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- シスター渡辺和子さんが信じた幸せの見つけ方とは
平成のミリオンセラー『置かれた場所で咲きなさい』(幻冬舎刊)の著者でシスターの、故・渡辺和子さん(享年89)。生前、ご自身の半生を振り返り、心が折れそうなとき、どう気持ちを転換するかについて語ったメッセージを紹介します。
どんな環境でも自分の花を咲かせよう
「置かれた所こそが、今のあなたの居場所。そこで笑顔で生き、周囲の人々も幸せにしましょう」。やさしい言葉で生き方を指南した著書『置かれた場所で咲きなさい』は、2012年の発売で年間ベストセラーの2位に(トーハン調べ)。それ以降、4年連続でベスト10入りを続け、200万部を突破する大ベストセラーになりました。著者の渡辺和子さんは、18歳で洗礼を受けて以来、70余年にわたりシスターとして神に仕え、2016年に89歳で亡くなりました。雑誌「ハルメク」は、本が話題になっていた2013年に、渡辺和子さん(当時87歳)にインタビューをしました。自らの人生を変え、本のタイトルにもなったエピソードとは。
この本がこれほど広く読まれることになるなんて、とにかく驚いております。反響も大きく、受刑中の方からもお手紙をよくいただきます。お手紙の内容は90%はポジティブなので、「それなりに私もお役に立っているのだな」と感じています。
私は18歳で洗礼を受け、29歳でシスターとなりました。軍人の娘でしたから、母からは「強くあれ」「努力しなさい」「我慢しなさい」、そして「1番になりなさい」と厳しく育てられました。試験は毎回100点を取っていましたし、勝ち気で傲慢で、人より優れていないと生きている価値はないと思っていました。
そんな傲慢で冷たい自分自身が嫌いで、「お水をかけていただいたら新しい自分に変われるかもしれない」と、親の反対を押し切ってキリスト教の洗礼を受けたのです。ところが、洗礼を受けても私は変われませんでした(笑)。
とてもこたえたのが、母に冷たく接したときに言われた「あなた、それでもクリスチャン?」という言葉。聖書の言葉よりも当時の私によく効きました。
そして、「自分自身を人様、神様のために使いたい」と修道者としての道を歩み始めました。
“くれない族”だった私が出合った、英詩のフレーズ
シスターも人間ですから落ち込んだり、心が折れそうになったりすることは当然あります。私は36歳のとき、岡山という未知の地で、前任者の半分にも満たない年齢で思いがけず大学の学長に任命されました。
大学の運営や人間関係などで悩んでいたとき、ある宣教師にいただいた短い英詩に、「Bloom where God has planted you.(神が植えたところで咲きなさい)」というフレーズを見つけました。
当時の私は「私に挨拶してくれない」「私のことをわかってくれない」と、“くれない族”になっていました。
ところがこの詩に出合ったことで、どんな環境に置かれても、そこで環境の主となって自分の花を咲かせることの大切さに気付いたのです。
そして、私の方から先に挨拶をし、お礼を伝えるようになると、不思議と周りにいる人たちも明るく優しく変わっていきました。
「置かれた場所で咲く」。私を支えてくれたこのフレーズは、本のタイトルにしましたし、今も教壇に立つと学生たちに伝え続けています。
次回『置かれた場所で咲きなさい』苦境を受け止めるとはに続きます。
渡辺和子さんがたどった、激動の人生
1927(昭和2)年
陸軍教育総監・渡辺錠太郎の次女として、北海道旭川市に生まれる
1936(昭和11)年 9歳
二・二六事件で、父がわずか1mの目前で銃弾に倒れる
1945(昭和20)年 18歳
カトリックの洗礼を受ける
1956(昭和31)年 29歳
ノートルダム修道女会に入りアメリカに派遣され、ボストン・カレッジ大学院に学ぶ
1963(昭和38)年 36歳
ノートルダム清心女子大学の3代目学長に就任
1977(昭和52)年 50歳
仕事のストレスなどからうつ病を患う
1984(昭和59)年 57歳
マザー・テレサ来日時に通訳を務める
1990(平成2)年 63歳
ノートルダム清心学園理事長に就任
1995(平成7)年 68歳
膠原病を発症。治療薬・ステロイドの副作用で3度圧迫骨折を起こし、身長が14cm縮む
2012(平成24)年 85歳
著書『置かれた場所で咲きなさい』発売。のち200万部を超えるベストセラーに
2016(平成28)年 89歳
12月30日、すい臓がんで死去
渡辺和子(わたなべ・かずこ)
1927(昭和2)年、北海道生まれ。聖心女子大学を経て、上智大学大学院修了。63年、36歳の若さでノートルダム清心女子大学の学長に就任。のち、ノートルダム清心学園理事長。数々の著書があり、中でも2012年に上梓した『置かれた場所で咲きなさい』(幻冬舎刊)が200万部のベストセラーに。2016年12月30日、89歳で死去。
取材・文=小林美香(編集部)撮影=篠塚ようこ
※この記事は、雑誌「ハルメク」2014年3月号を再掲載しています。
※雑誌「ハルメク」は書店ではお買い求めいただけません。詳しくは雑誌ハルメクのサイトをご確認ください。
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