PMS(月経前症候群)とは?症状・原因・治療法・よくある質問【医師監修】
PMS(月経前症候群)とは?症状・原因・治療法・よくある質問【医師監修】
公開日:2025年09月26日
この記事3行まとめ
✓ PMSは月経前のホルモン変動で起こり、心と体にさまざまな不調が現れます。
✓ 50代以上では更年期症状と似ており、見分け方と適切な対処が大切です。
✓ 治療法は多様で、セルフケアや婦人科相談で自分に合う方法を見つけましょう。
PMS(月経前症候群)とは?
PMS(月経前症候群)とは、Premenstrual Syndromeの略で、生理(月経)が始まる3~10日ほど前から心や体にさまざまな不調があらわれ、生理が始まると自然に軽くなったり、なくなったりする症状のことです。
「なんだか最近、生理前になるとイライラして、家族にきつく当たってしまう」「わけもなく落ち込んで、涙もろくなる」「体がむくんで、いつも履いているスカートがきつく感じる」……そんな経験はありませんか?
これらの不調、年齢のせいだと諦めてしまったり、更年期の始まりかしら?と感じたりする方も多いかもしれません。特に50代以上の女性は、月経周期が不規則になりがちな上、更年期症状も現れる時期と重なるため、ご自身の不調の原因がPMSなのか、それとも更年期によるものなのか、見分けがつきにくいことがあります。
大切なのは、これらの症状が「気のせい」や「性格の問題」ではなく、女性ホルモンの変動によって引き起こされる医学的な症状であると理解することです。正しい知識を持つことが、つらい症状と上手に付き合っていくための第一歩になります。
主な症状
PMSの症状は200種類以上あるともいわれ、その現れ方は人それぞれです。ここでは、特に多く見られる代表的な症状を「身体的症状」と「心理的な変化」に分けてご紹介します。
よく見られる身体的症状
50代以上の女性が感じやすい身体的な症状には、以下のようなものがあります。若い頃から経験している症状もあれば、年齢とともに変化を感じるものもあるかもしれません。
- お腹の症状:下腹部が張る、きりきりと痛む、便秘になる
- 乳房の症状:胸が張って痛い、触れると敏感になる
- 頭や体の痛み:頭痛、肩こり、腰痛、関節痛
- 水分の滞り:手足や顔がむくむ、体重が増える
- 肌の変化:ニキビや吹き出物ができる、肌が脂っぽくなる
- その他の不調:めまい、動悸、ひどい眠気、または寝つきが悪い、食欲が異常に増す、またはなくなる
これらの症状は、生理が近づくにつれて強くなり、生理が始まるとうそのように楽になるのが特徴です。
心理的な変化
身体の不調と同じくらい、あるいはそれ以上につらいのが心の変化です。ご自分でも感情のコントロールが難しくなり、戸惑う方も少なくありません。
- 気分の波:イライラして怒りっぽくなる、急に悲しくなって涙が出る、情緒が不安定になる
- 意欲の低下:何もやる気が起きない、普段楽しめていたことにも興味がわかない
- 不安感:漠然とした不安に襲われる、緊張感が続く
- 集中力の問題:仕事や家事に集中できない、ぼーっとしてしまう
- 自己評価の低下:自分を責めてしまう、自己嫌悪に陥る
こうした心の変化は、周囲に理解されにくく、「わがまま」「怠けている」などと誤解されてしまうこともあり、一人で抱え込んでしまう方が多いのが現状です。
PMSに悩む女性は決して少なくありません。厚生労働省の関連研究班が監修するサイトや、さまざまな調査からその実態が見えてきます。
ある調査では、月経のある女性のうち、何らかの月経前の症状を持つ人は約70~80%にのぼるといわれています。その中でも、日常生活に支障をきたすほどの強い症状を持つPMSの人は約5.4%と推計されています。
また、働く女性を対象とした調査では、PMSや月経に伴う症状によって「仕事のパフォーマンスが元気な時の半分以下になる」と回答した人が約半数を占めるという結果も出ています。さらに、PMSの症状を自覚している女性の約6割が特に対処法を知らず、婦人科を受診する人は1割にも満たないというデータもあります。
これらの数字は、多くの女性がPMSの症状に悩みながらも、適切な対処ができずに我慢したり、一人で苦しんだりしている現状を浮き彫りにしています。特に50代以上では、子育てが一段落している場合も多く、ご自身のキャリアやセカンドライフについて考える大切な時期。PMSの症状によって、その人らしい輝きが妨げられるのは、非常にもったいないことです。
PMSの原因とメカニズム
なぜ、生理前になると心や体に不調が現れるのでしょうか。PMSのはっきりとした原因はまだ完全には解明されていませんが、いくつかの要因が複雑に絡み合って起こると考えられています。
主な原因
PMSの主な原因は、大きく「生理学的要因」「環境的要因」「心理社会的要因」の3つに分けられます。
1. 生理学的要因
もっとも大きな原因と考えられているのが、排卵後から生理が始まるまでの「黄体期」における女性ホルモンの急激な変動です。
- 女性ホルモンの変動:排卵後、妊娠に備えるために「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」という2つの女性ホルモンが分泌されます。しかし、妊娠が成立しないと、これらのホルモンは生理直前に急激に減少します。このジェットコースターのようなホルモン量の変化に、脳や体が対応しきれずに、さまざまな症状が引き起こされると考えられています。
- 脳内物質への影響:女性ホルモンの変動は、脳内の神経伝達物質にも影響を与えます。特に、精神の安定に関わる「セロトニン」が減少することが知られています。セロトニンが不足すると、気分の落ち込みやイライラ、不安感、眠気、過食などの症状が現れやすくなります。
2. 環境的要因
日々の生活習慣や環境も、PMSの症状を悪化させる一因となることがあります。
- ストレス:仕事や家庭内の人間関係など、精神的なストレスはホルモンバランスを乱し、PMSの症状を重くする大きな要因です。
- 食生活の乱れ:塩分や糖分の多い食事、カフェインやアルコールの過剰摂取は、むくみや気分の変動を助長することがあります。
- 不規則な生活:睡眠不足や過労、運動不足なども、自律神経の乱れにつながり、症状を悪化させる可能性があります。
3. 心理社会的要因
50代以上の女性は、ご自身の体の変化だけでなく、家庭や社会における役割の変化も経験する時期です。こうした心理的・社会的な要因が、PMSの感じ方に影響を与えることもあります。
- 更年期への不安:閉経が近づくにつれ、ご自身の体の変化に戸惑い、将来の健康への不安を感じることが、精神的なストレスとなる場合があります。
- ライフイベント:子どもの独立による「空の巣症候群」、親の介護、自身の退職など、生活の大きな変化がストレスとなり、PMSの症状を強く感じさせるきっかけになることがあります。
- 性格傾向:真面目で責任感が強い、完璧主義、我慢強いといった性格の人は、ストレスを溜め込みやすく、症状が重くなる傾向があるといわれています。
発症メカニズム
これらの要因が組み合わさり、PMSは発症します。
まず、排卵後の急激な女性ホルモンの変動が引き金となります。このホルモンの波が、脳内のセロトニンなどの神経伝達物質の働きを不安定にさせ、イライラや落ち込みといった精神症状を引き起こします。
同時に、黄体ホルモン(プロゲステロン)には、体内に水分を溜め込む作用や、腸の動きを鈍くする作用があります。これにより、むくみや体重増加、便秘、お腹の張りといった身体的症状が現れます。
こうした身体の不快な症状が、さらに精神的なストレスを増大させ、心の症状を悪化させる…という悪循環に陥ってしまうことも少なくありません。
リスク要因
以下のような方は、PMSの症状が強く出やすい、あるいは悪化しやすい可能性があるため、注意が必要です。
- 過去にうつ病などの精神疾患にかかったことがある
- 家族(母親や姉妹)にPMSの症状が強い人がいる
- 喫煙の習慣がある
- 運動不足である
- ストレスを溜めやすい環境にいる、または性格である
- 食生活が不規則、または偏っている
これらのリスク要因に心当たりがある方は、早めに生活習慣を見直したり、専門家に相談したりすることが、症状の予防や緩和につながります。
診断方法と受診について
「このつらい症状、もしかしてPMSかも?」と感じたら、我慢せずに婦人科を受診することをおすすめします。ここでは、受診する場合の流れについてご説明します。
いつ受診すべきか
PMSの症状は多くの女性が経験するものですが、以下のような場合は、一度専門医に相談してみましょう。
- 症状が重く、日常生活に支障をきたしている(例:イライラが原因で人間関係が悪化する、仕事や家事が手につかない)
- 毎月同じ時期に、決まって心や体の不調が現れる
- 自分の症状がPMSなのか、更年期症状なのか、あるいは他の病気なのか分からず不安
- 市販薬やセルフケアを試しても、症状が改善しない
- 気分の落ち込みがひどく、絶望的な気持ちになることがある
特に、精神的な症状が非常に強く、日常生活を送るのが困難な場合は、「月経前不快気分障害(PMDD)」という、より専門的な治療が必要な状態の可能性もあります。
診断の流れ
婦人科では、主に問診を通じて診断が行われます。診断を確定させるための特別な検査があるわけではなく、患者さんの訴えが最も重要な情報となります。
1. 問診で確認すること
医師は、診断の手がかりを得るために、以下のような質問をします。ご自身の言葉で、ありのままを伝えてください。
- どのような症状がありますか?(身体的な症状、精神的な症状の両方について具体的に)
- その症状はいつから始まりますか?(生理の何日前からか)
- その症状はいつ楽になりますか?(生理が始まるとどうなるか)
- 症状のせいで、日常生活にどのくらい支障がありますか?
- 月経の周期や状態について(周期は規則的か、出血量はどうかなど)
- 過去の病歴や、現在服用している薬について
- 妊娠・出産の経験について
この問診で、症状が月経周期と連動していることが確認できれば、PMSと診断されることがほとんどです。次に、他の病気の可能性がないかを確認するための診察に進みます。
2. 身体検査
内診や経腟超音波(エコー)検査などを行うことがあります。これは、子宮筋腫や子宮内膜症、卵巣の病気など、似たような症状を引き起こす他の婦人科系の病気がないかを確認するために行われます。プライバシーには十分に配慮して行われますので、リラックスして受けてください。
3. 代表的な検査例
PMS自体を診断する血液検査はありませんが、甲状腺機能の異常など、他の病気が隠れていないかを調べるために、血液検査を行うことがあります。また、精神症状が強い場合は、うつ病などとの判別のために、専門の心理テストなどが用いられることもあります。これらの検査は、医師が必要と判断した場合に行われます。
受診時の準備
受診する際は、事前に少し準備をしておくと、診察がスムーズに進み、より的確なアドバイスを受けやすくなります。
- 症状日記をつける:最低でも2か月間、日々の症状(どんな症状が、どのくらいの強さで、いつ現れたか)と月経周期を記録したメモやアプリの記録を持参すると、非常に役立ちます。「症状日記」「月経周期アプリ」などで検索すると、便利なツールが見つかります。
- 質問したいことをメモしておく:診察室では緊張してしまい、聞きたかったことを忘れてしまいがちです。不安なこと、疑問に思うことを事前にリストアップしておきましょう。
- 基礎体温表:もしつけていれば持参しましょう。排卵の有無などを確認する手がかりになります。
受診すべき診療科
PMSの相談は、まず婦人科が第一選択です。特に、更年期症状との見分けが難しい50代以上の女性の体の変化に詳しい医師に相談するのが安心です。
もし、気分の落ち込みや不安、イライラといった精神的な症状が特につらい場合は、婦人科と連携して心療内科や精神科の受診をすすめられることもあります。
かかりつけの婦人科がない場合は、お住まいの自治体の保健所や、地域の医師会のウェブサイトなどで医療機関を探すことができます。最近では、女性の健康問題に特化した「女性外来」を設けている病院も増えています。
PMSの治療法
PMSの治療は、症状を完全になくすことだけが目的ではありません。症状を和らげ、つらい時期も自分らしく快適に過ごせるようにコントロールしていくことが目標です。治療方針は、症状の重さや本人の希望に合わせて、医師と相談しながら決めていきます。
治療方針の決定
まず、問診や症状日記をもとに、症状の程度や生活への影響を評価します。そして、患者さん一人ひとりのライフスタイルや価値観、治療に対する希望(「薬はあまり使いたくない」「とにかく早く症状を楽にしたい」など)を考慮しながら、最適な治療プランを一緒に考えていきます。治療法は一つではなく、いくつかの方法を組み合わせることもよくあります。
薬物療法
セルフケアだけでは改善が難しい場合や、症状が重い場合には、薬物療法が検討されます。使用される薬は、症状の種類や重さに応じてさまざまです。
- 低用量経口避妊薬(LEP/OC・低用量ピル):排卵を一時的に止めることで、PMSの原因となる女性ホルモンの急激な変動をなくし、症状を根本から改善します。特に、PMSと避妊を同時に希望する方、月経痛もひどい方などには良い選択肢です。ただし、40歳以上の方や喫煙者、血栓症のリスクがある方などは慎重な判断が必要なため、必ず医師と相談してください。
- 漢方薬:個人の体質(証)に合わせて処方され、心と体のバランスを全体的に整えることで症状を和らげます。冷えやむくみ、イライラ、気分の落ち込みなど、多彩な症状に効果が期待できます。代表的な処方には、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などがあります。
- 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI):抗うつ薬の一種で、脳内のセロトニン濃度を高めることで、特にイライラや落ち込み、不安といった精神症状の改善に高い効果が期待できます。症状が特に重いPMDD(月経前不快気分障害)の治療では第一選択薬とされています。
- 対症療法薬:頭痛や腹痛には鎮痛剤、むくみがひどい場合には利尿薬、不安感が強い場合には抗不安薬など、個々のつらい症状を和らげるために薬が処方されることもあります。
【注意】 これらの薬は、いずれも医師の診断と処方が必要です。自己判断で服用したり、中断したりせず、必ず医師の指示に従ってください。
非薬物療法
薬を使わない治療法も、PMSの症状緩和に有効です。薬物療法と組み合わせて行われることも多くあります。
- カウンセリング・認知行動療法:専門のカウンセラーとの対話を通じて、PMS症状に対する受け止め方や考え方の癖を見直し、ストレスへの対処法を身につけていく治療法です。特に、気分の落ち込みやイライラ、自己嫌悪などに悩む場合に有効とされています。物事の捉え方が変わることで、症状そのものが軽く感じられるようになる効果が期待できます。
- 光療法:体内時計の乱れが関与していると考えられる場合、高照度の光を浴びることで生体リズムを整え、気分の落ち込みや睡眠の問題を改善する治療法です。
【注意】 これらの治療法も、専門家の指導のもとで行うことが大切です。興味がある場合は、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。
生活習慣による管理
治療の基本であり、最も大切なのが生活習慣の見直しです。薬物療法や非薬物療法と並行して、日々の暮らしの中で以下のことを心がけるだけで、症状が大きく改善することもあります。
- バランスの取れた食事:特定の食品を避けるよりも、多様な食材をバランス良く摂ることが基本です。特に、カルシウム、マグネシウム、ビタミンB6はPMS症状の緩和に役立つといわれています。
- 適度な運動:ウォーキングなどの有酸素運動やヨガ、ストレッチは、血行を促進し、脳内のセロトニンを増やす効果も期待できます。気分転換にもなり、ストレス解消に繋がります。
- 十分な睡眠と休息:睡眠不足は症状を悪化させます。リラックスできる環境を整え、質の良い睡眠を心がけましょう。
- ストレスマネジメント:アロマテラピーや瞑想、ゆっくりと入浴するなど、自分が心からリラックスできる時間を見つけて、上手にストレスを発散させましょう。
治療期間と予後
閉経すればPMSの症状はなくなります。それまでの期間、治療によって症状をコントロールし、上手に付き合っていくことが目標となります。治療期間は人それぞれで、数ヶ月で症状が安定する人もいれば、年単位で継続的なケアが必要な人もいます。大切なのは、焦らず、ご自身のペースで治療を続けることです。医師と定期的にコミュニケーションを取りながら、その時々の心と体の状態に合わせた最適なケアを見つけていきましょう。
予防法と日常生活での注意点
PMSの症状を和らげ、つらい時期を少しでも快適に過ごすためには、日々の生活の中での予防や工夫がとても大切です。ここでは、「発症を予防する」「早く気づいて対処する」「日常生活の工夫」という3つの観点からご紹介します。
一次予防(発症予防)
PMSの症状をできるだけ軽くしたり、発症そのものを防いだりするための取り組みです。健康的な生活習慣が基本となります。
- 食生活の改善:健康的な食生活を意識しましょう。
- 積極的に摂りたい栄養素:カルシウム(乳製品、小魚)、マグネシウム(ナッツ、海藻)、ビタミンB6(カツオ、マグロ、バナナ)、トリプトファン(大豆製品、乳製品)などを意識して摂りましょう。
- 控えめにしたいもの:カフェイン(コーヒー、紅茶)、アルコール、精製された砂糖、塩分の多い食品は、症状を悪化させることがあるため、生理前は特に控えめにすると良いでしょう。
- 定期的な運動習慣:週に3回、30分程度のウォーキングや水泳などの有酸素運動がおすすめです。無理のない範囲で、楽しみながら続けられるものを見つけましょう。
- 質の良い睡眠:毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる習慣をつけ、体内時計を整えましょう。寝る前のスマートフォンやパソコンの使用は控え、リラックスできる環境を整えることが大切です。
二次予防(早期発見・早期治療)
「もしかしてPMSかも?」と早めに気づき、症状がひどくなる前に対処することも重要です。
- 症状日記をつける:自分の心と体の変化を客観的に把握するための最も有効な方法です。いつ、どんな症状が、どのくらいの強さで現れるのかを記録することで、自分のパターンが見えてきます。この記録は、医療機関を受診する際にも非常に役立ちます。」
- 早めに専門家に相談する:「これくらいで病院に行くのは大げさかも」とためらわずに、症状が軽いうちに婦人科に相談しましょう。早期に対処を始めることで、症状の悪化を防ぎ、より早く快適な状態を取り戻すことができます。
日常生活の工夫
PMSの症状が出やすい時期は、無理をせず、自分をいたわる工夫を取り入れましょう。
- スケジュール調整:生理前のつらい時期には、大きな仕事や大切な予定を入れないように調整するのも一つの手です。
- リラックスタイムを作る:好きな音楽を聴く、温かいハーブティーを飲む、アロマを焚く、ゆっくり半身浴をするなど、自分が「心地よい」と感じる時間を作りましょう。
- 体を温める:腹巻やカイロ、温かい飲み物などで体を温めると、血行が良くなり、腹痛や腰痛などの痛みが和らぐことがあります。
- 服装の工夫:体を締め付けない、ゆったりとした服装を心がけましょう。むくみや体の張りが気になるときに楽に過ごせます。
家族・周囲のサポート
PMSのつらさは、ご本人にしか分かりません。しかし、家族やパートナー、職場の同僚など、周囲の人の理解とサポートがあれば、心の負担は大きく軽減されます。
- 自分の状態を伝える:「今、生理前で少し体調が優れないの」「イライラしやすくなっているかもしれないから、ごめんね」など、可能であれば自分の状態を伝えてみましょう。すべてを理解してもらうのは難しくても、「そういう時期なんだな」と知ってもらうだけで、気持ちが楽になることがあります。
- 具体的な協力をお願いする:「この時期は、少し家事を手伝ってもらえると助かる」「そっとしておいてくれると嬉しい」など、具体的にどうしてほしいかを伝えると、相手も協力しやすくなります。
一人で抱え込まず、周りの力も借りながら、この時期を乗り越える方法を見つけていくことが大切です。
よくある質問(FAQ)
PMSに関して、特に50代以上の女性から多く寄せられる質問とその回答を30個まとめました。
Q1: 50代になってからPMSの症状がひどくなった気がします。なぜですか?
A: 50代は更年期に移行する時期であり、女性ホルモンの分泌が全体的に減少し、バランスも不安定になりがちです。このホルモンの「ゆらぎ」が、若い頃よりもPMSの症状を強く感じさせる一因となることがあります。また、加齢による体力の変化や、生活環境の変化によるストレスなども影響している可能性があります。
Q2: PMSと更年期障害、症状が似ていて見分けがつきません。
A: 最も大きな違いは、症状が現れるタイミングです。PMSは「生理が始まると症状が軽くなる・消える」という周期性がありますが、更年期障害は生理周期とは関係なく、不調が続きます。症状日記をつけて、ご自身の症状のパターンを確認してみることをお勧めします。
Q3: 閉経したら、本当にPMSの症状はなくなりますか?
A: はい、PMSは排卵後のホルモン変動によって起こるため、排卵がなくなり閉経を迎えれば、PMSの症状は基本的になくなります。長年悩まされてきた方にとっては、一つのゴールと言えるかもしれません。
Q4: PMSとPMDD(月経前不快気分障害)の違いは何ですか?
A: PMDDはPMSの中でも特に精神症状(気分の落ち込み、イライラ、不安など)が非常に強く、日常生活や社会生活に深刻な支障をきたしている状態を指します。自殺を考えてしまうほどの気分の落ち込みがある場合などはPMDDの可能性があり、より専門的な治療が必要となるため、早急に婦人科や心療内科にご相談ください。
Q5: PMSと更年期障害、両方の症状が同時に出ることはありますか?
A: はい、あり得ます。更年期への移行期(閉経周辺期)は、まだ生理があるためPMSが起こりつつ、更年期によるほてりや発汗、気分のゆらぎなども現れることがあります。症状が複雑に絡み合っている場合も多いので、専門医に相談して整理することが大切です。
Q6: どんな食事を心がければいいですか?具体的な食材を教えてください。
A: バランスの良い食事が基本ですが、特に「大豆製品(豆腐、納豆)」「乳製品(ヨーグルト、チーズ)」「青魚(サバ、イワシ)」「ナッツ類」「緑黄色野菜」などを意識的に摂ると良いでしょう。これらは女性ホルモンに似た働きをするイソフラボンや、気分の安定に関わる栄養素を含んでいます。
Q7: PMSに効く漢方薬があると聞きました。自分で選んでも大丈夫ですか?
A: 漢方薬は体質に合わせて選ぶことが非常に重要です。自己判断で選ぶと、効果がなかったり、かえって体調を崩したりすることもあります。必ず医師や薬剤師に相談し、ご自身の体質に合ったものを処方してもらってください。
Q8: サプリメント(エクオール、ビタミンB6、チェストベリーなど)は効果がありますか?
A: これらのサプリメントがPMS症状の緩和に役立ったという報告はあります。特にエクオールは、更年期症状とPMSの両方に悩む方に注目されています。ただし、効果には個人差があり、医薬品ではありません。試す場合は、かかりつけ医に相談の上、品質の確かなものを選ぶようにしましょう。
Q9: 50代で低用量ピルを飲むのは、血栓症のリスクが心配です。
A: おっしゃる通り、40歳以上、特に喫煙者の方などは血栓症のリスクが相対的に高まるため、ピルの処方は慎重に判断されます。しかし、リスクが低いと判断されれば、50歳前後まで服用可能な場合もあります。医師がリスクとベネフィットを総合的に判断しますので、まずは相談してみることが大切です。
Q10: ピル以外のホルモン療法(HRT)はPMSに有効ですか?
A: ホルモン補充療法(HRT)は、主に閉経後の更年期障害の治療に用いられるもので、周期的な変動があるPMSの直接的な治療法としては一般的ではありません。ただし、更年期症状とPMSが混在している場合には、治療の選択肢を医師と相談することになります。
Q11: 運動はどのくらい、どんなことをすれば良いですか?
A: 無理なく続けられることが一番です。週に2~3回、30分程度のウォーキングや軽いジョギング、ヨガ、ストレッチなどがおすすめです。特に生理前は、激しい運動よりも、心身をリラックスさせるような運動が良いでしょう。
Q12: アロマやハーブティーで、おすすめのものはありますか?
A: リラックス効果のあるラベンダーやカモミール、女性ホルモンのバランスを整えるといわれるクラリセージやゼラニウムなどのアロマオイルが人気です。ハーブティーでは、カモミールティーやセントジョーンズワートティーなどがありますが、後者は薬との相互作用があるため、服用中の薬がある方は必ず医師に確認してください。
Q13: イライラして家族にあたってしまい、後で自己嫌悪に陥ります。どうすれば?
A: とてもおつらいですね。多くの方が同じ悩みを抱えています。まず「これはホルモンのせい。自分の性格が悪いわけではない」と自分を許してあげてください。そして、可能であれば事前に「今、生理前でイライラしやすい時期なの」と家族に伝えておくだけで、お互いの心の負担が軽くなることがあります。
Q14: 仕事のパフォーマンスが落ちてつらいです。職場にどう説明すれば良いですか?
A: 理解を得るのは簡単ではないかもしれませんが、信頼できる上司や同僚に「月経前は体調が不安定になりがちで、集中力が落ちることがあります」と伝えてみるのも一つの方法です。具体的な病名を言う必要はありません。つらい時期は無理せず、休憩をこまめに取る、重要な判断は避けるなどの工夫も大切です。
Q15: 異性パートナーにPMSのつらさを理解してもらうには、どうしたら良いですか?
A: 男性には経験のない症状なので、理解が難しいのは当然かもしれません。「毎月、風邪のひき始めみたいな状態が1週間続く感じ」など、相手がイメージしやすい言葉で伝えてみてはいかがでしょうか。また、この記事のような客観的な情報を見てもらうのも良い方法です。
Q16: PMSの診断や治療に、健康保険は適用されますか?
A: はい、PMSは病気として認められているため、婦人科などでの診察や、処方される薬(漢方薬、ピル、SSRIなど)には健康保険が適用されます。
Q17: 治療にはどのくらいの費用がかかりますか?
A: 保険適用(3割負担)の場合、診察料は初診で2,000~3,000円程度、再診で1,000円前後が目安です。薬代は種類によりますが、例えば低用量ピルや漢方薬は1ヶ月あたり1,000~3,000円程度です。カウンセリングなどは自費診療となる場合もあります。
Q18: 近くに良い婦人科がありません。オンライン診療でも相談できますか?
A: はい、最近ではPMSや更年期の相談に対応しているオンライン診療サービスが増えています。薬の処方も可能です。ただし、内診などが必要な場合もあるため、一度は対面での診察が推奨されることもあります。ご自身の状況に合わせて活用すると良いでしょう。
Q19: 低用量ピルを飲むと太る、と聞いて心配です。
A: 昔のピルにはそうした副作用もありましたが、現在使われている低用量・超低用量ピルでは、体重増加の副作用はほとんどないとされています。飲み始めにむくみを感じる方もいますが、多くは一時的なものです。
Q20: とにかく眠気がひどくて困ります。何か対策はありますか?
A: 生理前の眠気は、ホルモンの影響で体がお休みモードになるためです。可能であれば、日中に15分程度の短い仮眠をとるのが効果的です。それが難しい場合は、ガムを噛む、冷たい水で顔を洗う、軽いストレッチをするなどして、気分転換を図りましょう。
Q21: 逆に、夜なかなか眠れません。どうすれば良いですか?
A: 寝る前にぬるめのお風呂にゆっくり浸かる、リラックス効果のある音楽を聴く、温かいノンカフェインの飲み物を飲むなど、心身をリラックスさせる習慣を取り入れましょう。寝る直前のスマホやPCの光は、脳を覚醒させてしまうので避けてください。
Q22: 生理前になると、甘いものやしょっぱいものが無性に食べたくなります。
A: ホルモン変動による脳内物質(セロトニン)の減少が、食欲の変化を引き起こすと考えられています。我慢しすぎるとストレスになるので、完全に断つのではなく、質の良いもの(高カカオチョコレート、ナッツ、果物など)を少量摂るように工夫してみてはいかがでしょうか。
Q23: 肌荒れやニキビがひどいです。スキンケアで気をつけることは?
A: 生理前は皮脂の分泌が増え、肌が敏感になりがちです。刺激の少ない洗顔料で優しく洗い、保湿をしっかり行うことが大切です。この時期は、新しい化粧品を試すのは避けた方が良いでしょう。
Q24: 頭痛がひどいのですが、市販の鎮痛剤を飲み続けても大丈夫ですか?
A: 毎月のように、用法・用量を守っても効かないほどの頭痛が続く場合は、一度医師に相談してください。PMSによる頭痛ではなく、片頭痛など他の原因が隠れている可能性もあります。また、鎮痛剤の飲み過ぎは「薬剤誘発性頭痛」を引き起こすこともあるため注意が必要です。
Q25: 夕方になると足がパンパンにむくみます。即効性のある解消法は?
A: 即効性を求めるなら、足を心臓より高くして休む、弾性ストッキングを履く、足首を回したり、ふくらはぎを優しくマッサージしたりするのがおすすめです。塩分の多い食事を避けることも大切です。
Q26: PMSは遺伝しますか?娘にも何か伝えておいた方が良いでしょうか?
A: PMSになりやすい体質は遺伝する傾向があるといわれています。お母様がご自身の経験を話すことで、お嬢様が将来同じような症状で悩んだときに、「これは自分だけじゃないんだ」と安心でき、早めに対処するきっかけになるかもしれません。
Q27: 症状日記には、具体的に何を書けば良いですか?
A: 「月経の開始日・終了日」「体調(頭痛、腹痛、むくみなど)」「気分(イライラ、落ち込みなど)」「その他気づいたこと(食欲の変化、睡眠の状態など)」を、それぞれ5段階評価などで記録すると分かりやすいです。基礎体温も測っていると、より有用な情報になります。
Q28: 婦人科に行くのは、なんとなく抵抗があります。他に相談できる場所は?
A: まずは、かかりつけの内科医に相談してみるのも一つの方法です。また、自治体の保健センターの保健師や、ドラッグストアの薬剤師に相談してみるのも良いでしょう。信頼できる専門家との出会いが、解決の糸口になることもあります。
Q29: セルフチェックでPMSと出ましたが、病院に行くべきですか?
A: セルフチェックはあくまで目安です。もし症状によって日常生活に不便を感じているのであれば、一度専門医に相談することをお勧めします。他の病気が隠れていないか確認する意味でも、受診する価値は十分にあります。
Q30: このつらさは、いつか必ず終わりますか?
A: はい、必ず終わりが来ます。PMSは閉経とともに必ずなくなります。それまでの期間、つらい症状をゼロにしなくても、上手にコントロールして、あなたらしく穏やかに過ごす方法はたくさんあります。一人で抱え込まず、ぜひ専門家の力を借りてください。
まとめ
大切なポイント
PMSは、月経前のホルモン変動によって誰にでも起こりうる心と体の不調です。あなたのせいではありません。
50代以上では更年期症状と重なり複雑化しやすいですが、症状日記などで自分のパターンを知ることが第一歩です。
治療の基本は生活習慣の見直しですが、つらい時は我慢せず、婦人科で薬物療法や漢方など、自分に合った治療法を相談しましょう。
閉経すればPMSは必ず終わります。それまでの期間を穏やかに過ごすために、利用できるサポートは積極的に活用しましょう。
健康に関するご相談は最寄りのかかりつけ医へ
この記事の健康情報は一般的な内容です。ご自身の症状や体調について心配なことがある場合は、必ずかかりつけ医にご相談ください。適切な診断・治療には専門医による個別の判断が不可欠です。自己判断せず、まずは信頼できる医師にお話しすることをおすすめします。
監修者プロフィール:押切佳代さん

沢岻美奈子女性医療クリニック(兵庫県神戸市)院長。日本内科学会認定医。日本糖尿病学会専門医。ダイエット外来担当医。




