ストレスをためない暮らし方…影森式セルフケア #1

50代、理由のない不安や動悸は“パニック障害予備軍”かも?SOSサインと対処法

50代、理由のない不安や動悸は“パニック障害予備軍”かも?SOSサインと対処法

更新日:2025年11月28日

公開日:2025年11月27日

50代、理由のない不安や動悸は“パニック障害予備軍”かも?SOSサインと対処法

「胸が苦しい」「息が詰まる」「焦って眠れない」——それは心の弱さではなく、体からのSOSかもしれません。更年期とストレスが重なる50代の“心の揺らぎ”を無理に我慢せず、整える第一歩を、鍼灸師で心理カウンセラーの影森佳代子さんに教わります。

教えてくれたのは影森佳代子(かげもり・かよこ)さん

鍼灸師・心理カウンセラー。鎌倉ひまわり鍼灸院院長。ボストン大学教養学部心理学科卒業。同志社大学大学院修士課程修了。早稲田医療専門学校鍼灸学科卒業。心理カウンセラーを経て鍼灸師として独立、開業。心理学と東洋医学を統合した独自のメソッドで、パニック障害などに苦しむ多くの人の治療実績を上げている。

最新著に『影森式パニック障害改善メソッド セルフワークBOOK 誘導ボイスつき』(河出書房新社)がある。

「胸が苦しい」「息が詰まる」——50代の「心の揺らぎ」のサイン

「胸が苦しい」「息が詰まる」——50代の「心の揺らぎ」のサイン
webweb / PIXTA

「胸が苦しくなる」「息が詰まる」「突然の不安感」……。

昨日まで元気だったのに、理由もなく涙が出たり、焦りや虚しさに襲われたり——そんな経験はありませんか。

これは決して特別なことではありません。

50代に差し掛かる頃、女性の体の中ではホルモンの大きな変化が起きています。エストロゲンの減少は自律神経に影響を与え、気分の落ち込みやイライラ感、焦燥感や虚しさなどの精神的な症状を引き起こします。

そこに、子どもの巣立ち、親の介護、仕事の転換や退職など、家庭と社会の両方で大きな変化が重なります。心の負担が増えるのは、自然なことなのです。

私の鍼灸院でも、「昨日まで普通だったのに」「理由もなく涙が出てくる」と戸惑う方が多くいらっしゃいます。これまで心身ともに安定していた方ほど、「自分が弱くなったのでは」と不安を感じやすいのです。

でも、これは“異常”ではありません。多くの女性が経験する、生理的でごく自然な変化です。大切なのは、この時期を“戦う相手”ではなく、“整えるタイミング”として受け止めることです。

不安を感じたときに、心を落ち着ける5つのステップ

不安を感じたときに、心を落ち着ける5つのステップ
Ushico / PIXTA

こうした“心の揺らぎ”は、誰にでも起こりうる自然な変化です。そして、不安を感じたときに少しでも心を落ち着けるためには、「何が起きているか」を理解した上で、順序立てて対処していくことが大切です。

心が不安定になると、考え方や物の捉え方も揺れやすくなり、不安がさらなる不安を呼び込む、ネガティブな思考のループに陥りやすくなります。まずは、この「不安の連鎖」にブレーキをかけましょう。

1:思考を止める
最初の一歩は、「ここで思考を止める」と自分に声をかけること。あれこれ考え続けていると、不安はどんどん増幅していきます。「今は考えるのをやめよう」と意識して区切りをつけることで、心に余白が生まれます。

2:呼吸に意識を向ける
次に、その余白に「呼吸」を入れていきます。静かに自分の呼吸に意識を向け、心の中で「1つ、2つ」と数を数えてみましょう。数を数えることで意識が“今ここ”に戻り、さまよっていた思考が落ち着きやすくなります。

呼吸法の詳細はこちら!>

3:体(ツボ)に触れる

お守りツボ

それでも胸が苦しい、喉が詰まるように感じるときは、「体」にもアプローチします。足裏のツボ「足心穴(そくしんけつ)」を、気持ちよい強さで押してみてください。体の末端を刺激することで、意識が“体の感覚”に戻り、不安な思考から離れやすくなります。

不安で胸や肩に力が入っているときには、緊張をやわらげる“お守りツボ”をそっと押すことで、「力を抜いていい」という合図を体に送ることができます。

お守りツボの詳細はこちら!>

4:自分に優しく声をかける
ここまでできたら、次は「言葉」で自分を支えます。「焦らなくて大丈夫」「ゆっくりでいいよ」と、優しく自分に声をかけてみてください。追い詰める言葉ではなく、「大丈夫だよ」というメッセージを自分に向けることで、脳は「今は危険な状況ではない」と受け取り、過度な緊張がほどけていきます。

5:吐く息を長めにする
最後に、吐く息を少し長めにしてみましょう。吸う息よりも吐く息を意識して長くすると、副交感神経が働きやすくなり、体も心もリラックスしやすくなります。これは、シリーズ第3回でご紹介する「おもち呼吸法」と同じ考え方に基づいた、とても簡単で効果的な方法です。

呼吸法の詳細はこちら!>

——この「思考を止める → 呼吸に意識を向ける → 体に触れる → 優しく声をかける → 吐く息を長くする」という流れは、不安に飲み込まれそうなときに、自分で自分を落ち着かせるための小さな手順です。

すべてを完璧にやろうとしなくて構いません。どれか一つでも「できそう」と思うものから試してみてください。

「がんばり屋さんほど注意」自己犠牲型ストレスが心を追い込む

「がんばり屋さんほど注意」自己犠牲型ストレスが心を追い込む
Luce / PIXTA

更年期の不調は、ホルモンの変化だけでなく、もともとの性格傾向にも影響を受けます。完璧主義や責任感の強いタイプの方ほど、心と体が疲れやすいのです。

「自分を優先するのはわがまま」「人に頼ってはいけない」と我慢を重ねているうちに、「どうして私ばかり」「誰も助けてくれない」と気持ちが追い込まれてしまうこともあります。

家庭でも職場でも、50代女性は頼られる立場にあります。夫や家族に理解されにくいこともあり、「がんばるしかない」と抱え込んでしまう——それが、体の不調として現れることがあります。

助けを求めることは、甘えや弱さではありません。心と体を守るための、勇気ある行動です。

呼吸と休息で、体から心を整える

呼吸と休息で、体から心を整える
Ushico / PIXTA

悲しみや苦しみを感じたとき、人は無意識に呼吸を止めてしまいます。だからこそ、呼吸を整えることが大切です。ヨガのようにゆったりと呼吸を意識することで自律神経が整い、心身の緊張が少しずつやわらいでいきます。

また、数秒だけでも目を閉じて外の刺激を遮断したり、ホットタオルで目を温めたりするのもおすすめです。目のまわりの筋肉がゆるみ、交感神経の高ぶりが静まり、体のこわばりも和らぎます。

小さなケアでも、続けることで心と体を守る力は確実に高まります。「完璧を目指さない」ことが、一番のセルフケア。がんばりすぎる自分を少しゆるめてあげること——それが、毎日を穏やかに過ごすための第一歩なのです。

次回(第2回)は、「コップに水がいっぱいになる前に流す」という考え方をキーワードに、日常生活の中で無理なくできる“心のリセット習慣”をご紹介します。家事も仕事も「6割でOK」と考えることで、どれだけ心が軽くなるのか。一緒に確かめていきましょう。

イラスト/林ユミ

※この記事は、書籍「影森式パニック障害改善メソッド セルフワークBOOK 誘導ボイスつき」を再編集しています。


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HALMEK up編集部
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