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リスク高いのはどんな人?セルフチェック&9つの要因
認知症になりやすい人の特徴│性格・口癖は関係ある?
のげ内科・脳神経内科クリニック
渡邊 耕介
公開日:2024.04.26
近年、認知症になりやすい人には『教育不足・難聴・高血圧・肥満・喫煙・うつ・孤立・運動不足・糖尿病』の9つの特徴があることが明らかに。性格や口癖は影響するのか?注意したい生活習慣は?医師監修のもと詳しく解説。早めの対策でいつまでも元気な脳に!
認知症になりやすい人の9つの特徴
高齢化が進む日本では、認知症患者数が増加しています。
「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」によれば、65歳以上の認知症患者数は2030年には約744万人(有病率20.2%)になると推計されています。
では、認知症になりやすい人にはどのような特徴があるのでしょうか?
「認知症のなりやすさは性格や口癖が関係している」といったことを耳にすることがありますが、医学的根拠は乏しいものです。
アルツハイマー型認知症の最大の要因は、「加齢」です。発症率は60歳以降、10年ごとに約2倍になり、高齢になるほど増えていきます。
しかし、認知症リスクを高めるのは加齢だけではありません。認知症のなりやすさは、生活習慣が大きく関わっています。
医学雑誌の『THE LANCET(ランセット)』に掲載された複数の専門家による発表ではライフステージ別に認知症の9つのリスクが指摘されており、これらの要素を改善することで認知症を予防もしくは発症を遅らせることが期待できるといいます。
- 【若年期(45歳未満)】
1:教育不足 - 【中年期(45〜65歳)】
2:聴力障害(難聴)
3:高血圧
4:肥満 (BMI ≧ 30) - 【晩年期(65歳以上)】
5:喫煙
6:うつ
7:社会的孤立
8:運動不足
9:糖尿病
ある研究では、危険因子(糖尿病、高血圧、心臓病、喫煙)の数が多いほどアルツハイマー型認知症のリスクが高まるという結果も出ており、対策可能な要因の改善に取り組むことで、認知症のリスクを下げることが可能です。
ここからは、その中から教育不足、生活習慣病(高血圧・肥満)、聴力障害(難聴)、喫煙、社会的孤立について詳しく解説していきます。
認知症になりやすい人の特徴│教育不足
認知症のリスク要因の一つとなるのが、「教育不足」です。
教育水準が低い(研究中では中等教育を受けていないことと定義)と、教育水準が高い場合と比べて認知症リスクが1.6倍高くなるといいます。
これは、教育水準が低いと「認知予備力」が不足し、認知機能低下につながりやすくなるためです。
認知予備力とは、脳の病気や加齢による認知機能低下に抗う能力のこと。認知予備力には個人差があり、学習などによって頭を使うことによって力が蓄えられます。
注目すべきは、この認知予備力は、大人になっても学び続ければ増やせる可能性が高いと考えられていることです。
若い頃に戻って勉強することはできませんが、新しいことに興味を持って取り組むことが認知症予防につながるという研究結果もあります。
脳トレや読書、学び直し、勉強や趣味など、ぜひ何事にも興味を持ってチャレンジしていきましょう。
認知症になりやすい人の特徴│生活習慣病
高血圧・肥満・糖尿病といった生活習慣病も、認知症リスクに影響を与える要素です。
【高血糖】
中年期に高血圧の場合、多発梗塞性認知症(脳血流障害による認知症)のような認知症リスクを約1.5倍高めるという示唆があります。
THE LANCETの発表でも、40歳頃から最高血圧130mmHg以下の維持を目指すことが推奨されています。
【肥満】
肥満にも注意が必要です。多くの研究で、中年期の肥満は晩年の認知症リスクを約50%上昇させることがわかっています。
認知機能低下リスクの上昇、脳の炎症の増加にも関連しており、太り過ぎには十分注意しましょう。
【糖尿病】
糖尿病と認知症は関連が深く、多くの研究で認知機能低下や認知症リスクを約1.5〜2倍ほど高めることがわかっています。
乱れた食生活や運動不足はこのような生活習慣病につながるため、早めに対策しましょう。
積極的に取りたい食材・食べ過ぎを避けるべき食材を意識するのがおすすめです。
習慣的な運動も、認知症対策に効果的です。運動不足になり筋力が低下すると思うように体を動かせなくなり、活動量が低下して脳が刺激を受ける機会も減ってしまいます。
運動は筋力向上や肥満予防の他にも、ストレス解消、うつ症状の緩和などさまざまな効果が期待できます。ハードな運動を行う必要はないため、軽い運動を習慣化するといいでしょう。
認知症になりやすい人の特徴│聴力障害(難聴)
研究では、聴力障害(難聴)も認知症の危険因子だと伝えています。
認知症リスクは難聴の重症度によって変わり、それぞれ以下の通りです。
- 軽度難聴……約1.9倍
- 中等度難聴……約3倍
- 重度難聴……約4.9倍
聴力障害によって音が聞こえにくいと、耳から得る脳への刺激が減り、脳の活動が低下することで認知機能に影響すると考えられています。
また、難聴よりコミュニケーションが取りにくくなることで社会的なつながりが減ると、社会的孤立やうつ病を招き、結果的に認知症のリスクを高めてしまうことになります。
加齢が原因の「加齢性難聴」は誰にでも起こる可能性がある症状です。難聴が認知症の引き金になることもあるため、聴覚の衰えを感じたら適切に補聴器を使用することが大切です。
認知症になりやすい人の特徴│喫煙
喫煙が認知症リスクを上昇させることも、多くの研究により明らかになっています。
THE LANCETで発表されたオランダの研究によれば、タバコを吸ったことのない人に比べて、喫煙者は認知症リスクは2.2倍、アルツハイマー型認知症になるリスクは2.3倍高くなるという結果が出ました。
日本でも似た研究が行われており、中年期や晩年期でタバコを吸っている人は、タバコを吸ったことがない人に比べて、認知症の発症リスクが約2.3倍(アルツハイマー病は約2.0倍、血管性認知症は約2.9倍)になることが明らかになっています。
喫煙は血管を傷つけ、認知症だけでなく動脈硬化や脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高める原因にもなります。
認知症リスクを軽減するためにも、禁煙を検討しましょう。
認知症になりやすい人の特徴│社会的孤立
「外に出る気が起きない」「話し相手や相談相手がいない」など、社会的な孤立も、認知症リスクを高める原因です。
日本で行われた共同研究では、認知症ではない65歳以上の8896名を対象に、社会的孤立と脳萎縮の関連性について調査しました。
その結果、同居していない親族や友人との交流頻度が減るのに伴い「脳全体の容積」や「認知機能に関連する脳容積(側頭葉、後頭葉、帯状回、海馬、扁桃体)」が低下するという結果が出たのです。
脳は筋肉と同じで、使わないと認知機能は弱ってしまいます。
毎日顔を合わせる家族とは異なり、「初めて会う人」や「あまり親しくない人」などよく知らない相手との会話では、脳がフル回転。しっかりと脳を使うことができます。
外に出る機会、他者とのコミュニケーションの機会を増やすことが大切です。
認知症になりやすい人の特徴│その他の要因
その他、睡眠不足やアルコールの飲み過ぎも、脳に悪影響を与える要因です。また、遺伝も認知症発症リスクに影響します。
睡眠不足
睡眠中は、アルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドβを排出する働きが高まることがわかっています。
つまり、睡眠不足になるとアミロイドβがしっかり排出されず、脳内にたまりやすくなってしまうのです。
ベストな睡眠時間は人によって異なりますが、睡眠不足にならないようしっかり睡眠を取りましょう。
アルコールの飲み過ぎ
厚生労働省の生活習慣病予防のための健康情報サイトe-ヘルスネットによれば、お酒を大量に飲む人や、アルコール依存症の人には高い割合で脳萎縮が見られるといいます。
このことから、アルコールの飲み過ぎは認知症のリスクを高めると考えられています。
遺伝
家族性アルツハイマー型認知症の場合は遺伝性があることがわかっていますが、1%以下とされており、たとえご家族にアルツハイマー型認知症の患者様がいても遺伝を心配する必要はほとんどありません。
ただし、アルツハイマー型認知症のほとんどは孤発性であり、遺伝することはまれだといわれています。
アルツハイマー病の原因となる遺伝子を持っているかどうかは、APOE遺伝子検査で調べることが技術的には可能ですが、検査できる医療機関は限られており、臨床的に問題となるケースのみが検査対象となります。
認知症の初期症状や兆候
認知症の初期症状や兆候には、以下のようなものがあります。
- ヒントを出しても思い出せない
- 物忘れをしたときに取り繕おうとする
- 同じことを何回も話す・聞く、つまり聞いたということを忘れる
- モノの置き忘れが増える、ではなくモノを置いたことを忘れる
- 以前はできたことに手間取る(料理や買い物など)
- お金の管理ができなくなる
- 周囲の出来事に関心がなくなる
- 趣味やこれまで行っていた活動をやめた(意欲低下)
- 怒りっぽくなった、疑い深くなった
「少し様子をみてみよう」と放置していると、周囲の人間、社会との関係が悪化してからでは回復が難しい可能性もあります。異変に気づいたら早めに対処しましょう。
認知機能は大丈夫?認知症リスクのセルフチェック
以下は、認知機能低下リスクのセルフチェックリストです。普段の生活を振り返り、以下の項目がいくつ当てはまるかチェックしてみましょう。
- 人と会話する機会が減った
- 笑うことが減った
- 運動不足になっている
- 寝付きが悪く、ぐっすり眠れない
- 聞こえにくさを感じる
- 炭水化物(甘いお菓子やご飯・パンなど)をよく食べる
- タンパク質(肉や魚、卵など)をあまり食べない
- 脂っこい食事をよく食べる
- 1年以上、歯医者に行っていない
0個の場合、脳は健康な状態です。認知機能低下リスクも低いでしょう。
1~4個の場合、認知機能低下リスクが高くなっているため、早めに生活習慣の見直しを始めましょう。
5個以上当てはまった場合、認知機能低下リスクがさらに高いです。認知症予防対策に取り組みましょう。
認知症を予防するには?
完全に予防することは難しいものの、認知症は生活習慣の影響も大きいため、リスク要因を改善することで進行を遅らせたり、発症リスクを抑えたりする効果が期待できます。
- 認知症の兆候があった場合は早めに専門の病院を受診する
- 定期的に健康診断を受ける
- 生活習慣(食事・睡眠・運動)を改善する
- 趣味を見つけて楽しむ、ストレス発散する
- 友達や知人とのコミュニケーションの機会を取る
認知症は予防が重要!早めのケアで脳を元気に
認知症のなりやすさは教育不足や生活習慣病、難聴、喫煙、社会的孤立などが影響します。
認知症を完全に予防することはできないものの、リスクを高める要因に注意すれば、発症リスクを抑え、進行を遅らせる効果が期待できます。
今は見られなくなった光景ですが、以前は町のどこにでもあったタバコ屋さんの売り子のおばあさんを思い出してみてください。カクシャクとした方が多かったですね。
毎日、お客さんと会話して、間違えずにお金の計算をして、仕入れをして……そのような環境だと人は認知症になりにくいものです。
自分次第ですぐ対策できることも多いため、できる部分から改善してみましょう。
監修者プロフィール:渡邊 耕介さん
桜木町駅から徒歩1分、横浜の野毛で『のげ内科・脳神経内科クリニック』を開業しております。頭痛、パーキンソン病、てんかん、認知症が専門です。訪問診療も行っております。4月よりパーキンソン病のリハビリを行い、地域医療に貢献することを目標にしております。
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