことが難しい場合は、病院を受診して医師の指導のもと、サポーターを使うなどして膝への負担を軽減する対策が有効です。
ウォーキングでの歩き過ぎ
ウォーキングは適度であれば多くのメリットがある有酸素運動ですが、以下のようなケースでは膝の裏などに痛みが出ることがあります。
- 急に長時間のウォーキングを行った
- ウォーキングの姿勢が歪んでおり、正しい歩き方ではない
- 足首やかかとを固定できないサンダルなどの靴を履いていた
- 靴が合っていない など
普段あまり運動しない人や歩く習慣のない人がいきなり長時間、長距離を歩き過ぎると、筋肉に大きな負担がかかり、炎症が起きやすくなります。
また、足首やかかとを固定できないサンダルなどの靴を履いてウォーキングしていた場合や、合っていない靴も膝の裏の痛みを招くことがあります。
ウォーキングを習慣化する場合は、まずは自分の体力やこれまでの運動習慣などを考えて、無理のない程度から始め、少しずつ歩く距離や時間を長くしていきましょう。
どうしても膝の負担が心配な場合は、膝への負担が少ない「水中ウォーキング」もおすすめです。水中は浮力があることで、膝への負担を軽減できます。それでいて水中は水の抵抗があるため、陸上でのウォーキングよりも筋力アップ効果や脂肪燃焼効果が高まることが期待できます。
リンパの循環不良
膝の裏にはリンパ節と呼ばれる器官があり、体内の老廃物や水分を排出する機能があります。膝を曲げたときに痛む場合、このリンパ節が膨れて、痛みが起こっている可能性も。
リンパの循環不良の場合、痛みは強くないものの、膝を曲げたり、しゃがんだりするときの違和感が続くことが特徴です。
さらに、ストレスや冷え、運動不足などが続くとリンパの循環不良がおこり、老廃物が詰まって膝裏に痛みが起こります。ストレスをためない、体を冷やさない、適度な運動を習慣にするなどで対処しましょう。
肥満、太り過ぎ
肥満によって体重が増えると、膝にかかる負担が大きくなり、関節や骨を痛める原因になります。
太り過ぎが原因と考えられる場合は、適正体重を目指しましょう。
食事を抜くなどの無理なダイエットは体に負担を掛け、リバウンドしやすくなります。1日3食、栄養バランスのいい食事を心掛けた上で、摂取カロリーを少なくしたり、膝に負担の少ない運動を続けるなど、健康的なダイエットを行うことが大切です。
ただし、痛みがある場合は無理はせず、医師と相談しながら進めていきましょう。
加齢によって筋肉が落ちると基礎代謝量が減っていくため、アラフィフの更年期女性は太りやすいといわれています。「若い頃と食べる量や食事の内容は変わっていないのに太る」という場合は、食事の内容を見直してみるといいかもしれません。
膝の裏の痛みで考えられる病気
膝の裏の痛みは、日常生活での負担によるものではなく、なんらかの病気が原因となって引き起こされている可能性もあります。
ここからは、膝の裏の痛みで考えられる病気について解説します。
ベーカー嚢腫
膝の裏に痛みだけではなく腫れがある場合、ベーカー嚢腫の可能性が考えられます。膝の周囲には滑液包(かつえきほう)という液体の入った小さな袋がいくつもあり、摩擦を減らすことで組織をスムーズに動かす役割を持っています。
ベーカー嚢腫は、なんらかの原因によって膝の裏にある滑液包(腓腹筋半膜様筋包)に液体がたまることが原因で引き起こされると考えられています。
膝の裏側が痛い、痛みはないが違和感を感じる、膝を曲げにくい、膝を曲げるときに圧迫感を感じるなどがベーカー嚢腫で見られる主な症状です。また、ベーカー嚢腫による腫れが膝裏の脛骨神経や総腓骨神経を圧迫すると、膝を曲げたときに膝から下にしびれが起こることもあります。
ベーカー嚢腫はサイズが小さければ問題ありませんが、大きくなると膝の痛みや動かしにくさの原因になります。握りこぶしほどの大きさになることもあり、圧がかかることで、破裂してしまうケースも。
破裂すると中の関節液がふくらはぎの筋肉の間に入り込み、ふくらはぎ全体が腫れ、強く痛みます。
捻挫や損傷
以下のように、ケガやスポーツなどによって捻挫や、靭帯・半月板に損傷が起こった場合も、膝の裏が痛むことがあります。
- 膝関節捻挫
- 靭帯損傷
- 半月板損傷
- 後十字靭帯損傷
スポーツで膝をねじったときや、ジャンプやランニングなどで膝に過度な衝撃がかかったとき、交通事故や転倒などによって膝をどこかに強く打ち付けたときに、捻挫や損傷が起こることが多いです。
靭帯を損傷すると、膝が安定せずぐらぐらすることがあります。
反張膝
反張膝(はんちょうひざ)とは、膝が逆に反っている状態のことです。過度に膝の裏が伸ばされることで、痛みが起こります。
普通、膝はまっすぐですが、以下のような特徴のある人は、膝が逆に反った反張膝の可能性があります。
- 重心がかかとに偏っている
- 膝を支える筋力が弱い
- 膝が反る姿勢を取ることが多い(バレリーナのようなつま先立ちの姿勢など)
変形性膝関節症
変形性膝関節症とは、膝関節の軟骨がすり減っていき、炎症が起こる進行性の病気です。加齢による軟骨の劣化、筋力の低下、肥満による膝への負荷などが原因となって引き起こされ、60代以上の女性に多く見られます。
初期は膝を動かすときに痛みますが、進行すると安静にしていても痛むことがあります。立つ、座る、しゃがむ、歩行、階段の昇降などの動作が痛みによって困難になり、日常生活に支障をきたすケースも。
初期であればヒアルロン酸注射や筋力トレーニングなどの保存療法で治療しますが、中期や末期になると人工関節手術を検討しなければいけないこともあるため、早めの治療が大切です。
変形性膝関節症は簡単なチェックリストで自分の状況を確認してみましょう。
関節リウマチ
関節リウマチは、免疫の異常によって関節に存在する滑膜に慢性的な炎症が起こる病気です。
痛みの他にも腫れ、こわばり、発熱などの症状が見られ、進行すると関節の変形や、骨の破壊が起こることがあります。
深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)
深部静脈血栓症はエコノミークラス症候群とも呼ばれ、長時間同じ姿勢を続けることで足の血流が悪くなり、深部静脈に血栓ができる病気です。
ふくらはぎが痛むことが多いですが、血栓の場所によっては膝の裏が痛むことがあります。
足の痛みや腫れ、皮膚の変色などが片足のみに起こった場合、深部静脈血栓症の可能性があります。また、深部静脈血栓症では息苦しさも起こります。
深部静脈血栓症は最悪の場合、命にかかわることもあるため、乗り物に乗ったときなど長時間同じ姿勢を続けた後で異常が見られた場合は、すぐに病院を受診しましょう。
膝の裏の痛みの治療法
膝の裏の痛みの原因はさまざまです。病気によっては早期の治療が必要になるため、病院ではレントゲン検査やMRI検査によって原因を調べます。
膝の痛みの治療法は原因となる病気によって異なり、保存療法、手術療法などがあります。ベーカー嚢腫の場合は、針を刺して水を抜く穿刺の処置を行います。
膝の痛みに効果的なストレッチ
膝の痛みの予防には、ストレッチが効果的です。
- 椅子に座り、息を吐きながら片方の足を伸ばし、そのまま10秒キープ
- 息を吐きながら胸を張ったまま体を前に傾け、そのまま10秒キープ(慣れてきたら20秒、30秒と伸ばす)
- 反対側の足も同じように繰り返す
膝の裏が痛いときの受診の目安
膝の裏が痛いときの受診の目安をご紹介します。これに当てはまらない場合も、痛みがつらい場合や異常が見られる場合は早めに病院を受診しましょう。
- 様子を見て受診を検討
膝の裏の痛みの持続期間が短くその後も繰り返さない - 可能なら早めの受診を
歩行など日常生活に支障が出ている、しびれがある、スポーツの際につねに痛みがある、慢性的な痛みがある - 直ちに病院を受診
歩けないほどの激痛がある、転倒や事故など原因がはっきりしており強く痛む、長時間同じ姿勢を取った後で足の痛や息苦しさがある
膝の裏の痛み、放置せずに早めの治療を
加齢によって軟骨の劣化、筋力の低下が起こると、膝がダメージを受けやすくなり膝の裏などに痛みが起こることがあります。
膝の裏の痛みの原因はさまざまですが、放置すると痛みや症状が悪化してしまうこともあります。早期の方が簡単な治療で済むため、我慢せずに早めに病院に足を運び、適切な治療を受けることが大切です。
監修者プロフィール:森大祐さん
日本整形外科学会認定整形外科専門医。関西医科大学卒業後、京都大学整形外科に入局。脊椎、上肢疾患の臨床研究をおこない、脊椎、手関節、肘、肩関節に精通する。その後米国トーマスジェファーソン大学で人工肩関節の臨床研究を主な目的に留学。烏丸御池整形外科クリニックで肩関節外来を担当し、脊椎機能の重要性を唱えている。
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