素朴な疑問要介護の親の金銭管理が心配なら。成年後見制度とは?

公開日:2020/05/13 更新日:2021/05/15

 

要介護の親の金銭管理が心配なら。成年後見制度とは?

 

こんにちは! 好奇心も食欲も旺盛な50代主婦、ハルメク子です。

 

遠距離介護をしている友人から「お父さんの認知症がどんどんひどくなってきて、お金の使い込みが心配なのよね。妹が近くに住んでいるけど、義弟がギャンブル好きでどうしようもないから、妹に通帳を預けるのも心配だし……」と、相談されました。

 

確かにこういった場合は、お金の管理はどうすればいいのでしょう。

 

そこで、川崎ひかり法律事務所の橋本訓幸(はしもと・くにゆき)弁護士に聞いてみました。
 
 

成年後見制度とは


橋本さん:この場合、「成年後見制度」の利用が考えられますね。成年後見人とは、判断能力が低下してしまった人について、裁判所の選任した後見人などが、本人の代わりに財産管理や身上監護を行うという制度です。

 

主に、本人名義の預貯金の管理、日常的な費用の支払い、(必要に応じて)本人名義の不動産の売買、介護保険の契約や施設に入るための契約手続をします。
判断能力の低下の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3段階があるのですが、判断能力の低下の程度が最もはなはだしい「後見」の場合は、包括的な財産の管理権を後見人が持つことになります。

 

これは、不当に財産が逸出してしまわないようにするなど本人保護の観点からなのですが、一方で、本人の意思の尊重も図らなければならないとされており、常にこのバランスを図ることが後見人には求められています。


 第三者が、しっかりと財産管理することになるのですね。誰が、成年後見人になれるんですか?

 

 

橋本さん:未成年者、破産者、行方の知れない者など、民法に定められた欠格事由に該当しなければ成年後見人になる資格自体はあることになります。本人が元気なうちは、本人が後見人になってほしい人と契約しておく「任意後見人制度」が使えるのですが、今回のような既に認知症が進んでいる方の場合は、裁判所が後見人を決める「法定後見制度」を利用することになります。
 

 

成年後見制度の利用の仕方

 

​​ 利用するにはどうしたらいいのかしら?

 

 

橋本さん:成年後見人の選任申立ては、家庭裁判所に対して行います。申立ては、「本人」「配偶者」「四親等内の親族」「市区町村長」などが行うことができます。申立てを受け付けた裁判所は、本人の判断能力の程度について、医師による鑑定などを参考にしながら判断をします。


 その上で諸般の事情を考慮し、誰を成年後見人とするのが適切かを家庭裁判所が決めます。申立ての時点で、後見人の候補者を書くなどして希望を裁判所に伝えることはできますが、必ずその通りになる保証はありません。

 

 申し立てた人の希望通りにいくわけではないのですね。誰が成年後見人になる場合が多いのかしら。

 

 

橋本さん:2020年発表の最高裁判所事務総局家庭局のデータだと、成年後見人などと本人の関係は、弁護士など親族以外が78.2%、親族が21.8%となっています。

 

親族も、もちろん成年後見人になることができます。

 

しかし、親族とはいえ、あくまでも他人の財産を管理することになるので、「後見人」として重い責任が発生します。「法は家庭に入らず」という言葉があって、親族間では法の適用は比較的緩やかになっていることが多いのですが、成年後見人に選任された場合は、親族だからということで成年後見人の責任が緩やかになるということはありません。自分の財産との混同を避け明確に区別するなど、適切な管理を行うことが必要になります。

 

親族ではなく、弁護士などの専門職が後見人に選任されるのはどういった場合かというと、あくまでも業務経験からの印象ですが、親族間に対立があってどちらかの親族を後見人とすることがふさわしくないと思われる事案や、遺産分割といった法的な事務処理が必要な事案などではないかと思います。

どちらにせよ忘れてはいけないのは、成年後見人は本人の代理人として、本人の利益のために活動するということです。

 

 とはいっても、お金の使い込みがあるんじゃないの?

 

 

橋本さん:はい、残念ながらあります。2017年のデータ(※)では、不正が報告された294件のうち専門職による不正が11件、専門職以外による不正が283件でした。

 

もっとも、成年後見人などによる不正報告件数は、2014年まで増加傾向にありましたが、翌年以降は、不正報告件数と被害額はいずれも減少しています。 ※平成30年5月厚生労働省発表資料「成年後見制度の現状」より

 

成年後見人を選任する立場にある裁判所も不正事件には目を光らせていますし、専門職もそれぞれ各団体ごとに対策を講じています。制度の利用者は、2017年時点で21万人を超えており年々増加している状況であるのに、不正報告件数などが減少しているのはこのような対策が効果を上げているということでしょう。

 

高齢者の数が増えていく中で、制度の利用の必要性も高まっていくと思いますが、安心して使える制度になっていると考えていいと思います。


 なるほど~。友人に教えてあげますね。

 

 

 

【監修】

川崎ひかり法律事務所 橋本訓幸(はしもと・くにゆき)弁護士

 

 

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参照:成年後見関係事件の概況(平成31年1月~令和元年12月)

   成年後見制度の現状
 

 


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