恋愛は出合い頭の事故のようなもの
恋愛って、必ずしも恋人がいるということとは違うんですよね。別にその相手が恋人じゃなくたって、想いを寄せることはあるし、ただ一緒に寝るだけの関係もあると思う。もしくは、人に自慢できる彼だから付き合っているとか>(笑)。
私がデビューしたのはちょうどバブルの真っただ中。付き合う相手は、どれだけ自分にお金を使ってくれる人か、どんな高級車に乗っているとか、自慢できる彼氏の条件のような情報が蔓延する時代でした。
不倫というと罪のように責められ
不道徳と糾弾される風潮もあるけれど、
断罪している人の根本にあるのは
「嫉妬」なんだと思います
恋愛小説の名手といわれる山田さんは、黒人男性との恋愛、不倫、同性愛など、男性偏重のモラルや古い価値観をくつがえす多様な恋愛の在り方を描き続けてきました。世の中ではタブーとされることにも軽やかに切り込む山田さんの今、60代の恋愛観とは?
恋愛って、必ずしも恋人がいるということとは違うんですよね。別にその相手が恋人じゃなくたって、想いを寄せることはあるし、ただ一緒に寝るだけの関係もあると思う。もしくは、人に自慢できる彼だから付き合っているとか>(笑)。
私がデビューしたのはちょうどバブルの真っただ中。付き合う相手は、どれだけ自分にお金を使ってくれる人か、どんな高級車に乗っているとか、自慢できる彼氏の条件のような情報が蔓延する時代でした。
でも、私はそういうこととは無縁なところで、男女の関係を書きたいと思っていました。いわばお金で何でも手に入るという感覚ではなく、お金があっても手に入らないものを描いてきたつもりです。昨今、不倫というと何か罪のように責められ、不道徳と糾弾される風潮もあるけれど、結婚している相手以外と恋愛に陥ることは永遠に無くならないでしょう。ある種の人たちにとっては、糾弾することが気持ちがいいのかもしれない。私ね、断罪する人の根本にあるのは、たぶん「嫉妬」だと思うんです。
けれど、私はそれを気持ちいいとは思わない人たちのために小説を書いています。恋愛の在り方は人それぞれです。世の中では不倫と呼ばれることでも、惹かれ合ってしまうことはしょうがないんじゃないか。恋愛は出合い頭の事故のようなものであり、致し方ないのだということを描いてきたのだと思います。