更年期の不調:気になる症状と対処法

更年期の陰部のヒリヒリ…不快感や性交痛の対処法は?

横倉恒雄さん(横倉クリニック)
監修者
横倉クリニック
横倉恒雄

公開日:2018.07.02

更新日:2022.02.21

女性ホルモンには腟の粘膜を柔軟に保ち、分泌液で潤す働きがあります。ところが更年期になると、女性ホルモンの減少によって腟の萎縮や乾燥が起こるようになります。炎症の原因になったり、性交痛を引き起こしたりするため、正しいケアが必要です。

膣の萎縮や乾燥の原因は女性ホルモンの減少

膣の萎縮や乾燥の原因は女性ホルモンの減少が原因

更年期になり女性ホルモンの分泌が減少すると、それまでホルモンで守られていた部分にさまざまな支障が現れるようになります。腟の萎縮や乾燥もその一つです。

女性ホルモンのエストロゲンには皮膚や粘膜のコラーゲンを増やし、潤いや弾力性を与える働きがあるのですが、その分泌が減少すると外陰部や腟の粘膜が縮んで張りが失われてしまうのです。

また、粘膜を保護する分泌液も減少し、腟が乾燥しやすくなります。特に外陰部や腟は最もホルモンの影響を受けやすい部分であるため、症状も顕著です。更年期に陰部の不快感やヒリヒリした痛みを感じるのもこのためです。

さらに、月経時にナプキンから前側へ漏れるようになるのも特徴です。若い頃は外陰部や大陰唇に張りがあり、経血が後ろ側へ漏れることが多いのですが、更年期になると外陰部や大陰唇の張りが失われて萎縮してくるため、前方に漏れやすくなるのです。

腟の萎縮や乾燥は膣炎や性交痛の原因にも!

腟の萎縮や乾燥は膣炎や性交痛の原因にも!

外陰部や腟の萎縮・乾燥は不快感を伴うだけでなく、炎症や感染のリスクも高めてしまいます。もともと腟内は弱酸性に保たれており、細菌が繁殖しにくい環境になっています。ところが、分泌液の減少によって腟内が乾燥することで、自浄作用が衰えてしまうのです。

乾燥した状態だと粘膜は傷がつきやすく、ちょっとした傷からでも感染し、「萎縮性腟炎」を起こすことがあります。するとますます乾燥や痛みが強くなり、出血やかゆみ、頻尿といった症状が現れることもあります。

また、腟の萎縮や乾燥は性交痛の原因にもなります。閉経をはさんだ2〜3年で腟の萎縮は急速に進み、腟が狭く、短くなるのです。

さらに、コラーゲンの減少によって粘膜も薄くなり、弾力性が失われるため、セックス時にこすれて強い痛みが出たり、ときには出血したりすることもあります。

ちなみに、性器周辺のアンダーヘアに急激に白髪が増えるのも女性ホルモンの減少が原因です。粘膜周辺のアンダーヘアは毛髪よりも老化が早く、白髪になりやすいのです。

【対処法】腟剤やゼリー剤、保湿液で症状を軽く

【対処法】腟剤やゼリー剤、保湿液で症状を軽く

腟の乾燥や性交痛があるときは、婦人科で相談しましょう。萎縮性腟炎など感染が起こっているときは、抗菌薬の腟剤など(腟内に挿入するタイプの薬)が処方されます。

乾燥対策には、デリケートゾーン専用の保湿液やホルモン補充療法が効果的です。乾燥していると感染を起こしやすいので、シャワーや入浴で腟や外陰部を常に清潔に保つように心がけましょう。ただし、石けんやボディソープなどでごしごし洗いすぎると逆効果なので注意してください。

また、セックス時の痛みには、市販の潤滑ゼリーなどで対処できますが、女性が一方的に我慢することがないように夫やパートナーとよく話し合い、セックス時の苦痛を減らすように工夫しましょう。男性の無理解からセックスレスになるケースも多いので、デリケートな問題だからこそきちんと二人で向き合い、話し合うことが大切です。

注意したいのは、性交痛のなかには腟の乾燥だけでなく、子宮や卵巣などの病気が原因のものもあるという点です。痛みが強いときや長引くとき、不正出血があるときは早めに婦人科を受診しましょう。

更年期の陰部の乾燥・性交痛に漢方薬という選択も

東洋医学の考えでは、年齢を重ねるにつれ、生まれ持った生命エネルギーである「腎」の機能が低下していくとされます。減ってしまった腎のエネルギーは、食事や生活習慣で補うことができます。

ホルモンバランスを司る「腎」の低下、潤いの「陰」の不足

東洋医学的には、ホルモンバランスを司る「腎」の機能の低下と、からだ全体の潤いをあらわす「陰」の不足が性交痛に関係していると考えます。

「腎」の低下と「陰」の不足により皮膚や膣内が乾燥する、手足がほてるなどの症状も起こります。腎の機能を補うことで、陰の不足も補われ、からだ全体の潤いも改善していくのです。

陰部の乾燥や性交痛に悩む女性におすすめの漢方薬

  • 六味丸(ろくみがん):疲れやすく、口が渇く傾向があり、むくみや頻尿の症状がある方
    「腎」を元気にする漢方薬で、「陰」の不足を補います。からだの余分な熱を冷ます生薬やからだを潤す働きのある生薬も含まれるため、ほてりや口渇なども改善します。
  • 八味地黄丸(はちみじおうがん):疲れやすく、口が渇く傾向があり、冷えや腰痛、頻尿の症状がある方
    「腎」を元気にしてくれる漢方薬で、からだを温める働きのある生薬を含むため、冷えや血行不良も改善します。

 ただし、体質や体型などによって、有効な漢方薬は異なります。そのため、漢方専門クリニックや薬局で、自分に合った漢方薬を選んでもらうようにしましょう。

自分に合った漢方薬が知りたいけど、近くに漢方専門薬局がない、という方には、インターネット上で漢方の専門家に相談できるAI漢方もおすすめですよ。
 

監修者プロフィール:横倉恒雄さん(横倉クリニック)

横倉恒雄さん(横倉クリニック)

よこくら・つねお 医学博士。医師。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。婦人科、心療内科、内科などが専門。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。著書『病気が治る脳の健康法』『脳疲労に克つ』他。日本産婦人科学会認定医 /日本医師会健康スポーツ医/日本女性医学学会 /更年期と加齢のヘルスケア学会ほか。

■もっと知りたい■

>>更年期障害の記事一覧をチェック!

ハルメク365編集部

女性誌No.1「ハルメク」の公式サイト。50代からの女性の毎日を応援する「観る・聴く・学ぶ・つながる」体験型コンテンツをお届けします。
会員登録をすれば、会員限定動画を始めさまざまな特典が楽しめます!

マイページに保存

\ この記事をみんなに伝えよう /

いまあなたにおすすめ

注目の記事 注目の記事