中村格子流!大人のための美からだ学3

ぽっこりお腹解消エクササイズ!骨盤底筋群を鍛えよう

公開日:2020.10.02

更新日:2024.05.31

連載「中村格子流!大人のための美からだ学」、今回のテーマは「骨盤底筋群」。ぽっこりお腹の解消や尿もれにも効果的な、大人のための骨盤底筋群の鍛え方を、スポーツドクターや整形外科医としても活躍する医師の中村格子さんに教えてもらいましょう。

ぽっこりお腹解消エクササイズ
中村格子流!大人のための美からだ学

骨盤底筋群を鍛えると、尿もれ予防&ぽっこりお腹も解消

尿もれ

40代以上の女性の3人に1人が悩むといわれる「尿もれ」。年齢を重ねるとともに、気になる「下腹のぽっこり(ぽっこりお腹)」。一見、関係のなさそうな2つの症状に関係するのが内臓と骨盤底筋群などのインナーマッスルです。

内臓の位置を整えながら骨盤底筋群を鍛えることで、2つの悩みを解消していきましょう。

 

骨盤底筋群の衰え度チェック!こんな悩みありませんか?

下記のチェック項目に一つでも当てはまれば、骨盤底筋群が弱っている可能性があります。

  1. 便秘が続いている
  2. おならがよく出る
  3. 頻繁に排尿のためトイレに行く
  4. 残尿感がある
  5. くしゃみやせきをしたときに、おならや尿もれがある

何かと不快な尿もれが起こるのは、排泄をコントロールしている骨盤底筋群が弱るため。

尿意に合わせて筋肉を伸縮させにくくなり、排尿がうまくできず、残尿感があったり、頻繁に尿意を感じるようになります。さらに症状が進むと、ふとした瞬間に膀胱に残っていた尿がモレてしまうのです。

骨盤底筋群は加齢の他、内臓が下垂することでも負担がかかり、伸びて弱ってしまいます。この内臓の下垂に関係するのがぽっこりお腹。まずはぽっこりお腹を解消し、骨盤底筋群を鍛えて、尿トラブルを遠ざけることが大切です。

下腹が気になる人こそ腹式呼吸を! 腹圧を整えてインナーマッスル(横隔膜・腹横筋・多裂筋・骨盤底筋群の4つの筋肉)も鍛えましょう。

 

ぽっこりお腹解消が尿もれ対策の第一歩!

ぽっこりお腹解消が尿もれ対策の第一歩

骨盤底筋群は内臓を支える筋肉。内臓が下垂すれば常に重みに耐え続けることになります。いくら骨盤底筋群を鍛えても、内臓の下垂が解消されなければ、重みによって筋肉が伸び緩んだ状態となり、鍛えた効果も半減してしまいます。

内臓の下垂は外見にも表れます。それが下腹の出っ張り、ぽっこりお腹。ダイエットに励んでもお腹周りがすっきりしないのは、下垂した内臓がぽこっと出ているから、という人も少なくありません。

内臓の下垂は、腹圧(内臓を包む腹膜を保つ圧力)を整えることで解消できます。この腹圧をコントロールするのが腹式呼吸。腹式呼吸ができれば、横隔膜と腹横筋が内臓を持ち上げ、お腹の正しい位置に収めてくれます。

腹式呼吸の効果は内臓の下垂を解消し、骨盤底筋群の負担を軽くするだけではありません。筋肉は全身でつながって、それぞれがサポートし合うようにできています。

骨盤底筋群は腹横筋とつながり、互いに連動するため、腹横筋を使いながら骨盤底筋群を鍛えれば、より筋肉を動かしやすく、エクササイズ効果も高まります。

今すぐできる!50代女性におすすめのエクササイズ

ぽっこりお腹には3つのタイプがあり、皮下脂肪・内臓脂肪も原因になりますが、姿勢や内臓の下垂の解消には、必ずしもハードな筋トレ(筋力トレーニング)は必要ありません。

骨盤底筋群を鍛えるには、寝た状態から始めるのがおすすめ。寝た状態では姿勢や重力の影響がなく、骨盤底筋群を意識しやすくなります。ぐっとお尻を締める感覚から、さらに奥に引っ込める筋力があるのが強い筋肉です。

実際にはありませんが、尻尾をお尻の中にしまい込むようなイメージでぐっと中まで筋肉に力を入れていきます。朝起きたときや寝る前など、エクササイズを行うのはいつでもかまいません。

寝た状態で骨盤底筋群を意識する感覚がつかめたら、今度は立った状態で行いましょう。行うことは寝た状態のときと同じ。重力の負荷や脚も使って、より筋肉に力が入るようにします。

掃除や料理などの立ち仕事の合い間や電車待ちなど、いつでも気軽にぽっこりお腹解消エクササイズをしてみましょう。

 

骨盤底筋群は外見でわからないからこそ毎日鍛える!

骨盤底筋群

骨盤底筋群とは、骨盤内の下の空洞部にハンモックのように広がる筋肉の総称です。筋肉の伸縮によって便や尿の排泄を行う他、大腸や子宮、膀胱を支える、まさに縁の下の力持ち。姿勢の悪化や加齢で筋肉が衰えれば、内臓の重みに耐えられなくなってしまいます。

骨盤底筋群が弱り、尿もれがひどくなると、尿もれパッドやおむつが欠かせなくなります。長い外出を控えるようになって、その結果、行動範囲が狭まることにも。また、骨盤臓器脱などの病気を招くことにもつながります。

また、骨盤底筋群の弱りは尿トラブルだけでなく、便秘も招きます。筋肉には広い伸縮の幅が必要ですが、十分に伸ばす力が不足すれば、便が直腸まで到達しても、排出しにくくなるからです。たまったガスはすき間からモレ、便は出ないのにおならばかりが出ることにもなりかねません。

こうした状態を予防するためにも、ぽっこりお腹解消エクササイズは3か月続けてみてください。

骨盤底筋群は内臓を常に支えるため、瞬発力をもった早筋ではなく、長い間パワーを維持できる持久力のある遅筋でできています。遅筋はすぐに成長する筋肉ではないので、1度のエクササイズだけで大きな変化は期待できません。

また、インナーマッスルである骨盤底筋群はどんなに鍛えても外見に大きな変化として表れにくいという一面も。毎日、気付いたときに意識してエクササイズを行うようにしましょう。

 

【腹式呼吸】まずはぽっこりお腹をへこます方法を覚える

横隔膜をしっかり使う腹式呼吸で腹圧を高め、内臓の位置を整えましょう。

腹式呼吸

お腹に手を当て、口をすぼめて、お腹をへこませながらゆっくりと深く息を吐く。吸うときは、力まず、自然とお腹が膨むイメージで。吐くことに意識を向け、体の中の空気をすべて吐ききるようにする。

これはNG

これはNG

息を吐くために、体を折り曲げてはダメ。肩が内側に入らないように気を付けましょう。

※エクササイズは痛みのない範囲で行ってください。

 

【骨盤底筋群を鍛えるエクササイズ1】寝ながら鍛える

姿勢を気にせず、呼吸に集中できるため、まずは寝ながらのエクササイズから始めてみましょう。

寝ながら鍛える

横になって呼吸を整えながら、腹式呼吸を意識する。

鼻から吸う

腹式呼吸ができたら、息を鼻から体の中に取り込みながら、お尻の穴をきゅっと締める。お尻全体を内側にきゅっと引き締めるイメージで。

口から吐く

息を吐きながら、締めたお尻の穴をさらにお腹の中に引き寄せる。尻尾をお腹の中に入れ込んでいくようなイメージで。

お尻を締める感覚がつかめない方は

お尻を締める感覚がつかめない方は

筋力が弱かったり、引き締める感覚がつかめない方は、脚をしめて行うと、内側に締める力に意識が向くため、脚の間にクッションやバスタオルを挟んでいっても。

腹式呼吸に慣れないうちは、片手を胸に置いて体を曲げないように注意する。慣れてきたら、お腹に意識を向けるため両手をお腹に当ててもOK。

家事の合い間や気になるときに、姿勢を正して実践すれば、悩みの解消に近づきます。

 

【骨盤底筋群を鍛えるエクササイズ2】立って鍛える

腹式呼吸に合わせてお尻を締めることを意識すれば、姿勢がよくなり、骨盤底筋群も鍛えられます。

立って鍛える

  1. 腹式呼吸で腹圧を整える。
  2. 息を鼻から吸いながら、お尻をきゅっと内側に締める。
  3. 息を口からゆっくり吐きながら、お尻は締めたまま、尻尾を中に取り込んでいくイメージでさらに力を入れ、かかとを上げる。

寝て行うときと同じように、脚にタオルを挟むことで、意識して力を入れやすくなります。

脚にタオルを挟む

今回ご紹介した骨盤底筋群を鍛えるエクササイズは、とても簡単にできるエクササイズなので、これまで厳しい食事制限のあるダイエットや激しい筋トレで挫折した人も、ぜひ挑戦してみてください。

ぽっこりお腹解消には少し時間がかかります。座り姿勢に気を付ける、腸内環境の改善による便秘解消、運動不足などの生活習慣の改善とあわせてエクササイズを実施すると、より効果がアップします。猫背や反り腰などの姿勢改善には、腸腰筋のトレーニングも効果的ですよ。

監修者プロフィール:中村格子さん(整形外科医 医学博士 スポーツドクター)

中村格子(整形外科医 医学博士 スポーツドクター)

なかむら・かくこ Dr.KAKUKOスポーツクリニック院長。「健康であることは美しい」をモットーにトップアスリートから一般まで健康で美しい人生をサポートをすべく自身のクリニックや講演、多数メディアなどで幅広く活動。特別な道具やテクニックは必要なく誰でも取り組みやすい独自のエクササイズを提案。『大人のラジオ体操』(講談社刊)はシリーズ累計83万部。『究極のストレッチ』(日経BP社刊)は複数の海外翻訳版発行。Dr.KAKUKOオンラインクラス開講中

取材・文=中嶋信次(編集部) ヘアメイク=木村三喜(マスキュラン) 撮影=中西裕人(編集部) 衣装協力=チャコット

※この記事は雑誌「ハルメク」2013年4月号に掲載した記事を再編集しています。

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