足がつる原因とは?症状・原因・治療法・よくある質問【医師監修】

足がつる原因とは?症状・原因・治療法・よくある質問【医師監修】

公開日:2025年09月25日

足がつる原因とは?症状・原因・治療法・よくある質問【医師監修】
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足がつる(こむら返り)でお悩みの50代・60代の女性のみなさまへ。この記事では、整形外科医の三河聡志先生の監修のもと、足がつる原因について分かりやすくお伝えいたします。

三河聡志
監修者
三河聡志
監修者 三河聡志 医療法人一誠会みかわ整形外科クリニック

この記事3行まとめ

✓足がつるのは、水分・ミネラル不足や冷え、加齢による筋肉量の減少が主な原因です。
✓50代・60代女性は特に就寝中に起こりやすく、背景に病気が隠れている可能性もあります。
✓予防には食生活の見直しと適度な運動が大切。頻繁に起こる場合は医師に相談しましょう。

足がつるとは?どんな症状?

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「足がつる」とは、医学的には「有痛性筋痙攣(ゆうつうせいきんけいれん)」や「こむら返り」とも呼ばれ、ご自身の意思とは関係なく、ふくらはぎなどの筋肉が突然、異常に収縮して硬直し、強い痛みを伴う状態のことです。特に50代・60代の女性にとっては、夜中に突然の痛みで目が覚めてしまうなど、お悩みの種になりがちな症状の一つと言えるでしょう。

主な症状

よく見られる身体的症状
多くの場合、ふくらはぎに「ピーン!」と電気が走るような、あるいは筋肉が雑巾のように固く絞られるような、激しい痛みが数秒から数分間続きます。痛みが治まった後も、筋肉の違和感や軽い痛みが残ることがあります。ふくらはぎ以外にも、足の指や裏、太ももなどにも起こることがあります。
心理的な変化
夜中に突然の激痛で目が覚める経験が続くと、「また今夜も起こるのではないか」という不安から、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりすることがあります。日中の活動にも影響が出てしまうのではないかと、心配になる方もいらっしゃるかもしれません。

統計データ(厚生労働省調査より)

特定の疾患に関する統計とは異なり、「足がつる」という症状そのものに関する大規模な政府統計は多くありません。しかし、関連する調査や研究報告によると、60歳以上の約半数が、夜間のこむら返りを経験しているとされています。特に女性は、加齢やホルモンバランスの変化により、男性よりも経験しやすい傾向にあると考えられています。

足がつる原因とメカニズム

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主な原因

足がつる主な原因は、実にさまざまです。複数の要因が絡み合っていることも少なくありません。

1. 生理学的要因

私たちの体の内部で起こる変化が、足のつりを引き起こします。

  • 水分・ミネラル不足:体内の水分は、栄養を運び、老廃物を排出する大切な役割を担っています。汗をかくことで水分とともに、筋肉の伸び縮みを調整する「ミネラル(電解質)」が失われることが、最大の原因です。特に就寝中は、コップ1杯分(約200ml )もの汗をかくと言われており、知らず知らずのうちにミネラル不足に陥りやすいのです。
  • カルシウム不足:筋肉が収縮する際に必要なミネラルです。不足すると、筋肉が異常に興奮しやすくなります。
  • マグネシウム不足:カルシウムの働きを調整し、筋肉の過剰な収縮を抑える役割があります。不足すると、痙攣が起こりやすくなります。現代の食生活では不足しがちな栄養素の代表格です。
  • カリウム不足:ナトリウムと共に、細胞の浸透圧を調整し、神経の伝達をスムーズにする働きがあります。不足すると、筋肉の力が弱まったり(脱力感)、正常に働かなくなったりします。
  • 筋肉の疲労と衰え:日中の立ち仕事や慣れない運動による筋肉疲労は、筋肉内に乳酸などの疲労物質を溜め込みます。そして、50代以降、特に女性は加齢とともに筋肉量が自然に減少していきます。筋肉というポンプの力が弱まると、心臓から遠い足の血流が滞りやすくなり、つりの原因となります。
  • 冷えによる血行不良:体が冷えると血管がキュッと収縮し、筋肉への血流が滞りがちになります。すると、筋肉を動かすための酸素や栄養が不足し、疲労物質も排出されにくくなるため、足がつりやすくなります。特に、女性は男性に比べて筋肉量が少なく、熱を産生する力も弱いため、冷えやすい傾向にあります。
  • 女性ホルモンの影響:50代前後の更年期には、女性ホルモン「エストロゲン」の分泌が大きくゆらぎながら減少します。エストロゲンには、血管をしなやかに保ち、血流を調整する働きがあるため、減少することで血行不良が起こりやすくなります。これも、この年代の女性に足のつりが増える一因と考えられています。

2. 環境的要因

生活習慣や周囲の環境も、足のつりに大きく影響します。

季節の変化:夏場は大量の汗による脱水で、冬場は寒さによる冷えと血行不良で、足がつりやすくなります。また、冷房の効いた室内と屋外との寒暖差が大きい夏も、自律神経が乱れて血行に影響が出やすい季節です。

長時間の同じ姿勢:デスクワークや長距離ドライブ、観劇などで長時間同じ姿勢でいると、足の筋肉が使われずに硬直し、血行が悪くなります。これが、休憩しようと立ち上がった瞬間などに、足がつる原因となります。

3. 心理社会的要因

50代・60代は、子どもの独立や親の介護、仕事上の立場の変化など、生活の中でさまざまな変化が訪れる時期。知らず知らずのうちにストレスが溜まると、交感神経が優位になり、血管が収縮して血行不良を招いてしまうことがあります。心が体に与える影響も、決して小さくはないのです。

発症メカニズム

私たちの筋肉は、脳からの「縮め」「ゆるめ」という指令を、脊髄にある「運動ニューロン」という神経が受け取ることで、伸びたり縮んだりしています。この時、筋肉の伸び縮みを感知する「筋紡錘(きんぼうすい)」と、筋肉の張力を感知する「腱紡錘(けんぼうすい)」というセンサーが、情報のやり取りを調整しています。

しかし、水分・ミネラル不足や疲労、冷えなどでこれらのセンサーの働きが鈍くなると、調整システムにエラーが発生します。その結果、筋肉を縮める指令だけが過剰に伝わり、異常な収縮が続いてしまうのです。これが「足がつる」という現象の正体です。

足のつりを引き起こす意外な病気

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「たかが足のつり」と軽く考えてしまいがちですが、あまりに頻繁に繰り返す場合や、安静にしていても起こる場合は、背景に何らかの病気が隠れている可能性があります。特に注意したい病気をいくつかご紹介します。

  • 糖尿病:血糖値が高い状態が続くと、神経にダメージが与えられます(糖尿病性神経障害)。これにより、筋肉への指令がうまく伝わらなくなったり、血行が悪くなったりして、足がつりやすくなります。
  • 腎臓病:腎臓の機能が低下すると、体内のミネラルバランスを調整する能力が落ちてしまいます。これにより、カルシウムやカリウムの濃度に異常が生じ、足のつりを引き起こします。人工透析を受けている方に多く見られます。
  • 肝臓病(肝硬変など):肝機能が低下すると、体内のアルブミンというタンパク質が減少し、むくみ(浮腫)やすくなります。また、解毒作用の低下により体内に有害物質が溜まることも、足のつりの原因になると考えられています。
  • 脊柱管狭窄症・椎間板ヘルニア:腰の骨の中にある神経の通り道(脊柱管)が狭くなったり、背骨のクッションである椎間板が飛び出したりして神経を圧迫する病気です。これにより、足のしびれや痛みに加え、足のつりが起こりやすくなります。
  • 下肢静脈瘤:足の静脈にある、血液の逆流を防ぐための「弁」が壊れてしまい、血液が足に溜まってしまう病気です。足の血管がこぶのように浮き出て見え、だるさやむくみ、そして、こむら返りの原因となります。
  • 閉塞性動脈硬化症:足の血管の動脈硬化が進み、血流が悪くなる病気です。少し歩くだけで足が痛くなり、休むと治まる(間歇性跛行)のが特徴ですが、血行不良により足のつりも起こしやすくなります。
  • 甲状腺機能低下症:甲状腺ホルモンの分泌が減ることで、全身の代謝が低下し、血行不良や筋肉の機能低下を引き起こし、足のつりの原因となることがあります。

これらの病気が疑われる場合は、自己判断せず、必ず専門の医療機関を受診してください。

診断方法と受診について

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次に、受診する場合の流れについて説明します。

いつ受診すべきか

以下のような症状が見られる場合は、背景に病気が隠れている可能性も考えられるため、早めに医療機関を受診しましょう。

  • 週に何度も繰り返す
  • 痛みが非常に強く、日常生活に支障が出ている
  • 足のむくみ、しびれ、変色、熱感などを伴う
  • 安静にしていても、日中に頻繁につる
  • ふくらはぎだけでなく、太ももや背中など、他の部位も同時につる

診断の流れ

まずは、かかりつけ医や整形外科を受診しましょう。

1. 問診で確認すること

医師は、診断の手がかりを得るために、以下のような質問をします。

  • いつ、どのような状況で足がつりますか?(例:夜寝ているとき、運動中など)
  • どのくらいの頻度で起こりますか?
  • 痛みはどのくらい続きますか?
  • 他に何か症状はありますか?(例:しびれ、むくみなど)
  • 現在治療中の病気や、飲んでいるお薬はありますか?
  • 食事や水分の摂取量はどのくらいですか?

問診で、医師は原因の見当をつけ、次の検査の必要性を判断します。

2. 身体検査

医師が足の状態を直接見て、触って確認します。筋肉の硬さ、むくみ、血管の状態(下肢静脈瘤などがないか)、皮膚の色、神経の反射などをチェックし、異常がないかを丁寧に診察します。

3. 代表的な検査例

頻繁に足がつる場合や、他の病気が疑われる場合には、原因を特定するために次のような検査を行うことがあります。(医師により必ず実施するわけではありません)

  • 血液検査:ミネラルバランスの異常や、血糖値、腎臓・肝臓・甲状腺の機能などを調べます。
  • 超音波(エコー)検査:血管に異常がないか(下肢静脈瘤や閉塞性動脈硬化症など)を調べます。
  • ABI(足関節上腕血圧比)検査:足と腕の血圧を比較することで、足の動脈硬化の程度を調べる検査です。
  • 筋電図検査:筋肉や神経の働きに異常がないかを調べます。
  • X線・MRI検査:腰や背骨に異常がないか(脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなど)を調べる際に用いられます。

受診時の準備

受診の際には、いつ・どんな時に・どのくらいの頻度で足がつるのかをまとめた簡単なメモがあると、医師に症状が伝わりやすくなります。また、現在服用中のお薬があれば、お薬手帳も忘れずに持参しましょう。

受診すべき診療科

整形外科:筋肉や骨、神経系の病気が原因と思われる場合にまず相談したい診療科です。
内科・循環器内科:糖尿病や血管の病気(下肢静脈瘤など)が疑われる場合。 どこを受診すればよいか迷う場合は、まずはお近くのかかりつけ医に相談してみましょう。地域の保健所や医療情報センターでも、適切な医療機関の情報を得ることができます。

足がつったときの治療法

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治療方針の決定

治療は、足がつる原因に合わせて行われます。問診や検査の結果をもとに、医師が生活習慣の改善、運動療法、薬物療法などの中から、一人ひとりに合った治療法を提案します。患者さんご自身の希望やライフスタイルも考慮しながら、相談して方針を決めていくのが一般的です。原因となる病気がある場合は、その治療が最優先されます。

薬物療法

足のつりの治療や予防には、漢方薬が効果的な場合があります。 

  • 芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう):こむら返りの特効薬として知られ、病院でもよく処方されます。筋肉の異常な緊張を素早く和らげる効果が期待できます。頓服(とんぷく)として、つった時や、つりそうな時に服用します。
  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):冷え性で体力があまりなく、貧血傾向のある女性によく用いられます。体を温めて血行を促進し、水分代謝を整えることで、足のつりを予防します。
  • 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん):加齢により足腰の衰えや冷え、しびれを感じる方に用いられます。体を温め、水分代謝を改善し、足腰に力をつけることで、足のつりを起こしにくい体質へと導きます。
  • 筋弛緩薬:筋肉の緊張を和らげるお薬ですが、眠気などの副作用が出ることがあります。
  • ビタミン・ミネラル製剤:食事だけでは不足しがちな栄養素を補います。特にマグネシウム製剤が処方されることがあります。

※自己判断で服用せず、必ず医師の診断のもと、ご自身の体質や症状に合った適切なお薬を処方してもらいましょう。

非薬物療法

ストレッチ指導:理学療法士などから、筋肉の柔軟性を高めるための効果的なストレッチ方法の指導を受けます。
運動療法:ウォーキングなど、血行を促進し筋力を維持するための適度な運動を取り入れます。
物理療法:温熱療法で血行を促進したり、電気刺激で筋肉の緊張を和らげたりすることもあります。

生活習慣による管理

食事指導:管理栄養士などから、ミネラルを豊富に含む食品をバランス良く摂るための食事アドバイスを受けます。
水分補給の徹底:1日に1.5リットル程度を目安に、こまめな水分補給を心がけます。また発汗した際には、塩分などミネラルも併せて摂るようにしましょう。
体を冷やさない工夫:入浴で体を温めたり、靴下やレッグウォーマーを活用したりします。

治療期間と予後

多くの場合、生活習慣の改善や適切な治療によって、症状は大きく改善します。ただし、背景に何らかの病気が隠れている場合は、その病気の治療が優先されます。根気強く治療を続けることが大切です。

【セルフケア】今日からできる!足つり予防・改善法

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病院での治療と並行して、ご自宅でできるセルフケアも非常に重要です。毎日のちょっとした習慣が、つらい症状の予防と改善につながります。

1. 筋肉をほぐす「予防ストレッチ」

硬くなった筋肉をゆっくり伸ばし、血行を促進しましょう。就寝前や運動後に行うのが特に効果的です。「痛いけど気持ちいい」と感じる程度で、20〜30秒かけてじっくり行いましょう。

基本のふくらはぎ伸ばし

  1. 壁の前に立ち、両手を壁につけます。
  2. 片足を大きく後ろに引き、かかとを床につけます。
  3. 前の足の膝をゆっくり曲げ、後ろ足のふくらはぎが伸びているのを感じます。
  4. この状態で20秒キープし、反対の足も同様に行います。

椅子に座ってアキレス腱伸ばし

  1. 椅子に浅めに腰掛け、片足を前に伸ばします。
  2. 伸ばした足のかかとを床につけ、つま先を天井に向けます。
  3. 背筋を伸ばしたまま、ゆっくりと体を前に倒し、太ももの裏からふくらはぎにかけての伸びを感じます。
  4. 20秒キープし、反対の足も同様に行います。

足指のグーパー運動

足の指を意識して動かすことで、足裏の筋肉を刺激し、血行を促進します。

  1. 足の指を力いっぱい「グー」の形に握り、5秒キープします。
  2. 次に、指と指の間を大きく広げるように「パー」の形に開き、5秒キープします。
  3. これを10回ほど繰り返します。テレビを見ながらでも簡単にできます。

2. 血行を促す「ふくらはぎマッサージ」

入浴後など、体が温まっている時に行うとより効果的です。オイルやクリームを使うと、肌への負担が少なくなります。

  1. 床や椅子に座り、片方の膝を立てます。
  2. 両手のひらで足首を包み込むように持ち、膝の裏に向かってゆっくりとさすり上げます。これを5〜10回繰り返します。
  3. 次に、ふくらはぎ全体を両手で優しく揉みほぐします。痛気持ちいい程度の力加減で行いましょう。
  4. 最後に、アキレス腱の周りを指で優しくほぐします。

3. 体を内側から温める「ちょい足し温活」

  • 白湯を飲む習慣:朝起きた時や就寝前に、一杯の白湯を飲む習慣をつけましょう。内臓から体を温め、血行を促進します。
  • 食事に温め食材をプラス:ショウガやネギ、ニンニクなどの薬味を料理に加えたり、温かいスープや味噌汁を毎食添えたりするだけでも効果的です。
  • 「3つの首」を温める:「首」「手首」「足首」は、太い血管が皮膚の近くを通っているため、ここを温めると効率よく全身を温めることができます。ネックウォーマーやアームウォーマー、レッグウォーマーなどを上手に活用しましょう。

予防法と日常生活での注意点

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一次予防(発症予防)

  • バランスの取れた食事:特定の食品に偏らず、多様な食材からミネラルを摂取することが大切です。
  • 簡単レシピ例「切り干し大根とツナの和え物」:水で戻した切り干し大根(カルシウム・カリウム豊富)と、ツナ缶(マグネシウム)、刻み昆布(ミネラル豊富)を、マヨネーズと醤油少々で和えるだけ。手軽でおすすめです。
  • こまめな水分補給:のどが渇く前に、少しずつ飲むのがポイントです。一度にがぶ飲みしても、体に吸収されにくいと言われています。
  • 適度な運動習慣:
    ・ かかとの上げ下ろし運動:立った状態で、ゆっくりとかかとを上げ、ゆっくりと下ろします。10〜20回繰り返します。ふくらはぎの筋力アップと血行促進に効果的です。
    ・スロースクワット:足を肩幅に開き、4秒かけてゆっくり腰を落とし、4秒かけてゆっくり立ち上がります。膝がつま先より前に出ないように注意しましょう。5〜10回からでOKです。
  • 就寝前のストレッチ:上記で紹介したストレッチを、毎晩の習慣にしましょう。

二次予防(早期発見・早期治療)

「たかが、こむら返り」と軽視せず、頻繁に起こる場合は早めに医療機関を受診することが、重篤な病気の早期発見につながることもあります。ご自身の体のサインを見逃さないようにしましょう。

日常生活の工夫

  • 体を温める:シャワーで済ませず、38〜40℃のぬるめのお湯に15分ほどゆっくり浸かる習慣を。リラックス効果も高まります。
  • 服装の工夫:締め付けの強いガードルやスキニーパンツは避け、体を冷やさない服装を心がけましょう。レッグウォーマーなども効果的です。
  • 寝具の見直し:就寝中の冷えを防ぐために、羽毛や羊毛など、保温性と吸湿性に優れた素材の寝具を選ぶのも良いでしょう。

家族・周囲のサポート

もしご家族が足のつらさで悩んでいたら、「また?」などと言わず、まずはその痛みに共感してあげてください。食事のメニューを一緒に考えたり、ウォーキングに誘ったりするなど、具体的なサポートができると心強いものです。

50代から始める、しなやかな体との上手な付き合い方

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「先生、最近よく足がつって…。もう年だから仕方ないのかしら」

診察室で、そんなふうに寂しそうにお話しされる方がたくさんいらっしゃいます。確かに、50代、60代と年齢を重ねると、私たちの体にはさまざまな変化が訪れます。若い頃のようにはいかないな、と感じることも増えるでしょう。

でも、それは決して「衰え」という言葉だけで片付けてしまうような、悲しいことではありません。例えるなら、長年大切に乗ってきた愛車をいたわるようなもの。少しずつ丁寧にメンテナンスをしてあげることで、まだまだ快適に乗り続けることができるのです。

足がつるという症状は、まさに体からの「メンテナンスをお願いね」というサイン。 「最近、水分を摂るのを忘れがちじゃない?」 「体を動かす機会が減って、血の巡りが滞っているよ」 「ちょっとがんばりすぎて、お疲れじゃない?」 そんなふうに、あなたの体があなた自身に語りかけているのかもしれません。

大切なのは、その小さな声に耳を澄まし、「そうか、そうか」と応えてあげること。 難しく考える必要はありません。朝、一杯の白湯を飲む。テレビを見ながら、足の指をグーパーさせてみる。お風呂でふくらはぎを優しく撫でてあげる。そんな、ほんの少しの「いたわり」が、体にとっては大きな喜びとなります。

50代からは、誰かと比べるステージではありません。ご自身の体の声を聞き、ご自身のペースで、心地よいと感じることを生活に取り入れていく。そうやって、変化していく体と上手に手を取り合っていくことが、「しなやかな体」を保つ秘訣なのだと、私は思います。

よくある質問(FAQ)

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Q1: なぜ寝ているときに足がつりやすいのですか?

A: 寝ている間は、気づかないうちに汗をかいて水分やミネラルが失われがちな上に、体温が下がって足先が冷え、血行が悪くなりやすいからです。また、長時間同じ姿勢でいることも、筋肉が硬直しやすくなる原因のひとつと考えられています。

Q2: 運動中に足がつるのはなぜですか?

A: 運動中は、発汗によって急激に水分とミネラルが失われます。同時に、筋肉が疲労して乳酸などの疲労物質が溜まるため、筋肉の正常な収縮・弛緩のバランスが崩れやすくなるのです。

Q3: 足がつるのは何か病気のサインなのでしょうか?

A: ほとんどの場合は心配いりませんが、あまりに頻繁に繰り返したり、痛みが非常に強かったり、むくみやしびれを伴ったりする場合は、糖尿病や腎臓病、血管の病気(下肢静脈瘤など)が隠れている可能性も否定できません。ご心配な場合は、一度かかりつけ医や整形外科にご相談ください。

Q4: ストレスも原因になりますか?

A: はい、関係することがあります。強いストレスは自律神経のバランスを乱し、血管を収縮させて血行を悪くする一因になります。心と体はつながっていますから、リラックスする時間を持つことも大切です。

Q5: 水分不足やミネラル不足が原因と聞きましたが、具体的に何が不足するのですか?

A: 特に重要なのは、筋肉の収縮や神経の伝達に関わる「カルシウム」と「マグネシウム」です。この2つは互いにバランスを取り合って働いています。その他、「カリウム」や「ナトリウム」も大切な役割を担っています。

Q6: 加齢とともに足がつりやすくなるのはなぜですか?

A: 年齢を重ねると、どうしても筋肉の量が減少し、筋力が低下してきます。また、体内の水分量も少なくなりがちです。さらに、動脈硬化などで血行そのものが悪くなる傾向も重なり、複合的な理由でつりやすくなると考えられています。

Q7: 妊娠中に足がつりやすいのはなぜですか?

A: 妊娠中は、お腹が大きくなることで足の血管が圧迫されて血行が悪くなったり、体重増加で足の筋肉に負担がかかったりします。また、お腹の赤ちゃんに栄養を分け与えるため、お母さん自身がミネラル不足になりやすいことも原因のひとつです。

Q8: 足がつった時、どうすれば早く治まりますか?

A: 慌てず、ゆっくりと痛む方の足のつま先を掴み、ゆっくりと自分の体の方へ引き寄せて、ふくらはぎの筋肉を伸ばしてあげましょう。壁に手をついて、アキレス腱を伸ばすストレッチも有効です。痛みが和らいだら、蒸しタオルなどで温めて血行を促すのも良いでしょう。

Q9: 足がつるのを予防するには、どんな食べ物を食べれば良いですか?

A: カルシウムが豊富な乳製品や小魚、マグネシウムが豊富な海藻類、ナッツ、大豆製品、そしてカリウムが豊富なバナナやほうれん草などを、バランス良く食事に取り入れるのがおすすめです。

Q10: 漢方薬は足がつるのに本当に効きますか?

A: はい、「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」という漢方薬は、こむら返りの特効薬として知られ、病院でもよく処方されます。筋肉の痙攣を素早く鎮める効果が期待できます。ただし、体質に合う・合わないがありますので、必ず医師や薬剤師にご相談の上で服用してください。

まとめ

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大切なポイント

  • 足がつるのは、水分・ミネラル不足、冷え、筋肉の衰えが三大原因です。

  • 予防の基本は「潤す(水分補給)」「温める」「動かす(適度な運動)」です。

  • 「たかが」と思わず、頻繁な場合は病気のサインかもしれません。専門医に相談を。

  • バランスの良い食事と、上手なストレス解消で、しなやかな体を保ちましょう。

夜中に突然襲ってくるあの痛み、本当につらいですよね。「またかしら」と不安な夜を過ごしているのは、あなただけではありません。実は、私たちの体は年齢とともに少しずつ変化していて、水分や大切な栄養素を蓄える力が弱まったり、血の巡りが穏やかになったりするのは、ごく自然なこと。だから、足がつるのは、体が「少しだけ、今まで以上に気にかけてね」と送ってくれているサインなのかもしれません。難しく考えずに、まずは一杯のお水を飲むことから。そして、お風呂でふくらはぎを優しく撫でてあげることから。そんな小さな優しさの積み重ねが、健やかな明日へと繋がっていくはずです。


健康に関するご相談は最寄りのかかりつけ医へ
この記事の健康情報は一般的な内容です。ご自身の症状や体調について心配なことがある場合は、必ずかかりつけ医にご相談ください。

適切な診断・治療には専門医による個別の判断が不可欠です。自己判断せず、まずは信頼できる医師にお話しすることをおすすめします。

かかりつけ医について詳しく知る(厚生労働省)
 

監修者プロフィール:三河聡志さん

三河聡志さん

2023年5月 みかわ整形外科クリニックを開院。「楽しく元気に」を合い言葉に職員一丸となり、治療に取り組んでいる。診療の中心は整形外科であり、関節の痛み、打撲や骨折等の怪我、交通事故、労災などに対応しており、患者層は乳幼児から100歳を超える高齢者まで幅広い。

HALMEK up編集部
HALMEK up編集部

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