更年期の不調はホルモンより“栄養”がカギ!#1
「更年期の不調」主な原因…実は50代女性に多い“隠れ栄養不足”
「更年期の不調」主な原因…実は50代女性に多い“隠れ栄養不足”
更新日:2025年11月10日
公開日:2025年11月06日
教えてくれるのは、梶 尚志(かじ・たかし)さん
梶の木内科医院院長、七夕医院名古屋院総院長、医学博士。総合内科専門医、腎臓専門医として年間約5万人の患者を診察する中で、「体の不調」に栄養学的なアプローチから治療と生活指導を行う。著書に『更年期の不調の原因は栄養不足が9割』(あさ出版)など多数。
同じ50代でも差が出る!? 更年期をラクに乗り切る人の共通点
更年期は、すべての女性に訪れる自然な変化の一つです。でも、そのつらさの感じ方には、人によって大きな差があります。
「気付いたら終わっていた」という方もいれば、「毎日がつらくて、仕事も家事もこなせなかった」と感じる方もいます。
この“差”には、実は「栄養状態」が関係していると私は考えています。
女性ホルモンは、脂質や鉄、タンパク質、ビタミン、ミネラルといった体の中の栄養素を材料にして作られています。そのため、これらの栄養素が足りていないと、ホルモンがうまく作られなかったり、働きが弱くなってしまうことがあります。
さらに、栄養不足はホルモンだけでなく、心や体のさまざまな不調にもつながります。疲れが取れにくい、気分が落ち込みやすい、風邪を引きやすくなる──そういった変化も、体の“栄養不足”が背景にあるかもしれません。
「ホルモンの乱れ」より深刻?食べていない人ほどつらくなる理由
更年期の食事について話していると、よく「どんな食材がいいですか」「何を食べればいいのでしょうか」といった質問をいただきます。
確かに食材選びは大切ですが、その前に見直して欲しいのは「ちゃんと食べているかどうか」
体型が気になって食事を抜いたり、家事や仕事に追われて食事の時間がとれなかったりして、「朝は何も食べない」「昼はパンだけで済ませる」といった食生活の方も少なくありません。結果として、一日に必要なカロリーをきちんと食べられていない人が多くなっています。
医師が教える!朝しっかり・夜軽め“逆ピラミッド食事法”とは
更年期の不調を軽くする上で、まず土台になるのが「食べること」。それも、1日3回、バランスよく食事を摂ることがとても大切です。
特に注意したいのが、朝食。「時間がない」「食欲がない」など、さまざまな理由で朝食を抜いたり、軽く済ませてしまう方も少なくありません。けれども朝食は、その日の体と心の調子を左右する、大事なエネルギー源です。
更年期には、ホルモンバランスや自律神経の働きが不安定になりやすいため、朝のエネルギー補給ができていないと、さまざまな不調につながることがあります。
例えば、血糖値が不安定になり、イライラしやすくなったり、疲れが抜けなかったり、集中力が落ちたりといった変化が出やすくなります。
また、生活習慣病の予防という点からも、「朝をしっかり、昼はほどほど、夜は軽め」という“逆ピラミッド型”の食事スタイルを推奨しています。特に更年期以降は、夜にたくさん食べると胃や腸に負担がかかり、翌朝も食欲が出ず、また朝を抜いてしまうといった悪循環に陥りやすくなります。
朝と昼の“たんぱく質2品”で変わる!元気と若さの土台作り
食事の中で、特に意識して摂りたいのが「タンパク質」です。
タンパク質というと「筋肉の材料」というイメージが強いかもしれませんが、それだけではありません。ホルモンや酵素、免疫細胞、神経の働きを助ける物質など、体のさまざまな仕組みに関わっています。
肌や髪、爪といった見た目の健康にも深く関わっているので、タンパク質は「体と心の土台になる栄養素」と言ってもいいかもしれません。
特に意識してほしいのが、朝と昼に、肉、魚、卵、大豆製品といったタンパク質を2品ずつ摂ること。これは更年期世代にとって、とても大切な食習慣です。
女性ホルモンの材料にもタンパク質は使われますし、朝や昼にしっかり摂っておくことで、血糖値が安定して、気分の落ち込みやイライラの予防にもつながります。
動物性と植物性、どちらもバランスよく摂るのがポイントです。忙しい朝にあれこれ準備するのは大変ですから、“手をかけずに食べられるタンパク質”をいくつか常備しておくと便利です。
例えば、ゆで卵。前の晩にまとめてゆでておけば、朝は冷蔵庫から出すだけですぐ食べられます。豆腐のミニパックや納豆も、買い置きしておけば手間なく食べられる一品として重宝します。
<手軽にタンパク質2品の献立例>
【朝】
*卵+納豆
*サバ缶+豆腐
*鶏ささみ+ゆで卵
【昼】
*鶏むね肉+豆腐
*魚の塩焼き+卵焼き
* 豚しゃぶ+納豆
医師も推奨!“サバ缶・ツナ缶”でホルモンバランスを整える
更年期の女性にとって最も大切な栄養素が、脂質(コレステロール)で、すべての女性ホルモンの出発点です。
そしてコレステロールの代謝に影響を与えるのがオメガ3系脂肪酸(α-リノレン)酸。なかでもよく知られているのが、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といった成分です。
これらの脂肪酸には炎症をやわらげる働きがあり、頭痛の軽減や子宮内膜の炎症をおさえるのに役立つといわれています。さらに、月経の状態を整えるサポートをして、動脈硬化を防ぐ作用もあることがわかっています。
更年期に入ると、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減ってきます。すると、これまでエストロゲンによってコントロールされていたコレステロールの代謝がうまくいかなくなり、悪玉コレステロール(LDL)が増えやすくなる傾向があります。
DHAやEPAは、このLDLコレステロールが酸化するのを防いで、血管を健康に保つ働きがあります。生活習慣病の予防という面から見ても、大切な栄養素なのです。
これらの成分は、サバ、イワシ、アジなどの青魚に多く含まれていますが、毎日魚を調理するのはなかなか大変。そんなときは、じゃこやしらす干しなど、まるごと食べられる食材をうまく活用してみてください。
とくにDHAは魚の頭部に多く含まれているため、まるごと食べることで効率よく摂ることができます。カルシウムも豊富に含まれていますので、骨粗鬆症の予防に役立つという点でもおすすめです。
また、サバ缶やツナ缶などの魚の缶詰も、とても頼れる存在です。調理いらずで栄養価も高く、ストックしておけば、時間がないときでも手軽に魚の栄養をとることができます。青魚を日々の食事に取り入れることで、ホルモンバランスの乱れや体の不調をやわらげる助けになります。
次回の記事では、【栄養素編】タンパク質だけじゃ足りない!見落としがちな「2大ミネラル」を紹介していきます。
※本記事は、書籍『更年期の不調の原因は栄養不足が9割』より一部抜粋して構成しています。
※効果には個人差があります。試してみて合わない場合はおやめください。
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#1:【原因編】更年期の不調に潜む“隠れ栄養不足”
#2:【栄養素編】見落としがちな「2大ミネラル」
#3:【食生活編】 “食べる・避ける・補う”食事の整え方
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